黄金の羊が見た幻想   作:鉄鋼人

4 / 5
あれから約5ヶ月…だと!?

ほんっっっっっとうにすみませんでした。
単なる創作意欲がなかった事実は認めますが、あまりに書かなかった事にはとても反省しております…

まぁ、全国大会のサポートなどの様々な用事が重なりここまで引っ張ってしまいました。
誠に申し訳ございませんでした。

まぁ、期待して待ってくれてる人もいないとは思いますが…
完結しないといけませんしね!ムウも早く戻らないとだし…

とにかく、今回は前回の予告通り、会話&ルーミアの過去編です。
当初の予定では過去編を描き切って更に別パートを描写したかったのですが、メンタルキープをする為描き切ってはいません。

さて、それでは久しぶりに読んでいってくださいな

良ければ良評価お願いいたします^^;


第1章・第4話《休戦》

 

 

 

[幻想郷・博麗神社] 博麗霊夢 SIDE

 

 

 

 

 

 

…結局のところ、よく理解できていない。

今日何が起き何があったのか、振り返るだけでも頭痛がする。

とてもではないが、自分ではついて行ける話ではなく範疇を超えたものであった。

 

まとめられる限りで言えば、幻想郷に忘れ物を取りに来たという向こう側の世界の戦士・黄金聖闘士(ゴールドセイント)のムウが来たということ。

そして、その黄金聖闘士を何故か目の敵にしている〈闇を操る程度の能力〉の妖怪の少女・ルーミアが襲ってきたこと。

 

…最後には、謎の光…ムウ曰く〈スターライトエクスティンクション〉をルーミアが食らい気絶してしまい、ムウと自分に介護されている。

 

といったように、急展開過ぎて誰もついていけないような出来事が起きた。としかまとめられなかった。

 

霊夢たちは気絶したルーミアを、休息場所である神社の裏側の縁側に、日光に当たらぬようにして寝かせつけていた。

 

形としては霊夢がルーミアに膝枕をしてあげており、そのため正座している。

その近くにムウがいて、家の柱にもたれかかっていた。

 

ルーミアが気絶して20数分…ムウは寝かせた直後からずっとルーミアのそばで彼女の顔色を伺っていた。

霊夢はそんな二人を傍らに空を(あお)ぎながらルーミアが起きるのを待っていた。

 

沈黙がいつまでも続く。この沈黙により二人の体と口の蓋を重くしていた。

 

未だにルーミアは瞼を上げない。その状態をムウは未だに見つめ、そばに居着いていた。

 

現在幻想郷では春一番が吹くかどうかの時期であった。暖かくなり始めていたその空気と温度は、ムウとルーミアが発していた緊張状態から解放された霊夢に、とてつもない眠気に誘われかけていた。

 

春の風に吹く。霊夢の黒髪とムウの桃色の髪が(なび)いた。

すると、春の暖かい風が顔に触れたのかルーミアがむず痒そうに顔を動かす。

ルーミアが目を覚ましたのである。

 

 

ルーミア「んん…むぅ…こ、ここは…?」

 

 

霊夢「…!目を覚ましたみたいね、ルーミア?」

 

 

突然、霊夢が視界に入ってきたことに恐らく不意を突かれたのだろう。不思議そうなキョトンとした表情で一瞬固まった。

 

とりあえず身体を起こすべくルーミアは、霊夢のいる場所の畳に手を置きゆっくりと身を上げていく。そして目を眠たそうにしつつ周りを見渡していく。

 

するとそこでムウと顔を合わせてしまう。ムウはホッとしたような安堵の表情を見せたが、逆にルーミアはというと…

 

案の定、今までに起こった事を思い出してきた事を表すようにだんだんと表情が険しくなっていく。

そして牙と爪をたて、まるで警戒する犬のように霊夢を庇うように立ちウゥーと唸っている。

 

 

ルーミア「なんであんたまでここにいるんだよ!意味わかんない!!

