救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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いやー、最近また面白いヒロアカ小説を見つけてちょっとテンションが上がってます!
…違いますよ?別に自分の駄文から目を逸らしたくて読専になろうとか思ってませんよ?
ちゃんとこの小説最後まで頑張って書きますからね?

てなわけで二十七話です、どーぞ!


第二十七話 応援団ってとてもかっこいいと思うんだ俺

 

「やぁ、衝君。一回戦突破おめでとう。改めて君が強くなったことを確認することができてボクはとてもうれしいよ。」

 

「ちょっとまってなんでお前がここにいんの。」

 

 

ニコニコと

 

こちらを視て嬉しそうに声をかけて来た少女、傷無恋のその姿を見て、若干嫌そうな表情を浮かべながら、半ば反射的になぜ彼女がここにいるのかを問うたのは

先ほど一回戦で負った傷をきっちり治癒してもらってから観客席へと戻ってきた五十嵐衝也である。

 

1-Aクラスメートによる医務室突撃事件のそのあと。

自分を見舞いに来てくれた友人たちにお礼を言ったりおちょくったりした衝也は、皆が観客席に戻った後、少しの間だけ体育祭会場を散策していた。

理由は単純に、自身の対戦相手であった轟に対して少しだけ話したいこと、そしてやっておきたいことがあったからだ。

だが、いくら会場中を探しても轟は見つからなかった。

かぐわしいたこ焼きのソースのにおいも、甘いバニラの香りも、よだれをたらしながらも必死に我慢しながら彼を探したというのにである。

意を決して轟なら間違えて入りそうという本人に大変失礼な理由で女子便所の中へ「轟ー!いるかー!」と声をかけたというのに、そのすべてが骨折り損になってしまったというわけだ。

そんなこんなで、轟はいったいどこへ行ってしまったのだろうと首を傾げながらも一旦観客席へ戻ってほかのクラスメートの試合を見に行こうと足を進めた衝也。

そして、観客席に戻ってきた衝也が目にしたのは先ほど自分にとって最も迷惑な置き土産を置いて帰ったと思っていた傷無恋が、ニコニコと手を振っている姿だった、というわけだ。

本人からしてみればやっと帰ってくれた疫病神がいつの間にか戻っていた気分に等しいだろう。

事実その表情にはありありと嫌そうな雰囲気が醸し出されている。

 

「おや、これはまたずいぶんと嫌そうな表情をするなぁ衝君。君を応援するためにわざわざ先輩たちの追求も振り切ってここまで来たというのに…」

 

「来るな、帰れ。お前のせいでこっちは大変だったんだよ。」

 

「『ボーイフレンドの応援に行かなければならないのです』と先輩に報告してまで戻ってきたというのに…」

 

「帰れ!今すぐ帰ってその言葉を訂正しに行け!!お前それ風評被害に当たるからな!!」

 

「そこまで言うかい衝君…でもそんな君でもボクは愛せるよ!さぁ!一回戦で受けた傷をボクが癒してあげようじゃないか!ボクの胸に飛び込んできてくれたまえ!BBAのキスなんかよりももっと情熱的に癒してあげるよ!」

 

「お前のリバーにブローを決めてもいいのなら飛び込んで行ってもいいぞ…」

 

「愛情表現が辛辣だね、ボク以外にやったら死んじゃうからやめておくんだよ?」

 

「…もう、いいわ…疲れる」

 

「じゃあその疲れを癒すためにもボクの胸に飛び込んできたまえよ!優しく激しく抱きとめるよ!」

 

「……」

 

「…さすがに無視はつらいなぁ。」

 

「じゃ、じゃあ代わりにオイラを「できれば近寄らないでくれるかな峰田君。君のことは嫌いじゃないんだが、生理的に無理なんだ、すまないね。」……」

 

 

どれだけツッコんでもどこ吹く風と笑いながらボケ?続ける恋にがっくりと肩を落として諦めの表情を見せる衝也。

そんな二人のコントのような掛け合いに思わずあきれ半分笑い半分な表情を浮かべるクラスメートたち。(一部のブドウ球菌なんかは恋の『情熱的に癒す』という単語に過敏に反応したりはしたが…。)

 

「さぁ衝君。そんなところに座ってないでさっさと座ったらどうだい?君のためにわざわざ隣を」

 

「葉隠、悪ぃけど隣に座らせてもらっていいか?」

 

「OK!全然大丈夫だよ!」

 

「さすが衝君迷いがない!…チッ。」

 

笑顔で自分の隣の席をたたく恋をガン無視して彼女の上段の列にいる葉隠の隣へと腰かける衝也。

その様子に恋は笑いながらも 小さく舌打ちをしていた。

 

