真・恋姫†無双・蜀漢の章 ~李厳伝~(凍結)   作:零式カフカ

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第五話『覇王との邂逅』

「まぁそれなりに兵を伏せてある、とは思っていたがな・・・・コイツぁ厳しいだろう」

 

先日、目的地と定めた黄巾の拠点があると推測した地へと来れば、予想通りに拠点はあった。偵察の結果として結構な規模の兵糧庫である事が判明、したのだが更なる問題が発生した。そこに駐屯していた兵数である。

 

「こっちが三千、あっちは一万。真っ向からはやり合いたくねぇがこの兵数差じゃあ打つ手も少ねぇな」

 

比率にして一対三、先ず真っ向勝負はのっけから考えてない。そうすると奇襲、罠などの方法に至るのだが奇襲もこの場合却下だ。せめてもう二千もいれば軍を半分に分け、片側が囮をする間に片側が奇襲、奇襲が成功すれば囮の軍を使って挟撃、など様々な手が打てるが単純に兵数が足りない。となればだ、四方八方に放った斥候の報告次第ではあるが、もし援軍が望めないならば落石などの罠を用いるしか無いだろうな。確か北東に二里程行った所に谷があったはずだ、そこならば罠を用意するのは容易であり、なおかつあちらの兵数の利を潰す事も可能だろう。むしろその時は愛紗、鈴々、星の三人を前線に立てて押し込む事すら可能だ。

 

「竜胆様、斥候が戻って来ました」

「おぅ、報告を聞こうか」

 

一度黄巾の拠点から視線を外し、現れた椿へと向き直って報告を聞く。

 

「現在、五里範囲内には黄巾の別働隊の存在は確認されませんでした。また、北西三里程の地点に陳留太守曹操の軍勢を発見しました」

 

成る程、近かったのは曹操か。噂通りの人物ならば相応の利を説けば手を貸してくれるはずだ。

 

「椿、悪ぃがこのまま曹操の所に向かってここを攻略する間の同盟を申し込んで来い、んで先導して俺らの野営地まで引っ張ってきてくれ」

「御意」

 

一礼し駆けていく椿、から視線を外し再び拠点へと視線を向ける。

 

「さて・・・・劉備軍としての初陣でこれとは、先が思いやられるなぁ」

 

―――――――――

 

「ってわけだ、独力での攻略は難しいと判断したうえで勝手な判断だとは思ったが陳留太守曹操に対しこの拠点を攻略する間に限っての同盟を申し込んだ」

 

とまぁ、説明したところ一刀も桃香も俺の独断は咎めずに、曹操が同盟に乗ってきた場合の対応を朱里、雛里と話し合いはじめた。愛紗辺りは何か言いたげではあった、鈴々はそもそも気にしていないようだし、星は何を考えているかよく分からないところがある。

 

「皆様方、陳留太守曹操様が到着なされました!」

 

案内役として行かせていた椿が駆けながら、声を張り上げている。

 

「んじゃあ俺が出迎えに行って適当に時間稼ぐから、朱里、雛里、迎え入れの準備頼むぞ」

「はい!」

「ひゃいっ!」

 

やや声を裏返らせた二人の返事を聞き、笑いそうになるのを堪えながら野営地の入口まで移動する。その間、元軍属の数名に声をかけ出迎えに随行するように伝えていく。

 

「乱世の姦雄、治世の能臣・・・・ねぇ」

 

曹操に対しての評価として出回っているのがその二つだ。人物鑑定で有名な許劭が評価した、と噂されるその二つ。つまりは乱世においては主君を喰らう程に力を付け、治世においてはさらに国を栄えさせる事が出来る人材、と言う事だ。もし一刀と桃香の道に壁があるのだとしたら曹操、と俺の中にはハッキリとした予感のようなものがある。だからこそ、何れ最大の敵となるであろう曹操を一度この眼で見ておきたいと思うのだ。

 

「さて」

 

姿が見えてきた。金色の髪の少女と、その両隣に黒髪の女性と青髪の女性が侍っている。両隣に侍る二人も相当なものだ、少なくとも愛紗や鈴々と並び立つぐらいの器を感じられる。だが、真ん中の、おそらく曹操であると思われる少女、これが桁違いだ。放たれる覇気は精錬されたものであり、未だ一太守であるにも関わらず既に王者の風格をその身にまとわせている。何れ自分がそうなる事を寸分たりとも疑っていない、もし一刀や桃香の前にコレを見ていたなら俺はこの少女に仕えていたかも知れない。

 

「陳留太守、曹操殿に相違無いか?」

「えぇ、私が曹操よ」

「某、劉備軍が将、李厳と申します。此度は我らの要請に応え参陣いただき感謝致します」

 

途中で引っ張ってきた兵、併せ十名を横一列に整列させ一斉に拱手し一礼する。

 

「いえ、黄巾を討つ事は我々官軍の責務でありそのための援兵の要請ならば応えるのが道理。義勇兵、と言う事で畏まる事は無いわ・・・・その口調もね」

「では・・・・いやぁ、昔取った杵柄で堅っ苦しい物言いは出来るんだが如何せんキツいですわ」

「それが素の貴方と言うわけね、では李厳。貴方の主の下へと案内なさい」

 

一礼し、俺は先導し始める。しかしまぁ、違和感なく喋ってたつもりだが俺の僅かな表情からそれを読み取ったと言うのか?トンデモ無い観察眼だな。

 

「此度の援兵の要請、出したのはもしかして貴方かしら?李厳」

「まぁ・・・・そうなんですがね、良く分かったもんで」

「眼よ。貴方の眼は私を値踏みしようとしていた、自らが援兵として呼んだ相手はいかなる存在であったかと」

 

本当に良く見ている、むしろ曹操自身が自らを呼びつけたのはどんな奴だと観察してたんじゃねぇか?

