紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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今回はより紅の世界観を書きました。
特に闇側です。なのでちとグロいかもしれません。
苦手な人はすいません。

あと、オリキャラも出ます。


闇は深く深く

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冬馬の前にいる黒スーツ姿の女性は自分のことを犬と名乗った。間違いなく本名ではなく偽名だろう。

そもそも偽名という感じでもなく、どちらかというとコードネームの方がしっくりと来る。

 

「では犬さんと呼べばよろしいですか?」

「好きに呼んでください」

「あんたは何者だよ?」

 

ここで準と小雪が冬馬の前に出る。まるで守るようにだ。

まるでではなく、実際に守るために前に出ている。助けてくれたから敵ではないかもしれないが素性の分からない人をあまり近づかせることはしないだろう。

 

「犬と名乗るがよ。あんた本当に何者なんだ?」

「ただの犬です。それ以上それ以下でもありません。そして長く話すこともありません」

「えー話そうよー」

「話すことはありません」

 

犬と名乗る女性にもやることがあるのだ。それはとても重要な仕事である。

 

「私があなた方を助けたのは彼の知り合いだからです。そして本当にたまたま私の目に入ったからです」

 

犬と名乗る女性の目に冬馬たちが入ったから助けた。もし彼女に見られてなかったら彼は助からなかったかもしれない。

彼らだけで乗り切ったかもしれない可能性はあったかもしれないが、それでもリスクは相当あっただろう。それはまさに誰かが死んでいたかもしれない。

そして気になる言葉。それは冬馬たちの知り合いであることを示す言葉だ。

 

「彼?」

「はい。あなた方は運が良かっただけです。そしてこれから私はこの裏闘技場であることをしますので、そのあることに便乗して逃げてください。分かりましたね?」

「あることですか?」

「はい。すぐに分かります」

「すぐに分かるって言ってもねえ。少しは説明を貰いたいものだけど」

 

亜巳の言い分は最もだ。でも犬は語らない。

本当にその時の状況になれば誰でも分かるからである。それにどこで情報が洩れるか分からないし、そもそもここは敵地だ。

おいそれと作戦もとい計画を話せるわけもない。

 

「では、上手く逃げてください」

 

犬と名乗る女性は消える。そして残った冬馬たちは彼女の残した言葉を何度も頭に繰り返して考えるしかなかった。

 

 

253

 

 

最初は見つかったと思ったが目の前にいる人は友達であった。その名も斬島切彦である。

既に手にはナイフを持っており、ダウナー系ではなくギロチンモードになっている。

 

「切彦ちゃん」

「よお紅の兄さん。こんな所で会うなんて奇遇すぎるな」

「どうしてここに?」

「俺がここにいる理由なんてだいたい察することができるだろ」

 

切彦は仕事をしているのだろう。仕事とは悪宇商会の仕事。

切彦は殺し屋だ。だから殺しの仕事をしている。だからこれから仕事をするのだろう。もしくはもう終わっているのかもしれないが。

 

「ターゲットはお前らじゃないから安心しろ。今回は悪宇商会からの仕事だ。うちの戦闘屋が勝手に抜けたからソイツの始末だ」

 

悪宇商会から抜けた戦闘屋。勝手に抜けていろいろと事件を起こしているから悪宇商会としては会社の看板に泥を塗らせるわけにはいかないので始末することになったのだ。

 

「紅の兄さんも知ってるけど知らない奴だぜ」

 

知ってるけど知らないとは矛盾している。そして悪宇商会の戦闘屋と言われれば数少ない。

でも今の言葉に当てはまる奴は真九郎は思いつかないのだ。

 

「誰か分からないみてーだな。ま、そりゃそうか……ビックフット覚えているか?」

 

ビックフット。悪宇商会に所属する巨漢の戦闘屋であるフランク・ブランカのことだ。

西里総合病院で無関係な人まで殺害した最悪な戦闘屋である。だがフランク・ブランカは真九郎が叩き潰した後、自ら自爆して死亡している。

なのに切彦が始末することは無いはずだ。なんせもうフランク・ブランカは死んでいるのだから。

 

「ビックフットの二つ名はフランク・ブランカだけが作ったわけじゃない。もう1人のビックフットがいるんだよ」

 

ビックフットの二つ名の由来は未確認生物という意味で見つからない。名の通り隠密行動が得意なのだ。

フランク・ブランカは体格が逆に大きいから見つからないという方法を使っている。他にも隠密行動も多く身に着けている。

だけど1人だけでなく、2人で仕事をしていたらしい。

 