「五十嵐さっきぶりー!来るの遅かったけどどっか行ってたのー?」

 

「おう、芦戸さっきぶり。まぁちょっとだけ会場内をぶらり旅してきた。それと切島と約束したたこ焼きの屋台探しに」

 

「だーから体育祭が終わった後に買ってやるって言っただろーが。」

 

「その間に売り切れないか見に行ってたんだよ!」

 

「おもちゃ待ちきれない子供かよお前は…」

 

クワッ!と目を見開いてそう言葉を返す衝也に若干呆れた表情でツッコミを返す切島。

と、そこまで答えてから衝也は何かを思い出したのか、ふと視線を改めて切島の方へと向けた。

 

「ん?あれ、ていうか切島。お前もう試合は終わったのか?確か俺の次だったよな試合。」

 

「ああ、それなら…」

 

「ちょ、待てよ五十嵐!切島の前にオイラの試合もあっただろうが!?」

 

「その通りだぞ五十嵐君!キチンとトーナメント表を確認して試合に臨まないと先ほどのように不戦敗になってしまう危険性がある!もう一度しっかり組み合わせを確認しておくんだ!特に君はただでさえ奇行が目立つのだから、これ以上のミスをしないよう細心の注意をするべきだろう!?このままではヒーローの方々から指名が来なくなってしまうぞ!?せっかくあそこまで素晴らしい想いとそれに見合うだけの実力があるのだからもう少しその奇行を治してだな…」

 

「いや、だって峰田がいる試合なんて試合じゃねぇし…」

 

「おーう、辛辣だね、五十嵐君…」

 

衝也の言葉に切島の後ろから現れた峰田と飯田に抗議の意を示されるが、それをこれまたガン無視して割とヒドイことを言う衝也。

その言葉を聞いた葉隠が思わずといった様子でつぶやきを漏らすが、対する衝也は首を横に振った。

 

「いやいや、そういうわけじゃなくてだな葉隠」

 

「?」

 

「飯田と峰田とじゃいかんせんフィジカルが違いすぎる。あれだけ小柄な峰田が飯田の蹴りをまともに喰らったらすぐに勝負が決まっちまう。どうせ、開幕早々飯田があの…えーっと…何とかバーストかまして峰田を場外まで吹っ飛ばして終わりだったんだろ?」

 

「…おぉ~、すごいね、ほとんど正解だよ!」

 

葉隠の感心したような口調に衝也はやっぱりといった風にため息を吐く。

 

そう、衝也の言った通り、飯田と峰田の試合は前試合とは比べ物にならないほどしょぼい戦いだったのだ。

 

 

主に峰田が、である。

 

一回戦第三試合

 

『よっしゃー!やってやるぜこの野郎!覚悟しやがれこのめが』

 

『レシプロバースト!』

 

『ねぇぇぇえ!?』

 

開始早々

 

半ばやけくそ気味ではあるものの覚悟を決めた峰田が頭のモギモギに手をかけたが、その瞬間飯田のレシプロの加速と同時に放たれた蹴りであえなく退場。

その試合時間、わずか6秒弱というショボすぎる試合となってしまったわけだ。

あまりのその決着の速さに峰田に降り注ぐ『ドンマイコール』は、今後の体育祭でも語り継がれていくだろう。

 

「ま、峰田のフィジカルの低さはその体つきで一発でわかるからなー。それでも対応策がないわけじゃねぇけど…峰田じゃほぼ無理だろ、いや、絶対無理だな。」

 

「か、勝手に決めつけんじゃねぇよ!オイラだってなぁ!やる時はやるんだからな!?」

 

「やる時にしかやれないんだったらヒーローなんてやめちまえこのわいせつブドウ。どんな時でもやれるようになんなきゃ誰も救えねぇだろうが。だからお前はクソなんだよ。一片人間として人生をやり直せこの変態ブドウ球菌。」

 

「……」

 

「…容赦ないねぇー。」

 

「俺、嫌いな奴はとことん突き放すタイプなんだ。」

 

「よく本人の前でそんな言葉いえるなぁおい…」

 

衝也の言葉に負けじと反論してきた峰田に怒涛の追撃をかましていく衝也。

言われた当人が真っ白になって動けなくなってしまうほどのその追撃に少しだけ口元を引きつらせる葉隠と瀬呂。

それだけ峰田のことが気に入らないということだろう。

理不尽の極みである。

瀬呂と葉隠の心の声が『ドンマイ』でシンクロした瞬間だった。

 

「…とまぁそんなかんじで峰田が飯田に瞬殺されるのはあらかたわかってたんだけど…切島の方ももう試合は終わったのか?」

 

「ああ、まぁ…な。」

 

