今回は女性たちの出番はあまりないので、悪しからず。
ちなみに1試合分あるので、今回は長めです。
それではどうぞ!
side 隼太郎
『整列!これより選抜試合1年生の部を始める!お互いに礼!』
「お願いします!!」
俺たち白チームは後攻のため、挨拶後すぐに守備位置に向かった。
今回の試合は、選抜メンバーに選ばれるための重要な試合。ちゃんと勝って評価をもらおうと考えていた。
それに加えて、今回は別の理由でも勝たないといけない理由もできた。
その理由は、俺たち白チームのピッチャー、川北勇平君にある。
それは、試合開始前に戻る。
〜〜〜
試合開始直前、相手チームのピッチャーの伊原君が川北君に話しかけに行くのを見た。
自信のない感じでいる川北君は、普段何を話すんだろうと興味が湧き、申し訳ないと思ったが影から聞いてみることにした。
「よぉ川北ァ。悪いんだけど今日の試合、手抜いてくんねぇ?」
「・・・い、いやだよ・・・。」
「ヘェ、お前、俺に逆らう気?」
「・・・う」
「まァ手を抜かねぇならそれでもええわ。でも、お前みてぇに小セェ奴に負ける気がしねぇからなァ!!」
「・・・!!!」
とんでもない場面に遭遇してしまった。
場面によっては、伊原君が川北君のことを虐めているようにも見える。
それと同時に、俺はとても不快な気分にもなった。
それはあいつが言った「小セェ奴に負ける気がしねぇ」という言葉。
まるで身長の高い奴が小さい奴に勝てるわけがないと決めつけているかのように聞こえた。
嘲笑。見下し。
黙って見ていることができず、俺はその場を飛び出した。
「まぁそこらへんでやめなさいって。」
「・・!つ、柘植君。」
「あァ?誰だテメェ?」
「俺は柘植隼太郎。白チームの1番バッターだよ。」
「1番?」
俺が1番バッターだと知ると、伊原は爆笑した。
「オイオイ!こんなチンケな奴が1番かよ!川北より小せぇじゃねぇか!!1番がこんなんじゃ、勝ったも同然だな!!!」
「言ってくれるね君・・・。でも、痛い目を見るのは君だと思うよ?」
「あァ?俺がテメェに打たれるっていいてぇのか?」
「もちろん、伊原君は今日、俺に全打席戦っても勝てないよ?」
「・・・ッ、言ってくれるじゃねぇか。」
伊原は俺のことを見下すように睨みつけている。
伊原の身長は、175前後、そのため、俺からしたら圧倒的な体格の違いを感じた。
だけど、あいつより威圧感がないため、俺は全く怯むことがなかった。
「いいだろう、テメェがそこまで言うなら勝負だ。全打席三振にとってやんよォ!」
「だったら俺が勝ったら、川北君に謝るんだな。」
「・・・え、いや柘植君、何もそこまでしてくれなくても・・・。」
「いいぜェ、俺が負けたら川北に謝ってやるよォ。まァ、負けることは万が一にも無ェけどなァ!!」
「へっ、試合を楽しみにしとくよ。」
お互いに啖呵を切った後、川北君は戻っていった。
「・・・柘植君、ありがとう。」
川北君にお礼を言われた。
「大したことじゃ無いよ。それより川北君、身長小さくてもやれるんだってことを、見せてやろうぜ。」
「・・・でも僕、球も遅いし、弱虫だから・・・」
「それでも、俺たちのピッチャーなんだ。大丈夫。飛んで来た球は、絶対にアウトにする。約束するよ。」
そういうと川北君は下を向いて考えていた。
でもすぐに、上を向き、俺に笑顔でこう言った。
「うん!・・・がんばるよ!」
〜〜〜
ということがあった。
それを裕太にも伝え、チームメンバー全員もわかってくれた。
川北君も、チームメートに少しずつ心を開いていき、笑うようになった。
セカンドから守っていると、川北君の顔がよく見える。
その表情は、とても嬉しそうな表情だった。
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※1回表 ノーアウト
試合が始まった。
相手の1番が打席に入り、構えた。
球場からは、選手たちへの応援が飛び交う。
・・・そういえば、凛たち来ているんかな。
誘ってみたはいいけど、いざこういう場に幼馴染たちを呼ぶとなると、恥ずかしいものだ。
イカンイカン、集中集中。
川北君の2球目・・・キィン‼︎
打球は俺の上を超えるライト前ヒットだった。
続く3球目も、2番にレフトに運ばれ、これでノーアウト1、2塁。
俺は、落ち着かせるために川北君に声をかけに行った。
「まだ1回だから、落ち着いて、1つずつ取っていこう。」
すると、川北君はビックリしたように話した。
「!・・・うん。」
相手ベンチを見ると、伊原が偉そうに座っていた。
その様子を見ながら、俺は川北君に話す。
「大丈夫、打たせて取ろうぜ。」
そう言ってセカンドに戻る。
(まぁ、声かけは内野の役目だよな。キャッチャーの声かけは回数が決まっているから、川北君が慌て始めたら、声をかけてあげよう。)
相手の3番バッターへの3球目・・・キィン‼︎
打球は勢いよく12塁間に弾かれた。
(飛びつけば間に合う!!)
