真・恋姫†無双・蜀漢の章 ~李厳伝~(凍結) 作:零式カフカ
「桃香!ひっさしぶりだなぁ!!」
あの後、桃香の友人である公孫賛が幽州に赴任したと言う情報を得た俺らは、公孫賛を頼る事にした。なにせ兵も無ければ金も無い、と言った状況なのだ。で、その後にちょっと意見が出たのがそのまんま行っていいものか、と言う事だ。見せ兵ぐらいは用意した方がいい、と言う一刀と愛紗の意見に反論したのが俺だ。
《他所の見ず知らずの奴んとこ行くならナメらんねぇように、ってのは分かるが昔馴染みなんだろ?そうやって誤魔化そうとしてヘタに機嫌損ねちゃかなわねぇ。ならば正々堂々、身一つで真っ向から行くべきさ》
結論で、俺の意見が是とされたわけだが・・・・まぁ正解だったな。公孫賛の対応は遠方より訪ねてきてくれた友人を出迎えるソレだ、ゾロゾロ見せ兵を連れて来ていざ手を貸す時に、実は兵はないんです、なんて言うより元々兵無しで出来る事をしにきた、ってぐらいの方がよっぽど好印象だと俺は思う。
「元気そうでなによりだよ、盧植先生のところを卒業して以来だしな。それで・・・・桃香は今は何をしているんだ?」
「うんとね、皆と一緒に賊を討って回ったりしてたよ」
「それでそれで?」
「へ?」
「へ?」
桃香が首を傾げれば、公孫賛も一度首を傾げる。
「まさか・・・・ホントにそれだけなのか!?」
「え?う、うん・・・・」
「お前なぁ!!桃香ぐらいの能力があったらどこかの県令、上手くやれば太守の座も狙えただろ!?」
そう、桃香は意外な事に能力そのものは水準より高いんだ。まぁ、それを扱うおつむがちょっとアレで、立身出世なんてものに欠片も興味が無かった故に俺と一刀が加わるまで三人だけの義勇軍、なんて事になってたわけなんだが。
「でもね白蓮ちゃん、それだとそこにいる人たちしか守れない。私は・・・・それは嫌なんだよ」
立身出世には興味は無いが、手に届かぬ人々すら守りたいと思っている。思いのほか強欲、それ故に掲げる大志がとんでもない大風呂敷を広げてるわけだが。
「まぁ・・・・お前ならそういうと思ってたよ」
公孫賛も桃香との付き合いは長かったそうだし、桃香の言葉も何となく予測出来ていたのか苦笑しながらそう言った。
「でもまぁ丁度良いところで来てくれたよ、人手が全然足りない状況なんだ。桃香の申し出は願ったり、ってところだ」
どうやら幽州では最近勢力を拡大してきている賊、通称『黄巾』の他にも外敵である五胡の一つ『烏丸』も侵入する頻度を増しているとの事。主だった将を北部の国境線に張り付かせている以上、南部を公孫賛一人で捌くのにも限界があるんだろう。
「おや、客人ですかな白蓮殿」
白き衣装、身にまとう飄々とした雰囲気の奥底にはハッキリとした強者の闘気を感じられる。
「あぁ、皆にも紹介するよ。コイツは趙雲、私の客将だ」
「趙雲、字を子龍と申します」
身のこなしに隙は無く、だがどこかに妙な脆さも感じた。
―――――――――
公孫賛軍の客将となって最初の仕事、が賊の討伐だ。こちらの兵数は三千、あちらは五千。兵数では劣るが将の数と質はこちらが勝る。だが何故か総指揮が俺に任されちまったから、まぁ色々と考えるしかねぇわな。
「部隊を四つに割る、先陣が鈴々で五百」
「おうなのだ!」
「左翼を愛紗、右翼を星(趙雲)、両隊共に五百」
「はっ!」
「御意に」
「後詰は五百、一刀と桃香」
「分かった」
「はい!」
「本隊が千、これは俺が率いる」
出陣前に、星からも真名を預けられた。だからこちらも預けた、星も何かを感じ取っていたのだろうか?まぁそれは置いといて、だ・・・・策は用意したが簡単なものだ。本職の軍師連中ならもっと色々と手を打てるんだろうが、生憎俺は軍師じゃない。
「陣形は錐行、各隊合図を見逃すな。さぁ、出陣だ」
『うぉおおおおおおおっ!!』
流石は北方で長年五胡とやり合う軍勢だ、士気は悪かない。
「・・・・どうした星」