 

早く帰れ!!じわじわ嬲り殺されたいのかっ!!」

 

 

霊夢「ちょっと、起きて早々うるさいわね…もう少し落ち着きなさいよ…」

 

 

呆れるようにルーミアを眺め、ついで程度になだめる霊夢。

何故ここにいてあれだけされてまだ帰らないムウを、なだめる霊夢を無視して敵対視するルーミア。

特異な髪をした長髪の男、ムウがその光景を見てやれやれと言いつつ苦笑いをしている。

 

まさに混沌(カオス)とはこのことであろう。そうでなくてももはや調和とはかけ離れていることは確かであった。

 

これでは話が進まなくなる。そう思った霊夢はおもむろに祈祷杖を手にする。そして…

 

 

霊夢「ちょっと落ち着け」

 

 

ゴスッ!!

 

 

ルーミア「ふにゃっ!?」

 

 

…ルーミアの脳天に向かい振り下ろしたのだった。

見事、そして綺麗な正中線にそりルーミアの脳天に直撃した。

 

不意な仕置に眼に涙を潤し、何故といった顔を霊夢に向けた。というかほぼ泣き顔で頬を赤らめて、ただの少女の表情となって霊夢に詰め寄る。

 

 

ルーミア「いったぁ!流石に酷くない!?どういうことこれぇ…

DVものだよこれは…」

 

 

霊夢「一丁前な知識を…」

 

 

どこで手に入れたかよく分からない知識を聞き、尚更呆れた。

 

天敵なのであろうが、いくらこんなピリピリした雰囲気を作ったところでなにか解決できるわけではない。お互いに理解する時は訪れないだろう。というか、それ以前に疲れる。

 

霊夢はこの手の話が一番嫌いだ。ただ自分やこの幻想郷に迷惑がかかる行為に関しては、霊夢自身、それの解決に身を乗り出す所存だ。

 

しかし他人に迷惑をかける且つ、私情で動く事件となると霊夢は一向に動かないし、動きたくなくなる。

 

なにせ、そういうものはその者たち自身の問題だから関わると面倒くさいし、流石にそんなプライベートのところまでは世話しきれないためだ。

 

今回のそれも例外ではないといったところで、妖怪と黄金聖闘士の間の問題は彼ら自身であわよくば解決してもらいたいのだ。

 

しかし、ルーミアがああでは解決には程遠いだろう。なので霊夢はこれを見かねてしまった。

見かねて手を出してしまったのだった。

 

 

霊夢「…まぁ、日に弱いアンタがわざわざここまで来たわけだし…ちょっとゆっくりしていきなさい、ルーミア。

 

それと、貴方もよムウ。この際二人でとことん話しなさいな。

丁度お茶っ葉を切らしてたトコだから、里の方まで行ってくるから。()()()がね。」

 

 

ムウは申し訳なさそうに会釈をしただけであったが、ルーミアはかなり驚いた様子であった。文字どおり[開いた口がふさがらない]といった顔だ。

 

何故なら、先程挙げた通り霊夢は他人のプライベートのために動かない人間であるからだ。そんな霊夢が遠まわしでこのような形になったが、この二人に気を使い話し合いの空間を作ったのだ。確かに驚くだろう。

 

最もそれは霊夢主観で(そう驚いているだろう)と考えたものであり、実際には(なんでこんな奴と二人に!?)という内心がルーミアの考え方に沿っているが正しかった。

 

 

霊夢「その間に仲直りしたらそれで良し。しなければ悪し。よ。お互いこれから、出会う事を極力避けることね。」

 

 

そう話している内に霊夢は軽い身支度を終え、日出る縁側へと立つ。フゥと一息をつきルーミアとムウのいる方向へ首を傾ける。

 

ムウは何故玄関から出ないのかと、ルーミアは本当にこの外道と二人きりにするのかと。

二人の思いが表情に出て霊夢を凝視している。

 

そんな思いを無視するように、少し気だるそうに顔を外へ向けてもう一度ため息を落とす。

 

 

霊夢「そんじゃ、頼んだわよ」

 

 

ルーミア「え、ちょっま、ホントに行っちゃうの!?」

 