「うーん、そうかー。正直発目のやつならもっと時間かけて売り込んでくと思ってたんだが…」

 

「そう!そうだよ衝也!」

 

「うおぅ!?ど、どうしたんだよ切島いきなり…ていうか顔が近い離れろ臭いぞお前。」

 

「あ、ああ悪いな…ってちょと待て、今お前最後になんて」

 

「で、何がそうなんだよ切島君…とはいってもあらかたは予想がつくけど…」

 

切島の問いかけから逃げるように話をもとに戻す衝也。

それに若干戸惑いつつも切島は、少しだけ表情を暗くしながら衝也へと話をつづけた。

語られたのは、ちょっとアレすぎて聞く人が聞いたら少しだけ笑っちゃうかもしれないような発目と切島の試合の話だった。

 

『ここまで来たんですから、ここは正々堂々と、対等な立場で戦ってみませんか』

 

試合直前、切島にそう話を持ち掛けた発目その言葉に感動した切島は、彼女のその提案を二つ返事で了承した。

切島の男らしく、あまり人を疑わない性格を利用して自身の発明品を売りつける発目。

最早あの試合は試合などではなくただの発明品の説明会と化していた。

衝撃を吸収するクッション式機械に、空中移動を可能にするバックパックに自動で相手の攻撃の軌道を読み取り的確に防御をするセンサー付きの盾などなど

様々な発明品を紹介するだけしてあっさり場外へと退場した発目。

とどめに

 

『切島さん、あなたのそのアツクルシイ性格を利用させてもらいましたよ』

 

とさわやかな笑顔で言い切ったのだ。

 

最低である。

 

これで相手が爆豪だった日にはとんでもないことになっていただろう

 

「なんとまぁ…アイツらしいというか…ある意味対戦相手が切島でよかったというか。」

 

「いや、まぁ、騙された俺もわりぃとは思うけどさ…それにしたってあの発目っていうやつ…一体何者なんだ?」

 

「凄まじいほどに利己的な超天才。」

 

「利己的…か」

 

確かにそうかも、という風に顎に手を当てて考え込む切島。

それを聞いていたのか、衝也のすぐ下列の席に座っていた恋が少しだけいぶかし気な視線で衝也の方へと振り返ってきた。

 

「…あの発目という子と衝君は知り合いなのかい?」

 

「まぁな…つっても知り合ったのはつい最近だけど」

 

「ほへー、やっぱりそうなんだー…一体どういったご関係なの?」

 

「うーん、俺の予想から行くとだな…やっぱり公然の目の前で抱き着かれるような関係となると必然的に」

 

「ちょーっとこっちに来てくれるかな上鳴君…?俺とお話をしようじゃないか…。」

 

「あ、いや、うん…なんでもない!超なんでもない!めちゃくちゃなんでもない!」

 

葉隠の質問になぜか上鳴が答えようとして、しかもとんでもない返答をしようとしているのを見て衝也はニッコリと笑いながら上鳴の方へと顔を向ける。

その背後に出て来たどこかの母親と同じような般若を目にして思わず支離滅裂な日本語でお断りをする上鳴。

どうやら五十嵐家の血はしっかりと受け継がれている様子である。

 

「…んー、まぁ、どういう関係ってのは一概には言えんが…一番しっくりくるのは科学者とモルモットかなぁ…」

 

「ああ、やっぱりそうなんだ…」

 

「た、大変そうやね…五十嵐君…。」

 

衝也の遠い目をしたその言葉に納得するようにうなずく緑谷と麗日。

彼らも騎馬戦で少しの間だけチームを組んでいたからだろう。

彼女の性格の一旦が分かっているのか、少しばかりの同情の視線を向けている。

 

「でも、一体どういう経緯で発目さんと知り合いになったの?」

 

「んー、ちょっとだけ前にパワーローダー先生に会うために工房によった時に…思えばそれが悪夢の始まりだったんだろうな…やだなぁ…この体育祭の後また実験台にされるんだよなぁ…やだなぁ…」

 

緑谷の問にそういってがっくりと肩を落として言いる衝也のあまりの暗さに障子が不思議そうに首を傾げた。

 

「?そんなに嫌なのか?確かに普通とは言い難い奴のようだが…」

 

「いや、俺は少しだけ理解できるぞ…悪い奴ではなさそうだけど、少なくともいい奴でもねぇ…」

 

そういって障子の言葉に返答する切島は先ほどの試合を少しだけ振り返っているのか頷きを返している。

 

「障子…あいつはな、初対面のやつに平気でスタンガンを当てて『うーむ、さすがに気絶はしませんか…よし、今度はもう少し電力上げてみますか被検体一号さん!』っていうような人間なんだぞ…そんな奴の実験台にされてうれしい奴がいるか?断言してやろう、そんなことされてうれしいのはマゾと峰田だけだ」