皆が配置につく中、こちらを興味津々です、な眼で見ている星がそこに残っていた。
「いえ、中々堂々とした采配だと思いまして」
「これでも軍には四年いたからな、だがまぁ・・・・この規模を動かすのぁ初めてだ」
袁紹軍じゃあ百人、劉表でも五百、劉璋で三百、俺が直接率いた事のある兵数だ。最大で五百、今回はその六倍。緊張していないと言えば嘘になるし、重圧を感じていないわけじゃあない。だが客将である星も俺と同程度の規模の部隊しか率いた事が無いと言う。一刀、桃香、愛紗、鈴々は論外だろう。となれば、従軍経験が長く、この規模の戦いにも参加した回数が多い俺がやるしかない、となるわけだ。
「それでもやるしかねぇじゃねぇか、人一人に配られる札は限られてんだ。人間ってのぁその配られた札で一生勝負し続ける生き物なんだよ」
「北郷殿も桃香殿も興味深いが・・・・やはり、貴殿が一番興味深いよ、竜胆殿」
「・・・・いいからとっとと配置に付け」
笑みを浮かべながら、身を翻し部隊へと向かう星。
「っし、田楷。合図を出せ、右回りで三回だぞ」
「はっ!」
遠くに賊の一団が見えた、規模は事前の情報通り、陣形も何もない、ただただ突撃するだけの構え。ならば作戦に変更など無く、白蓮(公孫賛)から借り受けた副官である田楷に合図を出すように指示をする。と正面、前衛の鈴々が兵を連れて真っ向勝負を仕掛けに出る。
「田楷、本隊の弓兵三百を預ける。張飛隊と入れ替わったら敵後方に矢をまばらに射掛けろ」
「は?まばらに・・・・ですか?」
「ああ、ヘタにまともに打ち込んで開き直って逃げられちゃ困る。相手が調子に乗るか、もしくは奮起する程度が丁度いい」
納得した、と言うような表情で一度頷いた田楷がすぐに後方へと駆けていく。
「さて・・・・と」
状況は見た目五分五分、正直心配ではあったが鈴々が上手く押し負けそうなところだけで戦ってくれているようだ。
「ん・・・・銅鑼を二度!一拍空けてもう一度鳴らせぇ!」
「はっ!!」
打ち鳴らされる銅鑼と共に、鈴々の隊が押された『フリ』をして後退。それと同時に愛紗と星が、戦線を押し上げる。
「っし、本隊前に出るぞ!!田楷隊からの射撃後、張飛隊と交代する!!」
俺の隊が出ると同時に、田楷の隊から指示通りのまばらな援護射撃が放たれる。と、賊からの圧力が増す。狙い通り、相手はかなり調子に乗ってるらしい。
「我は北平太守公孫賛が客将、李厳!賊の頭目よ、貴様に一片の矜持あらば我との一騎打ちに応じよ!!」
そして最後の要、賊将が俺らの作戦に気づかないようにする。そのために、敢えて鈴々には敗走するフリをしてもらった。勢いづいている賊から見れば、いちかばちかで将の首を狙いに来た、と見えているはずだ。しかも鈴々が敗走したフリをした事により、凡将として映っているはずだ。
「ふん、このまま勝っても歯ごたえが無いと思っておうたところじゃ。この韓仲がその素っ首叩き落としてこの戦の贄としてやろう!!」
進み出てきたのは恰幅のいい、いかにも猪突です、な見た目とツラした奴だ。持ってるのも大斧だし、斧を持った猪突にロクな奴はいない。
「言葉が薄っぺらいぜデブ」
「デデデデデ、デブだとぉおおおおおお!!!?俺様はポッチャリなだけだぁああああああ!!!」
いやいや、まごう事なきデブだろ、とか思ってたら大斧を振りかぶって馬を走らせてくる。俺も、夜鴉を構えてその時を待つ。
「死ねぇええええええええっ!!!」
大斧が振り下ろされた瞬間に、俺は動いた。まずは馬の前脚を薙ぎ払う、脚を払われ馬は崩れ、こちらに向かって落ちてきたデブの首目掛けて一度払いきった刃を切り返す。宙を舞うデブの首、重苦しい音を立てて地に落ちるその身体。それを確認すると、直ぐに視線を周囲へと向ける。
「賊将、この李厳が討ち取ったぁ!!」
