side 隼太郎
絵里先輩がμ'sに入ったことで、状況が一気に変わった。
まず、重要な体験入学の話。
結果は大成功だった。
アンケートでも満足度は高かったために、来年度の入学希望者を募ることも存続。
それはつまり、廃校の延期を意味していた。
このことを知ったμ'sメンバー全員の笑顔を今でも覚えている。
そして、絵里先輩の話。
生徒会長としての立場から解放されたからか、いつもの笑顔が戻ってきた。
メンバー全員で遊んだり、俺と話したり、愛想の面でもすごく良くなった。
個人的に、絵里先輩には楽しい人生を送ってもらいたい念があるので、あの笑顔が戻ってきてくれたことが嬉しい。
「ま、最初はどうなるかと思ってたけど、形になってきてくれてよかったよね〜。」
「急にどうしたんだよ、隼。」
隣で歩く裕太に聞かれてハッとする。
「いや、μ'sの話。良かったなって。」
「まぁ話を聞いて、良かったなと俺も思ったけど、今は練習に集中しとけ。」
そう、今は部活中、つまりは練習中である。
練習中に他ごとを考えていて、ミスをするわけにはいかない。
「そうだな。集中しないと。」
「おう、じゃあ俺はブルペンで受けてくるわ。」
「がんばれよ〜」
走っていく裕太。その姿を後ろから見ていると、4月の時とは目に見えるくらい大きさが変わっていた。
まだ成長期真っ只中。
周りの成長が羨ましく思えてくる。
俺はというと・・・1ミリ程度身長が伸びた気がする!
1ミリでも俺からしたらいい感じなんだよ!!もうすぐで絵里先輩に追いつけると思ったら!!
え?女子に負けてるのって?
わかってる・・・何も言わないで。
「集合〜!!!」
集合がかかった。
この合図ということは、ミーティングだろう。
まぁとにかく、身長の伸び縮みはともかく、自分のいいところを試合では出せればいいなと思っている。
小さいなら小さいなりに、出せる部分は沢山ある。
それに俺は今の身長をコンプレックスに思ってるわけでもない。
この身長でも、やれることは沢山あるのだ。
むしろ、この身長だからこそ、できることもあるわけで・・・だから俺は今の身長に不満はない。
こんな身長でも、野球をやれるということを、身長の高いやつに証明してやろう。
誰とは言わないけど・・・。
そう思いながら、ミーティング室に向かうのだった。
〜〜〜〜
グラウンドの隅、監督や白戸先輩のいるところに続々と人が集まってくる。
白戸先輩が監督の隣にいるということは、それなりに大事な話なのだろう。
「よし、全員揃ったな。今日はみんなに大事な話がある。それでは監督、お願いします。」
言われて監督が一歩前にでる。
「今日集まってもらったのは他でもない。もうすぐ3年生にとっては最後の大会が開かれる。そこで、ベンチメンバー20人を決めようと思うが、ただ決めるだけでは不公平だと思われる。」
「そこで、3日後、ベンチメンバー選抜試合を行う!」
ザワザワ・・・
監督の言葉を聞いた部員たちが、騒ぎ立てる。
音坂西高校では、ベンチメンバー選抜方法は必ず試合で決める。
メンバーの選考条件としては、いろいろあるが、一番いいのは成績、そこからパフォーマンス、ムードなどのような分野から選ばれる。
その時には、高校に友人や親を招くことができる。
それは、本番で緊張しないためと同時に、親や友人への感謝を込めて、全身全霊を持って試合をする。
まあ、いわゆる試験でもあり、感謝祭的なものだ。
そこで選ばれなかった三年生は、事実上の引退。
バッティングピッチャーをするか、受験勉強に勤しむことになる。
まあ、ほとんど前者をするらしいが。
「静かに。・・・そこで明日と明後日は自主練習とする。各々見に来て欲しい友人や家族を誘ってくるといい。せっかく成長した自分を見せることができるからな。」
家族や友人ねぇ・・・。
一応、誘おうかと思っている人たちはいる。
両親・・・は、きっと忙しいだろう。
となると・・・やっぱりあの人たちかなぁ・・・。
「ダメ元で頼んでみよ。」