 

「……」

 

まるで実体験が伴っているかのような衝也の言葉に何も言えなくなってしまう障子。

だが、衝也はふと長い溜息を吐いた後、ゆっくりと顔を上げてポリポリと後頭部を掻いた。

 

「…でもまぁ、切島の言う通り悪い奴じゃねぇんだよな…あくまで自分に正直すぎるだけでよ。これで爆豪みたいに超絶クソ下水煮込みハンバーグ野郎だったらいっそのこと嫌いになることもできるんだけどなぁ…」

 

「…ほうほう、つきましてはその少女とのお話を私に聞かせてもらえないかな衝君。」

 

「悪い、思い出したくない物には蓋をする主義なんだ俺は…」

 

『そこまで!?』

 

恋が少しだけ目を細めながら問いかけるが、それに対して衝也は若干顔色を悪くしながら返答を返す。

思い出したくもないことをされているのなら早く縁を切ってしまえばいいのに、と内心で思ってしまうクラスメートたちだったが、彼にもきっとそれなりの理由があって発目とつるんでいるのだろうと無理やり納得する。

というか、それ以上踏み込んだらとんでもないことを言われそうな雰囲気だったので、追及は断念せざるを得なかった。

 

「まぁ、とりあえずは切島の試合も案外早く終わったってのも理解できた。ってことは、次の試合は、確か…」

 

「梅雨ちゃんと常闇だよ!」

 

「…うん、まぁ正直この試合に間に合ったんならあとの二つは観れなくても問題ねぇか。」

 

「うッ…反論してぇけどその通りすぎて反論ができねぇ。」

 

芦戸の言葉にうなずく衝也を見てどことなく悔しそうな表情を浮かべる切島だが、思い当たる節があり過ぎるせいかツッコミは入れたりしていない。

 

蛙吹と常闇

 

一回戦の中でも目玉となる試合はおそらく衝也と轟の試合以外ではこの二人の試合が挙げられるだろう。

 

どんな状況であっても冷静に周りを見ることができる視野の広さと、その冷静さゆえに的確な選択を下すことができる判断力を兼ね備える蛙吹。

個性もカエルっぽいことなら何でもできるというとんでも個性である。

もし生物やカエルに詳しい人間がその個性を聞いたらその強さがわかるだろう。

カエルの跳躍力や舌など様々な特徴が人間仕様に変化していると考えれば少しはすごさが伝わるだろうか。

性格も個性も申し分なしな彼女が危機的状況の際に近くにいれば、それだけで精神的に違うものがあるだろう。

 

対する常闇も彼女に負けず劣らず優秀な人材だ。

相手と即席の連携ができるだけの協調性もそうだが、何よりも特筆すべきはその個性『黒影』にあるだろう。

攻撃から防御までそつなくこなし、しかもそれを広範囲でやってのけるというまさに万能個性。

さらには『黒影』自身が常闇とは意識が独立しているという点がその攻防一体の戦術を可能としている。

常闇が意識を向けられない死角への攻撃も、『黒影』がカバーをしてくれる。

圧倒的な全方位防御と攻撃。

一対一の状況で戦うことになるこのトーナメントでは彼の個性は最も相性がいいものだと言えるだろう。

 

どちらも実力は申し分なし。

ならば勝敗を分けるのは相手の弱点をどれだけ早く見つけ、それをうまくつけるかにかかってくるだろう。

 

「どっちが勝つんだろうな…やはり梅雨ちゃんくんだろうか?運動神経も悪くないし、何よりあの伸びる舌は厄介だぞ…」

 

「どうだろう…正直常闇君の個性は一対一じゃほとんど無敵に近い…蛙吹さんには彼の弱点を突けるような手札はないし…」

 

「確かに…じゃあやっぱり梅雨ちゃんの方が不利なんかなぁ…」

 

飯田、緑谷、麗日の仲良し三人組が試合の予想を立てている中、緑谷はふと視線を衝也の方へと向けた。

 

「衝也君はどっちが勝つと思う?」

 

「ん?俺か?俺は…そうだなぁー。」

 

緑谷に質問された衝也は首元をカリカリと書いた後、足元に置いてあったバックから黒い学ランを取り出した。

 

「勝負に100%なんてのは存在しないから一概にこれっていうのは俺はあんま好きじゃないけど…俺個人としては常闇に勝ってほしいかなぁ。」

 

「『勝ってほしい』?常闇君が勝つ…と言っているわけではない、ということか?」

 

学ランに袖を通しながらそう返答する衝也に、まるでロボットのごとく首をかしげる飯田。

緑谷と麗日の二人もよくわからないという風に首をかしげている。

 

「体育祭とはいえこれはあくまで勝ち負けのつく勝負だ。いい試合ができればそれでいい…なんていう聖人君子みたいな考え方は俺にはできないし、戦るならもちろん負けるよりか勝つほうが良い。

だとしたら、勝ち残ってほしいのは自分自身がやりやすいほうだろ?

