第2月も過ぎて第3月に入り、それまで穏やかだった太陽の日差しがにわかに厳しさを見せ始めてきた。夜になっても肌寒さを感じることが少なくなり、植物や生き物達も第1月の頃とは装いを新たにしている。
ここ、イグリシア魔術学院でも、それを感じさせる光景が見られるようになった。今まで上着を羽織っていた教師や生徒が日中にはそれを脱ぎ、時折暑そうに汗を拭う仕草も見られる。特に今日は朝から気温も高く、まるで夏を思わせるほどの暑さに教師も生徒も完全に参っていた。今日は休日なので特に問題は無いが、学院全体が気怠い空気に包まれているように感じる。
そんな中、薄い生地で作られた夏用のローブを身に纏ったクルスが、暑さを微塵も感じさせることもなく颯爽と廊下を歩いていた。
そして彼女は、とある扉の前でその足を止めた。高さは彼女の背丈の3倍以上、幅は両腕を広げた長さの3倍以上はある、非常に大きな扉だった。その大きさに圧倒された訳ではないだろうが、クルスはいつもよりもほんの少しだけ真剣な表情でその扉を軽く叩いた。
中から「どうぞ」と声が聞こえ、彼女は「失礼します」と言ってその扉を開けて中に入った。
その部屋は、とにかく豪華だった。
一般の平民の家が余裕で入るほどに広いその部屋には、とても細かい刺繍の施されたカーペットが床一面に敷かれていた。そのカーペットがクルスの足音を消し、彼女の体重を優しく支えてくれている。
扉の正面には一目で高級品だと分かるソファーが2台、向かい合わせで置かれている。その間には膝下くらいの高さのテーブルがあり、来客はそこで応接できるようになっている。
それらから視線を少し右にずらすと、壁沿いに置かれたガラス張りの戸棚の中に、様々な物が飾られていた。この学院の歴史を簡単にまとめた年表や、当時の貴重な品物の数々、さらには有名な画家に描かせたであろう肖像画なんてものもあった。それだけでも、ちょっとした博物館になるだろう。
反対側の壁に目を向けてみると、人の背丈は優に超える高さの本棚があり、そこにびっしりと分厚い本が並べられていた。見る者が見れば涎を垂らして欲しがるような貴重な本も、結構な数そこに収められている。
そして部屋の奥には、事務仕事をするための机と椅子があり、この部屋の主がそこに座っていた。背後の大きな窓から差し込む光が、舞台の照明のようにその者を照らしている。
「ごめんなさいね、クルス先生。せっかくの休日なのに呼び出しちゃって」
そして部屋の主であるその女性が、優しい声でクルスにそう言った。白髪混じりの赤い髪を携えたその女性は、目尻や口元に深い皺を刻んでにこにこと笑みを浮かべている。その笑顔には、見る者に安心感を与える暖かな雰囲気があった。
彼女こそ、この世界で最も古い歴史を持つイグリシア魔術学院の長である。
「いえ、そんなことはありません。それで、どういったご用件でしょうか?」
そしてそんな学院長に対し、クルスは真剣な表情のまま、非常にきびきびした動作で頭を下げた。普段生徒の前で見せる彼女の姿ならば違和感の無いものであるが、彼女の素を知っているものからすれば、さぞ珍しい光景に映るだろう。
ちなみに学院長は、クルスの素を知っている側である。しかし彼女はニコニコと笑うその表情を一切崩すことなく、クルスを呼び出した“本題”を切り出した。
「ほら、あの事件から1ヶ月くらいになるでしょう? それであの子の様子が気になったんですが、どうですか?」
「……そういえば、もうそんなに経ちますか」
学院長の言う“あの事件”とは、アルが盗難事件の犯人に仕立て上げられた一連の出来事を指している。クルスはどこか遠くを見るような目をして、あの事件の後のことを軽く思い起こした。
学院長のお墨付きによって無罪放免となったアルだったが、だからといって周りの人間が素直にそれに従うわけもなく、しばらくの間アルに対する疑いの目は続いていた。
