〈暴食〉のアル   作:ゆうと00

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第18話

 演習場、東門。

 そこにいる生徒達の中で唯一特進クラスであるその少年は、門の真正面を陣取って開始の合図を待ち構えていた。

 本来ならそんな絶好のポイントを他の生徒が見逃すはずもないのだが、一般クラスと特進クラスとの実力の差をしっかり理解している彼らは、けっして口出しすることなく、大人しく少年の後ろ付近で待っていた。

 どぉんっ!

 

「!」

 

 空でけたたましい音が鳴り響いた瞬間、少年の目つきが変わった。

 目の前の門を突き破るようにして押し開けると、真っ先に演習場の中へと入っていった。後ろで他の生徒達も同じように駆け込むのが分かったが、わざわざ振り返って確認するようなことはしなかった。少年にとっては、そんなことをする時間も惜しいのである。

 演習場には目印として、門から演習場の中心までまっすぐ延びる道がある。まずは中心まで全速力で向かい、その付近にあるメダルを独り占めしようと考えていた彼は、得意の風の魔術で自分の背中を後押ししながら、脇目も振らずにその道を駆け抜けていた。

 そのとき、

 

「う、うわぁ! 何だ!」

 

 少年の背後から聞こえてきたその声に、彼は視線だけを後ろへと向けた。

 

「な――」

 

 その瞬間、少年は自分の目を疑った。

 彼の後ろには、彼と同じように道を駆け抜けていく生徒達の姿があった。やはり最初の立ち位置が影響したのか、彼の方が他の生徒達よりも幾分か抜きん出ていた。

 なので彼は、他の生徒よりも離れたところでそれを見ることができた。

 自分達へ向かって倒れてくる、巨大な樹木を。

 

「この――!」

 

 少年は反射的に自分の背中へと押し当てていた風を止めると、転がるようにして道から逸れた。

 まさにそのときだった。

 ずどぉん! 

 

「ひぃ!」

「ぐえっ!」

「がっ!」

「きゃあ!」

 

 成人男性の肩幅の2倍はある太い幹に、放射状に生い茂る立派な枝葉。それが爆発でもしたのかと思うほどに凄まじい音をたてて、道のど真ん中をなぞるように倒れ伏した。

 そしてその樹に、一般クラスの生徒9人全員が巻き込まれた。目の前にいた特進クラスの少年が全速力で道を走っていて、彼らもそれに釣られるように前しか見ていなかったため、後ろから襲い掛かってくる樹の存在に気づくのが遅れたのである。

 あっという間に、10人の中で立っているのは、特進クラスである少年だけとなった。

 

「ど、どういうことだ……?」

 

 自分の体にのし掛かる樹の重さに呻き声をあげる生徒達を尻目に、少年はその樹の根本へと視線をやった。その樹には根っこが無く、幹の途中がズタズタになって途切れていた。

 まるで何かとてつもなく大きな力によって、むりやりへし折られたかのように。

 

「誰がこんなことを――」

 

 少年がそう呟いたそのとき、ふと思い出した。

 先程見た、樹がこちらへと倒れてくる風景の中に、あの目立つ髪の少女がどこにもいなかったことを。

 がさり。

 自分の真横で聞こえた葉擦れの音に、少年はそちらへと顔を向けた。

 今まさに頭に浮かんでいたその少女・アルが、こちらへと走りながら拳を振りかざしていた。

 それを迎え撃とうと、少年はとっさに杖を彼女へと向ける。

 しかし次の瞬間、彼の動きはぴたりと止まってしまった。

 アルの目つきはまるで獲物を狙う肉食獣のようにぎらつき、自分に食らいつかんとまっすぐ見据えている。それは少年が今まで向けられたことのない、もはや殺意と言っても差し支えない敵意だった。

 それをまともに受け取ってしまった少年は背筋が凍り、それが全身に回ってしまったかのように体が動かなくなってしまった。

 それが、決定打となった。

 

 ばきぃ!