蛙吹も常闇も、どっちも弱点らしい弱点がない万能性の塊みたいなやつらだが

 

『勝ちやすい』のは常闇の方だからさ。

やっぱ戦うなら勝ちやすい奴と戦いたいじゃん?だから俺としては常闇に勝ってほしいわけよ。」

 

「勝ちやすいのは…常闇君…か。確かに個性の弱点が今のところわかってるのは常闇君の方だもんなあれでもたしか常闇君の弱点は五十嵐君も知らないはず、だよなそれなのに勝ちやすいのが常闇君だといったのはほかに弱点を見つけたから?でも常闇君の弱点なんてほかに考えられるのか黒影の射程範囲も広いし攻撃の速度も速いし相手にほとんど反撃の隙を与えないしそう考えると攻撃を仕掛けることすら難しいんじゃないかそんな相手に個性の弱点を突く以外でどうやって勝てば」

 

「うわぁ…初めて見たけどなかなかに気味が悪いな緑谷のコレ…」

 

「そっか、五十嵐君は観るの初めてなんだっけ。」

 

「おう、想像以上に想像以上だった…コレじゃあ友達できねぇよな」

 

(なかなかひどいこと言うんや五十嵐君…)

 

ぶつぶつと自分の思考に没頭する緑谷とそれを学ランのボタンを閉めながら見てちょっと…いやかなりドン引きしてる衝也と苦笑いを浮かべる麗日。

そんな中、麗日は少しだけ気まずそうな表情を浮かべて衝也の方へと視線を向けた

 

「えっと…それより五十嵐君、ちょっとだけ聞きたいことがあるんだけど…」

 

「…?どうした麗日?」

 

「いや…その、どうしたっていうか…それはこちらのセリフと言いますか…

 

ホントどうしたん五十嵐君。」

 

「?なんだ、何かおかしなところでもあるのか?」

 

「いや、正直おかしなところだらけなんやけど!?」

 

キョトンとした表情を浮かべる衝也に思わずといった様子で叫んでしまう麗日。

そして、ビシィ!と衝也の方へと人差し指を向けた。

 

「さっきからごく普通に着替えてたけど、どうして学ランなんか着てるん!?」

 

「…え?」

 

「いや、そんな『なんでそんな当たり前のことを?』みたいな顔されてもこっちが困っちゃうよ…。」

 

「何言ってんだよ麗日、応援といったらやっぱり学ランとハチマキだろ?」

 

「お、応援?」

 

五十嵐の『何を当たり前のことを』と言いたげな返答にますます首をかしげてしまう麗日。

そんな彼女を尻目に衝也は持っていた赤色のハチマキを額へと強めに巻き付けた。

 

「せっかく友達が頑張ってるんだ、せめてその友達にエールくらいは送りたいだろ?どうせ観てるだけじゃ物足りないんだし、それなら少しでも友達の力になれるように応援してやりたいじゃねぇか!」

 

「…本音は?」

 

「こういうことって体育祭でしかできないじゃん?俺一度学ラン着て応援とかしてみたかったのよ!」

 

(やっぱり…)

 

「ほら、このために太鼓のばちまで持ってきたんだぜ…太鼓はないけど…」

 

嬉しそうに鞄の中から太鼓のばちを取り出す衝也にもはや苦笑するしかない麗日だが、それを見ていた上鳴が慌てた様子で止めようとする。

 

「いや、衝也…お前さすがにそれはまずいって。奇行とか、そういうレベル超えてきてるぞほんと」

 

「その通りだ五十嵐君!応援する気持ちが悪いというわけではない!だが、過度な音量と気迫による応援は相手の集中力を阻害してしまう要因になりかねない!ここはぐっとこらえて心の中で応援するんだ!俺もそうしているぞ!」

 

「五十嵐君、それはさすがにちょっと、二人だってたぶんそこまでやられたら恥ずかしいだろうし…」

 

「衝也、おめぇの熱い思いはわかるが、梅雨ちゃんと常闇の二人に迷惑だけはかけねぇようにしようぜ。俺らだって試合の時に集中力を欠くようなことはされたくねぇだろ?考えてみろよ、大声で自分の名前呼ばれながら応援される相手の気持ちを…」

 

「…わかった、やめとく。」

 

切島の言い分やみんなの反対が効いたのか「さようなら俺の体育祭…」とつぶやきながら太鼓のばちを鞄へと戻す衝也。

そんな彼の肩に葉隠が「ドンマイ!また今度やればいいじゃん!」と励ましの言葉をかける。

…だが、未練がましく学ランを脱いだりはしなかった。

 

と、そんな茶番が観客席で繰り広げられた後、突然プレゼントマイクの声が会場中に響き渡った。

 

『さてさて、待たせっちまったなエヴィバディ!!第三試合第四試合となんか味気ない試合ばかりだったから、そろそろここでびしっと決めれる優等生同士の戦いと行こうぜリスナーども!!