元々大多数の教師や生徒には嫌われていたので、彼らの疑いが晴れないことは想定内だった。しかし意外だったのが、使用人の一部までもがアルを未だに疑っていることだった。真犯人であるオルファと親しかった者は彼女が犯人だと信じられず、アルが彼女を嵌めたのだと思い込んでいる者も少なくない。
そんな中、特に複雑な感情を抱いていたのが、料理長であるボルノーだった。彼は特にオルファのことを気に掛けていたが、それと同時にアルのことも同じくらい面倒を見ていた。オルファが犯人だと信じたくない、しかしアルがそういったことをする人間でないことも知っている――。そんな感情のせめぎ合いに、彼は幾度となく悩まされているようだ。
「色々と厳しい環境ではありますが、あんなことがあっても変わらず接してくれる友人もいます。本人も楽しそうに過ごしてくれていますし、彼女をここに連れてきた私としては、彼らの存在は非常にありがたいです」
「そうですか、それは良かった。私としても心配していましたけど、やはり心の支えになる人の存在というのは大事ですね」
手を合わせてにっこりと笑う学院長に、クルスもほんの少しだけ口元に笑みを浮かべ、フッとその雰囲気を柔らかくした。
「ところで――」
ふと、学院長が疑問の声をあげた。
「あの子、ここに来てから1ヶ月半くらいになりますけど、その間1回も学院の外に出ていないのですか?」
「へっ? まぁ、そうですね。彼女も特にどこか出掛けたいとか言いませんから、休日もずっと学院で過ごしていますが――」
「それはいけません!」
すると突然、学院長が険しい表情になって立ち上がり、力強くそう叫んだ。内心かなり驚いたクルスだったが、学院長の手前表に出すのはどうにか堪えた。
「若い女の子が休日もずっと学院に閉じ籠もるなんて! もっと外に出て、色々なものに触れるべきです!」
「……はぁ、そうですか」
元々ロンドでストリートチルドレンだったアルならば、今更心配しなくても大丈夫なほど色々なものに触れているのでは、とクルスは思ったが、学院長の手前表に出すのはどうにか堪えた。
「それにせっかく心の支えになってくれる友人がいるのですから、友人と楽しく街にお出掛けなんてことがあっても良いでしょう?」
「確かに、それはそうですね」
「今日はせっかくの良い天気ですし、その友人達と一緒にロンドに出掛けるのはどうですか? きっと彼女達にとって、楽しい時間になることでしょう」
学院長の言葉に、クルスは考え込む。確かに普段は周りから敵意を向けられているアルにとって、たとえ本人がそれを気にしていないとしても、友人達と気兼ねなく過ごせる時間というのは必要かもしれない。
とはいえ、問題が1つ。
「彼女をここに連れてくるとき、警察にいる後輩に協力してもらって、アルは死んだことにしてもらっているんですよね。なので、もし警察に彼女の存在がばれたら、さすがにちょっとまずいことになるかと……」
実際には“ちょっと”どころではなく“かなり”なのだが、生憎それを指摘できる人物はこの場にいない。さらに言えば“協力”ではなく“強制”なのだが、残念ながらそれもこの場ではスルーされてしまった。
「あら、そうなんですか。……そうね、少し待ってくれますか?」
学院長はそう言うと立ち上がり、壁際にある洋服箪笥へと歩いていった。その扉を開けて上半身を中に突っ込み、がさごそと中を物色する。
そして、
「あら、これなんか良さそうじゃない? これを着れば、警察の人達にも気づかれずに済むわ」
そう言って学院長が取り出したのは、薄手の真っ赤なコートだった。頭をすっぽりと覆い隠すフードもついているので、アルの鮮やかな緑色の髪も隠せるだろう。
しかし、
「……少々、目立ちませんかね?」
「あら、そうですか? 良い色だと思うんですけど」
きょとんとした表情で首をかしげる学院長に、クルスは戸惑うような笑みを浮かべた。
