GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond 作:デクシトロポーパー
スタンド使いがボロボロ出てくる話です。
今回は仗助視点。
「明日の戦車道全国大会の抽選会だがな。俺達も行く」
東方仗助は、承太郎が何気なしに発した言葉の意味が図れず、まばたきを二、三繰り返した。
「何スッて? いや、イイッスけど。
あんまし関係なくないッスか、オレら」
「抽選会そのものにはな。目的はその後だ」
その後と言われてもピンと来ない仗助だが、自分なりに考えてみる。抽選会に集まってくるのは誰なのか。自分達の今の目的は当然、音石の打倒。それに近づける何かが来る。
「どっかのスタンド使いでも来るんスか?」
「聖グロリアーナ女学院のスタンド使いと会合の場を持つ。
スピードワゴン財団を通してコンタクトを取れたんでな……」
「聖グロ……確か、西住たちが練習試合をやったっつう」
「彼女にとっても、音石明の件は他人事ではありえないはずだ。
戦車道を内から乗っ取るかもしれんヤツの話だからな。
顔合わせと同時に注意を促す。情報の共有だ」
理解できた。音石明の動きを封じると共に味方を増やす一手を打つわけである。元からスタンド使いがいるのなら、超常現象を信じさせる手間から始める必要もないし、利害も一致する。誰しも、自分の能力をいいように利用され使い捨てられるなど我慢できまい。音石はそれなのだ。
「するってーと、戦車道チームのエライヤツッスか? ソイツは」
「隊長だ。少なくとも、全ての戦車は彼女に従う」
「なるほど。重要ですね……
知らないままだと、ソイツらも破滅かもッスからねぇー」
「往復の電車賃は俺が出すし、昼飯くらいはおごってやる。
億泰と康一くんにも声をかけてくれ」
「あ、それ助かるッス……最近、財布が軽くってよぉ~。
億泰と康一には間違いなく伝えときますぜ」
「頼む。じゃあな。明日は早いぜ」
『電話』が切れる。ここは仗助の自宅。だがこれは自宅の電話ではなかった。ケータイである。少し型落ちだそうだが、仗助は今まで持ってすらいなかったので、不便も何もない。むしろ電話以外の何に使えばいいのか、という気分だった。
(なるほど、こいつは必須だぜ。
おふくろ巻き込みたくねー今は特によぉぉー)
戦車戦の帰り際、杏が手渡してきたのがこれである。風紀委員の予備機を回してくれたのだという。代金はすべて大洗女子学園持ち。ケータイの料金で数万円ふっとばすヤツが存在することは知っている。好きに使ってくれていーよー、などと言ってはいたが、乱用したらヤバい。あの人に金銭的な借りを作るのだけはマジに勘弁願いたかった。
(つーか、意地でも放さねー気だろうな。
離れる気もねえけどよ。音石がどうにかなるまではな)
考えてふと思う。仮に音石を倒したとして、それでおさらばで済むのだろうか。間田敏和(はざまだ としかず)は言っていた。スタンド使いは引かれ合う、と。ではあいつらはどうなる。西住は。秋山は。
(西住は……西住はまだいいぜ。
近距離パワー型で、多少の防御力は約束されてるし、
あいつも戦いに慣れてきた。
だがよぉぉぉ~~秋山はダメだ。
戦うたびに身体のどこかがはじけ飛んでいく。
後味悪いことになるぜ~~放っておいたらよおー)
虹村形兆並みに使いこなせてようやく安全になるスタンド。それがあいつのムーンライダーズ。射程距離を除けば、はっきり言って下位互換だ。現状、クレイジー・ダイヤモンドのいない戦場で戦うこと自体が自殺行為だろう。
(そこんとこどうにかしねー限り離れられねーよなぁー。
承太郎さんに西住も巻き込んで、一緒に相談していくしかねぇーな)
初対面は死体だった。二度とあんなものを見るのはごめんだ。絶望すらもできずに半笑いで震えていた西住の姿も同じこと。ならば、避けるための手は次々に打つべきだ。さしあたり最大の脅威はやはり音石明なので、対抗するための提案を、明日ひとつ持っていく。そして今から祈らずにはいられなかった。明日引かれ合うスタンド使いどもが、みんなマトモな奴らであることを。
…………………………
翌日、西住たちと同じ新幹線で、第六十三回戦車道全国高校生大会抽選会会場に向かうことになった。実家が学園艦だから新幹線が初めて、だとかで大はしゃぎの秋山をなだめる西住たちとは相当離れた座席で関わる要素がなかったのは良かったのだか悪かったのだか。億泰と秋山を近くに置いておくと、何かの拍子で盛り上がったときにメチャクチャうるさく、麻子が不機嫌になるのだ。ましてや今日の新幹線は七時発。五時前に叩き起こされたアイツはほぼゾンビだった。仙台駅改札前でぶっ倒れグーグー言い出したヤツを全員がかりで新幹線に担ぎ込み、ちょっとした騒ぎになった。席についてからは仗助たちも全員寝た。昨日の戦車戦がかなり堪えている。承太郎は本を読んでいた。そして到着後、会場に入る資格がないのでボンヤリ外で待ち、二時間くらいして、パタパタ手を振る秋山の姿をようやく認めた。
「最初の相手はアンツィオ高校です」
「名前言われてもわかんねーけどよ。強ェのソコ?」
「えぇ~~強いか弱いかで言うんなら、弱い部類です。
ですがあなどれませんよぉ~虹村どの。
ここの戦車道は爆発力に定評があってですねぇ。
調子に乗られるとモノスゴく手強いです」
全員で戦車喫茶とやらに入り、今はテーブルふたつを占拠している。戦車道関係者が近くに居かねない状況で男女隣接は避けようと思っていたのだが、口を出すヒマもなく億泰が、ソコとソコいいかよ、と席をとり、メニューを広げ始めてしまった。もちろん、脇をこづいた。承太郎もやれやれと首をふった。億泰は呼び鈴のミニチュア戦車を鳴らしてはしゃいだ。女どもはいつも通りだ。西住は苦笑。秋山はウンチクをタレ、華はニコニコ。沙織の視線は生暖かく、麻子はガン無視。康一はメニューを見てただけ。ともあれ、今の話題は一回戦の対戦相手、アンツィオ高校だった。
「特筆すべきはタンケッテ軍団でしょうかね」
「ン? タンケッテ? ンだよソイツは」
「小型戦闘車両です。豆タンクとも言いますよぉー
戦車を倒す火力はないですが、軽くて速いんです」
「オイオイオイ、意味あんのかよ。
ンなモン出しても、敵倒せねーんじゃあよぉー」
「虹村どの、ご存知のはずですよ?
敵の場所を先に知る。それがどれだけの力になるか」
「ンッ? おおッ! 『観測射撃』かよッ」
「かも知れませんし、囮の撹乱かも知れませんねぇ。
どっちにせよ、使われ方次第でヤッカイですね」
「まるっきしムーンライダーズじゃあねぇーか。
オメーのよぉ」
「ソレですッ! ピッタリですよぉーッ
そーいうフウにたとえるなら、あとの問題は、
『敵にザ・ハンドはいるか?』って所なんですよ」
「ほへぇ~ッ 一撃で戦車ブッ壊せるスゲエヤツッてことかい」
「はい。去年ならセモベンテが……ほら、三突ですよ、イタリアの」
あ、こいつらの話、終わらない……しかも声がどんどんデカくなっていく。麻子がチラチラ見てくる。止めろってか。どのみち、そろそろ話に首を突っ込んでいくつもりだったからいいのだが。
「ま、どうやらクジ運は良かったようだな……
倒せそうな相手にぶつかったってことでいいんだよな?」
「東方くん。わかってると思うけど。
遅いか早いかの違いでしかないよ。強豪校にぶつかるの」
気楽めに切り出した仗助に、やや厳しい表情でみほが答え、それにね、と付け足して続ける。
「私たちはどうあがいても戦車の経験二ヵ月未満。
これから戦うアンツィオ高校の人たちには練度で水をあけられる。
アンツィオだけじゃあなくって、どこに当たろうがそれは同じ。
タカをくくってかかれる相手なんか、いないよ」
「悲観してるワケじゃあねえよな、西住よ」
「うん」
迷うことのない即答。敵が誰だろうと、こいつの頭脳はフルに回る。それだけ確かなら充分すぎた。
「なら問題ねーぜ。戦車に関しちゃあオレらにゃ及びもつかねーんだしよ。
それよりも問題なのは、音……」
「ふッ、ふふふ副隊長」
大切な話をしようとしたところに割り込んできた聞き覚えのない声に全員で振り向いてみたら、やっぱり見覚えのない銀髪の女がコッチを指さし、一歩、二歩とたじろいでいた。釣った目つきがさらに釣り上がっているようだ。
「何、なんなのこいつら……
あなた一体、どこで、何やって、どーなったの?」
「いきなり出てきて、ごアイサツッスねぇー
って言いてえけど! 知り合いだよな? 西住」
「う、うん……知り合い」
「質問に答えなさいよぉぉーッ
ウチから逃げ出した先で、アンタ一体どういう」
「下がってくれ。逸見(いつみ)ッ」
なんか後ろからまた出てきた。知らないヤツだが顔の造形にものすごく見覚えがあるような。
「みほッ、何も言うまいと思っていた。
黒森峰を去るのもお前の選択だと……
だがこの状況、理由いかんによっては、口を出さざるをえない……ッ!!」
口がヘの字の『般若』と化したそいつは床をガツガツと踏みしめて西住に迫ってくる。顔を見比べる。そっくりだ。いや、顔つきはだいぶ違うが、面影がほとんど共通している。
「あの、つかぬこと聞くッスけど」
「引っ込んでくれ。あとでいくらでも時間をやるッ」
「もしかして、西住の……『おふくろさん』?」
時間が凍ったのを感じた仗助だった。承太郎はコーヒーをすすり、麻子はケーキをモキュモキュ頬張っていた。他は全てが止まった。
(もしかして、マズッた?
なんか、ヤベェ~雰囲気がヒシヒシと)
「…………ふっ」
「ふ?」
「ふ、ふざけるなよ? そこまでフケては……いくらなんでも」
「東方くん、お姉ちゃんだよ。私のお姉ちゃん」
「えっ、姉ちゃん? マジに?」
「マジだよ」
よくわかった。自分が何を言ったのか。後は低頭平伏の一手だった。
「スミマセンッしたぁぁぁーーーーーッ!」
「あ、いや、いいんだ。顔を上げてくれ……
そこまでフケて見えるのか? 私は」
「いえね、おふくろさんが言うみてーなコト言ってたッスから。
それでソッチだと思ったッス」
「うーん。まあ、いい」
顔を二、三度振った西住の姉貴は、気を取り直してこっちを向いた。
「なら、貴方に聞く。貴方は、みほの何だ?」
「ダチですよ。何だと聞かれりゃあね……
こっちからも聞きますぜ。この指、何本立ってるッスか」
西住の姉貴の前に、仗助はグーの手を差し出した。当然、これなら『ゼロ本』になるが、そこに重なる形でクレイジー・ダイヤモンドが人差し指を立てている。聞きたいことは、そこにあった。
「……まさか。『そう』なのか?」
「これが『1』に見えるでイイんスね、お姉さん」
「ああ、見えている。そして、貴方もこれが『1』に見える」
姉貴の方から差し出してきた手からも、黒い手が飛び出した。カブトムシの外骨格のような、柔らかい金属。そんな印象を受ける手だった。
「オレのは『クレイジー・ダイヤモンド』って名前ッス」
「名前か……そうだな。『ブラック・パレード』。
とりあえずだが、私はこう呼ぶ。
しかし、流れからして。みほもなんだな?」
「ご明察でスね。先週、なりましたよ」
「聞かせてくれるか。事情を」
否やはない。姉貴だというなら、それだけである程度の説明は不可避だし、そいつがスタンド使いだったのならなおの事。承太郎の方を振り返る。
「承太郎さん。一時からの会合でスけど。
一人か二人の飛び入りはできますかね?」
「ぜひ来てもらう。知らないことはそれだけでヤバイからな」
「一時? すまないが、その頃にはヘリに乗っていなければ。
私たち黒森峰にも練習があるからな……
午後には復帰する予定なんだ。
今から30分は時間がとれる。それでいいか」
「わかった。ここで説明する」
うなずくと、西住の姉貴はこっちに軽く頭を下げ、不良側の席に詰めて座った。一方、所在なさげにしていた釣り目の銀髪女は、何か言いたそうにしながらキョロキョロしている。
「ええと。逸見っつったっけ?」
「……気安く呼ばないでくれる?
第一、なに? そのハンバーグみたいなフザケたアタ」
そこから先の発言は途切れた。口をパクパクさせてはいるが聞こえない。仗助も異変に気づく。銀髪女は目を見開き、もっと口を広げるが、何も言えていない。
「こッ、こいつは……」
「エコーズ・ACT2。
そこから先を言う前に、チョットぼくの話を聞いてください」
どうやら尻尾文字を貼り付けたらしい。おそらく、『シーン』とか、その辺を。こいつがそこまでして黙らせようとしたということは。仗助は考えるのをやめた。これ以上は康一の善意を無にしてしまう。そんなことを考えていると、銀髪女が喉を掻きむしりだした。冷や汗ビッショリだ。そして康一を見る目に明らかに危険な光が灯った。
「康一、やべぇッ 下がれ!」
『AAAAAALLRIGH(アァーーライッ)!!』
銀髪女から別人が飛び出した。当然、スタンド!
死神じみたスタンドだ。頭はドクロのカブト。鋭い肋骨の隙間から青い炎がちらつくそれは、まっしぐらに康一へ殴りかかった。どう見ても近距離パワー型。割り込もうにも間に合わない。
「やれやれ、手くせが悪いな」
が、受け止めたのは承太郎。まばたきする間に割り込んでいた。一発で終わるはずもなく、次々に殴ってこようとする銀髪女のスタンドだったが、それを黙って見ている承太郎ではなかった。
「オラァッ!」
スタープラチナが脇腹に一発打ち込むと、ドクロの態勢はガクンと崩れ、銀髪女も同様に崩れてうずくまった。
「うぐ、が、はッ……」
「お前のそれは『過呼吸』だ。息をしろ。浅く、遅くな。
30分もすれば回復する」
「い、逸見ッ! 今のは一体?
貴方はなんだ? 一瞬のうちにッ」
「さあな。答え合わせはそっちでするといい。それより」
承太郎は、西住の姉貴に鋭い視線を投げつけた。
「こいつは、ごく最近『矢』に刺されたな?
つまり音石明に……」
To Be Continued ⇒
最初はエリカさんがイヤミをタレながら出現して
ケンカになる予定だったのに。
いざ実際に登場させてみると、まほ姉ともども
みほとおしゃべりしてるリーゼント野郎に
目ン玉飛び出すのが先だったという現実。
アンツィオは、第62回全国大会に出場し、一回戦負けしたと解釈しています。
また、その他の小大会や練習試合にもちょくちょく顔を出している、と。
でないと、アニメ本編の『調子に乗ると手ごわい』評のソースが弱すぎる。
アンチョビが入ってくる前後の頃だと、アンツィオ戦車道自体
ボロボロのようですから、それ以前の評は実質無効でしょうし。