 

 

鳥みてぇな頭してるが色物枠なんかじゃねぇぞ!個性の強さはマジもんだ!

頼れるバディをひっさげて、クールにかっこよく決めていく!

 

一年A組ヒーロー科!常闇踏影ぇぇ!!

 

 

 

バーサス!!

 

 

そのカエルフェイスが愛くるしい!けど、そんな見た目に騙されて痛い目見るなよ!?

冷静沈着、どんな時でも眉一つも動かさねぇクールビューティーなケロリンガール!

 

一年A組ヒーロー科!蛙吹梅雨ぅぅぅ!』

 

会場に響くプレゼントマイクの声と同時に、蛙吹と常闇、二人の選手がステージへと上がっていく。

 

その目には、互いの姿しか映っていない。

互いが互いに、目の前に映る友を打倒することだけに考えを巡らせる。

己の夢のために、友を打倒することだけに思考を没頭させる。

 

「…悪いが、ここは俺が勝たせてもらうぞ蛙吹」

 

「ケロ…私も常闇ちゃんが相手だからって負けたりはしないわ。」

 

どちらからということはなく、自然と口にされるその言葉。

それは相手に向けた言葉なのか、それとも自分自身に向けられた鼓舞なのか

会場の歓声に紛れて二人のその言葉が完全に消えた後

 

『レディィィィィ!!

 

 

START!!!』

 

戦いの火ぶたが、切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

それは、いうなれば鞭と呼ぶにふさわしいだろう。

その道の達人が振るえば先端は音速すら超え、人では決して見えない領域にまで到達する鞭。

 

 

 

さすがにそこまでとまではいかないだろうが、蛙吹の口から振るわれるその舌の速さはまさしく鞭と呼ぶにふさわしかった。

 

人ひとりすら容易に持ち上げるその力も合わされば、その舌はまさしく凶器となりえるだろう。

 

上から、横から、右から、左から、斜めから

 

様々なパターンと共に振り下ろされるその鞭のような舌を、常闇は一つ一つさばいていく。

 

「来るぞ、黒影!」

 

『アイヨ!』

 

右から来た舌を、すぐさま払いのける黒影の手。

防ぐのではなく、はじくように払いのける。

防いでしまえば、逆に舌につかまって場外まで投げ飛ばされてしまう。

ゆえに、防がずに払う。

 

常闇の反射神経、そして動体視力はそれほど優れてはいない。

爆豪のように目で見てすぐさま反応できるほどのものではないし、衝也のように動体視力を鍛えているわけでもない。(1-A親睦会参照)

本来ならば鞭のように振るわれる蛙吹の舌についていけるほど彼は身体能力は高くはない。

だが、彼の恵まれた個性…いや、相棒がそれを可能としていた。

 

常闇が補いきれない箇所は黒影が、黒影が気づけないところは常闇が

互いが互いの足りない部分を補い合うからこそできるこの圧倒的全範囲防御。

事実、試合が始まってから常闇はほとんどその場から動くことなく蛙吹の舌を遮っていた。

 

そして、今もまた横薙ぎに振るわれた舌を黒影がその漆黒の手で払いのけた。

 

「っ!いまだ黒影!」

 

『とりゃー!!』

 

「ケロッ!?」

 

その瞬間、払いのけた舌が蛙吹へと戻っていく隙に黒影が蛙吹めがけて腕を振るう。

が、ギリギリのところで蛙吹が後ろへと飛んで距離をとり、その黒影の攻撃を避けていく。

 

『クソー!!』

 

「…外したか。」

 

悔しそうな声を上げる黒影と冷静につぶやきを漏らす常闇。

舌を戻す、あるいは舌をはじいたそのタイミングは、攻撃が来ない。

それはそうだ、舌を自由自在に操るにはそれなりの技量がいる。

舌を戻すときはもちろん、舌をはじかれた時に即座にまた攻撃へと移るというのは今の蛙吹ではまだやることができないのだ。

そのわずかな隙を常闇は鋭く突いていく。

しかも、毎回ではなく、タイミングをずらし、虚を突くような形で行ってくるのだ。

蛙吹からしてみれば常に警戒をしながら攻撃をしなければならないため非常に戦いづらいだろう。

忘れたころに隙をつかれて負ける、なんてことは何としても避けたいのだ。

 

(…舌の軌道や攻撃のタイミングは把握できて来た…。このまま防御と攻撃を繰り返し、蛙吹のわずかな隙を作りだし、そこを刺せば…勝機はある!)