 

ムウ「あ、はい…お、お気をつけて…」

 

 

そう三人の一言づつを交わすと、霊夢はいつも通りに空へと飛び立った。なんの初動もなく、ふわりふわりと飛んでいくのだった。

 

ヘリコプターのような周りに風圧を与えるわけでもなく、助走が必要なわけでもなかった。比喩的に言えば飛ぶというより[浮かんだ]の方が近い表現であろう。

 

そう、彼女も能力を持つ一人。【空を飛ぶ程度の能力】を保持する者であった。

 

霊夢は離れていく博麗神社をふと見てポツリと呟いた。

 

 

霊夢「………神社、壊したら承知しないから………」

 

 

 

 

 

[幻想郷・博麗神社] ムウ SIDE

 

 

 

 

 

霊夢「そんじゃ、頼んだわよ」

 

 

ルーミア「え、ちょっま、ホントに行っちゃうの!?」

 

 

ムウ「あ、はい…お、お気をつけて…」

 

 

そう霊夢が告げると、おもむろに彼女の服が揺らぎ始める。

するとその瞬間、なんと彼女は浮かび始めたのだ。ふわふわと、のらりくらりといったマイペースな風に。

ルーミアは至極平然にように、そしてこれからの事がとても嫌で、本当に行くのかといった嫌悪の顔を霊夢に見せていた。

 

ムウは一度、師匠から聞いた幻想郷の住民について思い出す。

 

 

 

ムウの師匠と呼ばれる者『よいか、ムウ…幻想郷の民達が一番侮れん理由は【個々の能力】にある。

 

彼等は幻想郷に入ると稀に、能力を一つ与えられる事があるという。

ある者は空を自在に飛べ、ある者は心を読めるようになり、そしてある者は境界間を自在に移動できたりする事が出来るようになるのだ。

 

故に、上位種妖怪でない者も能力を得た者は優越感に飲み込まれ、幻想郷の頂点たる存在になろうとしてしまい、暴走してしまうのだよ…

 

そして、暴走するがために動きが予測しにくい…だから、油断も隙も与える事ができぬ。

 

幻想郷がこれほど荒れるのも納得がいくな、ムウよ…』

 

 

幼少期ムウ『成る程…確かにここであれば私の修行も捗るという事でしょうか?』

 

 

ムウの師匠と呼ばれる者『それもある…だが、それだけでは無い。

 

私は、行く末にはこの幻想郷すらも平和にしたいと思っている。

今は有象無象が蔓延るこの幻想郷であるが、よく見れば青々とし清々しい自然や、煌々とした夜の星空…その他にもこの場所には皆に知ってもらいたいような良きものが沢山ある。

 

私はな、ムウ…()()としてこの疎外された者達が住まうこの幻想郷をも平和にし、恩恵を与えたいと思っているのだ…

 

理解してくれるな?ムウよ…お前には、牡羊座(アリエス)聖衣(クロス)を与え次第、私のこの計画には手伝ってもらうからな…頼むぞ?ムウ…』

 

幼少期ムウ『……ッ!ハイッ!!』

 

 

 

 

ムウは師匠の言葉を一言一句の全てを思い出していた。

成る程、これが師匠が危惧していた【個々の能力】なのかと、霊夢が飛び去るところを見送りつつ自己解決していた。

 

思い返して見れば、闇を操っていたこの妖怪の少女ルーミアもまた【闇を操る能力】として能力を持っていることが今になり理解する。

 

闇を操る妖怪なんて聞いた事がなかったし、彼女自身は闇に変化しなかった。それは彼女が闇を司るのではなく、ただ()()だけの後天的な能力だという事がある程度考えられるためであった。

 

そして、ムウはさらに想う。既に幻想郷は平和に、自由の中にあるいうことを。

ムウの師匠が手を加えるまでもなく、理想の形に成りつつあるということを、ムウは理解した。

 

何せ、あんな形で邂逅しあんな形で酷い関係性を築いてしまい、なんとも非理想的な形でこの風景を見ることになったものの、人と妖怪の共存という、素晴らしい風景を見たのだから。

