真・恋姫†無双・蜀漢の章 ~李厳伝~(凍結) 作:零式カフカ
「なぁ一刀、お前が女たらしなのは理解していた。だがなぁ、その年頃の子を拐かすってなぁ・・・・犯罪だぞ?」
「違うから!?」
あの後、補給物資などの受け取りと一刀、桃香について行って戦いたいとやって来た志願兵に関して白蓮に許可を取り受け入れ等など。出立準備でてんやわんやしていた所に一刀が何処からともなく鈴々と同じぐらいの少女二人を引き連れて来た。
「え、えっと!私、諸葛亮と申します!」
「ほ、鳳統れしゅ!」
諸葛亮と鳳統、そう名乗った二人の少女が事情を説明し始めた。曰く、彼女らは世にも名高い荊州の学者司馬徽の私塾『水鏡女学院』の出身らしい。そこで学んだ事を世の中のために、と考えていた時に一刀と桃香の噂を聞きつけ幽州まで。何日か街の中でその人となりを観察し、この人こそ私たちが仕えるべき主、と意を決したところで俺らの出立の話を聞きつけた。んで街で買い出ししてた一刀を捕まえて随行を申し出た、と言う事らしい。
「成る程ねぇ、愛紗辺りは難色を示しそうだが・・・・水鏡先生の門弟ならそこらの十把一絡げの自称軍師共より役立つだろ」
以前荊州にいた頃、その噂と司馬徽の知恵の一端を垣間見た事がある。戦棋盤で司馬徽と戦った劉表軍の軍師が手も足も出ずにやられたのを見ていた、その後にその軍師が「私は軍事は得意では無いのです!」と胸を張っていたのも覚えてる。
「んじゃまぁ行こうぜ」
実戦経験は少ないだろうが、そこまでを補佐するのは俺の仕事だ。水鏡先生に学んだならば、知識は相応にあるはずだ。そこに足りない実戦経験を身に付けるまで、俺が今までどおりに指揮を執り行う。それで二人が成長し、何れ劉備軍を支える二大軍師となってくれればそれは強みとなってくる。
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「ご主人様・・・・どこで拐ってきたの?」
「ご主人様、まさか・・・・」
「お兄ちゃん、とうとうやったのだ?」
「主様・・・・」
「ハッハッハッハッハッ」
「違うよ!?」
取り敢えず、一刀に二人を連れて紹介するように伝えたら、何やら俺の中で見覚えがあるような光景がそこに。俺と同じ反応をする桃香、愛紗、鈴々、椿、でそれを見て笑う星。
「誂うのはそこまでにしとけ、話が進まんし二人がビックリしてんだろうが」
と、俺が口を出すと全員が静まる。
「私は諸葛亮、字を孔明、真名を朱里と申しますっ!」
「わ、私は鳳統、字を士元、真名を雛里と申します」
二人が自己紹介をすれば一刀や桃香、鈴々、椿、星が二人を囲んで楽しげに談笑を始める。それを見ていれば、いつの間にやら傍らには愛紗が並んでいた。
「兄上、どのようなおつもりであの二人を・・・・」
「鈴々並に小柄な上に武芸の才があるように見えない、か?」
俺の言葉に無言で頷く愛紗。コイツの弱点はコレだ、頭は悪くないが表面上の情報だけで判断を下してしまう。それは時に戦場では致命傷になってしまう事もある。
「戦場で必要なのは武力だけじゃねぇ、椿みてぇな部隊指揮の力、そして今は俺が担当してる戦術、あの二人は何れ軍師として才能を開いてくれると思うね、俺は」
「軍師・・・・」
「戦術、戦略の専門家にして政治方面にも深い知識を見せる、俺たち武将とは別の角度から主君を支える立場ってわけだ」
一刀と桃香が別行動になる事もあるだろう。何れ勢力が拡大し、国として動く事になれば俺や愛紗、星ぐらいになって来れば一軍を率いて戦線一つを丸々あずけられるなんて事もあるだろう。そんな時に複数人の、相当な力量の軍師がいれば取れる選択肢は増えてくる。
「俺の言葉だけで納得出来ねぇんならこれから先の戦いをしっかり見る事だ」
それでも、武に重きを置く者は無意識的に知を軽んじてしまう。だが愛紗は認めた者には、例え自らと正反対であろうが敬意を払えるだけの柔軟性がある。そここそが愛紗の長所である、と俺は考えている。
「はい、兄上」
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結局、志願兵の数は二千に到達した。俺たちが引き連れていたのと併せて三千、まぁこれで何とかやりあえるだろ。と、ある程度意気揚々と北平を出たときに「持っていきすぎだぁああああっ!!!」と言う白蓮の叫びが聞こえた気がしたのは、まぁ気のせいだろう。ちなみに今は、三千の中、後から加わった二千の練兵を行いながら少しづつ賊の出現地域を目指して移動中である。元々いた千人は三百が俺、七百が一刀、桃香の直属兵として賊討伐で実戦経験を積んでるから良い。だが後からの二千は少し前までは農民だったりしたわけで、基礎体力なんかは割とあるがそれ以外はまだまだだ。だから野営中に武器の構え方について俺が指導したり、将からの指示下での動き、乱戦中で指示がもらえない時の動きなどを朱里、雛里が教えている状態だ。