「チーム分けは、各学年で分けて行う。つまり、3年生のみの試合、2年生のみの試合、1年生のみの試合にわけて、1日で3試合を消化する。チーム分けは明日プリントに印刷して渡そう。試合は6回まで。試合に出ている間は自分のアピールバだと思って、ベンチ入りを掴み取ってくれ。以上!解散!」
『はい!』
監督の号令が終わって、それぞれが動き出す。
その会話の中には、誰を誘うか、ベンチなんてまだ無理とか、様々な意見を言っている。
確かに、この人数から、メンバーを20人にしぼるわけだから、一年生でベンチ入りは、とてつもなく難しい。
だが、チャンスがないわけではない。
結果次第では、俺は一年生ながらベンチに入れるのだ。
逆に、俺はベンチ、あわよくばスタメンを狙いに行くつもりだ。
「よし、頑張ろう。」
そう気合をもって、練習に臨むのだった。
〜〜〜〜
練習終了後、俺はいつも通り凛、花陽、真姫と帰っていた。
だが、そこにはもう1人の影が、その人物とは・・・。
「隼太郎、私がいなくなった時はどんな気分だったの?寂しかった?」
「先輩隼ちゃんに近すぎにゃ!!もう少し離れるべきにゃ!!」
「その通りよ!もう少し離れなさいよ〜!!」
「・・・(コクコク)」
絵里先輩も一緒だった。
絵里先輩は自分のリミッターが外れたら、すごく変わった。
変わったというか、いつも通りに戻ったというか。
最近では学年の違う俺に、「一緒にご飯を食べましょう!」って言って教室に入ってきたり、「屋上に来て話しましょ」
とアプローチをしてくる。
その度に凛たちは俺を渡さないと言わんばかりに絵里先輩に突っかかりに行く。
花陽というと、やはりまだ怖さがあるようだ。
今もそう・・・まさにこの状況が、よくある状況だ。
絵里先輩が俺に近づき、凛と真姫ちゃんが立ちふさがる。
「ちょっと・・・絵里先輩、俺、練習してきたので、汗臭いですから、近づかないほうがいいかと・・・」
「私は気にしないわよ?」
「・・・そすか。」
・・・って、今はそんなことをやってる場合じゃないよね。
選抜試合に誘わないと。
まだ言い合っている4人を止めようとする。
「あの、皆・・・ちょっと話があるんだけど・・・。」
「何(にゃ)?」
「おお・・・」
4人同時に俺を見たので、そのシンクロ具合に少し圧される。
「えっと・・・その、3日後に、試合があるんだけど・・・・見に来てくれませんか!?」
思い切って言葉を発した分、少し声が大きくなってしまった。
「俺も、皆に負けないぐらい輝くから、見に来てください・・・!」
おれは、今の気持ちを正直に述べた。
皆が活躍して、輝いていたから、自分もそれに負けないように、そして、馬鹿正直に夢を追いかける自分を、応援して欲しい、といった旨を伝えた。
「・・・頑張りますんで、宜しくお願いします!!」
深々と頭を下げた。幸いここは人通りが少ない。だから、大胆な行動も取れる。
外で礼なんて、することがないけど、これで気持ちが伝わればと思う。
「隼太郎、頑張りなさい。応援、是非行かせてもらうわ。」
「練習好きの隼ちゃんならメンバー入りも間違いないにゃ!!」
「私も見に行ってあげるから、しっかりやりなさいよ?退屈させたら許さないわ!」
「隼くんなら、大丈夫だよ。花陽も、見に行くね。」
4人とも快諾してくれた。
それぞれの言葉を聞いていると、期待してくれているという事がよく解る。
その言葉を聞いて、俄然やる気が出た。
「私たちだけじゃ意味ないから、メンバー全員連れてくるわ。隼太郎、楽しみにしててね。」
「ありがとうございます」
これで、初めて皆に成長した姿を見てもらえる。
そう思って、また努力しようと思った。
野球編は次回から!!
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今まで読んでくれた皆さん、ありがとうございました!
まだまだ続けていくので、お付き合い宜しくお願いします
それではまた来週!