 

人と妖怪…人以外の異形の者が争うことなく生活しているこの風景こそムウの師匠が目指したものであろう。

 

これを見たムウは少し満足げになった。師匠が目指した幻想郷の形に直接見る事ができて。

そのことで霊夢が去った後口角がすこし上がった。

《ニヤついた》わけである。

 

 

ルーミア「…なにニヤついてんだよ、キモいぞ」

 

 

ルーミアがこちらを見てまるで差別するような冷たい目でムウを軽蔑した。

 

ムウは目を丸くし、見られていたことに驚く。その後すぐ、さすがに恥ずかしいのか、口元を隠しルーミアのいる反対側へ首をすかさず向ける。

 

しかし時既に遅し、ルーミアの居る方からは「チッ」という悪態付いた音が聞こえてくる。

 

ムウはすかさず顔を普段通り、平常を保った口角の下がっている冷静な顔に戻しルーミアのほうへ向き直す。

 

そこにもう、ルーミアの姿は無かった。

 

というのも、ルーミアは既に居間の丸机付近にある座布団へ座っていたのだ。

 

あの一瞬ともいえる間に舌打ちをして座布団に腰を下ろしていたのは、きっと少しでもムウと一緒に居たくないのだろうということを思わせた。

 

ムウは一瞬にして腰を下ろしたルーミアを探すのに、少し戸惑う。

さすがに座っているとは思っていなかったため自分より背の低い存在を探すのに苦労しているのだ。

 

そんなムウを見て、ルーミアは大きな溜息をどっと吐き頬杖をつく。

 

 

ルーミア「…誰探してんのよ、こっちよ」

 

 

ムウ「えっ、あっ…これは…そこにおられたのですね?」

 

 

ムウは焦るようにしてすぐルーミアのほうに向き直す。

ルーミアがムウに向ける視線は、彼にとってとても痛く、居心地の悪さを噛み締めさせた。

 

座り、頬杖をつくルーミア。

ルーミアの方向を向き、なお立ち尽くすムウ。

 

二人の間には静寂が生み出されていた。

しかも、特別空気の重い静寂が。

 

この重い空気を破るべく、ムウはあらゆる会話の発端を探したが、過去の黄金聖闘士の行いの申し訳なさに、話すどの内容も不謹慎だと思ってしまい話し出せずにいる。

 

しかし、この重い空気は破られる。

 

 

ルーミア「…あぁ〜、もういいから、座りなさいよ…

いつまでも立ってると目障りよ」

 

 

なんと以外にも、ルーミアがムウへと語りかけてきたのだ。

…いや、それはあくまで聞こえのいい表記であるが、実際には彼に命令しているに過ぎなかった。

 

しかし、誠実なムウにはこの手の話し方が一番聞き入るし、効いた。

 

 

ムウ「あ…では、失礼して…」

 

 

ムウは軽く会釈すると、丸机の近くに寄り、空いている座布団の端を掴み自分の前へ持ってくる。

そしてそこへ恐る恐る足を畳んでいき、正座を座布団の上でとり、改めてルーミアと向き合う形となった。

 

実質、丸机を挟んだだけの状態で真正面からの対面である。

 

それは、何故かルーミアのほうが小さい筈なのにムウの方が彼女より小さく見えた。

 

ムウは周りの家具を吟味するかのように見回しているが、中々ルーミアと目を合わそうとはしなかった。

 

その隠そうとはしているが、肩身が狭いと言わんばかりの態度が、彼と彼女の大きさの違いを錯覚させたのだった。

 

そんな態度を察知してしまったルーミアはとうとう、痺れを切らした。

怒るとかの堪忍袋の尾ではなく、真実を知らしめてやりたいという想いを打ち明るべく、半ば復讐心を解放したいという耐えられない我慢をやめたため、痺れを切らしたのだ。

 

 

ルーミア「…あんたは、人間の年齢で考えると若いようだし…

 

教えてあげる…私達があんた達、黄金聖闘士から受けた仕打ちを…

 