 

 アルが振り抜いた拳は、少年の左頬に見事に命中した。彼の体は呆気なく吹っ飛び、無抵抗に地面を転がり、道の脇に生える樹の根本にぶつかってようやく止まった。

 その後しばらく経っても、少年の体はぴくりとも動かなかった。それもそのはず、少年もどこかの誰かと同じように、殴られた瞬間に意識を刈り取られたからである。

 アルはそれを確認すると、安心したように大きく溜息をついた。

 そして踵を返して、森の奥へと進んで――

 

「ちょ、おい! 待てよ!」

 

 いこうとしたのだが、アルの背中に怒鳴り散らす者がいた。彼女はもう一度大きく溜息をつくと、面倒臭そうに振り返る。

 彼女が倒した樹に巻き込まれた生徒達は、その大半が頭を打ちつけて気絶、残りの生徒も太い幹の下敷きになったり、骨折などの怪我のせいで動けなくなったりしている。

 しかし9人の内の1人だけ、樹の下から脱出し、杖を持つことのできる少年がいた。おそらくこの少年が、先程アルの背中に怒鳴り散らした者だろう。

 そんな彼は今、大きく息を荒げながらアルを睨みつけている。脱出はできたものの、無傷というわけにはいかなかったらしい。

 それでもアルは、つまらなそうなその表情を崩すことはない。ちらりと彼の左脚へと目をやると、三度(みたび)大きな溜息をついた。

 

「てめぇ……、どんなインチキしたのか知らねぇが、ふざけた真似しやがって……!」

「ふざけた真似、ね……。全員が前しか見ていなくて、一番後ろにいたわたしのことなんか全然気に掛けてなかったんだよ? 思わず攻撃したくなるじゃない」

「うるせぇ! ふざけたこと言ってんじゃねぇ! ぶっ殺すぞ!」

「ふぅん……。じゃあ、なんでさっき攻撃してこなかったの?」

「……は?」

「さっきわたしは背中を向けてたんだよ? なんでそのときに攻撃しないで、わざわざ声を掛けてきたの?」

「はっ! どうせてめぇは魔術を使えねぇんだろ! だったらわざわざそんなことしなくたって、倒せるに決まってんだろ!」

「――左脚の骨にヒビ」

「!」

 

 彼の左脚を指さしながらアルがそう言うと、彼はあからさまに狼狽した。

 

「骨折しているわけじゃないけど、それでも凄く痛いでしょ? そんな痛みに耐えながら、わたしと戦えるの? 痛みに気を取られないで集中できる? ちゃんと狙いをつけられる? わたしの攻撃を避けられる?」

「て、てめぇ……」

「……うーん、何だかクルスから聞いてたのとは印象が違うなぁ……。クルスの話だと、もうちょっと手に汗握る感じの戦いができるはずだったのに……。せっかくの“特進クラス”だって、何だか凄く呆気なかったし……」

 

 アルの心底残念そうな呟きに、その少年はハッとした。

 この少女はつい先程、自分よりも実力のある特進クラスの生徒を、いとも容易く倒してしまっている。

 彼はちらりと横へ目をやった。すぐ傍にある樹の根本に転がっている、鼻血を流して蹲ったまま動かない特進クラスの少年に、自分の姿を重ね合わせてしまった。

 ぶるりと、彼の体が震える。

 その瞬間、アルは走り出した。少年はすぐにそれに気づいたが、体が震えているために思ったように体が動かせなかった。

 

 ばきぃ!

