転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます   作:低蓮

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 お久しぶりです。なんだかんだでいつの間にか何ヶ月も経ってしまっていた事に愕然としている低蓮です。
 難産回も難産回。戦闘の描写とか諸々考えていたら、時間の無情さを思い知りましたよ……
 さて、延々と書いていたらそれなりの文章量になってしまったので、今回は三話立てでお送りします。
 森の騒乱編を一気に終わらせようとしすぎたんです……しかも結局片が付かなかったという。
 今日、明日、明後日と三日連続で投稿しますので、お見逃しなきよう! 明明後日に続編が出来ていたら、続けて投稿しますね……まぁ、ないとは思いますが。


二つの戦い1

 時は少し巻き戻る……

 オークロードを探し戦場を彷徨い歩いていたシロガネの前に、一人の男が立っていた。

 人の姿をとっては居たが、その額に生える一本の角がその男の種族を物語っていた。

 元はシロガネと同じオーガであり、今戦場で暴れている数人と同じ、鬼人であると。

 

 

「その姿を見るに……お前も、誰かから名を授かったのか? もしや、ゲルミュッド様か?」

 

 

「……げる?」

 

 

「おっと、違うな。なら誰だ……? ふむ、戦場におかしな連中が居るし、そいつ等の仲間と言ったところか」

 

 

「……はぁ?」

 

 

「ふっ、隠したって分かるぜ。なんたってお前とはつきあいが長かったしな! お前のことは手に取るように──」

 

 

 

 

 

「──すまんが、誰だ貴様は?」

 

 

 

 

 

 目の前で得意そうに話す男に対し、シロガネは訝しげにそう尋ねた。

 その言葉に、男の動きが固まり場に沈黙が訪れる。やがて半笑いと共に男は再起動すると、口元を引きつらせながら再びシロガネを見やった。

 

 

「は、ははは。随分冗談が上手くなったな。一瞬本気なのかと思ったぜ……」

 

 

「冗談? いや、私は至って真面目だが」

 

 

「うおぉい! ちょ、そりゃいくら何でもあんまりだろ?! 俺みたいなイカす奴の顔を忘れたって言うのかよ!」

 

 

「知らん。第一、私にはオーガの上位種などに知り合いはいない」

 

 

「いや、そこはさぁ。ほら、気配とか? なんかそんな感じのでわかるだろ? んでもって、感動の再会と行くところだろ? ここは」

 

 

「成る程、気配か」

 

 

 シロガネはそうぽつりと呟くと、手に持っていた刀の切っ先をぴたりと男に突きつけた。

 そして、ブレのない真っ直ぐな視線で目の前の男を射貫く。

 

 

「生憎、貴様のようなどす黒い気配(・・・・・・)を持つものに、知り合いなど居ない」

 

 

 そう言い切るシロガネに対して、男は醜く顔を崩し顔に手を当てる。

 体を震わせ、手の隙間からいびつな笑い声を漏らし始めた。

 

 

「く、くはははは……そうか、どす黒い気配か。俺の妖気(オーラ)は、そこまで黒くなってるのか?」

 

 

「ああ、見ているだけで反吐が出そうなほどにはな」

 

 

「おいおい、辛辣だな……お前も上位種になって性格変わったんじゃないか? 主に攻撃的な方向に」

 

 

「さぁな、少なくとも今の貴様に優しく語りかけるような感性は持ち合わせていないことだけは確かだ」

 

 

「いや、今も昔も優しく語りかけられた記憶なんてないんだが……」

 

 

 シロガネの言に僅かにあきれつつそう返した男は、やがて気を取り直したようにシロガネに向き直った。

 その顔には他人を見下すような笑みが浮かんでおり、己の力に対して相当な自信を持っていることも窺えた。

 

 

「どうでも良い。そろそろ行って良いか? 私はさっさとオークロードを始末しなければならないんだ」

 

 

「おっと、駄目だ。俺はゲルミュッド様からオークロードを守るように言われているからな。折角再会したんだ、もう少しゆっくりしていこうぜ?」

 

 

「邪魔をする気か? なら良い、排除するだけだ」

 

 

 シロガネは僅かに腰を沈ませると、神速の踏み込みによって男との間を詰め一気に切り上げる。

 重い手応えを確かに感じたシロガネはしかし、それに違和感を覚えた。

 

 

「おいおい、再会の挨拶がそれかよ? 過激にも程があるぜ」

 

 

