グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜龍と指輪の魔法使い   作:ゆーふぉにあ

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お久しぶりです
今回はちょっと長めですがお付き合いいただければと思います
タイトル通り学園5強の1人の彼女が登場しますよ!


※晴夜くんの生徒への呼称を基本的に名字呼びへと変更しました
智花→南
夏海→岸田
例外:怜、転校生


闘争の世界へ

「そこに横になって。服はそのままでいいわ」

 

宍戸結希の研究室、晴夜はそこに連れられ病院の手術台にも似たベッドに横になる。

父親の知り合いである結希相手とはいえ、科学者の相手は得意ではない。そんなことを思いながら晴夜は準備を始めている結希の方を見る。

 

「身体の調子はどう?」

 

「動いたあとだから疲れはあるけど大丈夫」

 

「魔力は……転校生君にもらってるわね」

 

結希は一つ一つ晴夜に確認を取っていく。

と、同時に晴夜の身体はCTスキャンに似た機械へと運ばれる。

 

「さて、これで最後なのだけど、クエストで変身した回数と時間は?」

 

「1回、10秒だけ」

 

「……終わったわ。もらったデータとの差異は体力が消耗していることによる誤差くらいかしら。それ以外は特に問題なし」

 

その言葉に晴夜は身体を起こして首を回す。

 

「そりゃどーも。はぁ……ようやく面倒くさい検査からおさらばだと思ったら」

 

「あなたの力の不安定さを考えれば仕方ないわね。いつまた『アレ』が起こるかもわからない」

 

「『アレ』ねぇ……」

 

晴夜は小さく呟きながら自分の右手につけた指輪を忌々しそうに見つめる。

 

「これがなかったら俺は今頃……」

 

その忌々しげな視線が向けられているのは、指輪か、はたまた彼自身なのか。

 

「検診データは神北博士に送るわ。一緒に何か特記しておくことはある?」

 

「……隠し事はやめろって伝えておいてください」

 

「難しいと思うけど、伝えておくわ」

 

結希はそれだけ言うと何かPCに入力を始める。

晴夜もPCには疎くはないが科学者のそれも結希のような天才がやることなど検討もつかない。

父親が科学者なのに情けない話だ、と晴夜は思うが、父親に言えばきっと笑い飛ばされるだろうと思い直る。

 

「これからもクエスト終わりによってちょうだい」

 

結希のその言葉にはいはい、と返事をすると晴夜は研究室を後にする。

 

「さて、どうするかな」

 

「おっ、お困りッスか、センパイ」

 

「うぉっ!?って服部か!驚かせるなよ……」

 

晴夜はいつの間にか背後に立っていた梓に驚き振り返る。

 

「自分、ニンジャなもんで。で、どうしたんスか?こんなところで」

 

そう尋ねられるも、梓は全く不思議そうな顔はしていない。

まるでその理由を知ってたかの表情だ。

 

「いや、宍戸博士に呼ばれてただけ。お前こそ授業はどうした?」

 

「休み時間っスよ」

 

「いや、だとしてもここまで来る理由にはならないと思うんだが……?」

 

授業を受ける教室棟と結希の研究室のある魔法棟は学園の反対側にあり、ちょっとそこまで、で迎える場所ではない。

 

「細かいことは言いっこなしっスよ!で、センパイこの後のご予定は?」

 

「いや、特に決めてないが」

 

「おぉっ!だったらちょうどいいっす!こっち来てください!」

 

梓は時間がないッスから、と言い晴夜の手を引く。

 

「お、おい!引っ張るな!」

 

「はやくはやくー!」

 

 

 

 

〜〜〜

「ほう、貴様が新たな転校生か」

 

「あー、えーっと?」

 

晴夜が連れてこられたのは魔法棟の近くにあるコロシアム。

晴夜の正面には鍛え上げられた肉体を持つ女性が仁王立ちしている。

 

「貴様、名はなんと言う」

 

「神北晴夜、アンタは?」

 

「生天目つかさだ。さて、では勝負だ」

 

つかさはそう言い拳を構える。

その構えからは一片の隙も見当たらない。

 

「……どういうことだ、説明しろ服部ィ!」

 

晴夜はそう叫ぶも梓は姿を見せない。

 

晴夜がコロシアムに入ると同時に忽然と姿を消してしまっていた。

 

(申し訳ないっス、けどあの時見たものが正しいなら……)

梓は、先ほどの神凪神社の前での出来事を思い出す。

 