 

 彼の体は先程の少年と同じようにあっさりと吹っ飛び、同じように近くの樹にぶつかり、同じようにずるずると根本に倒れ込んで動かなくなった。

 アルはそれを確認すると、握りしめた拳を解いた。

 

「……さてと、メダルでも集めるか」

 

 そう呟くアルの目には、道で倒れ伏す10人の生徒などすでに眼中に無かった。

 

 

 *         *         *

 

 

 演習場から少し離れた草原。

 草原のど真ん中に、3人は腰掛けられるベンチがあった。精巧な装飾の施された青銅製のそれは、当然ながら元々そこにあったものではない。シンが緑魔術を用いて作り上げたものである。

 そしてそのベンチに、クルスが脚を組んで優雅に座っていた。その両目は緩やかに閉じられている。彼女の隣にはシンが座り、春の穏やかな陽気にうとうとしていた。

 ちなみにそのベンチが3人用なのは、当然シルバも座れるようにである。しかし当のシルバはそこにはおらず、2人から遠く離れたところであぐらを組んで目を閉じている。

 本人は「精神統一の邪魔になるから」と言っていたが、実際はクルスと同じベンチに座りたくないからだということは明らかだった。彼の後ろ姿を見送りながら、クルスとシンは内心溜息をついていた。

 

「ふふふ」

 

 ふいに、クルスが笑い声をあげた。シンが目を開けて彼女へと視線を向ける。

 

「クルス、どうしたの?」

「ん? ああ、いきなりやってくれるなぁ、って思って」

「やってくれる? 誰が、何を?」

 

 シンが問い掛けると、クルスは笑みを一層深くして、

 

「アル、東門の子達、全員やっつけちゃったみたいよ?」

「――へ?」

 

 あまりにも予想外な言葉に、シンは目を丸くして思わず立ち上がってしまった。

 

「みんな我先にって感じに道の上を走ってたからねぇ、後ろからの奇襲に気づかなかったみたいよ。まったく、初めてだからってみんな浮かれすぎよ」

「いや、だからといって10人を相手に勝つなんて――」

 

 シンは信じられないといった表情だったが、徐々に落ち着きを取り戻してくると「そ、そうか……、うん……」と何やら納得したように何度も頷いていた。

 

「それにしても驚いたね。まさかいきなり仕掛けてくるとは思わなかったよ」

「多分、そっちの方が確実だと踏んだのね」

「確実?」

 

 シンはベンチに座り直すと、クルスの話を聞くために体を彼女の方へと向けた。

 

「今回の演習の参加者は41人。それに対して、メダルの数は全部で100枚。単純に考えるのなら、ただ闇雲に歩くだけでも、他の生徒に出会うよりメダルを見つける確率の方が高いわ」

「成程……、下手に泳がせてメダルを手元に集められるよりも、周りの奴らを一気に倒して悠々とメダルを探した方が確実というわけか」

「そう。とはいっても、もう少しメダルを見つけにくい状況だったら、しばらくの間他の子達を泳がせる方法を採ったでしょうね」

「確かに、メダルはかなり目につきやすいように細工されている。逆に言えば、早くライバルを減らさないと、あっという間にメダルを回収されちゃうってことか」

 

 感心したようにうんうんと頷いていたシンだったが、やがて或ることに気づいた。

 

「……あれ? ってことは今、東門で10人の生徒が転がってるってこと?」

「ええ、そうよ。早く助けてあげなさい。すぐさま命に関わるような子はいないけど、このまま放っておけるほど軽くもないわ」

「まったく……、こんな早くに僕の出番が来るとはね……。何か今年はいろいろな意味で荒れそうだよ……」

 

 ぶつぶつと嘆きながら、シンは杖を取り出して立ち上がる。

 そんな彼の背中に、クルスが声を掛ける。

 

「ああ、そうそう。どうせ行くなら、ついでに南門にも寄ってあげて」

「南門? なんで?」

 

 シンは尋ねながら、南門のある方角へと顔を向けた。

 そして、

 

「え――」

 

 驚きのあまり、言葉を失った。

 クルスもそちらへと顔を向けて、にたりと妖しい笑みを浮かべて言ってのけた。

 

「どうやら、同じことを考えてた子が、もう1人いたらしいわよ」

 