「双子だったんだよ。基本的に2人で仕事するがあの病院では分かれていた。もう1人は長期の仕事でいなかった」

「双子?」

「ああ。今まで双子のそいつは長期の仕事のせいで片割れの死を知らなかった。つい最近知って勝手に悪宇商会から抜けた」

 

ビックフットの片割れが抜けた理由。それは復讐だろう。

フランク・ブランカを殺した奴の復讐。そうなると相手は真九郎ということになる。

真九郎は殺していないが自爆を考えさせたということになれば狙われることになるだろう。

 

「じゃあ俺を狙いに…」

「紅の兄さんのことは話してねえよ。停戦契約があるからな。勝手に抜けたとはいえ、そいつが兄さんを狙った契約違反だ。悪宇商会もそれだけは避けたいみたいでな」

 

悪宇商会から停戦を言い出したのにまさか悪宇商会から破れば、それも看板に泥を塗るはめになるだろう。

それだけはさせないために悪宇商会で最高峰の殺し屋であるギロチンに始末を任せたのだ。そして切彦がここにいるということはその片割れがこの裏闘技場にいるということだろう。

 

「だから紅の兄さんは安心しろよ。俺がそいつを殺す」

 

何故か切彦から裏の意味をくみ取ると「守ってやる」というのが伝わってくる。

 

「だから巻き込まれる前にさっさとここから出ていけ。それはお前らもそうだぞ」

切彦は真九郎から目を離してクリスたちを見る。一応彼女たちはここ川神で出会った知り合いだから、一応巻き込まないように言う。

だけど勝手に足を突っ込むなら切彦は止めないし、どうなっても構わないと思っている。だって自己責任だからだ。

クリスたちが死のうがどうなろうが気にしない。彼女が気にするのは友達である真九郎や紫たちだけなのだから。

 

「死にたくなかったらさっさとここから逃げろ。それでもいいならここにいろ」

 

そう言うと切彦は死体安置所から出て行った。残ったクリスたちはもう何も言えない。

いきなり切彦が現れたかと思えばこれから殺しをしてくる発言をしてきたのだ。

喧嘩や不良が言う「殺す」ではなくて本当に人を殺す感覚を直に感じたのだ。クリスたちはその感覚にあてられて動けないし、会話に混ざれなかった。

その感覚はもう殺しが日常というものだ。切彦は殺しが仕事なのだから当たり前だがクリスたちにとっては殺しなんて絶対に関わることはない。

 

もうこの裏闘技場はクリスたちがちょっと危険の場所と思っているのではなく、本当に死の淵にいるのだ。一歩間違えれば死ぬだけ。

切彦の言葉はクリスたちを本気で死のイメージ味合わせた。卓也にいたってはもう恐怖で震えるしかない。岳人も一子も何か言おうとしても喉がそれを許さない。

彼らはやっとここが自分たちが思っていた場所でないことを理解したのだ。風間ファミリーは強い。でもそれ以上に強い組織は存在する。

彼らは川神では無類の強さだけど世界に目を通せばそうでもない。彼らはやはり学園生なのだ。

武術が強いからといって学園生が表世界の巨大組織や裏世界の闇組織に勝てるわけもない。例えば九鬼財閥が風間ファミリーに負けることが想像できるだろうか。否、できない。

 

歩むべき世界線が違うなら、風間ファミリーは大切な仲間を、正確にはある人間型ロボ娘を助けるために九鬼財閥に喧嘩を売ったのだ。

結果的には大切な人間型ロボ娘を助けることはできたが、九鬼財閥には惨敗で大和が人生を賭けて責任を取ることで収拾がついた。

それだけで済んだのは九鬼財閥が優しいから、肉親の知り合いであり、若者の力に期待したからである。そもそも風間ファミリーであったから。

これが風間ファミリーでなかったらヒト1人の責任で帳消しになるはずもない。

学園生が、子供が大人の世界に口を挟むな。そういうことだ。

 

「…」

 

沈黙の中、忠勝が最初に口を開く。

 

「もう戻るぞ。これは俺たちが解決できる範囲を超えている」

「源くん俺はまだやることがある。クリスさんたちを頼む」

 

真九郎は行方不明の子を探し始める。最悪な展開になる前に見つけなければならない。

 

 

254

 

 

大和たち売春組織の中核になるグループを既に叩き潰していた。

喧嘩慣れしている奴らであったが大和たちの方が各上であったがため負けた。これで売春組織は完全に壊滅である。

ずいぶんと時間がかかり、手間がかかった。でもやっと完全に潰したのだ。

 