〜〜〜

 

梓は転校生を監視するように要請されていた。

ゆえにさっきの任務にも隠れて同行していた。

 

「ちょ、ちょちょちょ!転校生!何とかしてよー!」

 

「な、なんとかって言われても……智花、あのツルだけなんとか攻撃できる?」

 

「夏海ちゃんに当てないようにだと、難しいかもしれません……怜ちゃんがいれば」

 

晴夜と怜がツルに閉じ込められ、夏海がツルに捕まる。

 

(さすがにマズイか……ちょっと手助けして)

 

そう言い梓がクナイを構えた時

 

「2人とも!あれ見て!」

 

球が大きくうごめき次の瞬間、一気に燃え上がった。

 

(炎魔法、アレが晴夜センパイの魔法……ん?)

 

梓には見えていた。燃え盛るツルの中で、戦闘服の姿を変えた晴夜が

 

(戦闘服をさらに変化させた?いや、アレは魔法ッスね……帰ったら調べてみるか)

 

 

 

〜〜〜

その思惑、そしてつかさの鬱憤が溜まっていることもあり、かなり強引ではあったが、この状態を作り出した。

晴夜とつかさの戦いは、既に始まっている。

 

「はぁああああ!」

 

「うおお!?」

 

晴夜はつかさの攻撃を全て間一髪で回避する。

敢えて引きつけてから避けているわけではない、単純に反応速度が追いついていないのは明白だった。

 

「クソッ!やってやる!」

 

晴夜は一度大きく後ろに跳躍して、つかさとの距離をあける。

幸いにもつかさは近距離戦闘に特化した魔法使い、離れれば一瞬だがこちらの間合いで戦うことができる。

 

晴夜は戦闘服のコートを払うとその中から手のような形のバックルがついたベルトが現れる。

 

「これが俺の魔法だ!」

 

《バインド・プリーズ》

 

晴夜が右手に装着した指輪をベルトにかざすと音声と共につかさの足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。

そして複数の鎖が地面から飛び出しつかさの身体を縛り上げる。

 

「よしっ!」

 

「おー、あんな魔法も使えたんスね、クエストでは使ってなかったけど」

 

関心したように梓はその様子を見つめるが、すぐにその表情は不敵な笑みに変わる。

 

「さぁて、生天目センパイ相手にどこまでやれるッスかね?」

 

「どうだ?」

 

晴夜はつかさの様子を伺う。

バインドの魔法はレベルの低い魔物なら完全に動きを封じることができる。

しかしその程度の練度の魔法なら

 

「ふん!」

 

つかさはいとも容易く鎖を断ち切ってみせる。

まるで細い糸のように簡単に鎖はあたりに飛散する。

 

「嘘だろ!?」

 

「甘い、甘すぎるな」

 

晴夜は驚きながらも別の指輪を右手に装着する。

 

《ビッグ・プリーズ》

 

音声と共に晴夜の正面に魔法陣が現れる。

 

「うおおおおっ!」

 

そして晴夜は魔法陣へ向け拳を突き出す。

すると魔法陣を抜けた晴夜の腕は巨大化し、つかさへと真っ直ぐ突き進んでいく。

その迫力は、魔物の一撃にも等しい。

普通の人間なら、避けるか、避けれずに攻撃を受けるかだ。

しかし生憎生天目つかさは普通の人間ではない。

 

「ふん!」

 

「……は?」

 

晴夜は自分の拳が掴まれたのに気づく。

つかさはその両腕でガッチリと晴夜の腕をホールドしていた。

そんな馬鹿なことがあってたまるか、と晴夜は自分の目の前に広がる光景を疑ってしまう。

正直なところ、自信は多少なりともあった。

先ほどのクエストでも、全力を出した怜相手でも立ち回れるのでは、と考えていた。

 

「ふはは!なかなか楽しませてくれるじゃないか!もっと、もっとだ!もっと私を楽しませろ!」

 

そんな悪役のようなセリフを吐きながらもつかさは自分の身体に力を込める。

 

「うおおっ!?」

 

晴夜は身の危険を感じ拳を引こうとするが、それすらももう遅い。

つかさは巨大な拳を支点とし、そのまま晴夜を持ち上げ、コロシアムの反対側へと叩きつける。

 

「痛ぇ……」

 

晴夜は背中をさすりながらつかさの方を見る。

すると彼女は右腕を振り上げ晴夜へと一直線へと迫っている。

 