他の色は無いものか、とクルスができるだけ自然な動きで学院長の背後にある洋服箪笥を覗き込むが、半分ほど開いた扉の向こうには、学院長が今持っているような真っ赤な服ばかりがズラリと並んでいた。
そういえば学院長は無類の赤い物好きだったか、とクルスは思い出し、それと同時に絶対に目立つ行動はしないようにアルに強く言い聞かせることを心の中で誓った。
つまりクルスの中では、アルを街に連れて行くことは決定事項だった。
「……そうですね。きっと彼女にとって、良い時間となってくれるでしょう」
「帰ったら、ぜひとも話を聞かせてくださいね」
穏やかな空気の流れる部屋にて、クルスと学院長は互いに顔を見合わせて優しい笑みを浮かべていた。
その笑みはまさに、子供を見守る親のそれだった。
* * *
学院の敷地内は、外と同じく一面芝生に覆われている。青々と輝き空へ向かって雄々しく伸びていくその様子は、夏がそこまでやって来ていることを予感させる。そしてそんな芝生は、手入れを任されている使用人達にとって秘かな悩みの種でもあった。
しかし現在、その芝生のごく一部、ちょうど学院の北側に位置する広場は、そんな青々とした風景など見る影も無くなっていた。地面が掘り返されて滅茶苦茶になった芝生が真っ白に凍りつき雪に埋もれるという、まるでそこだけ冬の雪山のような天候にでもなったかのような有様だった。
そしてそんな雪景色の中心に、1人の男子生徒がいた。彼はこの雪景色の中、全身に汗をびっしょり掻き、膝に手をついて大きく肩を上下させて息を荒げていた。
「はぁ――はぁ――、よし、もう一度……」
その男子生徒・ルークはぽつりと呟くと、ゆっくりと立ち上がって杖を握る右手に力を込めた。そして囁くように呪文を唱えると、杖をまっすぐ前へと向けた。
すると、杖の先端で小さな風が生まれた。まるで嵐のようにごうごうと暴れ回り、しかしけっして周りにはそよ風1つ感じさせず、球体で渦巻きながらその場に留まっていた。風には小さな氷の粒が混ざっており、太陽の光を反射して星のようにキラキラ輝いている。
そんな風の塊が、杖の先端から放たれてまっすぐ前へと飛んでいった。風の塊はしばらく宙を走って雪景色を抜けていくと、未だ青々と茂ったままの芝生に着弾した。
すると次の瞬間、まるで爆発するかのように風の塊が大きな音をたてて膨張し、辺り一帯が猛吹雪に襲われた。青々としていた芝生もあっという間に真っ白に染まり、周辺の空気も一気に冷やされて薄いもやが掛かる。
一時的とはいえ周辺の天候を変えるほどに強力な魔術など、とても一介の学生で扱える代物ではない。もしこの光景を教師が見ていたら、おそらくほとんどは手を叩いて称賛するだろう。
しかし当のルーク本人は、目の前の光景に苦い表情を浮かべるのみだった。
――威力は及第点だが、やっぱり早さが足りないか……。こんなに時間を掛けてたら、相手に反撃されてしまう……。
呪文を唱え終わるまでに1秒弱、魔術が発動してから風の塊を放つまでに2秒弱、放たれてから着弾して爆発するまで3秒弱。
魔術の威力を考えれば、充分に優秀だと言える早さである。しかし彼の想定している相手では、この時間ですら命取りとなってしまうに違いない。
――それに“彼女”なら、この程度の威力なんて簡単に防ぎきるだろうね……。
元々ルークは、努力を怠らない生徒だった。休日にも図書室で勉学に励み、魔術の腕も磨いてきた。彼がこの学院で特進クラスの1位であり続けられたのも、彼自身の才能もさることながら、こういった努力の賜物と言っても良いだろう。
しかしここ1ヶ月、その努力に拍車が掛かってきた。特に魔術の鍛錬は熾烈を極め、平日は授業が終わったらすぐ、休日はそれこそ1日中、魔力が底を尽きるまで鍛錬を続けている。
それもこれも、1ヶ月前にとある少女に手酷くやられたことに端を発する。
オルファ。
この学院に給仕として潜入していた少女。
特進クラス1位のルークを、あっさりと倒してみせた少女。
――もっと、もっと強く……!