ダッ・・・バシィ!!
「ショート!!」ビシュッ‼︎
「ナイス!ファースト!」アウト‼︎
アウト‼︎
結果はダブルプレー。
ギリギリ届くかわからなかったが反射的に飛びついた結果、ボールがミットに収まっていた。
球場からは拍手や声援が送られていた。
「ふぅ・・・間に合ったよ。」
「あ・・・ありがとう、柘植君。」
「おう。後1つでチェンジだ。頼むぞピッチ。」
「うん!」
その言葉に答えたのか、続く4番を三振に取り、俺たちの1回の守備が終わった。
『隼太郎(くん)〜!!!』
ベンチに帰る時に、よく知るような声が聞こえた。
その声のほうを見ると、例の9人が居た。
「あの人たち・・・来てくれてんだな・・・。」
どんなこととはいえ、応援してくれるのはありがたい。おれはその方に向かって小さく手を振った。
さて、次は俺らの攻撃だ。
※1回裏 ノーアウト
先頭バッターのため、打席に向かう。
左打席に入り、構えると、伊原も投球動作に入った。
1球目、2球目とストライクを見逃し、3球目は外してボール。
いずれもストレートだ。
伊原の投げる球は、次はストレートと予測し、打席に立つ。
4球目、ファール。
5球目、ファール。
6球目、ファール。
7、8球目とボールが来て、いよいよフルカウント。
「・・・くそ!!」
むこうで伊原がイラついているのがわかる。
(全く、だめだよ感情を出しちゃぁ)
そう思い打席に入る。
9球目を投げられ、俺はそれもファールにする。
相手がいらついているのがわかっているため、制球を乱しているのがわかる。
俺は1番だ。
1番の1打席目は、試合の行き先を占う役目も担っている。
だから、この試合での1打席目は成功した。
なぜなら、こんなに乱されているピッチャーに制球力は無いから。
バシィ‼︎「ボール!フォアボール。」
これでいい感じで試合ができる。
そして、1番の仕事は終わらない。
伊原のヤツ、ペースを乱して投げ急いでるなぁ。
そんなことしてたら・・・走っちゃうよ!!
「盗塁!!セカンド!」セーフ‼︎
俺は2球目で走った。余裕のセーフ。
伊原からはイラついた表情が見て取れる。
すかさず2番が送りバントを決めて、1アウト3塁。
続く3番が空振り三振に倒れ、4番のあいつが登場。
「おーい裕太〜。ヒーローになりたくば一本頼むぞ〜」
「うるさいわ!!言われなくても返してやるわ!」
たわいも無い会話をして、裕太の打席を3塁から見る。
伊原はまだ投げ急いでいる。
きっと、こっちを見る暇も無いのだろう、牽制の様子すら無い。
そんなことを思っていると、裕太の打球が俺に向かってきた。
「うぉっ!!あぶねぇ・・・」
裕太を見ると、ジェスチャーで「すまん!」と言ってきた。
相手はまだこちらを見る余裕は無い。間違いなく、点を入れるチャンスだ!