 2人の視線の先にあったのは、まるで空を塗り潰さんばかりの勢いでもうもうと空へと上がる、真っ黒な煙だった。

 その煙の発生源は、演習場である森の一画、ちょうど南門の辺りだった。

 

 

 *         *         *

 

 

 演習場、南門。

 

「こんなもの、か……」

 

 門から森の中心までまっすぐ伸びる道のど真ん中で、ルークはぽつりと呟いた。強風に煽られて白い髪がばさばさと暴れているが、彼はそんなことは微塵も気にする様子もなく、悠々と道を歩いていく。

 こんな見晴らしの良い場所にいたら、誰かに不意打ちでもされそうなものである。しかし今の彼は、不意打ちをされる可能性は限りなくゼロに近いと言って良かった。

 なぜなら、彼と同じく南門から中へと入った生徒9人が全員、彼の周りに転がっているからである。気絶しているのか、皆ぴくりとも動く気配を見せない。

 しかし、そのやられ方が奇妙だった。

 9人の内5人は、まるで全身を炎に包まれたかのようにひどい火傷を負っていた。しかし残りの4人はそれとは対照的に、まるで薄着で雪に埋められたかのように、全身がひどい凍傷になっているのである。

 なぜ同一人物にやられたにも拘わらず、ここまで違いが表れるのか。

 そのヒントは、彼の周りに広がる光景にあった。

 

 彼の左手に広がる森は、燃えていた。

 まるで生き物のように蠢く炎が、真っ黒な煙を吐き出しながら、青々とした森を赤く染め上げていく。炎に呑み込まれた木々は炭へと変わり、自重に耐えきれずにばきばきと音をたてて倒れていく。獣の鳴き声のようにごうごうと響く炎と相まって、まるで炎に蹂躙された森が泣いているような音が響き渡っている。

 それとは対照的に、彼の右手に広がる森は、凍っていた。

 木々も草も地面もすべてが凍りつき、太陽の光を反射して眩しく輝いている。雪のように薄く霜が積もっているその場所は、赤と黒が複雑に絡まり合う向かい側とは異なり、白一色の世界だった。そして、一切の音が絶えた静かな世界だった。

 そしてこの対照的な2つの世界が、強い風を生み出す原因となっていた。一方が炎の世界、もう一方が氷の世界という特殊な環境によって、道を挟んだ両側で大きな気温の差を生み、気圧の差を生んだのである。

 しかしそんなことは、ルークにはどうでもいいことだった。彼は顔に吹きつける風を避けるために、ローブを握りしめて口元を隠すように引き上げた。普段なら風の魔術で自分の周りだけ無風状態にするのだが、演習中である今は、できるだけ魔力の消耗を避けたかった。

 

「……さてと、メダルでも集めるか」

 

 道を歩きながら、ルークはぽつりと呟いた。

 

 

 *         *         *

 

 

 演習場、西門。

 そこでは先程の2つの門と違って、何か波乱が起こっているわけではなかった。

 かといって、北門のように順調に開始したわけでもなかった。

 

「ちくしょう! どこ行きやがった!」

「あのヤロウ! 落ちこぼれのくせに、逃げ足だけは速くなりやがって!」

「ったく、手間取らせんじゃねぇよ! ザコはザコらしく、大人しく俺らにボコられてりゃ良いんだよ!」

「本当だよ! くそっ、悪知恵だけは働きやがって!」

「ああもう、むかつくな!」

 

 開始から10分ほどは経っているのだが、未だに門の中へと入ろうとしない生徒が5人いた。しかも面白いことに、その全員が一般クラスの生徒だった。

 彼らは口々に悪態をつきながら、血眼になって何かを探していた。いや、“何か”よりは“誰か”と表現した方が正しいだろう。

 とっくに分かっているだろうが、その人物とはずばりバニラだった。

 

