真・恋姫†無双・蜀漢の章 ~李厳伝~(凍結)   作:零式カフカ

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第六話『折れたァっ!!』

今日は不思議なことがあった。

 

先ずは一つ、拠点攻略のために組んだ曹操軍の将である夏候惇と組んで拠点正面の囮をやってたんだが妙に敵意タップリな眼でにらまれ続けてた。

 

んでもう一つ、今朝の軍議の時なんだが曹操軍の軍師である荀彧からその夏候惇と負けず劣らずの敵意タップリな視線を向けられていた。

 

んで最後、それは今の俺の現状なんだが・・・・

 

「私と勝負しろっ!!李厳っ!!」

 

夏侯惇に喧嘩を売られた、解せぬ。

 

「お前アレだろ?戦いたいだけだろ?だったらウチの関羽とか張飛とか・・・・」

「誰が強い奴を見れば直ぐに喧嘩を売る猪だっ!!!」

 

あぁ、コイツ人の話を聞かない奴だ。どこぞの「オーッホッホッホ」なみに話を聞きやがらねぇ。

 

「私はっ!お前がっ!」

 

もしかしてアレか?大将首を寸分の差で俺が取ったのが気に食わなかったか?アレは互いの得物の間合いの差があってだな・・・・

 

「華琳様に気に入られているのが気に食わんのだぁあっ!!」

「・・・・は?」

 

夏侯惇が様付をするような相手はただ一人、曹操だ。恐らくは華琳というのは曹操の真名なのだろう。で?俺が曹操に気に入られているだと?

 

「・・・・どういう事だ曹操」

「貴方を人材としても、一人の男としても気になっている、と夏侯淵と話していたのを夏侯惇に聞かれたようね」

 

あ、ダメだコレ。止める気が微塵も感じられねぇ、むしろ俺が受けまいとすれば煽るぞコイツは。っつっても俺、タイマンとか嫌いなんだよな。ぶっちゃけあんまり強くねぇんだよ。大分前に戦ったデブみてーなただ力だけの自信過剰な奴ならどうとでも出来るが、夏侯惇とかみたいに真面目に鍛えてる奴に勝てる程鍛えちゃいねーんだ。

 

「まぁ、正直いうならば夏侯惇はこうなると私の静止もあまり聞かないわ。納得させたいのならば、武で語ることね」

 

ニヤニヤと笑う曹操、ああ、これはもはや無理だと悟って俺は、ため息を一つつくのだ。

 

―――――――――

 

「大丈夫か竜胆」

 

唯一、俺の事を心配している一刀が歩み寄ってきた。

 

「あぁ、まぁ怪我しねぇ程度にやるさ」

 

桃香は何故か自信満々に俺の勝ちを信じてて、愛紗、鈴々、星、椿は興味津々な眼になってる。桃香の両脇に陣取る朱里と雛里は桃香が俺の事を我がことのように自慢げに語るのを聞き、俺に尊敬の眼差しを向けている。なんだろう、痛い、総じて身内から向けられるのが純粋な眼差しなのが痛いっ!!

 

「お初にお目にかかる、御使い殿、李厳殿」

 

突如声をかけられ、そちらへと視線を向ける。曹操兵と同じ甲冑を身につけてはいるが、兜は被らず黒い巾を頭に巻いている。歳は三十を超えたぐらい、相当デキる。

 

「某、曹操様に仕える将、李通と申します。此度は当方の主君、同僚がご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません」

 

李通、と名乗った将は深々と頭を下げる。よく見ればところどころに白髪が、あの主君にあの同僚を相手にしていたのでは心労も半端じゃあねぇだろ。

 

「あぁ、いやいやいや。んな畏まるなって、一回ぐらいはこういうの仕方ねぇだろ」

 

むしろ、李通の事が不憫に思えてきた。

 

「そう言っていただければ幸い、ですが李厳殿。夏侯惇殿の武は正真正銘、兗州随一」

「あぁ分かってる、だからこそ計らなけりゃならねぇしここで劉備軍には李厳がいるぞ、って見せつけなけりゃならねぇんだよ」

「成る程、曹操様がご注目なされるだけある。本来、同僚たる夏侯惇を応援するのが筋ではありますがここは李厳殿を応援させていただきましょう」

「あんがとよ」

 

少なくとも、今話した感じでは人柄は誠実、根は真面目、上長を上長として敬う事を知り、こういう人物は部下にも公平に接する事が出来る。あぁ、副官に欲しいよなこういう奴は。椿?アイツなぁ、最初は李通とおんなじだと思ったんだが、最近は俺の書類の添削しながら毒吐くようになってきたんだぜ?俺は、李通みたいに、上長を立ててくれる副官が欲しいんだっ!!(切実)

 

「んじゃま、行きますか」

 

夜鴉を低く構え、相対する夏侯惇を見据える。先程までとはうってかわってその眼は鋭い、まるで獲物を見る鷲を思わせる。相手の武器は剣、通常のモノよりは大きいがそれでも間合いはこちらが優っている。

 

「どうした?来ないのか」

「攻めるのぁ得意じゃねぇんだ」

「ならばこちらから攻めてやろう、でぇりゃああああああああっ!!!」

「っ!」

 

上段からの打ち下ろし、これを受けたら拙い、と俺の本能が語っている。とは言えただ避けるのでは間に合わず、掠る可能性がある。ならばと斜めに受け流し、一度距離を取る。受け流したはずなのに、手が痺れている。