伊原が5球目を外し、これでフルカウント。
(投球がパターン化されてきてる。ストレート2球投げて、1球カーブ、またストレート。)
じゃぁ次は・・・
伊原の6球目・・・カキィン!
打球は勢いよくセンター前に転がっていった。
「ナイス裕太!!」
「おう!!」 紅 0-1 白
5番バッターは3球目をとらえ、レフト前ヒットとなった。
次は川北君の打席だ。
「川北君!!」
俺は打席に向かう川北君を呼んだ。
「伊原君に何を言われても、気にしないようにな。」ボソッ
「う・・・うん。」
川北君に一言話し、打席に向かっていった。
「川北かァ・・・やっと一息つけそうだぜ・・・。」
(な・・・何言われても気にしない・・・)
「フンッ!!」ビシュッ‼︎
「ストライクアウト!!チェンジ!!」
(川北君、何も全部振らなくても良かったのに・・・)
「オッケー、切り替えだよ川北君。裕太!!ナイスバッティング!!」
「おう!いやーこのままだとヒーローだぜぇ」
「気が早ぇよ」
俺たちの話を聞いてチーム全体が笑っていた。
雰囲気はこっちがいい感じだ。
それに比べて・・・
「クソが!!!」
紅チームではいいようにやられた伊原が怒りまくっていた。
「チームメートにあたるなんて、しかも1回にキレ出すなんて短気な奴だなぁ。」
向こうの雰囲気は最悪。勝ち目は十分にある。
※2回表 ノーアウト1、2塁
2回、川北君は、先頭バッターに四球、6番にも四球でピンチを迎えてしまった。
その理由はどうやら、伊原の打席が近いことでビビってしまっているらしい。
7番バッターは三振を取ることができ、1アウト1、2塁になった。
そして、あいつが打席に入る。
「すぐ追いついて逆転してやらァ・・・!さァ来い!」
「ひっ・・・!!」
怯えきっているため、たまらず川北君に声をかけに行く。
「川北君、落ち着いて。大丈夫、まだ始まったばかりだから、点を取られても追いつけるよ。だから、落ち着いて投げな。」
それだけ伝え戻っていった。
キャッチャーの裕太から、「ナイス!」といったジェスチャーが飛んできた。
俺はそれに帽子に手を当てて返す。
川北君が伊原君に投げる1球目を投げた。
そして、勝負はすぐに決した。
大きい打球音とともに、打ち返された打球は、左飛で終わった。
(気合が入りすぎた分、力が入っていたんだな。)
伊原の顔を見る。
表情は、打てなくて悔しそうな表情と、思いの外飛ばなかった驚きの顔が混じっていた。
「ッ・・・なんでだ・・・。」
肩を落とし帰っていく伊原。
その後は1番をセンターフライに取り、チェンジになった。
※2回裏 ツーアウト1塁
7番から始まる俺らの攻撃は、はじめ2人は三振、遊飛と倒れた。
しかし、9番が中安で出塁し、俺の2回目の打席が回ってきた。
(さっきはほとんどストレートだったからな。俺に投げてないカーブが有力か?)
そう心の中で考えて打席に入り、1球目を見逃した。
(ストレート・・・やっぱりまだストレートでくるのかな。)
2、3球目もストレートでボール。
4球目は、低めに入ってストライク、これもストレートだった。
(俺に対しては初めていいボールが来たな。今のはギリギリいっぱいだろう。)
5球目、ファール。
結局、ここまでずっとストレートだった。
(これは、ストレートに絞ってもいいのだろうか・・・いや、まだ待とう。)
6球目を待ち、ストレートのタイミングで待っていると、遅めの球が来た。
(この球・・・カーブ!!だけど外れてる!)
ストレートのタイミングで待っていた分、すでに動作に入ってしまった。
(大丈夫、止まる!!)