 果たして、頭上から聞こえてきたのはいかにも元気そうな男の声。

 その声と同時に顔の目の前に突然現れた膝を冷静に防ぎつつ、シロガネは一旦男との距離をとった。

 見れば、男は怪我を負っている様子もなくにやにやとした笑みを浮かべてシロガネを見ている。

 周囲には当然手頃に斬れそうなものはなく、男以外に一体何を斬ったのか。シロガネにはそれが分からなかった。

 

 

「今、確かに貴様を斬った筈だが……一体なにで防いだ?」

 

 

「おいおい、そう簡単にネタをばらすと思うか? そんなことしたら、折角の楽しみが台無しだろうが」

 

 

「貴様の楽しみなど知ったことか。さっさと話せ」

 

 

「はぁ、話す訳ねぇだろってのに……」

 

 

「なら良い、そのまま死ね」

 

 

 シロガネは先程よりも深く腰を落とすと、本気の斬撃を放った。

 なにで防ごうとも、それごと男を叩き切るつもりで放たれたそれを、しかし男は触れもせずに避けてみせた。

 先程の攻撃を受けたことで此は避けられないだろうと判断していたシロガネは、想定外の空振りにバランスを崩す。

 そこへ、男のつま先が襲いかかってきた。

 なんとかそれを肘で受けたシロガネは、勢いに逆らわず後ろに飛ぶことで男との距離を再度離す。

 僅かに痺れた肘をさすりながら、シロガネは目の前の男に注視する。

 初めに出会ったときは、其処らのオーク兵(ごみ)と同じにしか見ていなかったが、相対して評価が変わったのか、それとも別の理由があるのか男から侮れない雰囲気が漂ってきているのを感じる。

 

 

「あくまで邪魔をするつもりか。手加減はもうしないぞ」

 

 

「いやいや、お前さっきの二つとも手加減なんてしてなかっただろ。明らかに殺しに来てたよな?」

 

 

「そんなことないぞ? 只ゴミを掃除しようとしただけだ」

 

 

「うおぉい?! 俺はゴミ扱いかよ! 仮にも相当期間一緒に居たのに?!」

 

 

「ゴミはゴミだろう」

 

 

「鬼かお前!」

 

 

大鬼族(オーガ)だからな。仕方があるまい」

 

 

「そういうことじゃねぇよ……」

 

 

 大きくため息を吐いた男は、仕切り直すように咳払いをするとシロガネへと邪悪な笑みを向ける。

 そして、両の手を広げると歌うように、高らかに言い放った。

 

 

「さぁ、少しばかり語り合おうぜ。折角こうして出会えたことを、世界に感謝しつつな」

 

 

「生憎、貴様と語り合う言葉は持たない……オークロード共々、剣の錆にすらせずに殺してやる」

 

 

 そして、シロガネの神速とも呼べる踏み込みを合図に、戦場にて新たな戦いが始まった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 地上から様子をうかがうには限界があると思っていたら、「妄想(しんゆう)」がまたも魅力的な提案をしてくれた。

 座標軸を固定するだのなんだのって、私にはよく分からないことを説明してきたんだけど、ようはスピードは出ないながらも空に浮けるようになったらしい。

 人が空を飛べない時代は終わったんだな、なんてどうでも良いことを考えながら、私は空から戦場を見下ろした。

 すると、やっぱりというか何というか、リザードマンでもオークでもない第三の勢力が戦場にいるみたい。

 でも、なんていうかその……あの勢力、強すぎない?

 カイやシロガネ達も結構なペースでオークを倒してるんだけど、向こうの勢力はその倍近いペースでオークを駆逐していた。

 正直言って、あんなのと敵対して勝てる連中居るのかしら。なんて思わせるくらいには凄まじい戦いぶりだった。

 うーん、出来ればこの勢力とは仲良くしていたいな……よし、一番偉い人の所に行って、なんとか友好的な関係を築こうっと。

 そうと決まれば、先ずは一番偉い人を探さないと……

 戦場をじーっと見回していたら、ふと私みたいに空を飛んで戦場を見下ろしている存在に気が付いた。

 見た目こそ子供みたいだったけど、私と同じようにしている以上指揮官クラスの人物に間違いない。

 仮に一番偉くなくても、彼女に案内して貰えば良いわけだしね。

 そんなわけで近づこうと思って前に進もうとしたんだけど、ふとこのまま気配を垂れ流しにして近付くのはどうなのだろう、なんて考えが頭をよぎった。

 ここは戦場な訳だし、下手に気配を感づかれたら問答無用で攻撃されかねない。

 よし、ここは気配だけを消して無害アピールをしておこう。いくら何でも、圧倒的に格下に見える相手をいきなり襲ったりはしないでしょ。

 よし、これで近付けば……って、そんなことしてるうちに地面に降りていっちゃった。

 「妄想(しんゆう)」、今の子早く追い掛けて。

 

 

《また無茶を……だから、あんまりスピード出せないんだってば》

 

 

 全く、使えるんだか使えないんだかイマイチ分からないよね、「妄想(しんゆう)」って。

 もうちょっとスピード出すくらい、なんとかならないの?