 

「まだまだぁああああああっ!!!」

 

さらに勢いを増し、繰り出される連撃は一撃一撃が必殺の威力を持つ。それを両手で短めに持った夜鴉でとにかく弾いて弾いて弾いて、愛紗や鈴々ぐらい膂力があったり、星ぐらい速度があったり、椿ぐらい受け流しが上手かったりすればもっと楽に捌けるんだろうが俺にはそこまでの技術は無い。ならば今ある札で戦うしか無いのだ。

 

「どうした!?護ってばかりではないかっ!!」

「ウルセぇ!そもそも俺は元々大した武力は持っちゃいねぇんだよ!!」

 

客観的に見積もったって俺の武力は中の上から上の下ぐらい、夏侯惇とかみたいな最前線で大暴れするような連中と張り合えるだけのモノを持っちゃいない。時たま、戦局を動かすために前に出る事はするがそれも一時だけの話だ。

 

「あ」

 

そしてついに、得物を握る手の方が限界に到達した。こっちの得物をはねあげるように放たれた一撃で、夜鴉が宙を舞う。

 

「あぁー、降参だ」

 

天の国では降伏の意思を示す時は両手を挙げる、なんて一刀が話していたのを思いだし両手を挙げてそう宣言した。と同時に弾き飛ばされた夜鴉が地面へと突き立った・・・・ちょっと、柄が曲がってねぇか?

 

「ってぇ!?俺の夜鴉ぅうううううっ!!!?」

 

夏侯惇がドヤ顔して勝ち名乗りとかあげようとしてた気がするがそんなのは問題じゃねぇ、俺の!仕官以来の相棒が!折れたっ!!

 

「のぁああああああっ!!曲がったどころか亀裂までっ!」

「大事なモノだったのか?」

「むぅ、確かにコレは。ここまで壊れてしまうと修繕では済まされませんな、打ち直しとなるでしょうか」

「いや、武器だからいつか壊れる事は覚悟してたんだが・・・・こんなことで壊しちまった事がアレなんだよ」

 

一刀と李通が心配そうに、覗き込んでいる。確かに大恩ある人から貰ったモンだったけどよ、激しい戦でヘシ折ったってんなら仕方ねぇがまさか手合わせ程度で折れるたぁ思わねぇだろ普通。どんだけガチで打ち込んで来てたんだ、夏侯惇め。

 

「悪ぃが一刀、俺ぁこの乱の間ぁ指揮に回らせて貰うぜ。得物がこのザマじゃあ前に出たくても出られねぇよ」

「まぁ、仕方ないかな。曹操さんも、それで納得してくれるかな?」

「えぇ、今回の事は完全にこちらの落ち度。十全の力を発揮出来ぬ者に前に出ろ、と言う程私も人非人では無いわ」

 

流石にこの空気に気まずさを感じたのか、夏侯惇が縮こまっている。

 

「今回の事ぁ他ならん誰でもねぇ、俺の力量不足だ。だからこそ夏侯惇、お前さんにゃあ同盟を組んでる間は俺の分まで前で暴れてもらいてぇ・・・・出来ねぇ、とは言わせねぇぜ?」

 

言外に、それで貸し借り無しだ。と言う含みを持たせれば、夏侯惇もそれを理解したのか真面目な顔つきになる。

 

「うむ!貴様の分まで私が前線で武を振るってやろう!!」

 

うし、夏候惇が俺に対する負い目分しっかり働いてくれるなら予定以上の力を出してくれるだろう。夏候惇は粗忽者ではあるが自分が何かを考えることに向かない、と言う事を知っている。知っているからこそ、策などが必要な状況では献策した者の指示を聞くことに全力を傾注出来る。そして相手の裏を考えない分、義理堅い。わずかな恩義や貸しでさえ、倍以上に返すことを考える。

 

「手慣れたものね」

「昔の上司が似たような人だったんでな」

「成程、ところで武器はどうするつもりなの?先も言った通り、今回の事はこちらの落ち度。武器を打ち直すにしろ新調するにしろ、私の私財から用立てるつもりもあるけれど?」

 

そこなんだよな。今回ので分かったが俺、長柄武器は相性良くねぇんだよな。となればだ、双剣とか、受けを考えるなら長短の二刀流と言うのもアリかも知れない。どちらにせよ、この乱が終わってから考えるしかねぇな。

 

「今のところはあるモノで済ませる、乱の鎮圧が終わって腰を据えたら新調するつもりだ。そしたら請求書でも回すさ」

「そうなさいな、こちらの不手際で良き敵が力を発揮出来ないのでは困るもの」

「・・・・そうかい」

 

やっぱコイツも『この後』が見えてんのかね、まぁそう言う相手がいると分かっているだけでも大分対応は違うモンだ。

 

「そろそろ軍議を開こうや」

「えぇ、そうね」

 

さて、どうしたもんか。




TIP集

・夜鴉
主人公の得物、魏の猪との戦いでご臨終。作中登場回数二回、所持年数三年で折られた可哀想な大刀。

・粗忽者
軽率な者、おっちょこちょいな者を指す。主に夏侯惇、華雄などの猪を指す。

・李通
魏の苦労人にして良識人。物腰柔らか、上長を立て、部下に平等に接する事が出来る人格者でもある。後々、主人公と呉の諸葛瑾の三人で文通仲間に。
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