 

迫りくる蛙吹の舌をさばきながら彼女の一挙一動を見逃さず、できた隙をついていく。

堅実に、確実に

常闇が勝つためにするべきは観察、そして反撃の隙を見極めること。

相手の攻撃を防ぎ切り、わずかにできた隙をもって相手を叩き潰す。

相手を懐に入らせることのない二人だからこそできるこの作戦に、蛙吹は着実に追い込まれていた。

そのことを、蛙吹もよくわかっていた。

 

 

(ケロ…これは、まずいわね…)

 

この試合中六度目になる黒影の反撃を何とか避けた蛙吹は、再び舌を振るいながら思考を巡らせる。

だが、すでに見切られつつある舌は最早常闇には届かない。

悔しいが同じ中距離での戦闘でも、常闇の方が蛙吹より上手のようだった。

ならば、このまま舌での攻撃を続けるのは芳しくはない。

しかし、接近戦へと持ち込もうにも、常闇と黒影がそうはさせてくれないだろう。

何より、自分自身接近戦にはあまり自信がない。

格闘技だってやったこともないし、誰かを殴ったこともない…舌ではあるが。

運動能力だって一部の種目を除いては平均的。

そんな彼女が、黒影の攻撃や防御を振り切り接近戦を行うというのも難しい。

とはいえ、このままこの中距離の攻撃を続けてもジリ貧になるだけだ。

なら、それを覆す一手を打たなければ、彼女に勝ち目はない。

 

(どうすれば…どうすればこの状況を…)

 

舌を振るいながら、蛙吹は考える。

今までの授業や、皆の戦いで、この状況を打開できそうな情報はないかを考える。

自分が今日まで学んできたその中で使えるものがないかを必死に考える。

そして、一人の少年のある姿が思い浮かんだその瞬間、

 

黒影の腕が、蛙吹めがけて振るわれた。

 

 

 

 

 

(いける!)

 

一瞬、おそらくは一秒にも満たないわずかな蛙吹の舌の遅れ

何か予期せぬトラブルがあったのか、それとも何か打開策を考えていたのか

理由はわからないが、黒影が蛙吹の舌を払ったその瞬間、いつもよりもわずかに舌を動かすのが遅くなったのだ。

それを、常闇は見逃さずに突いていった。

この瞬間を待っていた

絶え間なく蛙吹の攻撃をさばいていたのも、時折混ぜた反撃も

全ては彼女の動きにわずかな遅れがみられるのを待っていたからこそのもの。

常闇が、長い攻防の果てに見つけた一瞬の好機。

その好機に振るわれた黒影の腕は、未だ動かないでいる蛙吹めがけておろされていく。

 

「いけぇ!黒影!!」

 

『トリャァァァァ!!』

 

そして、黒影が蛙吹めがけて腕を振り下ろしたその直後

 

コンクリートの地面に振り下ろされた黒影の腕が、床に大きなヒビを入れた。

だが、

 

蛙吹には、その腕は届かない。

 

「なッ!?」

 

なぜなら、黒影が腕を振り下ろしたその瞬間、

 

 

蛙吹は、身体を前へと進ませたのだから。

 

それは、騎馬戦の最後の攻防

 

衝也と緑谷が激突したあの時、衝也が緑谷の攻撃を避けて反撃するために使った動きだった。

 

(あれは、五十嵐の…っ!)

 

六回

この試合中に見せた黒影の攻撃の回数である。

黒影の攻撃は確かに速い

普通の人間の動体視力や反射神経ならば、その動きを見切るというのは難しい。

だが、蛙吹の個性は『カエル』

 

カエルの動体視力は高速に動くハエを捉えることができるほど優れている。

もちろん、その特性は蛙吹にも受け継がれている。

動き回るハエを一瞬で捕まえることができるほどの動体視力

 

それを持っている蛙吹にとって、六回に及ぶ黒影の攻撃は、彼の攻撃を見切るのには十分すぎる回数だったのだ。

 

黒影の攻撃を見切り、あえて前へと跳躍して攻撃を避けて常闇との距離を縮める蛙吹。

だが、

 

(ッ!焦るな、冷静に蛙吹との間合いを視ろ!)