ルークの頭の中に、自分を倒すときのオルファの余裕たっぷりな笑みが浮かび、彼はギリッと奥歯を噛みしめた。心の中で決意を新たにし、その手に握りしめていた杖にも力を込める。
そして小さく口を開いて再び呪文を唱えようとした、そのとき、
「おーい、ルーク! こんな所にいたんだね――って、寒っ!」
自分を呼ぶ呑気な声に、ルークは険しかった表情をフッと和らげてそちらへ顔を向けた。アルが手を振って、そして寒さに頬を紅く染めてこちらへと駆けてくるのが見えた。
そんな彼女は現在、ルークが今まで見たことのない、地面に裾が届くほどに大きい真っ赤なコートを羽織っていた。遠くからでも目に付く色鮮やかなエメラルドグリーンの髪も、そのコートのフードに覆われてその姿をほとんど隠している。
「アル、その格好はどうしたの? 今日は暑いくらいだから、そんなコートは必要無いと思うんだけど」
「わたしもそう思ったんだけどさ、こっちも色々都合があってね。――ところでわたし達、これからロンドに遊びに行くんだけど、ルークも一緒に来る?」
「ロンドに? これまた珍しいね。外に出掛けたことなんて、僕の知る限りじゃ今まで無かったはずだけど」
「学院長からの提案で、アルと親しい人達で街に遊びに行くことになったのよ。この子にとっても、良い気分転換になるでしょうし」
ルークの疑問に答えたのはアルではなく、彼女から少し遅れてこの場にやって来たクルスだった。彼女もアルと一緒に出掛けるのか、普段の学校指定の紫色のローブとは違う、カジュアルで涼しげな装いとなっている。
そして彼女の背後に隠れるようにして、これまた私服姿のバニラの姿があった。
「お、おはよう、ルークくん……」
「おはよう、バニラさん。バニラさんも、アルと一緒に街に出掛けるの?」
「うん、せっかくだから……。ルークくんも一緒に行かない? きっと楽しいよ」
学年でトップのルークに、学年でワーストのバニラ。
例の事件で一緒に捜査をして以来、ほとんど面識の無かったこの2人も以前に比べてよく話すようになった。とはいえ、顔を合わせたら軽く声を掛ける程度のものであるが、女子生徒達にとってはそれだけでも羨ましいらしく、バニラは彼女達の嫉妬に晒される日々を送っている。
「せっかく誘ってもらって悪いけど、今日は遠慮させてもらうよ。練習しておきたいことが幾つかあるんだ、今日はそれに費やしたい」
「今日も自主練習? ここ最近、毎日やってるよね。たまには休まないと、体が保たないんじゃない?」
心配そうに眉を寄せるバニラに、ルークはフッと柔らかい笑みを見せた。
「大丈夫だよ、バニラさん。――それじゃアル、久し振りのロンドを楽しんできてね。僕としては、アルにはまた練習の相手を頼みたかったところだけど」
「ははは、それはまた今度ね」
手を振ってその場を離れようとするアル達に、ふとルークが思い出したように「待って」と呼び止めた。
「クルス先生、ロンドまでは馬車で向かうのですか?」
「ええ、そのつもりよ。出掛けるには少し遅い時間だから、他の人達に借りられてるかもしれないけど」
「何なら、僕の使い魔のブラントをお貸ししましょうか? 彼だったらロンドまであっという間ですよ?」
ルークの提案に、3人はそれぞれ違う反応を見せた。クルスは名案とばかりに手を叩き、アルは嬉しそうに顔を綻ばせ、バニラは慌てた様子で目を丸くしていた。
