〈暴食〉のアル   作:ゆうと00

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第4章 『王都編』
第47話


 この世界における主要都市は、国同士での戦争が盛んに行われていた頃の名残で、今でも高い塀に囲まれていることが多い。中には碌に整備もされずにほとんど瓦礫と化していることも少なくないが、街を出入りする際に兵士による審査を設けている街も存在する。

 イグリシア国の王都・ロンドも、そんな街の1つである。王都だけあって人の出入りが多く、その全員が審査を受けることになるので、特に休日ともなれば外壁に設置された門は多くの人で混雑する光景がよく見られている。手間も掛かるし不便ではあるが、これもひとえに凶悪犯や犯罪を助長する品々を街に入れない、あるいは逃がさないための処置なので文句は言えないだろう。

 

 そんな人の出入りが多いそこでは、その場所ならではの商売が成り立っている。旅人向けの商品を販売する店が幾つも建ち並び、中心地ほどではないにしろそこそこ賑わっている。

 そんな中でもそこならではの店といえば、旅人の足となる馬車や馬を貸し出す業者だろう。巨大な厩舎が隣接されたその店では、馬車や馬だけでなく、それらを運転する御者を雇うことができる。逆に、余所の街から乗ってきたそれらを引き取ってもらうことも可能だ。

 

 そんな店にちょうど、1台の馬車がやって来た。

 

「旦那、着きやしたぜ」

 

 馬車を停止させた御者が呼び掛けると、後ろの(ほろ)から1人の人物が顔を出した。その人物は何かを探すようにゆっくりと辺りを見渡すと、これまたゆっくりとした動きで地面に降り立った。

 日中ともなれば汗ばむ陽気になることも珍しくないこの季節に、その人物は地面に届くほどに大きなコートを身に纏い、さらにはフードで頭をすっぽりと覆い隠していた。その色は燃えるように真っ赤であり、見ているこっちが熱くなってきそうである。

 如何にも悪目立ちしそうな外見であったが、そいつは少しでも目を離すと途端に見失いそうなほどに存在感が希薄だった。仕事柄様々な人間を運ぶ機会の多いその御者は、その赤ずくめを盗み見てほんの少し表情を強張らせた。

 

 と、そのとき、鎧を身につけた屈強な体つきの男が2人、赤ずくめへと近づいてきた。鎧といってもフル装備ではなく、頭部や胸部・腹部といった急所のみを防御する簡易的なものである。

 彼らは王国軍に所属する兵士であり、ロンドにやって来る、あるいはロンドを出ていく者達を審査する職務を担っている。如何にも怪しい外見をしている赤ずくめを相手に、その表情は緊張感を帯びた真剣なものとなっている。

 

「荷物の確認を行う。荷物の口を開けて、中身をよく見せろ」

「…………」

 

 兵士の言葉に赤ずくめは何も答えなかったが、その行動は実に素直であり、袈裟懸けに提げていた布袋の口を開けて兵士に差し出した。

 それを受け取った兵士が、袋の中を覗き込んで中身を確認する。旅人が使うような携帯品や保存食が詰められており、パッと見たところ特に怪しいところは無い。

 しかし兵士が手を入れてそれらを掻き分けたとき、彼の表情が険しいものとなった。

 

 ざっと見ただけでも20個ほどはあるそれは、ガラスのような素材でできた掌サイズの球体だった。もしも無色透明だったら占いで使う水晶玉かとも思っただろうが、これは絵の具を塗りたくったような真っ赤な色合いをしている。

 兵士はそれを手に取り、訝しげに眉を寄せながらじっとそれを見つめる。最初は表面をただ赤く塗っただけかと思ったが、よく見ると真っ赤に染められた煙のようなものが無色透明な球体の中に詰まっているように感じた。

 

「これは何だ?」

「…………」

 