 

 

《……よし、オーケー分かった。そこまで言うなら存分にスピードだしてあげるよ》

 

 

 なんだ、やっぱりなんとかなるんだ。

 よーし、このまま目標へ全速前進!

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「死ね! 死者之行進演舞(デスマーチダンス)!」

 

 

 ゲルミュッドと名乗った男が放った無数の魔力弾が、リムル達に殺到する。

 しかし、それが破壊をもたらす前に全てがリムルの差し出した手に吸収され、何ももたらさずに終わる。

 それに驚愕しているゲルミュッドに対して、リムルはすかさず反撃に出た。

 その後は、一方的なリンチ。

 ゲルミュッドの攻撃はことごとく通用せず、逆にリムルの放つ攻撃はその殆どがゲルミュッドに対して有効だった。

 最早、勝負は見えた。そう誰もが思ったときだった。

 

 

「ちょ……妄想(しんゆう)のばかあああぁぁぁぁああーーーーッ!!」

 

 

 空から何かが……いや、空から少女が降ってきた。

 その少女は、呆然と見守る皆の前でひとしきり何かを叫びながら、ゲルミュッドのそばに着弾する。

 その光景を見たリムルの頭に、一つのフレーズが浮かんだ。

 

 

「親方、空から女の子が……って、そんなこと言ってる場合か! おい『大賢者』、今の子は無事か?!」

 

 

《解。息はあるようです。ただ、どれ程の傷を負っているかは不明です》

 

 

「生きてはいるのか……だが、何でよりにもよってあんな所に落ちるんだ!」

 

 

 少女が落ちたのはゲルミュッドのすぐそば。

 案の定、リムル達が行動を起こす前にゲルミュッドが動いていた。

 

 

「ふはははは! まだ俺にもツキは残っているようだな! おい、貴様! 散々色々やってくれたな。この無関係の此奴を殺されたくなかったら、大人しくしていろ!」

 

 

 無関係の少女を見捨ててまでゲルミュッドを攻撃できるほどリムルは非情になりきれておらず、苦々しい思いでゲルミュッドの言うとおりに攻撃を止めた。

 リムルの配下も同様で、大人しく言うとおりにするほかはなかった。

 

 

「ふん、漸く黙ったか。本来ならばこの俺自ら殺しているところだが、良いことを思いついた。おい、オークロード! 此奴等を喰って力をつけるのだ!」

 

 

 威勢良く言い放つゲルミュッドのその言葉に、リムルは内心歯がみする。

 もし今女の子さえ降ってこなければ、お前なんかすぐに食べてやっていたのに、と。

 苛立たしげにゲルミュッドを睨み付けたリムルは、とある光景を見てふと今自分で思ったことに疑問を持った。

 

 

「う、ん? 空から降ってきた……んだよな? じゃ、なんであの子は無事なんだ……?」

 

 

 ゲルミュッドの腕に収まる、今しがた空から降ってきた少女。

 その不思議な少女は怪我一つ負うことなく平然としており、状況が理解できないのかしきりに首をひねっていた。

 そして、ゲルミュッドが散々オークロードに向かって喚いているとその何かに反応したのか、ふとその動きを止める。

 そして──

 

 

「……ッ?! な、がああぁぁぁぁああああーー!!」

 

 

 手に持った剣でもって、ゲルミュッドの腕を切り飛ばしたのだった。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 確かに私は全速って言ったし、速かったのも確かだけどさ……突然の自由落下(フリーフォール)は止めてくれないかな「妄想(しんゆう)」さん。

 

 

《君が無理を言うから仕方なくやってあげたんだよ。感謝されこそすれ、文句を言われるなんて心外だね》

 

 

 うーん、それはまぁ、そうなんだけど……もしかして、怒ってる?