「やったね大和。結婚して」

「お友達で。でもまだ終わりじゃないぞ。組織としては完全に潰したけどボスが見つかっていない」

 

頭を潰さないといずれ復活するかもしれない。だからこそ大和はボスを捕獲しようと考える。

それは翔一も同じく考えており、京も由紀江だってそうだ。前の売春組織の生き残りがいたかもしれないこそ、たった今潰した売春組織が今まで川神で悪さしていたのだから。

 

「ボスの情報はやはりこの中核であるサブリーダーの人が知っているのでしょうか?」

「だろーな。よし俺様が吐かせるぜ!!」

「俺も手伝うよ」

 

情報を吐かせるのは翔一や大和の方が適任だ。だから倒した売春組織のサブリーダーに近づく。

近づいた時が彼らにとって最悪な展開の始まりであった。目の前で初めて人が死んだ瞬間を見たのだ。

 

「っ!?大和先輩、風間先輩避けてください!!」

 

由紀江は今の今まで気づきはしなかった。彼女は気の察知は敏感だ。京だって気の察知はできる。

でもそんな彼女たちに今の今まで気づかさないでいた奴は恐ろしい奴だ。そいつは隠密行動に優れているとはいえ、そんなにも巨体なのに。

普通は巨体なら目立つ。だからこそ今まで気づかなかったのに彼女たちは予想外なのだ。

 

「うお!?」

「なんだこいつ!?」

 

由紀江の声が2人の命を助けた。2人は急いで後退してその巨漢を見る。そして嫌な光景を見てしまった。

 

「う…」

 

巨漢が振り下ろした拳の先にはぐっちゃりと潰れ、血みどろになったザブリーダーの男がいたのだ。

もう人の形をとどめていなくて、見てはいけないものになっている。

この光景に大和たちは口を塞ぐ。目の前で初めて人間が壊されたのを見てしまったら耐性が無い者ならこうなるだろう。

さらに巨漢は倒れている売春組織の男たちはぐちゃぐちゃに潰していく。この巨漢こそが切彦が探しているフランカ・ブランカの片割れであるもう1人のビックフットだ。

 

「うう…コロス。コロス」

 

部屋に響き渡る男たちの絶望とグロさを強調する悲鳴。人間があり得ない形で千切られ、潰される。

べちゃべちゃと血が周囲に飛び散り、肉塊さえもボタボタと嫌な音を立てて捨てられる。

 

「な、なんだこいつは…」

 

先ほどまで大和たちの快進撃で売春組織を壊滅させたのに、いきなり絶望的な状況になった。

だって怪物のような巨漢がいつの間にか部屋に現れて人間を壊しているのだから。

大和は気持ち悪くなる。京たちは我慢しているが時間の問題だ。

 

「あいつ何で…」

 

本当にいきなりのことで混乱しているがビックフットの視線が大和たちを見た瞬間にすぐさま警戒する。

 

「ヤバイぞ。気を付けろ!!」

 

翔一が叫んでみんなの混乱をかき消した。そうでもしないとみんなは動かないからだ。

そのおかけでビックフットが突撃したのを避けられたのだ。ビックフットはそのまま壁に激突するが無傷である。

 

「この!!」

 

京が隠し持っていた弓矢で撃ち抜くがあり得ない硬度の皮膚で突き刺さらない。

まだまだと、由紀江が刀で斬りかかっても完全には斬れない。まるで鋼鉄の身体のようである。

 

「硬い…!?」

 

ビックフットは肉体を改造している。ちょっとやそっとの攻撃では傷つけることもできないのだ。

京と由紀江が本気の本気にならないとダメージを与えられないだろう。それこそ由紀恵の奥義を出し惜しみしてはならない。

 

「コロス。コロス」

 

何でビックフットがこんな所にいるかと聞かれれば、それは臓器売買組織のボスが拾ったからである。

そしてボスの情報を探そうとする奴の始末を請け負っているのだ。そうすればビックフットが探している復讐対象を見つけてやるのと交換でだ。

ただそれだけでビックフットはここにいる。重大な仕事とか、遂行な目的とか無い。

ただただ自分の片割れを殺した奴の復讐をしたいだけだ。憎悪の塊のみで動いている。それだけで人を簡単に殺す。

 

「うう、殺す」

 

目の前にいるのはただの人殺しであり戦闘屋。ビックフットの足元には千切れた男の頭が転がっており、その表情は絶望した顔であった。

生首と目があった大和は身体が震えて吐き気を催す。もうこの部屋に居続けるとおかしくなる。

 

「うが」

 

ビックフットは転がっていた頭を踏みつぶし、また床を汚した。

 

「うあああああ!!」

 

京は叫んだと同時に弓矢を連続で放つ。由紀江は奥義『阿頼耶』を出すために集中するがこんな最悪な状況で集中なんてできるわけもない。

翔一は何かできないかと周囲を探すがただの血と肉塊があるだけ。大和も策を考えるが何も思いつかない。頭の中はもうメチャクチャなのだ。

 

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!?)

 

ここにいては殺される。それしか頭に思いつかないのだ。

なんとか戦うが勝てるイメージが思いつかない。それは彼らがグロさと恐怖のせいで冷静になれていないからだ。

彼らが冷静ならばうまく戦えていたかもしれない。でも大和たちはプロの戦闘屋と戦えるような人間ではない。

戦闘屋と戦う人生なんて歩んでいないのだから当たり前だ。武術と殺しは全く違うのだ。大和たちを責めてはいけない。

普通はこれが当たり前だ。人殺しに出会えば恐怖するのが当たり前なのである。大和たちは至って当たり前の反応をしているだけだ。

 

「チッ…少し遅かったか。でも生きてるからセーフだよな」

 

また新たな声が聞こえ、この声は聞いたことのある声だ。その姿をみた大和がポツリとつぶやく。

 

「斬島切彦…?」

「よお。お前ら紅の兄さんの知り合いだったな」

「うう…ギロ、チン?」

 

ビックフットは切彦を見る。

 

「あーあー。ったく、また勝手に関係無い奴を殺して…会社にこれ以上泥を塗るなよ。もっとももうお前はいないことになってるけどな」

 

切彦は無残でグロく、絶望と血と肉塊しかない部屋を見ても平気そうだ。そんなのは慣れているからであるが。

もっとも切彦とビックフットの殺し方は全く違う。切彦の方が無駄がない。

何故なら刃物なら一太刀あれば事足りるのだから。

 

「貸せ」

 

切彦は由紀江から奪うように刀を手に取る。そして素人丸出しの構えでビックフットに迫る。

 

「ギ、ギ、ギロチン!!!!」

「さっさと死ね」

 

一瞬だった。本当に勝負は一瞬だったのだ。

今のを勝負と例えて良いものか分からないが、人によっては今のはただの処刑だろう。

 

「お、この刀は良い刀だな」

 

切彦は刀に刀身に着いた血を振り払う。どうなったかと聞かれれば切彦がビックフットの首を切り落とした。それだけである。

ゴロリとビックフットの頭が切彦の足元に転がる。それを踏みつけ部屋の隅に蹴った。

 

「どーした。もう終わったぞ?」

 

言葉も出ない。裏十三家で殺し屋と聞いていた大和であったがまさかここまでとは思わなかったのだ。

ここまでとは、というのは切彦がいとも簡単に人を殺したからだ。まるで当然の如く、当たり前のように。

前に出会った彼女からは想像もできないイメージである。大和の想像力が足りなかった。殺し屋について、悪宇商会のギロチンについて、裏十三家について。

 

「…死んだの?」

 

死んだのは確実だが、今の状況に追いつけないから言ってしまった言葉。

 

「斬島さん…」

「悪いな借りてしまって。んじゃあ返すぜ」

 

切彦は由紀江に借りていた刀を普通に返却する。敵で戦闘屋であるビックフットの首を切り落とした刀。

由紀江は自分の刀で数多の決闘者を倒したことはあるが、殺したことはない。それは彼女が殺人の剣ではなく活人の剣だからだ。

正直、返してもらった刀に思うところがある。でも刀とはもともと人を斬るために鍛えられた武器であるが。

 

「さあて、お前らさっさと帰れよ。死にたくなかったらな」

 

切彦は冷静に大和たちに帰れと言う。そしてその言葉と同時に裏闘技場内で異変が起こった。

 

 

255

 

 

真九郎の腕の中には行方不明の子が抱えられていた。一子たちと別れた後ですぐに見つけ出したのだ。

彼女はどうやら薬で眠らされており、意識は無い。でも無事であることは確かだ。もし助けるのが遅くなって臓器摘出中なんて場面に遭遇したら目もあてられない。

 

「早く見つけられて良かった…あとは裏闘技場から出るだけだ」

 