「さて・・・・と、こっからどうするよ?」
地図を見ながら、一刀に問いかければ一刀は驚いた表情でこっちを見てる。
「え?俺に聞くの?」
「お前は御旗だ、だが無力な御旗はゴメンだと愛紗に鍛えてもらったり朱里、雛里に色々教えられてるのは知ってる。下地は出来つつあるんだ、この乱で経験を積め」
そう言って、俺は手に持っていた地図を一刀に見せた。
「このバツじるしは?」
「白蓮から教えて貰った敵の大規模部隊が駐屯していると思われる地点だな、特に汝南に近い此処と鄴南部のこの二箇所、ここのどこかに首魁である張角、張宝、張梁がいると思われる。主力級の敵が集中しているから大功挙げるにゃ最適だが俺らにはまだ早ぇ」
「うん、分かってる・・・・ただ」
一刀が指さしたのは徐州西部、中規模部隊が固まっている区域の中にある空間だった。
「この空間、なんだけどさ・・・・もしかしたら何かあるんじゃないかな、って」
「ほう?」
「いや、俺の気のせいなら良いんだけどさ。基本的に他の部隊は一定の距離を空けてるだけなのに、ここだけは妙にポッカリ空いてるなと思って」
思った通りだ、下地があったのもあるが一刀には間違いなくそれなりに戦術の才能がある。俺や朱里、雛里の予想ではその場所には黄巾の重要拠点がある。兵糧庫か、それ以外の物資を集めた倉庫か。ここの存在に眼を付けた、それに気づくだけの視野があるというのは非常に良い事だ。
「良く気づいた、じゃあ次だ。これが今一刀が指摘した地点の詳細な地図だ、地形から見て何があると予想される?」
「ん・・・・流石にそこまでは」
そこもまた経験で補うべき部分だろう。正直な話、一刀と桃香が同時に危険に晒されたとする。どちらを優先して守るかと言えば『桃香』なのだ。確かに一刀は御旗である、御旗を失えば戦は立ちいかなくなるとも思うが・・・・後々、名が広まるのは桃香の方だと俺は考えている。一刀の『天の御使い』と言う呼称も今でこそ機能しているが、時勢が変われば状況は変わる。何れ俺たちが大勢力となった時、『天の御使い』と『中山靖王の末裔』のどちらが重要かと問われれば『中山靖王の末裔』なのだ。同じ不確かな出自でも、信憑性の高い方が求心力はあるのだ。
だからこそ、一刀には強くなって欲しい。一刀自身を護り、なおかつ一刀が護りたいものを護るために。だから俺はその時が来るまで全力で一刀を補佐し鍛え上げる。まぁぶっちゃけ、ここまで色々と御託を並べては来たがつまるところ一刀の事を俺は気に入っているのだ。一刀の話を信じるならば未来の、しかも乱世などという言葉とは無縁な世界から偶然、望んだわけでも無く連れてこられたこの世界。そこで一刀は自分の意思で、戦う覚悟をしている。そう言うのは嫌いじゃないんだ、俺は。
「ま、それでも及第点だな。俺や朱里、雛里の予想じゃ兵糧庫か物資の倉庫がここにある、ってぇ睨んでる」
「じゃあここの襲撃を?」
「可能ならば、な。無理なら手近な官軍に要請して攻めさせる」
ここなら徐州の陶謙か、もしかすれば南陽の袁術、孫策や陳留の曹操あたりもここまで出張ってきているかも知れない。上手くその辺りの軍勢と連携出来れば上出来だ、最悪手柄を丸々持っていかれるかも知れないがそこは義勇軍として動くからには仕方のない事だ。と達観している。
「とまぁ大まかなところはこんなもんだな、後はそこにつくまでに兵がどれぐらいに仕上がるかだな」
かなり強行には鍛えているが、元々は俺がいた袁紹、劉表、劉璋の三軍での鍛錬方法を模したものだ。だがお世辞にもこの三軍は強い、とは言い難かった。平均よりも少し上、程度の兵に優秀な指揮官がつく事で体裁を保っていたようなものだ。俺の元上司たち直属の兵はさすがと言うべき強さだったが、あの兵たちと同じ調練をするとウチの兵は潰れる恐れがあるから真似出来ない。
「だがまぁ・・・・何とかなるだろ」
士気は上々、兵はまずまず、将は優秀、策もある。
「さぁ、俺たちの戦いを始めようじゃあないか」
TIP集
・北郷一刀
原作主人公。朱里、雛里を突然連れてきた事により誘拐犯扱いに。最終的に魏√と呉√を足したような能力値になる予定。原作とは違うのだよ、原作とはっ!!
・司馬徽
朱里、雛里の師匠的存在。恋姫作品内でも容姿、人格などにあまり触れられていない人物の一人だが作者は何となくロリババアとかそんな感じだと思ってる。
・竜胆の地図
主人公の知人が暇つぶしに大陸全土を回って完成させた詳細な地図(非売品)。限りなく高精度、だが作った当人曰く「適当に作ったのだから多少間違っていても許したまえ」との事。製作者も何れは登場する予定。