既に作戦は完了している。戦線を押し上げながら左右に広がった愛紗と星の隊、そして俺と交代しながら隊を右側に回り込ませた鈴々、援護射撃の後直ぐに弓を槍に持ち替え左側に回った田楷の隊により既に賊軍は包囲されている。数ではあちらが未だに優っているが、それでもこれで一度に戦える人数を制限させる事が出来る。
そして既に、包囲に回った愛紗、星、鈴々、田楷らには賊に降伏を呼びかけさせている。
「ふぅ・・・・」
まぁ、正直若干肝が冷える場面もあるにはあった。俺と鈴々の隊がすれ違う時にぶつかって転ぶ奴らがいた、今回は賊相手だったから良かったがそうでなければそこを隙として突いてくる化物も世の中にはいるわけだ。まぁそれもごくわずかだったが後々、一刀と桃香が領地を得て自軍の兵を持つようになったならば、そういう連携方面に重点を置いて鍛えてみようか、とも思っている。
「竜胆殿、賊は既に全軍降伏しましたぞ」
と、物思いに耽っていればいつの間にやらこちらに来ていた星がそう報告してきた。
「あぁ、分かった。どれぐらいの数だ?」
「約千五百、と言ったところでしょうか」
「じゃあ武装解除させろ、それとデキそうな連中を三百程選んで後は解放しろ」
「解放するのは良いのですが・・・・何故、三百を」
「内緒だ」
―――――――――
四半刻もすれば、愛紗と星が賊の中から俺の要望通りの連中をかき集めてきた。一通り、見回すとその中でも気になった一人を俺は指名する事にした。
「お前、名は?」
「・・・・廖化、です」
この娘、確か俺が討ったデブの隊にいた奴だ。鈴々が援護してまわった、本気で押し込まれかけた箇所のうち半分はコイツが犯人だ。
「なぁ、お前らさ・・・・このまま終わるか?」
「え?」
「一山いくらの賊として終わりたいか、って聞いてんだよ」
俺の言葉に、ざわつき始める。廖化と名乗った娘が、血が滲むような強さで唇を噛み締めた。
「では・・・・ではどうすれば良いと言うのですか!私の故郷は官軍によって滅ぼされました!家族も!友も!全て全てです!官軍を憎み賊に身を窶せば上に立つのは官軍連中と変わらぬ愚物!!少しでも世を変えられればと思っていたのに!もう何が正しくて何が間違っているかなんて私には分からないんです!!」
吐き出された言葉、そして他の連中を見れば、境遇が同じだったのだろうか、共感出来る事があったのだろうか、その視線が全て俺へと向けられている。
「ならよ、俺らと一緒に来ねぇか?俺の主君、天の御使い北郷一刀と劉玄徳は力を求めている。お前らみてーな連中が、増えないように、絵空事な綺麗事を並べながら、この広ぇ天下に挑もうとしている。もしお前らが、まだその両足で立って、戦う気概があるんなら着いてこい。二人の主君が道を示す、そこを俺らが引っ張ってってやるからよ」
「本気、で・・・・言っているのですか?私たちは賊ですよ!?生きるためとは言え殺しもしました、盗みもしました、口にするのも憚られるような真似もしました!そんな私たちを・・・・」
俺は、無言のまま一刀へと視線をやった。これは俺たちが天下へと挑む本当の第一歩だ、その決めは御旗たる一刀に決めてもらわねばならない。
「関係ないよ、もし君たちにまだ・・・・まだ国を思う気持ちがあるなら、俺たちは歓迎する。臣下でも部下でも無い、同じ志を持つ仲間としてね」
廖化の、その他の連中の目の色が変わった。それがハッキリ分かる。そして、彼女らがどんな答えを返すかも予想はつく。はてさて、ここからどう大風呂敷を広げていこうか、と。俺は思案に耽るのだ。
TIP集
・趙雲、星
ヒロイン候補一号。フラグは建ったが・・・・?現状、劉備軍の人物に対する好奇心が竜胆>一刀>桃香>愛紗>鈴々の順番に。
・何故か総指揮が俺に任されちまった
白蓮は政務のため出陣出来ず、経歴、技能、その他もろもろを買われて抜擢。
・韓仲
デブ。斧持ちはかませ、と言う不文律をキッチリ守ってお亡くなりになった。ちなみに戦後処理中、白蓮から討ち取った将の名は?と質問されて「なんだっけ?」と竜胆は答えた。