「ボール!!」
「チッ!!!」
危なかった。もうすぐ手を出すところだった。
これが、俺に初めて投げたカーブ・・・。
ストレートより数段遅くて、落差が従来のカーブよりも大きい。
(カーブというよりは・・・ドロップ気味だなぁ・・・)
結局、この打席は8球目で四球を出し、俺の勝ちとなった。
その後はあっさりと一ゴロに打ち取られ、二回の攻撃は終了。
でも今後、あのカーブを見たら、普通に打つのが難しくなるな・・・そう思いながら、守備位置に向かった。
※3回表、裏
この回、川北君は落ち着いてきたのか、1番、2番、3番を中飛、捕飛、投ゴロと三者凡退に抑えた。
しかし、相手の伊原もテンポが良くなってきたのか、こちらのクリーンアップを二ゴロ、三振、三振と打ち取られてしまった。
ちなみに、うちのチームの4番である裕太に「三振しちまったな(笑)」と伝えたら、「うるせぇ!ホームラン狙ったんだ!!」と言い返された。
その後も言い訳じみた言葉を聞いたが、俺はスルーしてセカンド守備に向かった。
まぁそれはどうでもいいよね。
※4回表 ノーアウト
試合的には、ここが勝負の回だろう。
相手は4番から始まるが、前のふざけた感じのない真面目な顔で打席に入った。
裕太もそれを察したのか、俺らに長打警戒の守備位置を取らせた。
しかし、作戦虚しく相手がボールを捉えてしまい、3塁まで行かれてしまった。
(この4番・・・伊藤君だっけか。随分と足が早い。これで4番か・・・。)
どうやらこの伊藤君は、足も兼ね備えた4番ということらしい。
しかし、これで大ピンチだ。
一打で同点、ホームランで逆転、回も残り少ないから、本当にまずい。
「タイムお願いします。」
キャッチャーの裕太がタイムをとって、内野全員がマウンドへ向かう。
「どうする?次は5番だけど・・・」
裕太から質問を受けた。
ファーストの戸塚君、ショートの大本君、サードの河本君も迷った表情だ。
そんな中、おれは裕太にこう提案した。
「ここは、勝負しよう。」
「「「「えっ!!」」」」
みんなが揃えて驚きの声を上げる。
「こっからは下位打線だ。点を取られても、5点とかは一気に取られないだろう。だけど、それはトップに回ったら話は別だけどな・・・」
「相当な賭けだな・・・。」
「仕方ない。それに、川北君ならできるよ。」
「・・・え?」
急に川北君に話を振ったことで、驚いたように返事をする。
「今までピッチングを見てきて、コーナーはちゃんとつけている感じだった。しかも、相手の下位打線はタイミングをつかめていない。だから、このピンチを凌ぐことができると思う。」
そう訴えると、みんなが顔を見合わせる。
「大丈夫、逆転されてもトップには回さないように死ぬ気で守る。そうだろみんな?」
「・・・時々無茶言うよな、お前。」
裕太に返され、笑ってしまう俺。
それにつられて、みんなも笑顔になった。
「そうだな、後ろは俺らが守ってやらないとな。」
ショートの大本君が喋る。
みんながその言葉に大きくうなずき、タイムは終了した。
それぞれが川北君にエールを送って戻っていく。
そして、5番バッターが打席に入った。
今のタイムが効いたのか、川北君は、少し笑っているように見えた。
そして投げる一球目、内角いっぱいにストライク。
2球目、3球目は外れて、2ボール1ストライク。
4球目・・・川北君の投げたボールは、無情にも甘いところに行ってしまい、センターを越える二塁打になってしまった。
同点に追いついたことで、向こうのベンチは大騒ぎ。 紅 1-1 白
(やっぱり逃げ切りというわけにはいかないか・・・。)
今の川北君の球数は50球、多分まだ問題はないだろうけど、俺にはもう1つ心配事があった。
そう、5番が出たということで、絶対に4回で回ってくるあいつ・・・伊原との対戦だ。
さっきの打席では、伊原が焦っていた分、力が入っており、打球も飛ばなかったが、今度は違う。
そして、川北君は同点にされた動揺からか、6番に四球を与えてしまった。
これでノーアウト1,2塁。
次の7番は、1打席目は三振をしており、タイミングも合っていなかったバッターだ。
「川北君!落ち着いていけば取れるぞ!!」
俺は川北君に声をかけて、落ち着かせるように促した。
その声かけは功を奏したのか、7番を遊併に取り、2アウト3塁になった。
(ここがターニングポイントだな・・・。)
打席に立つ、伊原。
「まさか・・・ここまで追い詰められるなんてなァ・・・川北ァ。」
「でも、いい顔できんのもここまでだァ・・・テメェの息の根を止めてやるッ!!」
気合の塊になっている伊原に、少しおびえた様子の川北君
しかし、川北君が伊原に対して真っ向から言い放った。
「・・・負けない!!もう・・・馬鹿にされないように!!!」
(・・・!!!)