 兵士が尋ねても、赤ずくめは何も答えなかった。兵士の声が聞こえているのかも分からないほどの無反応に、口元が微かに見える以外は真っ赤な姿も相まって、2人の兵士に正体不明の不気味な印象を与えている。

 赤ずくめから返事が来るのを諦めた兵士は、“切り口”を変えた。

 

「全身を真っ赤な服で覆い隠したその恰好……。まさか貴様、〈火刑人〉ではないだろうな?」

「…………」

「奴の“職業”については、我々もよく知っている。そいつが仕出かした“悪行”についてもな。――そんな奴の姿を真似ている奴が、こんな訳の分からない物を持ち込もうとして、我々がすんなり通すと思っているのか?」

「…………」

 

 赤ずくめの正面に立つ兵士が尋問をしている間に、もう1人の兵士がそいつの後ろを陣取った。普通の人間ならば竦み上がっても不思議ではない状況であり、軽い気持ちでの悪戯ならばこの辺りで根を上げるはずだ。

 しかしそいつは、兵士の質問に答える様子が微塵も無い。僅かに覗く口元が動いていないことから、魔術を発動させようと呪文を詠唱している訳ではないことは分かっている。

 それでも、2人の兵士は警戒心を解くことはない。

 

「とりあえず、顔をよく見せてもらおうか」

 

 そしてとうとう、正面に立つ兵士がその言葉と共に、赤ずくめの被っているフードに向かって腕を伸ばした。そいつの背後に立つもう1人も、そいつの動向を注意深く観察している。

 と、次の瞬間、

 

「――――!」

 

 ばきっ! どがっ!

 

 突然動き出した赤ずくめに2人の兵士が反応する間も無く、正面の兵士の鳩尾に右腕が、背後の兵士の鳩尾に左足が突き刺さった。どちらも鎧に阻まれたためダメージはほとんど無いが、その衝撃によって彼らは思わず数歩後退った。

 しかしそのまま地面に転ぶような真似はせず、地面を力強く踏みしめてその場に留まった。そして突然の強行に出た赤ずくめを取り押さえるべく、顔を上げてキッと目つきを鋭くした、

 

 まさに、そのときだった。

 

 ぼっ。

 

「――――ああああああああああああああああああああ!」

 

 2人の兵士の頭部から、突然火の手が上がった。

 彼らは悲鳴をあげながら、必死に炎を消そうと頭を叩いたり体を振り回したりした。しかし炎はまるで意思があるかのように、彼らが伸ばしたその腕を伝って彼らの体を呑み込んでいった。恐るべき早さで体を蝕んでいく炎と格闘している様は、傍目にはまるで踊っているようにも見える。

 しかしそれだけ動きまくっているにも拘わらず、炎は彼らの動きに合わせて揺らめくだけで、がっしりと噛みついたまま離れようとしなかった。それどころか、彼らを食らい尽くさんばかりの勢いでみるみる大きくなっていく。

 

「うわぁ! な、何だっ!」

「魔術だ! 魔術で人が燃えてるぞ!」

「誰か水持ってこい! あいつら死ぬぞ!」

 

 突然の出来事に、門での審査を待っていた人々から悲鳴があがり、門の詰め所から他の兵士が次々と飛び出していく。そしてもはや顔も認識できないほどに激しい炎に包まれている仲間の姿に血相を変え、杖を構えながら2人の下へ駆け寄っていく。

 

 真っ赤なコートに身を包んだ人物の姿は、既にその場から消えていた。

 

 

 *         *         *

 

 

 ロンドをほぼ二分するように流れるデーンズ川は、幅も広く流れも穏やかなため、昔から荷物を運ぶための交通手段に使われ、街の発展に一役買っていた。現在でもそれは変わらず、さらには観光客向けに小舟を出すようになったことで、観光名所としても欠かすことのできない存在となっていた。

 そうなると必然的に、川の周辺には人が集まるようになり、それらを目当てに店が集まるようになる。そして現在では、川沿いの地区は街一番の商業地にまで発展するほどになっていった。

 そんな場所に建つ店の中でも、特に最近話題になっているものがある。川に迫り出すように造られたオープンテラスが自慢のそのカフェは、料理が美味しいのはもちろん、デーンズ川を一望できる景色が素晴らしい。さらには値段も良心的ということで、若者の間ではデートスポットとしてすでに定着しつつあった。

 現に今日は休日ということもあり、店内の席は2人組の若い男女で満杯になっていた。あちこちから楽しげな声があがり、店内に漂う空気もどことなく幸せそうである。

 

 しかしそんな中、オープンテラスの一番端っこ、最も良くデーンズ川を見渡せる絶好の席に、たった1人で座る女性の姿があった。彼女はちびちびとコーヒーに口をつけては、頻りに入口の方へ視線を向けている。

 恋人とデートの待ち合わせと受け取ることもできるが、それにしてはその表情は随分と深刻そうだった。少なくとも楽しい出来事のために待っているのではないその女性は、店の雰囲気からは少しだけ浮いていた。

 そしてそんな彼女のことが気になるのか、先程から周りの客がちらちらと彼女を盗み見ていた。しかし彼女はそれに気づいておらず、あるいは構っている余裕が無いのか、それを咎める様子は無かった。

 するとそのとき、店のドアがチャリンと音をたてて開かれ、新たに1人の男性がやって来た。背が高く筋肉質な体型で顎に髭を蓄えているが、柔らかい目つきをしているからか穏和そうな印象を受ける。

 ウエイトレスである女性が、彼のもとへと足早に駆け寄ってきた。

 

「いらっしゃいませ、お1人でしょうか?」

「いえ、先にこの店に来た女性と待ち合わせなのですが……」

 

 彼はそう呟いて、きょろきょろと店内を見渡した。やがてその視線が店内からオープンテラスへと移っていき、

 

「あ、見つかりました」

 

 彼は笑顔になってそう言うと、そのままオープンテラスへと歩いていった。ウエイトレスは黙って軽くお辞儀をして、静かに厨房へと戻っていく。

 テラスに出た彼は、目的の席へとまっすぐ歩いていく。その席にいたのは先程の女性であり、彼女は彼の姿を見るや否や、素早い動きで席から立ち上がって頭を下げた。

 

「すみません、ヴェルクさん。休日にお呼び立てしてしまって」

「いえいえ、構いませんよ、メリルさん。僕みたいな人間の場合、暦通りに動いている方が珍しいのですから」

 

 1人で待っていたその女性――ロンド警察署の警部であるメリルの謝罪に、ヴェルクと呼ばれたその男は穏やかな笑みを浮かべて返事をした。

 そして彼は、メリルの正面の席に座った。彼女が元の席に座ると、彼はメニューを取り出して目を通し始める。

 

「すみません、こんな店を指定してしまって。前々から気になってはいたんですけど、なかなか1人で入る勇気が無かったもんで……。メリルさん、1人で待ってる間気まずくありませんでした?」

「まぁ、場違いだなとは思いましたけど……。でもヴェルクさんなら、その気になれば相手なんて幾らでも見つかるんじゃないですか?」

「いえいえ、そんなことはないですよ。ほら、職業柄、普通の人と親しくなるのもね……」

「あ……。申し訳ありません、軽率でした」

「良いんですよ、こうしてこの店に入る機会を得られたんですから。メリルさんに感謝ですね」

「……ありがとうございます」

 

 メリルが深々と頭を下げるのを片手で制止しながら、ヴェルクはメニューを眺めて「成程、こういうラインナップなんですね……」などと真剣な表情で呟いていた。

 そんな彼に、メリルが深刻な表情で口を開いた。

 

「そのままで良いので、私の話を聞いてください。――今朝、この街の西門にて〈火刑人〉と同じ姿をした人物が姿を現し、門番兵を襲撃して街に侵入しました」

「……それはまた、随分と穏やかじゃないですね」

 

 メリルの言葉に、ヴェルクはメニューから目を外さずにそう答えた。

 

 〈火刑人〉とは或る魔術師の二つ名であり、そいつは警察組織や軍がマークしているような凶悪犯のみを標的とする、いわゆる“賞金稼ぎ”である。国を跨いで騒ぎになるほどの大きな犯罪を起こした者を何人も捕まえており、その筋では最も有名な魔術師の1人だと言えるだろう。

 ちなみに、懸賞金目当てで犯罪者に危害を加えて拘束する、あるいは殺害する行為は特に犯罪ではない。というよりもそれを期待して懸賞金が掛けられるので、むしろ推奨していると言っても良い。つまり通常、警察や軍に賞金稼ぎだとバレたとしても、それによって何かしら不利益を被ることは無い。

 それではなぜ、先程の兵士は〈火刑人〉だと思われる人物に対してあそこまで警戒していたのか、というと、

 

「通常ならば我々にとって味方だとも言える賞金稼ぎですが、〈火刑人〉に限ってはその考えに疑問を挟まざるを得ません。確かに〈火刑人〉は凶悪犯の逮捕に大きく貢献していますが、奴が殺害したと()()()()者の中には犯罪とは一切無縁の善良な市民も混ざっています」

「もしそれが〈火刑人〉の仕業だとすれば、奴は“賞金稼ぎ”というよりも、むしろ“殺し屋”と表現した方が近いかもしれませんね」

「さらには、〈火刑人〉が請け負うのはそこら辺の悪党とは格の違う、本当に危ない奴らばかりです。そんな連中が自分の命を狙われてることを知って、黙って殺されるはずがありません。過去にも奴が発端となったと思われる大規模な戦闘が何件も報告されており、その中には街1つが丸々壊滅したものもあります。つまり――」

「〈火刑人〉が依頼を遂行しようとすることによって、その場所で大規模な戦闘が起きる可能性が高い、と?」

 

 ヴェルクの言葉に、メリルは真剣な表情で頷いた。

 

「王都であるここでそんなことになれば、被害は相当なものになります。仮に今回の侵入者が〈火刑人〉でなかったとしても、門番兵に危害を加えて侵入してくる時点で、ロンドに対して何か起こそうと考えている可能性が非常に高い。――だからこそ、何かあったときのためにヴェルクさんに協力してほしい、と思っているのですが……」

 

 と、それまで力強く話していたメリルの口調が、後半へ行くに従って明らかに弱くなっていった。

 不思議に感じたヴェルクが彼女を見遣ると、彼女はテーブルに顔を俯かせて悔しそうに唇を噛んでいた。

 

「本来ならば、警察や軍の人間ではないあなたに頼むようなことではないのは、重々承知しています。しかし、私はどうしてもこの街を守らなければいけません。もちろん我々警察も、可能な限り力を尽くさせていただきますので――」

「頼まれること自体は別に構いませんが、はたして僕にそれが務まりますかね……?」

 

 ともすれば弱気にも聞こえるヴェルクの発言に、メリルは大きく目を見開いてかなりのオーバーリアクションで首を横に振った。

 

「そんなご謙遜を! ヴェルクさん以上に相応しい人なんていませんよ! 裏の事情にも詳しく、我々警察にもこうして協力してくれる。そして何より、実力に関しても申し分ない」

「そんな、実力なんて……。僕なんてまだまだですよ」

「またまたご謙遜を。この間の“ギネロファミリー”の壊滅の件、裏であなたが暗躍していたのは知っていますよ、〈狩人〉さん?」

 

 ヴェルクの二つ名を口にすると、彼はばつの悪そうな表情をして視線を明後日の方へと遣った。

 

「……あんなの、たまたまですよ。それに僕は、奴の首に掛けられていた懸賞金が目当てで動いたまでです」

「ふふ、そういうことにしておきます。――それでヴェルクさん、私のお願いを引き受けてくれるでしょうか?」

 

 じっとこちらを見つめながら頼み込むメリルに、ヴェルクはフッと柔らかな笑みを零して口を開いた。

 

「……分かりました。僕としても、自分の住む街が火の海になるのは少々困りますしね。とはいえ、たった1人で動くので限界はあると思いますが、それでも宜しいですか?」

 

 その瞬間メリルの表情が、まるで告白に成功して結ばれた少女のように、パァッと晴れやかなものになった。

 

「ありがとうございます、ヴェルクさん! いやぁ、ヴェルクさんが引き受けてくれて、本当に助かりました! こちらが〈火刑人〉に関する資料となりますので!」

 

 メリルがニコニコと満面の笑みを浮かべて差し出した紙切れを、ヴェルクは苦笑混じりに受け取って目を通す。

 しかしそこに書かれていたのは、年齢や性別が一切分からないこと、体格が割と小柄であること、そして目撃情報を元に描かれたと思われる、真っ赤なフード付きのコートを着ていること以外は不鮮明な絵だけだった。

 

「……メリルさん、もう少し詳しい情報は無いのですか?」

「申し訳ありません。何せ目撃者の全員が、真っ赤なコートに目を奪われて細かい特徴を憶えていないもので……」

「あえて目立つコートを着ているのは、そういう狙いもあるのかもしれませんね」

「ヴェルクさんには重ね重ねご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願いします」

 

 テーブルに頭を擦りつける勢いで頭を下げるメリルに、ヴェルクは苦笑混じりで「分かりましたよ」と言いながら紙切れをポケットにしまった。

 そして、ふと思い出したかのように「そういえばメリルさん」と彼女に声を掛ける。

 

「はい、何ですか?」

「風の噂で聞いたんですが、この街に住む“アル”という路上孤児が警察に殺されたというのは本当ですか?」

「うっ……!」

 

 その瞬間メリルの体がひどく強張り、その表情も不自然に引き攣った。

 ヴェルクがその反応に首をかしげる中、メリルは頻りにキョロキョロと辺りを見渡した後、スッと彼の方へと顔を近づけた。それに倣って、ヴェルクも彼女へと顔を寄せる。

 

「……実のところ、ここだけの話、彼女は死んでいません」

 

 それを聞いたヴェルクの表情に、驚きの色が浮かぶ。

 

「――なんと、そうなんですか。すると彼女は今、牢屋の中ですか?」

「あの、非常に言いにくいんですが……、彼女は現在、私の知り合いの下に引き取られていまして……。上司には“アルは死んだ”ということで通しているんです」

「……なぜそんなことになったのか非常に気になりますが、訊かないことにしましょう」

「ありがとうございます。……ところで、万が一にもありえないことだと思いますが、もし彼女が逃げ出して、あなたの前に姿を現すようなことがあったら――」

「その子の懸賞金は、幾らですか?」

「懸賞金、ですか? ずっとゼロのままですが……」

「分かりました。それでは警察に突き出すようなことはせず、こっそりとメリルさんに報告することにしましょう」

 

 もし懸賞金が掛けられていたら警察に突き出すつもりだったのか、とメリルは思ったが、そもそも“賞金稼ぎ”はそういう職業だから当たり前か、と彼女は1人納得した。

 と、そのとき、ヴェルクがふいに席を立った。

 

「それでは、僕はこれで失礼します」

「分かりました、私も部下の所へ戻ります。“カラス”を1羽付けておきますので、何かありましたらそちらへお願いします」

 

 再び深々と頭を下げるメリルに、ヴェルクも小さく頭を下げてその場を離れていった。カップルで溢れる店内を擦り抜けて、「ありがとうございましたー」と呼び掛けるウエイターの声を背中に聞きながら店を出る。

 そして店先の大通りを歩きながら、ヴェルクは微かに目を細めて、小さな声でこう呟いた。

 

「……そうか、彼女は生きてるのか」


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