 

 

《それなりにね……なんて、冗談だよ。それより、この状況をどうするつもりだい?》

 

 

 あー、うん。どうしよっか……

 私は「妄想(しんゆう)」に言われてもう一度自分の置かれている状況を確認する。

 私の後ろには、何かを喚きながら目の前の魔物にがなりたてる男が一人。

 そして、目の前の魔物はさっき見つけた指揮官クラスとおぼしき人物と、強そうなオーガが数人。

 どうやら、私が人質に取られていて手が出せないらしい。ご迷惑をお掛けします。

 しかし、私にはアスカロンしか武器がないし、アスカロンじゃ斬ることに向いてないから自力での脱出は難しい。

 

 

「オークロード! 此奴等を喰って力をつけるのだ!」

 

 

 うーん、この男。さっきから百面相並みに顔が切り替わって面白いっちゃ面白いんだけど……

 

 

「おい、聞いているのか? 何で動かない!」

 

 

 大声を出すなら、せめて耳から離してやってほしい。耳元で叫ばれると五月蠅いし耳がキーンってする。

 

 

「おい、この木偶! 返事をしろ、うすのろめ!」

 

 

 あー……まぁ、うん。そうだね、無視されたら頭にくるね。でもさ、もうちょっとボリューム下げて……

 

 

「くそが! 力を与えたのは誰だと思ってる! 俺のために働けうすのろが!」

 

 

 …………だあぁぁぁーーーッ!!

 うるさい、耳元で叫ぶなって言ってるよねさっきから! 言葉には出してないけど!

 「妄想(しんゆう)」、これどうにかならないかな? と言うかどうにかしてくれない?

 

 

《まぁ、気持ちは分からないでもないけど……うーん、そうだね。なら一つ助言をあげるよ。アスカロンは君が作り出した武器だ。だから、用途に合わないなら用途に合ったものを作れば良い》

 

 

 ……そういえばそうだったね。

 あれ、でも今新しい武器を造ったらさ、光とか諸々でバレちゃうんじゃない?

 

 

《その心配は要らないよ。あれ、盛り上がると思って光らせただけだから》

 

 

 そういう無駄なところには無駄に力入れるよね、「妄想(しんゆう)」って……

 まぁ、今はそれは置いておこう。そんなことより武器はどうしようかなっと……

 ……特に思いつかないから、よく斬れる刀ってことで。

 抗議のために伝説級の武器を造り出すっていうのもなんかあれだし……

 

 

 咄嗟に思いつかなかった言い訳を誰に聞かせるでもなく悶々と考えていたら、アスカロンを持っていた手に少しずっしりとした重みが伝わってきた。

 アスカロンは細剣だったけど、今回は漠然と刀って思っただけだから、思いのも当たり前か。

 さて、それじゃ抗議の意を示させて頂きましょうかっと。

 

 

「ぐ……この。おい、オークロードよ! 貴様名を与えた恩を忘れたか! さっさと此奴等を殺して魔王に──」

 

 

 うん? オークロード?

 そういえば、私たちってオークロード倒しに来たんだっけ。

 つまり、そのオークロードに命令しようとして無視されてるこの悲しい男は、ついでに倒しても問題ない相手だよね?

 それじゃ、遠慮なく!

 

 

「……ッ?! な、がああぁぁぁぁああああーー!!」

 

 

 変な体勢だったからあんまり力が入ってなかったにもかかわらず、殆ど抵抗もなく男の腕を切り飛ばせた。

 何この刀凄い。今なら何でも斬れそうな気がする。

 私は刀の切れ味に感服しながら、拘束を解かれたために男から数歩距離をとった。

 それにしても、さっき腕を切り飛ばしたときこの男、確かに私が刀を振ろうとしていたのを見ていたはずだ。

 それなのに何も対策をとらなかったなんて……もしかして、マゾヒストだったりするんだろうか。

 

 

《かもしれないね。まぁ、物理障壁みたいなものをいくつか張ってるし、それで防げると思ったんじゃないかな?》

 

 

 ふーん? それだけしてて刀一つ防げないんじゃ、どうしようもないかませ犬って訳ね。

 さっさと倒した方が私の精神面的にも良さそうだなぁ。

 まぁでも、ここでさっきの子に力を見せれば、少しは話しを通しやすくなるかもしれないし、この男には存分に役に立って貰おう。

 チャキ、と刀の切っ先を突きつけると、男は目に見えて狼狽して切っ先から逃れようと身をよじった。

 

 

「オークロード……いや、ゲルドよ! 貴様がさっさと魔王になっていれば……!」

 

 

 顔を歪ませ、オークロードに対して罵声を浴びせ始めた目の前の男に、私のいらだちは増していく。

 どれだけ他人任せなんだ、この男は。少しは自分でどうにかしようという気にはならないのかな?