そして自分達がその聖闘士やっていることを悔やむことね…」

 

 

ムウ「……!」

 

 

ムウは家具を拝見するのをやめ、背筋を正した。まっすぐルーミアの眼を見た。

 

これからの話を聞く上で、これが最も聞くに相応しい態度だと感じたから。

 

ルーミアはそんな態度を改めたムウを見て、瞼をとじ深く息を吐く。

 

 

ルーミア「…チョーシ狂うわ…」

 

 

 

 

 

***********************

 

 

 

 

 

それは約50年ほど前までに遡り話は始まる…

場所は日本の片田舎…まだその時代の技術が伝わりきらない『村』が舞台となる…

 

…今日は満月が上がっていた。とても輝かしく、いつもなら真っ暗な村道も今日だけはよく周りが見えるくらい、明るくなっていた。

 

その村道に、群青色の着物を着、藁と綱でつくった草履を履いて走る男の子がいた。

かなり急いでるようで息を切らしつつ走っていた。

 

やがて着いたのは、木造のこじんまりとした一軒家。

ほんのりと、橙色のかかった灯りが見えている。

そしてその家の玄関前には茶色色褪(いろあ)せ、髪が薄く残った髪は白くなった老男が立っている。

立っているのが辛いのか、粗削りな杖をついており、まるでペキッと音を立て折れた事を想像させるかのような腰の曲がりようである。

 

先程の駆けていた少年はその老男に飛びついた。

目には僅かながら涙を潤している。

 

 

老男「これ!駄目じゃろうこんな遅くに帰ってきちゃあ!!

いくら明るいからって油断しとったらいかん!!」

 

 

少年「んう、だって、カニさんいたから、おっかけてたら…」

 

 

老男「だってもへったくれもないわぃ!

 

……お前も知っておるじゃろう…この村の伝説…【人食い鬼】の伝説…

この村の男が夜遅くまで都会の方まで出ておって、日をまたいでまでこの村まで帰ってきたという。

そしてこの村の端にある森を近道をして通ったときにふと泣いておる女子(おなご)がおった…

 

その子が心配になった男が近づいていくと、女子の異変…口には牙、手には異様に尖り長い爪に気づきおった…

 

しかし、その頃にはもう既に手遅れ…その男はバカに強い()()()()に胸を掴まれ引き寄せられて…

 

クビに勢い良く噛み付かれた。()()()()()んじゃ。

やがて噛み付いた牙はメリメリと食い込んでゆき…ブチリとちぎり食った。

 

男の腕はまるでしゃぶるように、(すす)るようにズルリと食った。

頭は林檎をかじるようにグシャリと食った。足はまさに肉を豪快にブチリと食うように、喰ったそうな…

骨も残さず、やがてそこには男の血しか残っておらんかった…

 

これをお前に話すのは何度目じゃ?まだわからんか?

 

…儂はお前が心配なんじゃ。大切な息子達の孫…この世にたった一人、同じものは存在せんのがお前なんじゃよ…だから、危険な夜にはお前を歩かせたくないんじゃ…

 

次は気をつけておくれ…儂はお前が死んだらもう生きておれんよ…」

 

 

少年「ごめんなさい…爺ちゃん、心配かけてごめんなさいぃ…」

 

 

老男「わかればいいんじゃ…分かってくれれば…

中に入ろう、今日は儂が獲った猪の肉味噌汁じゃ」

 

 

少年「うん…うんん…!」

 

 

そう、この村には老男が話したような【人食い鬼】の言い伝えがあった。

 

しかしこの言い伝えの真相は、人の血の味を覚えてしまった熊が更に人を襲っていた話が着色された、いわば『子供を言い聞かせるための作り話』として村に伝わっているだけである。

 

そう、()()()()

 

 

???「むむぅ…なんとも酷い言われようなの…」

 

 

その民家の上で、金色の長髪…それでいて黒のロングドレスを着た目の赤い女の子が()()()()()()

 

しかしそれはこれを語るルーミアではなく、ルーミアと()()()()()であった。

 

 

ルーミアの同族「ありゃ、こんな事してる暇はないのー!

早く今月の分を獲ってこないと怒られるのー!!」

 

 

そう、彼女らは決して人間を食べたりはしないのだ。食べるのならば、一番ひ弱な子供・老人を襲っているだろう。

 

しかし、鬼だという点では間違いではなかった。牙もあるし、爪も尖り長い。まさに伝承通りのビジュアルだった。

 

それは彼女達の暮らしを苦しくしていった。見られたらすぐに逃げられるわ、最悪石を投げつけられたりする。

 

勝手に向こうが印象付けたものが一致しただけなのにいい迷惑だ。

 

しかし、彼女らは人間たちを()()()()()()()()()()

それは、昔人間たちに助けられているから。

そのエピソードは省くが、妖怪達は恩義にとても厚い。一度助けてもらったら一族代々恩返しをするものである。

 

ルーミアのこの一族もその恩返し文化のある一族であったのだ。

ついでにこの村には、熊も多く出没して人間にとって危険な山奥から、様々な食物を採取して配るという恩返しをしていた。

 

しかもこの村の住民達は、服装を合わせ爪を隠せば、いくら金髪であろうととても優しく接してくれる。

 

そのため尚一層のこと人間たちことを憎めないという状態が、一族代々続いているのであった。

 

隠している点を除けば、共存といえるであろう形でこの村は時代の技術が来ていなくても、半永久的に潤っていた。

 

ただし、彼女らは隠している点は二つほど存在していた。

一つは前述のとおり、牙と爪を隠していること。

 

もう一つは……

 

 

ルーミアの同族「あー!見つけたなのー!」

 

 

その同族はおもむろに地上へ向かう。その地点とは…

 

墓場であった。

 

同族の子は一つの墓場に目をつけた。おそらく適当な目星であろうが、彼女はそこへ向かい、墓標の前で着地する。

 

彼女は、目を瞑り合掌して誰とも知らない墓に黙祷を捧げる。

そして…

 

 

ルーミアの同族「ナムナム…うんっ。

ごめんなさいなの…これも生きるためなのっ!」

 

 

突然、目の前の墓場を掘り出したのだ。

なんとも罰当たりな行為である。死者への冒涜といっても過言ではない。

しかし、彼女らにはそんな冒涜のつもりはない。

生きるための手段であった。

 

爪に土が入ってくるのも気にせず掘り続ける。

やがて、木目のある箱…棺桶に辿り着いた。

 

それが目当てだったのか、目を輝かせ見えている木の棺桶に手を突っ込んだ。

 

バキッッ!!

 

少女とは形状しがたい腕力で棺桶を掴んだ。そして、あろうことか引っ張り上げて棺桶を掘り出したのだ。

 

その少女は棺桶の蓋をそのまま開けて、死体を()()した。

 

 

ルーミアの同族「うん、しっかり()()の!今月はこれで十分なはずなのー!」

 

 

そう、この村には火葬をする施設がなかった。そのため、死者は棺桶に入れられるとそのまま埋められるという、外国の埋葬方法で墓に死者を埋めていたのだった。

 

彼女はその死体の入った木造の棺桶を鷲掴みし、その場を早々と飛び去っていった。

 

しかしその早々たる行動はほぼ無意味となった。

墓の近くにある一本の木に隠れている鋭い眼光のもとにおいて……

 

 

 

 

 

[とある片田舎・山奥の窪み]

 

 

 

 

 

この田舎の山、その奥には、クレーターのような窪みがある。かなり大きな円形の窪みで、底と地上からの高低差は25mは優に超えるであろう。

 

しかし、底には木々などが生い茂っており、窪みができたのはかなり昔であろうということが判る。

 

そして、目を凝らしてみると木々に隠れているものの、いくつものも建築物が見え隠れしている。

しかも一箇所に集中してだ。

 

村であった。そこに集落があったのだ。しかし、これほど過酷な環境でどのようなもの達が住むのであろうか。

 

そのような疑問はすぐに晴らされる。

 

先ほど、棺桶を運び出していたルーミアの同族の少女がその村めがけて飛んで来たからである。

 

つまり、その妖怪達が済む安息の地であり故郷であったのだ。

ここならば人間たちにバレることもなく、近付くこともない一番の場所であろう。

 

少女は棺桶を持ち、村の広場に降りた。無事到着というわけだ。

 

そこには、主に黒髪の者と金髪の者との2タイプほどあり黒髪はほとんどが大人。

対して金髪はほぼ子供に多く見られた。

 

男はスーツを見に纏い、女はルーミア達と同じロングドレスを着ていた。

 

棺桶をを中心としたその広場では、そんな者達が周りでざわめきあっていた。歓喜のざわめきとして。

 

そんな中から、一人の男妖怪が前にでて少女を思いっきり抱擁した。

 

 

ルーミアと同族の男「よくやったな!ニーナ!これで今月も生きることが出来る!俺は親として誇らしいーぞー!!」

 

 

どうやらその少女の父親であったようだ。

思いっきり少女の頭を撫でている。少女の髪はその分豪快に乱れている。

 

 

ニーナ「やーめーてーよー!みんなの前で恥ずかしいのー!」

 

 

照れと嬉しさと恥ずかしさで、ルーミアと同族の少女・ニーナは頰を赤くした。

 

この種族は人の肉を食う。これも作り物の伝承通りであった。

しかし、一つの違うのは()()()ではなく、()()()食っていた。

 

実は人間の独特のDNAは彼女たちに対して、重要な一部として彼等の身体の中に吸収されるというのだ。

 

それは死んでいてもいいという。大切なのはその構造にあるとか。彼等の…いや妖怪のDNAは穴が多いらしい。そのため生命維持をするにはその穴を埋めなければ、早急に死んでしまうという。

 

その穴を埋める細胞こそ、人間の独自のDNAであるということだ。埋めさえすれば、死滅細胞でも妖怪のDNAを支えることができ、彼等の身体を保つ事ができるらしい。補充に近いのだろう。

 

補充さえすれば、取り敢えず一ヶ月はもつらしい。

そのため、こうして妖怪の代表者が死体を2〜3体持ってきてみんなで分け合うらしい。

 

ニーナは父親の腕の中から、周りを確認する。どうやら彼女が一番乗りのようだった。

 

 

ニーナ「…?あれ、おっ父、()()()()()()()()()??」

 

 

ニーナの父「あぁ、我が家の自慢の次女はまだだなぁ!

まぁ、あの子も優秀だからすぐ帰ってくるさ!!」

 

 

ニーナとその父は、語り部・ルーミアの家族であった。

その日はルーミアも死体運びの担当だったのだ。

 

ニーナは父の腕から思いっきり出て、とびっきりの笑顔で父に言う。

 

 

ニーナ「だったら、上で待っててあげるの!

私がお姉ちゃんだから一番でお迎えしてあげるのー!」

 

 

ルーミア、ニーナの父「そうか!ならこの上で待っててあげな!お姉ちゃん!」

 

 

ニーナ「うんッッ!」

 

 

ニーナは父の許しを得て空へ思いっきり飛び上がる。

 

ニーナの視界は一気に星空と月に照らされた山だけとなった。丁度窪みから出てすぐのところでニーナは停止し、周りをキョロキョロとしてルーミアを探す。

 

 

ニーナ「早く帰っておいでー!ルーミア!」

 

 

ニーナは愛しの妹との帰還に胸を膨らましていた。

 

………彼女の後方に()()()()()()()()()()()()()()()()がある事は、気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 








………はい、いかがでしたでしょうか。

最後の光明とは一体何だったのか。予想はある程度つくと思いますが、次回を乞うご期待ください。

次回は、過去編大詰め、そして霊夢パートをやりたいと思っております。こちらの方もお楽しみに。

また、誤字脱字があった場合はまた報告してくださいね。

それでは、次回へ続く……







………頑張って年内に投稿します………
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