 

即座に常闇は思考を切り替える。

蛙吹の咄嗟の予想外な行動に驚きはしたものの、冷静に考えてみれば、蛙吹がいくら跳躍力を生かして距離を詰めたとしてもお互い中距離で戦ってたその間合いを詰めるのには時間がかかる。

衝也や飯田のように一瞬で距離を詰められるほどの速度がない蛙吹の跳躍なら、蛙吹が常闇の懐より入るよりも速く黒影で迎撃することができる。

 

(相手の虚を突いた行動に惑わされるな!冷静に、迅速に対処すればッ!)

 

そして、常闇が黒影を呼び戻して迎撃をしようとしたその刹那

 

蛙吹のドロップキックが、常闇の腹部へと突き刺さった。

 

「なッ…ん!?」

 

蛙吹の個性はカエル

 

では、カエルの特徴として一番にあげられるものは何か。

 

それはおそらく、自分の身長の数倍も跳ぶことができる『跳躍力』だろう。

ならば、カエルがそれだけの跳躍力を発揮できる最大の要因は何か。

 

それは『脚長』

 

カエルは後ろ足が前足に比べかなり長く発達している。

種類によって跳躍力に差が出るのも、その脚長差が要因となっている。

普段は猫背で、その脚の長さがそれほどまで目立たない蛙吹だが

 

仮にその脚が伸び切ったとしたら、その長さは常人よりもはるかに長いものになるだろう。

 

つまり、それだけ脚での攻撃での間合いが広がるということになる。

 

その脚をフル活用しての渾身のドロップキック。

身体能力も決して高くはない蛙吹が唯一他を卓越しているその強靭な脚から放たれたそのキックは、常闇の身体を大きく吹き飛ばす。

 

その直後、大きく吹き飛んでいく彼のその体へと、蛙吹の舌が絡みつく。

 

そして、舌に拘束された常闇の身体はそのまま大きく弧を描くように宙を舞い、

 

そのままステージの場外へとたたきつけられた。

 

「がッふ…!」

 

常闇の敗因は二つ

 

一つは、蛙吹のその個性を把握しきれていなかったこと。

 

そしてもう一つは、相棒である黒影への負担が、偏り過ぎていたこと。

もし、常闇が懐に入られたとしても、それに対応できるだけの能力を持っていたとしたら、黒影のその力に頼り過ぎずに、自らを鍛え、真の意味での相棒に慣れていたのなら、この試合の結果は、また違うものになっていただろう。

 

 

「常闇君、場外!よって、二回戦進出は、蛙吹梅雨!」

 

『YEAH!!なんとここでまさかのケロリンガールが二回戦へと進出ぅ!正直俺は常闇がいくと思ってたぜ!うれしい誤算!』

 

『お前、正直だよな。』

 

ミッドナイトの宣言とプレゼントマイクの雄たけびと相澤のツッコミ、そして、観客の歓声が湧きたつ中、ゆっくりと常闇は仰向けになっていた身体を起こす。

 

「…負けたか」

 

「ケロ、正直あれが決まらなかったらもうだめかと思っていたわ。」

 

起きた常闇に近づきながら表情を動かさずにそう呟く蛙吹。

それをみた常闇はキザったらしく笑みを浮かべた。

 

「ふっ…お前は、この体育祭の中でも、必死に観て、戦い、強くなろうという意思を持ち続けていたんだな…目先の勝利ばかり考え、自身を錬磨させることを忘れていた俺が負けるのは、当然だったのかもしれないな」

 

「…常闇ちゃんも黒影ちゃんも強かったわ。ただ

 

私はもう、自分が弱いせいで友達を傷つけるようなことは…もうしたくないの。

だから、強くなろうって決めたのよ。」

 

そういって常闇の手を引っ張って彼の身体を起こす。

そして、ゆっくりと観客席の方へと視線を写した。

 

「だってそうでしょ?

お友達を傷つけてしまうような人が、人を救うようなヒーローになんてなれるわけないもの。

だからまずは、遠くの他人じゃなくて、目先の大切なお友達を助けられるようにならなければならないの。」

 

そういって、彼女にしては珍しくはっきりと笑顔を浮かべる。

その視線の先には

 

学ラン姿という奇抜な格好で、テンションMAXの笑顔で太鼓のばちを振り回す一人の少年の姿が映っていた。

 

 




発目と切島の戦いはカット

峰田の試合はギャグです

ドーンマイ!

しっかし前半が長すぎて後半の戦闘がかなりあっさりな感じになりましたねぇ…
まぁ、主人公とある人以外の戦いはなるべく短く済ませようと考えてましたし、これはこれでいいですかね!

公式キャラブックでは蛙吹ちゃんのパワーはE
ですけど、カエルの個性だとしたらEはさすがに低すぎなんじゃないかなぁー
んー、でも脚以外たいしたことないのかもしれないし、やはりEが妥当なのか…
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