 

「ま、その話は後ほど暇があればって事で。間も無く天幕、ウチの二人の主君が待ってますんで」

 

―――――――――

 

曹操ノ視点:

 

劉備、北郷たちとの会見の後。腹心であり最も信頼する家臣の一人、夏侯淵と共に細作からの情報と自らの眼で見てきたものを照らし合わせ劉備たちに関して論じていた。

 

劉備軍。

 

細作より報告が上がっていた、幽州で結成された義勇軍。その前身は北平太守公孫賛の客将として活躍していた者たちと、その私兵。

 

中心となる人物は二人。『天の御使い』と呼ばれる異国の者、北郷一刀。『中山靖王の末裔』と名乗る劉備。両者共に能力としては平々凡々、特筆すべきところは無い。

 

「それでも人気、魅力、器とでも申しましょうか。ことその一点に関しては正直、華琳様に勝るとも劣らぬという印象を受けました」

「えぇ、私もそう思うわ」

 

武の方面では関羽、張飛、趙雲、廖化の名が上がる。一騎当千、我が軍最強である夏侯惇と比べて遜色もないと思われる関羽、張飛の猛将二名。機を見るに敏、速さでは先の二人の追随を許さぬ趙雲。先の三人には武で劣るものの、部隊指揮、特に護る事に関しては高水準な能力を発揮する廖化。

 

「正直、武将の層の厚さは義勇軍の範疇を超えているわね」

「はい。もし引き連れているのが義勇軍では無く正規軍、その精鋭であれば相当なものだと」

 

知では諸葛亮、鳳統の二名。北平を出る頃に加入したばかりで実戦経験は無いそうだが、それでも先程の拠点攻略における献策や、この野営地の陣張りは実戦経験の無いものの手腕とはとても思えない。どうやら荊州にてあの水鏡の下で各種学問を学んだらしい。

 

「水鏡門下が一人いればその勢力は大成出来る、と言われていますがそれが二人とは・・・・」

「ふふっ、敵は大きければ大きい程良い。もし劉備たちの道と私の道が相容れぬものならば、何れ戦うことにもなるでしょう」

 

そして最後の一人、李厳。私は最もこの男を警戒している。袁紹、劉表、劉璋の三人の君主の下を渡り歩き、文醜、黄祖、厳顔と各勢力を代表する将にそれぞれ短い期間でありながら直属として仕え、経験を積んで来た歴戦とも言える存在。劉備軍にあっては将であり軍師であり相談役ともいうような奇異な存在。

 

「貴女は李厳と言う男を見てどう思ったかしら?秋蘭」

「・・・・はっ、恐れながら。底が見えませんでした、まるで妖魔でも相手にしているかのような」

「えぇ、そうね。私もそう、そう思うと共に・・・・あの男を欲しいと思った」

「欲しい、ですか」

 

少なくとも文醜、黄祖、厳顔と言った勇将に仕えたからには武勇は確かであり、また軍師並みに知恵が回る。先の軍議にあっても主導権を握っていたのは私でも無ければ諸葛亮、鳳統でも無い、李厳だった。さらにいうならば李厳からは人の上に立つ者の覇気を感じ取れた、中央の将軍である皇甫嵩や朱儁と言った人物が年月を重ねて得たような覇気を既にその歳に身に付けている。

 

「人材として、何より・・・・一人の男として、私は初めて異性に興味を持っているわ。天の御使いとやらにも興味はあるのだけれどもそれ以上に、李厳と言う男に私は間違いなく惹かれている」

「姉者や桂花が聞けば発狂しそうですな」

「えぇ、二人に聞かれれば大事ね」

 

まぁ?既に外から手遅れのような、歯軋りやら何やら聞こえてくるけれども。ふふっ、少なくとも劉備軍と行動を共にする間は退屈せずに済みそうね。

 

―――――――――

 

「ぶぇーっくしょぃ!!!」

「竜胆?風邪か?」

「んなわきゃねぇんだけどなぁ?」

 

だが万一風邪だったら大事だな、明日にはあの拠点を攻めなけりゃねぇんだ。今日は早めに寝て、明日に備えるか。




TIP集

・曹操
ヒロイン候補三号。他勢力からの参戦に、星、椿の両名が後々対策会議を開いた。未来の魏王、後々主人公が『種馬二号』の汚名を着せられる原因となる。

・文醜、黄祖、厳顔
主人公の元上司たち、ようやく名前が公表された。主人公的には優秀な上司、だが全員人格、もしくは素行に問題あり。

・ぶぇーっくしょぃ!!!
魏の猪に喧嘩を売られるフラグ。
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