川北君は、すごく弱々しく返事をしていた。
でも、それが今では、怯えていた伊原に真っ向から戦えるようになっていた。
「やっぱ、試合で得るものって、大きいんだな・・・川北君、今は、誰にも負けたくないって目をしてる・・。」
川北君が1球目を投げ、ストライクを入れた。
(前より速くなってる・・・川北君、今までより本気で戦ってる!)
2球目、3球目とボールになったが、4球目はストライクを外角に入れ、これで2ボール2ストライク
「くそッ!負けねェ・・・!!」
追い込まれた伊原は、今までよりも闘争心はあるが、冷静さも保っている。
5球目はボール6球目はファールになり、いよいよ勝負の7球目。
川北君が投げた7球目は、伊原のインコースを突いた。
だが、伊原はフルスイングをしていたため、打球が飛び、その打球は・・・
レフトにポトリと落ちた
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」 紅 2-1 白
結果はポテンヒットとなり、俺たちはついに逆転されてしまった。
逆転されて、失意に満ちるチームメイト。
「諦めてんじゃねぇ!!まだ4回だ!俺たちにはまだ2回あるんだぞ!!」
そんな中、捕手の裕太が大声をあげてチームを明るくしようとした。
それに俺も便乗する。
「まだ1点差だ!逆転の余地はある!!だから、あと1つアウト取って、逆転するぞ!!!」
『オォーー!!!!』
士気が戻ってきたが、川北君は未だに元気がない。
次の9番バッターは二ゴロに打ち取り、相手の攻撃が終わった。
帰る時に川北君に声をかける。
「川北君、次は君からの打席だよ。」
「・・・」
川北君は失意のまま打席に向かう。
「・・・川北君!!」
「・・・」
「君は今、打たれて落ち込んでいるかもしれない。あれだけ気合入れて、負ければ誰でも落ち込むだろう。」
「でも、君は今、リベンジのチャンスが来ているんだぞ!!」
「・・・!!」
そう、さっき打たれているのは伊原だ。
そして伊原は投手。
だったらリベンジできるということを伝えた。
「もし今、打たれて悔しいと思っているのなら、あいつの球、打ち返してこい。そして・・・この試合勝って、あいつに一泡吹かせてやろうぜ!!」
「・・・うん!」
川北君にエールを送り、ベンチに戻っていく俺。
(頼んだぞ・・・川北君。)
伊原は川北君を抑えて勝利したいのか、初球と2球目はカーブで避けている。
3球目もカーブを投げ、ストライク。
(・・・僕はもう、伊原君に怯えて野球をしたくない!!)
伊原は4球目もカーブをなげた。
そして、川北君はそれを叩きつけた。
「ショートッ!!!」
バウンドが高い分、投げる時間は長くなる。
川北君は必死で生きようと、全力疾走をした。
そして、ヘッドスライディングで1塁を触った。
「・・・」セーフ‼︎
『よっしゃぁーー!!!』
6番の川北君が塁に出た。
ノーアウトのランナーが出て、俺たち白チームは大声をあげて喜んでいた。
塁上では起き上がってこちらに向かってガッツポーズをする川北君がいた。
俺はそれに対して、ガッツポーズで返した。
その勢いに飲まれたのか、7番は四球で出塁、これでノーアウト1、2塁。
しかし、逆転ということを意識したのか、8、9番共に三振、投飛となってしまい、ツーアウト1,2塁となってしまった。
そして・・・回ってきた俺の第3打席。
「しゅーん!!頼んだからなぁ!!!」
「打てるぞー!!」
「任せたーー!!」
「抑えろよー!!」
「向かっていけー!!」
「行け伊原ーー!」
気がつけば、俺に対する応援と、伊原に対する応援が大きくなっていった。
(まじかよこの声援の数。これ、本戦だったらどのくらい大きいんだよ・・・)
その声援の中には、あの9人の声もあった。
(あの人たち・・・特に凛、声出しすぎじゃない?アイドルなのに声潰れたらどうするんだよ・・・)
μ’sの9人はヒートアップしてしまったのか、各々が声援をくれている。
(こんなに応援されて・・・嬉しいなぁ)
少し笑って、気を引き締める。
「てめぇで逆転ムードを終わらせてやるよチビ!!」
「上等だよやってみろ!」
初球、カーブでストライク
2球目カーブでファール、追い込まれてしまった。
(カーブが多い、もしかしたら、この打席はカーブのみかもな・・・。)
俺の予想通り、5球目まではカーブで押された。
やばい、相手はまだノーボール。押し切られるかもしれない。
6球目はストレートで高めに投げられた。
(くっ・・・今の見せられたら、カーブのタイミングが狂う・・・!!)
7球目は・・・低めのカーブ、見極めてボールとなった。
8球目、またもカーブ、それを崩されつつファールにした。
「くそ・・・しつこい!!」
「そりゃ今更だろ伊原。俺はこういう打撃なんでな。」
9球目・・・高めのストレートが外れボール、フルカウントとなった。
(この配球でこの釣り球・・・次は、間違いない!!)
「これでおしまいにしてやんよォ!!小せェの!!」
伊原の投げた球は、カーブ。
「だから・・・・・・小せェ小せェ言うんじゃねぇよ!!」カキィン‼︎‼︎
打った打球は・・・左中間へ・・・
『よっしゃぁぁぁ!!!!』
そしてそのまま転がっていった打球は、フェンスまで転がっていった。
1塁ランナーがホームに生還し、逆転! 紅 2-3 白
俺は隙を見て2塁まで走っていった。
そして、塁上でチームメイトに向かってガッツポーズをする。
そして、2番が右飛で終わり、攻撃が終了した。
ベンチに戻ると、俺は味方に手荒い祝福をされた。
裕太のやつは「お前にいいところ持ってかれた!!」と嘆いていた。
それに俺は冗談で、「張り切りすぎて三振する奴とは違うからなぁ〜」と嫌味っぽく言って見せた。
そして、最終回の守備に向かった。
※5回表(最終回)
この最終回、あとアウト3つで俺たちの勝利。
川北君に疲れの色が見えた。
それは、ここまで71球を投げているから、仕方がない。
俺は川北君に話しかけに行った。
「川北君、一つ一つ、落ち着いていこうな。あとちょっとで、俺たちの勝ちだ!」
「・・・うん!・・・あの、柘植君・・・ありがとう」
「アホ、礼なら勝ってから言ってくれ。」
「・・・うん、絶対勝とうね」
「ああ!」
最後の向こうの攻撃は、1番から始まる。
ここまで川北君の投球に対していい打球を飛ばしている。
そして、案の定、川北君は右安を打たれてしまった。
もう一回声をかけようかと思ったが、川北君は全然落ち込んでいなかった。
(戦いの中で得るものがある・・・それは本当のことなんだな。)
改めて確認することになった。
やっぱり、試合に出して成長することは、あるんだなぁ。
相手の2番バッターが打席に入った。
そして、1番バッターがノーアウトでしそうなこと・・・。
俺はそれを捕手の裕太にサインで伝えた。
(裕太!盗塁あるかもしれん。警戒しておいたほうがいいんじゃないか?)
(了解。)
そして、その予想は的中することになった。
川北君の1球目、モーションに入ると同時に1塁ランナーが走った。
「走った!!セカンド!」
「予想通りだったんだよ!!」ビシュッ‼︎
パシィ‼︎「タッチ!」
「アウト!!!」
これで1アウトランナーなし。
ここまでくると、もう相手は士気が下がるだろう。
2番も三ゴロと打ち取り、残るはあと1人。
「川北〜あと1人だ〜!」
「がんばれ川北〜!」
「川北くーん!!」
気がつけば、一面歓声に変わっていた。
そして、その流れの中、3番バッターが二飛に打ちとり・・・
俺たちは、紅白戦で勝利を勝ち取った。
いかがでした?
完全に1話分を1試合にさせていただきました。
ようやく、この話の目的を書くことができたので、個人的に凄く嬉しいです
感想、評価なども待ってます!
では、また