「そんな悪いよ、ルークくん! 白魔術の“召喚”って、凄く魔力を消耗するんでしょ?」
「使い魔と強い絆で結ばれるほど、魔力の消費は少なくなるんだよ。僕とブラントは使い魔の契約を結ぶ前から一緒にいるからね、ほとんど魔力を消耗せずに呼び出せるんだ」
ルークはそう言って杖を取り出すと、誰もいない地面へとそれを向けた。真剣な顔つきになり、聞き取れないほど微かな声で呪文を紡ぎ出す。
すると突然、地面に複雑な模様を刻む魔法陣が現れた。やがて魔法陣は強烈な光を放ち始め、その光の中から巨大な生物の影が浮かび上がる。
そうして現れたのは、真っ赤な体が目にも鮮やかなドラゴン・ブラントだった。背中に立派な翼の生えたその姿は、幼いながらも生物の王者を思わせる風格がある。やはり火竜の中でも最上種に位置するヘルドラゴンだけはある、といったところか。
「おぉ、久し振りだね! 演習のとき以来かな?」
アルは満面の笑みでブラントに駆け寄っていくと、その巨大な体に抱きついて頬をスリスリとその肌に擦らせていた。
一方ブラントは、そんなアルに対してどこか怯えているような仕草を見せていた。演習のときにアルが自分に襲い掛かってきたことを、未だに引きずっているのだろうか。
「ブラント、アル達をロンドまで送ってくれる? 帰りもお願いしたいんだけど」
しかしルークがブラントに話し掛けると、即座に彼の方を向いて、了承を示しているのか「ガウッ!」と大きな鳴き声をあげた。小刻みに体を震わせ、ちらちらとアルを気にしながらではあったが。
「それじゃ宜しくね、ブラント!」
アルはそう言うと真っ先に地面を強く蹴って跳び上がり、ブラントの背中に飛びついてそのまま頭上へとよじ上っていった。ブラントは若干嫌そうな顔を見せたが、特に拒絶することなく受け入れている。
しかしバニラとクルスの2人は、そんなアルの姿を眺めているだけでブラントに乗ろうとしなかった。
「悪いけどルーク、私達を彼の背中まで運んでくれないかしら? アルと違って、私達じゃ背中に飛び乗れないのよ」
「ごめんルークくん、お願い」
いくらブラントが幼いとはいえ、背中までの高さは彼女達の頭を優に超えている。普段ルークも、自分が乗るときは風の魔術で自分を背中まで運んでいた。
「え? でもクルス先生……はい、分かりました」
ルークは一瞬だけ不思議そうに首をかしげて何か言いかけたが、すぐに気を取り直して杖をクルス達に向けた。
それに合わせて2人の体がフワッと浮き上がり、ブラントの背中へと運ばれていく。
「よーし、それじゃ出発進行!」
アルが空を指差してそう叫ぶと、ブラントが「ガウゥッ!」と応えて大きく翼をはためかせた。強烈な風が周囲で巻き起こり、地面にいるルークの髪がバサバサと暴れ回る。
そしてアル達が一瞬だけ下に引っ張られるような感覚に襲われた次の瞬間、ブラントの体がブワッと浮き上がり、みるみる地面から離れていった。あっという間に学院を取り囲んでいた塀の高さを超え、その向こう側に広がる草原が一目で見渡せるほどになった。草原にちらほらと生えている木々も、草原を真っ二つに割るように流れる川も、まるでおもちゃのように小さく見える。
そしてブラントのいる高さが学院の“白の塔”の屋根を超えた瞬間、上へと進んでいたブラントがその体を地面と平行にして、地平線へと向かって大きく翼をはためかせた。