 いい加減に鬱陶しいから、そろそろ……と思ったんだけど、私が動く前にずっと傍観に徹していたオークロードがついに動き出した。

 声も出さずに進んでくると、手に持っていた肉切包丁(ミートクラッシャー)を高々と振り上げ、それを振り下ろす!

 

 

「あ、がぁ……?」

 

 

 それがどれだけの威力を出すのかは、目の前の男が身をもって教えてくれた。

 オークロードの攻撃は目の前の男の脳天を直撃し、そのまま断ち割ってしまった。

 と言うか、威力も凄いんだけど……なんというか、グロい。

 見えちゃいけないような赤黒いものがびちゃびちゃと飛び散ってるし、更にそれをオークロードが食べ始めるものだから……うぇ、吐きそう。

 

 

『──成功しました。個体名:ゲルド(オークロード)豚頭魔王(オーク・ディザスター)へと進化完了しました』

 

 

 あまりにあんまりな光景に参っていたら、あの例の声が聞こえてきた。

 成る程、豚頭魔王ね……えっと、つまりどういうこと?

 

 

《難しいこと言っても分からないと思うから、簡単に。オークロードがあの上位魔人を食べて力を吸収したことで、『魔王種』に進化したんだ。まぁ、単純に魔王が生まれたと考えれば良いよ》

 

 

 ま、魔王……ところで「妄想(しんゆう)」さん。

配慮は嬉しいんだけど、その一言はなかった方が嬉しかったかな……

 いや、確かに難しいことは分からないんだけどさ。

 それでその、魔王ってあの魔王でしょ? 勝てるの……?

 

 

《可もなく不可もなく……いや、今の君には少し厳しいかな? ただ、やられることもないから戦ってみたら良いと思うよ》

 

 

 ふーん……思えばまともな戦闘って今までに経験してないし、良い機会なのかな……?

 よし、ならやれるところまで……

 

 

「おい馬鹿、下がれって!」

 

 

「うわっ、なにごと?!」

 

 

 いざ勇ましく魔王と対峙しようとした私の肩を、誰かが掴んで引き戻した。

 その横を、先程女の子の周りにいたオーガや牙狼族がすり抜けていき、魔王に攻撃をしかけ始めた。

 それを見つつ、私は肩を掴んで行かせまいとしている女の子に声を掛ける。

 

 

「えっと、なんで肩を……?」

 

 

「いやいや、お前さっき止めてなきゃあれに突っ込んでただろ?」

 

 

「え? それはまぁ……私はオークロードを倒してくるように頼まれた訳だし」

 

 

「はぁ? 一体誰に」

 

 

「コボルド達にだけど……そろそろ肩を離してもらっても?」

 

 

「……離したとたんに突っ込んでいったりしないよな?」

 

 

「……し、しないしない」

 

 

「目が泳いでるぞ……」

 

 

 あきれたようにため息を吐かれつつも、なんとか離してもらうことが出来た。

 改めて向かい合ってみると、身長はどっこいどっこいか向こうの方が少し上。

 変な仮面をかぶってるからわかりにくいんだけど、声や姿からすると女の子かな?

 それにしても、変な仮面だ……こう、隠されてるのを見ると、無性に正体を暴きたくなってくる。

 具体的に言えば、この子の素顔を見てみたい。

 

 

「んで、なんで君みたいな子がこんな所に? いや、頼まれたって言うのは聞いたけどさ。と言うか、どっから降ってきたんだ?」

 

 

「え? うんと、どこからって聞かれたら空からだけど……あ、私はミク。貴女の名前は?」

 

 

「そっか、自己紹介がまだだったな。俺の名はリムルだ。……ん? ミク? なんだか、日本人っぽい名前だけど、もしかして……」

 

 

「私は日本人……いや、元日本人かな? って、リムルさん日本人のこと知ってるの?」

 

 

「あぁ、俺はこの世界に転生してきたクチなんだ。そして、俺も元日本人だった。名前は変えてるけどな……まぁ、こんな所でまた同郷と会えて嬉しいよ」

 

 

「またって事は……もしかして、他にもこの世界に来てる人っているの?」

 

 

「あー……まぁ、そうだな。まだちらほらいるんじゃないか?」

 

 

「ふーん、そっか……いつか逢ってみたいなