GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond   作:デクシトロポーパー

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またも二か月近く消息を絶ってしまい、申し訳ございません。
七月頭頃、ギアッチョみたいに道路に熱いキッスをしてしまい、
前歯割ったりで色々引っ掻き回されてしまいました。
手足その他は問題なく動くから執筆も普通に出来るだろ、
とか思ってたら、モノを噛めないって想像以上にキャパ削られる。
ケガ前と遜色ない状態に戻ってからチョビチョビ書いて、今日投稿です。
ともあれ、生存報告くらいはするべきでした。スミマセンッした。

今回は秋山どの視点です。


Inter Inter Mission 『戦闘潮流、伝え聞きます!』

秋山優花里(あきやま ゆかり)は病院にいた。6時過ぎにようやく学園艦に戻ってきてから慌ただしいが、承太郎が長期留守の報告をしていくというので、頭を下げて連れてきてもらった。目的地も当然、承太郎と同じ。ジョセフ・ジョースターの病室だ。

 

「アレッ? 先客がいらっしゃるようですねぇ」

 

面会者の一覧表を見て気づく。ジョセフを訪ねた面会者が少し前にいる。しかもまだ帰っていない。退室時刻のタイムスタンプがなかった。名前の方をよく見ると。

 

「かどたに、あんず……生徒会長? が、何を」

「さあな。オレはオレの用を済ませるだけだ」

 

受付から離れる承太郎に慌てて従う。歩幅が違うからついていくのも大変だ。しばらくごとにいちいち立ち止まらせるのも忍びないので頑張っているが。無言でエレベーターに乗り込み、上向きの慣性を身に浴びる。脇の巨漢を少し見上げて、十数秒無言。

 

(ウーン ワカラナイ話にアイヅチ打つのもツライんですけどっ

 この方の場合は沈黙が怖いですねぇー)

 

でも、それが醸し出す風格はどうだ。歴戦の勇士とは、きっとこんな人にこそふさわしい言葉なのだ。もしこの人が戦車に乗ったなら。かの大戦で、戦車に乗り込む一人だったなら。どんな戦車がふさわしいだろう?

ムズカシイところだ。この人なら、ティーガーの不機嫌な足回りも知り尽くして乗りこなすのではないか。それとも、クルセイダーならどうか。その快速を扱い尽くし、敵の攻撃が当たらないポジションを延々取り続けるのでは。KV2の破壊的な主砲を、この人ならどう使うのか。残念ながら戦車同士の殴り合いには無理があったチハ車も、この人にかかれば……ワクワクが尽きなくってマズイ。

 

(直接、戦うところとかは見てないんですけど……

 色々勝手な期待が止まりませんねぇー

 東方どのが、二言めには『最強』っていう方ですから)

 

チラリと聞いた『時間を止める』能力。たとえ2秒以下の間でも、スタープラチナにとっては最強無敵の2秒以下。少なくとも優花里の手札では到底勝ち筋が見えない。黒森峰のスタンド使い、エリカが康一に殴り掛かったとき、彼は間違いなく時間を止めた。どれほど恐ろしい力なのか、肌に沁みるように思い知ったものだ。そして何よりも恐るべきは、その能力を隙なく万全に振るう静かなる判断力だという。どんな戦いに養われて強くなってきたんだろう?

 

(そーいえば、ホリィさんに見せてもらった写真。

 たぶん、あの中の中東系の方が『モハメド・アヴドゥル』さん)

 

写真に写った五人と一匹を思い出す。あれが青春時代の仲間だというなら。

 

(エェーーーッと、承太郎さんは車長です。決定。

 んで、ジョースターさんは、そうですねぇ……通信手でしょうか。

 アヴドゥルさんは、話からして操縦手。

 あとのお二方は……あのピアニストみたいなヒトが砲手!

 イカにもレーセーそーですし。で、ホーキ頭さんは装填手)

 

「おい、着いたと言っているんだが?

 ボンヤリしてるようなら置いていくぜ」

「…………ハッ!?」

 

久々にやらかしてしまった。赤面しながら頭を下げて、後に続く。病室に足を踏み入れると、最近になって見慣れた三人がいた。見慣れてはいるが隔意ある、生徒会の三人組。

 

「おばんでーす」

「こんばんわ」

「ムムッ。こんばんわ、です」

 

こちらに思い思いの挨拶をしてから、会長一人が承太郎に近寄った。

 

「役に立ったみたいですね。私の名前」

「ああ。出来ればもうひとつ役に立ってほしい。

 オレは明日からアンツィオに行くんでな。

 手をつけられない案件ひとつを任せたいんだが」

「へぇ? ま、詳しくは後で聞きますよ。

 ゴハンおごりますから。そこの優花里ちゃんも一緒に」

「わかった。そこで話そう。

 秋山の都合は知らんがな……」

「ヘイ、かしこまり。どーよ、優花里ちゃん」

「は、ハイッ?」

 

当然のように巻き込まれる自分。承太郎の言う案件というのは、音石明の両親問題だろう。であれば、自分がいても大して意味はないが。

 

「わ、わ、わかりましたっ

 不肖、秋山優花里。ご一緒します!」

「シャチホコばらなくってもいーよ。

 カワイイねぇー ニヒヒ」

 

人なつこいというか、イヤラシーというか、なんとも言えない顔で背中をポンと叩く生徒会長。優花里としては、どちらかというとイラッとしてしまう。それを察してかしないでか、彼女は続いて声を発した承太郎に向き直る。

 

「ジジイに何の用で来たのか、聞いても?」

「ン。SPW財団の技術開発の実験に一枚噛ませてもらうから。

 事後になっちゃうけど、その報告ね」

「レクテナか。以前、言っていたな」

「そ、レクテナの受信実験ね。人工衛星から学園艦に向かって」

 

優花里には、なんのことかサッパリわからない。戦車に関係あるのだろうか。受信、と言うからには電波なのだろうが。

 

「あの出力が実現すれば、海の真ん中で機関が故障しても

 近くの港に寄港するまでダマシダマシ行ける。

 そーいうオイシイ話にはツバつけときたいモンねぇー」

「オイシイ話で破滅する奴はごまんといるぜ。

 生命をなくす奴もな。気をつけるんだな」

「モチのロン、です。

 そのお説教、オジイチャンにも貰ったし」

「その~、オジイチャン、じゃが。

 そろそろ話を戻してもいいかのォ?」

 

脇から若干、かすれ気味の声。初めて聞く、二人目の恩人の声だった。終わった自分の生命をつなぎ、同時に『不思議な力』をもたらした人。ベッド上の彼は、大して小さく見えない。元がかなりの巨漢であるようだった。

 

「わしが知りたいのはじゃな。

 そこの……えぇと……

 なんじゃっけ、クダモノなんじゃよ」

「桃だ! 川嶋桃!」

「おぉーそうそう、モモちゃんのヒイじいさんの苗字じゃ」

「桃ちゃん言うな!」

「何の話だ。ジジイ」

「もしかしたら、もしかするかもしれんのじゃよ承太郎。

 彼女のじいさんはドイツ人でのぉー、

 んで、じいさんの父親は陸軍将校で、

 スターリングラードで戦死したらしいんじゃよ。

 そのヒイじいさん、わしの知り合いかもしれんのじゃ」

「言っとく。ドイツ人は事実らしいが、

 陸軍将校うんぬんは多分フカシだ。

 なにかと世界一、世界一ウルサイおじいちゃ……

 もとい、祖父だったからなぁー」

 

スターリングラード!

聞き捨てならない単語が出た。独ソ戦の分水嶺ではないか!

耳がビクーンと反応した優花里の身体は、考えるよりも反射でそちらに飛び込んでいた。

 

「なななんだキサマッ いきなり」

「ジョースターさんッ 詳しく!

 そのお話、詳しく……」

 

ここで優花里、冷静になる。戦死したと言っていたではないか。一気に曇った瞳はそのままうつむいて床を見た。

 

「すっ、スミマセン。忘れてください。

 亡くなった方にあんまりな態度でした……」

 

オチョボ口で静観していたジョセフ・ジョースターは、三秒ほど間をおいてプッと吹く。

 

「なあに、かまわんよ。

 きみのことはスージーから聞いとるよユカナちゃん」

「優花里ですよぅ」

「スマンスマン。顔は覚えとるんじゃが名前が結びつかんでのぉー

 それより……知りたいんじゃな? わしの戦友について」

「戦友? アメリカ……と、ドイツ……で?」

 

どういうことなのだ。連合国と枢軸国ではないか。だがそれだけに、なおさら興味が燃え上がる。

 

「あ、ハイッ 知りたいですモノスゴク!」

「そうかそうか、あいつも喜ぶじゃろ。

 それに、この話……どのみち知っておいて損はないの。

 『波紋』が身についてしまったならな」

 

目的の半分に唐突に踏み込まれた優花里は息を呑む。ボケてるフリでもしてるんだろうか、このオジイチャン。

 

「まず、あいつの名前じゃが。

 ルドル・フォン・シュトロハイム。

 フォン付きじゃが貴族かどーかは知らんのぉ

 わしはモノホンの貴族じゃけど」

「き、貴族ッ? ジョースターさん、貴族ですかぁ?」

「リバプールに先祖代々の土地があるよ。

 今は公園になっとるけど」

 

ありえない話ではない。ジョースター不動産は全米屈指の大企業なのだ。起業の元手を考えると、裸一貫よりもむしろずっと説得力がある。金額的にも、信用的にも。

 

「リバプール……イギリスですよねぇ?」

「そうじゃよ。血統書つきってェヤツじゃ。

 ま、そいつは置いとくかのォ~

 まず聞いてほしいのは、『波紋』の力、その意味じゃな」

 

ほんのりぼかして語られるそれは、スタンド能力をすでに知った優花里をもってしても荒唐無稽な与太話だった。今までの蓄積がなければ、知らないマンガの話扱いで切り捨ててしまったのは確実だった。

 

「闇の一族と戦うための力……なんて言われても。

 さすがにナナメ上すぎます。人類の天敵とか」

「そりゃそうじゃろ。わしだってキミの立場なら『アホか』で済ますわい。

 じゃが事実じゃよ。ナチスは奴らと戦う手段を求め、研究した」

「それが、接点だっていうんですか?

 ドイツ軍人と、イギリス人の?」

「おおよそ、その通りじゃな。

 そこでわしは共闘し、あいつの捨て身の自爆もあって、

 なんとか奴らの一人を倒した」

 

自爆。そこまでしなければ倒せない何者か。それは闇の一族であるという。優花里の脳内でつながりを見せた単語がひとつある。億泰が、実在すると言っていたではないか。『吸血鬼』という存在が本当にいて、下僕を作っているのだと。そして、一般的なイメージからすると、彼らは日光に弱い。闇の一族という呼称と符合する。正しいと思ってよいものか?

そんな考えごとを断ち切るように、河島桃が口をはさんでくる。

 

「おい、なんだそのB級ゾンビ映画は。

 そんなのが私の身内だとでも?」

「まーまー、最後まで聞こうよ」

「というか自爆って死んでるだろーがッ

 スターリングラードはドコ行った!」

 

生徒会長の制止で若干大人しくなりつつも、ガマンならんといった風体である。短慮で短気なこの人だが、言いたいことは、まあ、わかる。曽祖父がゾンビ映画の主役だと言われてウレシイかというと……微妙だ。

 

「わしも死んだと思っとったよ。

 身体のほとんどを機械にして復活するなんて、

 誰が予想するって話じゃ」

「なんじゃあそりゃあぁ~~~ッ」

 

対するジョセフの返答は、そんな気分をすらさらに粉みじんに吹っ飛ばした。川嶋桃の目玉は今にもひっくり返って360度一周しそうだった。

 

「ンなのと一緒にすなッ!」

「わ、わかったよ。話は最後まで聞いとくれね」

 

ツバを飛ばしまくられてベッドから2センチほどズリ落ちたジョセフは、体制を立て直すこともしない。

 

「まあ、そんなこんなでじゃの。

 死んだと思ってる間に一度出し抜かれたりはしたが、

 ほとんど最後まで助けられてばかりじゃったな。

 ……調子ノリすぎて最ッ悪のタイミングで誤射しやがったのだけは忘れんがな」

 

三人ほどが、自然と視線を一点に集めた。自分もその中の一人だ。集まった先にいた片眼鏡は少しうろたえたが持ち直す。

 

「な……何だ、どうした。みんなして。

 カンケーないだろ」

「もっとも、ンなこと言っても仕方ないがのぉ~

 あと一時間早く駆けつけてくれば、とかと同じでの。

 戦車戦に間に合っとれば、あるいは奇襲で勝ち目もあったかも……ないか」

「戦車戦ッ!?」

 

優花里は、特定の単語を聞き取った瞬間、思考をはるかに超えた速度で飛び込み顔を突っ込んだ。

 

「ンなっ 何じゃッ」

「戦車戦? 表に出ない戦いで戦車戦ですってぇ?

 トンデモないこと聞いちゃいましたよぉッ これは!

 ドコでですかぁ? いったいドコで?」

「ドコでっ、て……スイスじゃよ。

 それ以上は言わんからね。キケンじゃし」

 

優花里の頭脳が猛烈な音を立てて駆動する。スイスといえば山と谷ばかりなイメージのある国だが、平野や高原もちゃんとあって活躍の場はあるし、現に国産のPz68が配備されている。レオパルド2だって輸入もしてる。第二次大戦時でいえば豆戦車のカーデンロイドが配備されていたはずだし、38tもチェコから輸入していた。だとすれば、何だ。スイス軍まで出張ってきたということか。闇の一族とやらの戦いにはドイツのみならず、ドイツが事実上敵以外の何物でもないスイスまでも、国内にドイツ軍を引き込んででも戦った。そういうことなのか?

私は今、世界史のおそるべき秘密を見ている!

 

「ど、どんな戦いが……」

「一騎討ちじゃったの。

 わしの戦車はブッ壊れて、ヤツにも戦車を捨てさせて、

 結局生身の戦いになっちまったのぉ。

 ヤツは強かった……わが友の仇でもあるが。

 尊敬するべき偉大な戦士で、戦闘の天才そのものじゃった。

 発想のスケールじゃあ、いまだヤツに勝てる気がしないの。

 武器を奪ってイイ気になったところに石の柱丸ごと叩きつけてきたりなぁ」

 

ここまでくると、優花里は自分の目玉がランランと怪しい光を発しているのを自覚していた。だが止める気なんか毛頭ない。こんなもの、もっと聞かずにいられるものか。しかも、こんなカオスな話の主役は、どうやら眼前のイギリス貴族の青年時代。なんてことだ!

 

「それでッ アナタの乗った戦車は」

「それもいいが、まず用件を済ませるんだな」

 

だが承太郎の静かなツッコミで、さすがに止まった。この寡黙なヒトが口に出して注意してくる時点で、かなりキテいることは今日学習した。ただでさえ今日のお茶会、ずっとイライラしていたこの人だ。低くなっている沸点をさらに火であぶるようなマネは嫌である。

 

「あぅ……スミマセン」

「オホン。ともかくじゃな。

 シュトロハイムの野郎、スターリングラードで

 部下を逃がすために一人でシンガリ張って!

 そのまま帰ってこなかったって事じゃッ

 生粋のナチ野郎だったヤツの家族は戦後に四分五裂して、

 わしでさえも追跡できなかった……

 その忘れ形見が生き延びて、戦友の血を残してくれとったのなら、

 こんなにうれしいことはない……ないんじゃよ」

「ジョースターさん……」

「ま、ジジイの感傷ってことじゃな。

 辛気くさくしちまったの」

「その。辛気クサイついで、なんですけど」

 

優花里は、こわばりながらも遮るように背をピンと伸ばした。前回言いそびれたこと。心の奥底に突き刺さっている最後の破片が、これで除ける。

 

「ふむ……次のセリフはこうじゃな。

 『自殺なんかしてごめんなさい』

 『あなたの生命を使わせてごめんなさい』じゃ」

「自殺なんかして、ごめんなさい。

 あなたの生命を使わせて、ごめんなさい。

 …………えッ? えぇッ?」

 

言う前にセリフをキレイになぞられた。彼のスタンド能力か。いや違う。自分の顔にそう書いてあるだけだ。それを多分この人は読んで、『私』の言葉に翻訳したのだ。

 

「チガわい、それを言うなら『ありがとう』じゃッ

 こちとら好きでやったんでな、勝手に罪悪感持たれちゃあタマらんのよお嬢ちゃん」

 

そして今、確信した。この人は東方仗助の父親だ。言ってることがおんなじだ。心の底に流れるものが、おんなじだ。浮気で子をこさえた上に、最近まで存在を放置し続けたことについては擁護できないし、父を名乗る資格はないのかもしれない。でも、同じだった。

 

「コッチこそ、ありがとうよ。

 助かってくれてありがとう、じゃ。

 生命を賭けたカイがあったわい。

 そして、すまんかった。わしのせいで巻き込んじまったな」

「……はいッ、ありがとうございます。

 それと、ジョースターさんが謝ることなんか、ないですよ」

 

わだかまりが去っていく。チクチクしたものが今、煙になって消えたのだ。後に残ったものは感謝だけだ。来て良かった。本当に。少し、しんみりした空気に身を任せていると、やがて生徒会長がニンマリ笑った。

 

「それにしてもだけどさー。

 カッコイイねぇーオジイチャン」

「ン? なんじゃ、今頃気づいたのか。

 生涯現役のイケメンじゃよ、わし」

「次のセリフはこうじゃ、っての。

 それ、イタダキ」

「ほほう、わしの専売特許をのぉ~

 言っとくがの、そいつをパクれたのは

 わしが見てきた中じゃ一人しかおらんぞ」

「職人の技術が絶えるってカナシーじゃん」

「カンタンにゃあゆずれんよ。

 せいぜいガンバッてみるんじゃな」

 

ジョセフもまた不敵に笑う。老人が生命のありったけを譲渡した後だとはイマイチ思えない元気さだ。とくに隠すことでもないので、優花里は率直に聞いてみた。

 

「けっこう元気ですねぇジョースターさん」

「そりゃあの。若いコがたくさん来てくれとるんじゃ。

 ショボくれてなんかいられんよ」

「ジジイ。わかっているとは思うが」

 

帽子を深く被って目元を隠した承太郎が言葉をはさむ。

 

「次、おばあちゃんを悲しませたなら。

 おばあちゃんが来るより先に、俺がてめーを墓に沈める」

「わわ、わかっとるよ承太郎。おっかないのォ~」

「英雄色を好む、ってヤツ?」

「やかましいッ お前さんもかなりのクソガキじゃな」

「ニヒヒ、光栄ですゥ」

「イイ性格しとるのぉ。ま、いいわい」

 

仕切り直しに咳払いをしたジョセフは、生徒会三人を解散させにかかる。

 

「ウォッホン! ここから先は門外不出じゃ。

 わしの『波紋』を自分のものにしたこの子だけに話すことがある。

 今日はここまで……また来てくれよ」

「次はなんか差し入れ持ってくるねー。

 承太郎さん、ロビーで待ってるかんねー」

 

素直に受け入れて、ゆるりと去っていく三人だった。そういえば、三人の中の一人の小山柚子。ついに一言もしゃべらないままだったが……元から自己主張の強くない人のようだし、相槌を打ってばかりになるのも仕方ないか。それ以上はとくに考えず、残った承太郎とジョセフとを交互に見る。長い話になるのだろうか。自分もあまり時間はない。帰りの新幹線の中で、みほから聞いたのだ。仗助が提案した、レッド・ホット・チリ・ペッパーの暗殺を可能な限り防御する策。それに向けて、今日から明日一日までかけて準備しなければならない。あんこうチームにおいてその拠点となるのは、他でもない、優花里の自宅なのである。

 

「……気になるの、あの生徒会長サン」

「どうした」

「必死すぎるんじゃよ。

 スピードワゴン財団のコネを得た途端に、技術開発の協力を取り付ける……

 普通、半年とか一年かけてやることを、音石明にかこつけて、あの子はたったの一週間じゃ。

 とんでもねーわい。わしの若い頃でもできたかどうか。

 でもなぁ、何を生き急いどるんじゃ? あの子は。

 そして、どうも『点数稼ぎ』をしとるように見えてならんなぁ。

 どこの誰に向かってかはわからんが」

「俺達には関係ない。

 敵対したり、便利使いされない限りはな。

 そこについては信用していい奴だ」

「じゃが、なぁーんか危ういんじゃよなぁー。

 全力疾走はコケた時のダメージがデカイぞ承太郎」

 

この話題も気にはなる。あの生徒会長をつかまえて、必死すぎると来たものだ。飄々としている裏に、この老人は何を見た。承太郎も何か感づいているようだ。しかし『点数稼ぎ』か。だとすると、戦車道もそうなのか。だから、みほを無理やり引き込んだとでもいうのか。これでは許せなくなる。なんのための『点数稼ぎ』だ?

 

「ユカリちゃん」

「え、はいッ?」

「気にしてやっちゃあくれんかの。

 キミはどうもあの子をよく思っとらんようじゃが。

 悪い子じゃあない……わしの見立てではの」

「……私の尊敬する人で、今は私の大切な人に。

 イヤがってることを強要した方なんです。

 キズに塩を擦り込んだ方なんです」

「そいつはひどいな。どうして、そんなことをするんじゃろうな?」

「わかりませんよぅ」

「モットわからんよ、わしには。

 隣で戦う戦友として、チョロッと気にかけてみてくれよ。

 そういうモンなんじゃろ戦車道って。知らんけど」

 

そこで戦車道を出してくるとは。戦車に乗っていた老人を前にそう言われて、断れるはずもない。仲間を気遣わない戦車道などを見せつければ、結局、傷つくのは西住みほだ。

 

「わ、わかりました。気にかけてみますッ」

「おおッ 肩ヒジ張った敬礼ありがとうよ。

 さて、早速じゃが。きみには『波紋』の使い方を教えていくぞ」

 

陸軍式の敬礼をしたまま、優花里の顔も引き締まる。波紋の目的を教えられ、その上で使い方も教えるということは。

 

「あ、カン違いしとるよーじゃがな。

 別に『闇の一族』と戦え、なんて言わんからね。

 第一、もう全滅しとるよヤツら」

「え? ですか? それは、とても安心ですけど」

「知っとることで、きみ自身が助かるかもしれん。

 知っとることで、周りの誰かが助かるかもしれん。

 それだけじゃ。後悔のタネをつぶす力にしてほしいんじゃよ。

 ただし、さっきも行ったが門外不出で頼むぞ。

 『波紋』を管理しとる組織があってなぁ。

 きみはいわば『モグリ』じゃからの」

「……キ、キモに命じます」

 

つまりはこういうことだろう。来るべき音石明との戦いに、ひとつでも多く、戦いの手段を持って行け、と。願ってもないことだ。ムーンライダーズに不満は……チョコッとしかないが、本体が接近戦にもつれ込んでしまうと、これほど無力な能力もないのだ。それを補う手段に、『波紋』はなりえるのか。加えて、『波紋』は癒しの力でもあるはずだ。自身の生命がその証明。だとすれば、知っていることで助けられる誰かは、必ずいる。

 

「なら、まずは基本から。呼吸の仕方からいくぞ。

 最初は2分から行くか……2分吸い続けて、その後2分吐き続けるんじゃ。

 わしが今からやるやり方でな。でないと酸欠で終了じゃよ」

「2分……ううッ 地味にキツイですねぇ」

「そいつをずっと続けてもらう。寝ても覚めてもじゃ。

 波紋は継続なんじゃ。ウソをつけば土壇場で裏切られるのはキミじゃからね。

 今日は『くっつく波紋』と『はじく波紋』まで教える。

 メチャクチャ駆け足じゃが、きみはまず知っていた方がいい!」

 

その後、優花里は酸欠でブッ倒れ、承太郎に二回ほど介抱された。

 

 

 

 

To Be Continued ⇒




ガルパン・ジョジョ間で血縁を想定してるキャラはごくわずかです。
三人は絶対に超えません。
次回、いよいよあの人の影が見える予定。

※河島桃の祖父がドイツ人なんて設定は原作にはありません。
 当二次創作の中だけであるとご理解をお願い申し上げます。
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