「まさか、演習が嫌だからって逃げたんじゃねぇだろうな」

「ははは、ありえるかもな! ていうか、よく演習に参加する気になったよな。俺があいつの立場だったら怖くてできねぇよ」

「勇気があるっていうか、無謀っていうか……」

「ていうか、単純に馬鹿なんじゃねぇの?」

「ははは、言えてるな!」

「なぁ……、いい加減諦めて、メダル探しに行った方が良いんじゃねぇか? 特進クラスの奴ら、とっくにいなくなっちまったぞ?」

「ふざけんな! ここまで来て、嘗められたまま終われるかってんだ!」

「メダルなんかどうだっていいだろ! んなもん集めるよりも、1人でも多くぶっ飛ばした方が凄いに決まってんだからよ!」

「何ならおまえだけメダルを探しに行っても良いんだぜ? 『学院一の落ちこぼれを仕留められずに逃げ出した男』って言われても良いならな!」

「な――、別に逃げるなんて言ってねぇだろうが!」

 

 その生徒はそう言うと、再びバニラ探しの作業を始めた。

 時間は、刻一刻と過ぎていく。

 

 

 *         *         *

 

 

 一方バニラは、門から離れた、しかししっかりと彼らの姿を確認できる場所に生えている樹に登り、枝葉に隠れてひっそりと息を潜めていた。

 

「うう……、どうしよ……。みんな凄い怒ってるよ……」

 

 そもそもなぜこんなことになっているのか、話は演習開始の直前にまで遡る。

 刻々と迫る開始の合図を待ちながら、西門の生徒達は誰も口を開くことなく、門の向こう側に広がる森を見据えていた。

 それはバニラとて例外ではなかった。もっとも彼女の場合、他の生徒達のようにどうやってメダルを集めるかではなく、どうやって隠れ場所を確保するかを考えていたのだが。

 そうしている内に、開始の合図が鳴った。空に炎の華が咲き、爆発音が轟き渡る。

 その瞬間、事件は起こった。

 西門からスタートする、バニラを除く一般クラスの生徒5人が、一斉にバニラへと杖を向けたのである。

 

「え?」

 

 考え事に夢中になっていた彼女だったが、本能的にそれを察したのか、即座にその場にしゃがみ込んだ。普段から悪意を向けられているために、人の感情に敏感になっている彼女だからこそできることだった。

 次の瞬間、彼女の頭上を、炎や水や風や石があらゆる方向から横切っていった。もしあのまま立っていたら、かなりまずいことになっていただろう。

 危なかった、と彼女が胸を撫で下ろすのも束の間、

 

「てめぇ、避けてんじゃねぇよ!」

 

 バニラを狙った生徒達の1人である少年の声に、彼女はほとんど無意識に呪文を唱え、杖を地面に向けて魔術を発動した。

 彼女が唯一使える、“タンポポを自在に生やすことのできる魔術”を。

 

「うわっ、な、何だ!」

 

 前回の戦いではリーゼンドを見つける目印となったタンポポの綿毛が、今回は純粋な目眩ましとして働いた。突然地面から現れた大量の綿毛に目を奪われた彼らは、ほんの少しの間だけ、バニラの姿を見失った。

 その隙に、彼女は大急ぎで森の中へと入っていった。背後で彼らの怒り狂う声を聞いたときなど寿命の縮まる想いがしたが、それでも彼女は脚を止めることはなかった。止めたら殺される、と思った。

 そして気がついたときには、彼女は少し離れた樹の上によじ登っていた。

 

 ――人間、必死になれば何でもできるんだなぁ。

 

 そんなことを思いながら、バニラは下へと顔を向けた。

 彼女が今座っているのは、自身の5倍はありそうな高さにある、少女1人難なく支えられそうなほどにどっしりとした樹の枝である。彼女の真下にも葉は生い茂っており、真下から意識的に目を凝らさない限り、そうそう見つかる場所ではない。

 

「よし、できるだけここでやり過ごそう」

 

 樹の幹に背中を預け、バニラは随分と後ろ向きな決意を口にした。


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