「マズっ!」

 

慌てた晴夜は指輪を落としそうになりながらもなんとか魔法を発動する。

 

《ディフェンド・プリーズ》

 

晴夜を守るように彼の目の前に魔法陣の障壁が現れる。

しかし

 

「この程度か!」

 

つかさの拳は魔法陣を突き破り晴夜の顔を掠める。

 

「小細工はその程度にして拳で語ろうではないか!」

 

再びつかさの拳が迫る。

避けるのは間に合わない。

障壁を貼ったところで軽々と打ち砕かれてしまう。

 

「はああああっ!」

 

「クッ……あぁもうこうなったらヤケクソだ!」

 

晴夜は覚悟を決め、つかさの右手の動きを追い、左手で受け止めた。

 

「ほう……ならこれはどうだ!」

 

続けざまにつかさの左拳が放たれる。

 

「まだまだ!」

 

晴夜は空いている右手にでそれを掴み取り、2人は硬直状態へと突入する。

 

「フハハ!おもしろい、おもしろいぞ転校生!」

 

「こっちはそんな余裕もないってのに……!」

 

余裕そうな表情のつかさとは対照的に晴夜は苦しそうな表情を見せる。

もういつ押し負けてもおかしくはない。

しかし

 

「む……?」

 

「う…お、おおおおっ!」

 

徐々に晴夜の押し返す力が強くなってきている。

つかさはその様子に嬉しくなり再び笑う。

 

「ふはは!まだ抗うか!もっと私を楽しませてみせろ!」

 

「う、ぐ、ぐる……グルォォオオオオオ!」

 

晴夜の声は徐々に人の叫び声とは乖離し始めていた。

まるで獣の咆哮のような声が辺りに響き渡る。

 

「オオォォオオオオ!」

 

「ふはは!いいぞ!高まってきた!これこそ私の求めていた闘争の世界!」

 

つかさは更に力を込める。

が、そこである違和感に気づく。

 

「牙…か?」

 

晴夜の口元に、人間の歯とは違う、鋭い牙が見えた。

 

「グルルルル…!」

 

「そこまでっス!」

 

梓が晴夜の背後に突如として現れると晴夜の首元に手刀を叩き込む。

 

「ぐぅっ……」

 

晴夜は意識を失いその場に倒れこむ。

 

「何をする服部!ここからが私たちの闘争だ!」

 

「やめるタイミングはこっちで決めるって最初に言ったっスからね。それに、このまま晴夜センパイを戦わせるのはマズイッス」

 

「フン、なら次は貴様と関係なく決闘するまでだ。それで、今のがお前が言っていた力か?」

 

「いや、こんなんじゃなかったッスもっとこう、宝石みたいな雰囲気があったはずッス」

 

梓はぼんやりと見えただけだったがそれは決してこんなに荒々しい力ではなかったと断言できる。

 

「宝石?」

 

「はいッス。まるで真っ赤な宝石、比喩表現とかじゃなくてまさにそれって感じッス」

 

「ほう、だがこの状況で使わないということは命より使わないことの方が大切なのか、それとも扱えないのか……どちらでもいいか。こいつはどうすればいい?」

 

つかさは軽々と晴夜を持ち上げる。

 

「一応保健室っスかね。センパイとやりあって腕の骨折れたりしてなきゃイイッスけど……」

 

「そうか、なら私が連れて行こう」

 

「え?いいんスか?」

 

「うむ、なかなか気に入った。闘争相手の状態は万全の方が楽しいからな」

 

「闘争相手って……またやるんスか?」

 

「あぁ、次はコイツがより成長した時にな。フハハハ!」

 

つかさは楽しそうに笑う。とノシノシと晴夜を抱えたまま去っていく。

 

「けど今の力、あの力と別物とも思えないんスよね……」

 

梓はそう呟くとデバイスを取り出す。

 

「神北晴夜……神北一也の息子、ッスか」

 

 




まともにやりあって生天目先輩に勝てるわけなんてありません
変身すれば多少はマシになるかもしれませんがそれでも勝てはしないです
さて、晴夜くんに隠された秘密とは!
と言ってもウィザードの方を知ってる方にはなんとなく予想がつくかもしれませんが

…ちなみにこれを読んでくださってる方はやっぱりグリモアもウィザードも知ってる方が大多数なんですかね?
ちょっと気になったのでもしよければ感想ついでにでも教えていただけたら嬉しいです

ではまた次回
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