真九郎の目的は行方不明の子を見つけて家族の元へ戻すこと。だから臓器売買組織を潰すことでないので、ここで逃げても構わないのだ。

無理な危険を犯すことは全く持ってない。最も彼女を助けるために部下を叩き潰しはしたが。

そして叩き潰した男の電話が鳴り始めた。おそらく男の仲間が上司にあたるかもしれない。

電話を持って画面を見ると非通知になっている。どうやら情報を漏らさないようにしているかもしれない。

ここで真九郎は電話に出るかどうか迷う。無視するか、それとも電話に出て何か情報を聞き出すか。

 

「……」

 

迷った挙句決めたのは電話に出ることだった。

 

『やっと出たか。どうした?』

「申し訳ありません。少しトラブルがありました」

『トラブル…ああ、そうだったな』

(ん?誤魔化しで言ったつもりだけど納得した…もしかして本当にトラブルか何かあったのか?)

 

まだ真九郎は知らないだけだがそのトラブルとは冬馬たちの方だ。その実態を知った時は流石に驚くだろう。

 

『今回の臓器摘出を終えたらもう裏闘技場から退け。もうそこは使えないからな』

「もう使えないですか?」

『ああ。どうやら私たちのことを嗅ぎまわる奴がこの裏闘技場まで追ってきたからな。ユートピア販売グループと売春組織は切り捨てる』

 

その追う者たちとは風間ファミリーと冬馬グループのことだろう。

 

『もし九鬼財閥まで出張ってきたら面倒だ。裏闘技場ではもう十分臓器は手に入れたからな引き際は大事だ』

 

どこに戻るかを聞こうとした時、電話を誰かに取り上げられた。

 

「はあい。もしもし?」

『っ、誰だ!?』

「私が誰かだなんて関係ないわ。でも…言うとしたらあんたが裏オークションで出品するモノを回収する者よ」

『っ!?』

 

ブチリと電話が切れた。

 

「…絶奈さん」

「こんばんわ紅くん」

 

電話を取り上げたのは星噛絶奈であった。

 

「こんなところで会うなんて奇遇ね」

「そうですね」

「その子なに?」

「行方不明の子です」

 

その言葉で大体のことが察せた。またいつもの揉め事処理屋の仕事かと。

 

「絶奈さんこそ何でここに?」

「私は私で仕事よ」

 

そういえば前に出会った時、仕事で川神に訪れていることを聞いた。ならばこの裏闘技場にいるのも仕事の一環なのだろう。

酒瓶を持っていてもだ。

 

「今は仕事中じゃないわ」

「…そうですか」

 

さっきまで切彦に出会った。今度は絶奈と出会うとはこの裏闘技場は悪宇商会と連携でも何でもしているのだろうか。

 

「この裏闘技場はウチと関係ないわよ」

 

どうやら心を読まれたようだ。

 

「それにしても紅くんがここにいるからいけ好かないあの柔沢紅香の差し金かと思ったわ」

「紅香さんの?」

「ええ。でも違うみたいね」

「…裏オークションのことですか?」

「…そうよ。どうやらあの柔沢紅香も裏オークションに関わる揉め事の仕事をする情報が入ってきたからね」

 

流石は悪宇商会の最高顧問。本気を出せば柔沢紅香の動きを読めているようだ。

 

「もしかして紅くんも裏オークションで何か揉め事の仕事でもするのかしら?」

 

正解だ。最も紅香の仕事の手伝いでだ。

 

「何でこうも私たち悪宇商会は紅くんと関わりがあるのかしらねえ?」

「それは…分かりません」

 

本当に真九郎は何故か悪宇商会と関わりがある。去年の大きな事件は全て悪宇商会の関わりがほとんどだ。

 

「前にも言ったけど今回は紅くんとは関係ない仕事だから…もし会場で出会ってもお互いに邪魔は無しよ」

「分かってます」

「どんな状況でもよ…って煙?」

 

裏闘技場内に煙が充満し始めた。

 




読んでくれてありがとうございました。次回もゆっくりとお待ちください。

さて、今回はオリキャラとしてビックフット片割れが出ました。
これに関しては本当にオリジナルキャラでっす。
彼を出した目的は大和たちに紅側の闇を伝えるキャラとして出しました。
なので、もう出番は終わりです。すいませんビックフット片割れよ。出オチみたいで

今回の話のメインはやはり紅側の闇を伝えることでした。
今まではマジ恋色が多かったと思うので最後は紅側を出します。

次回で裏闘技場編は終了です。そろそろこの最終章も後半に入ります。

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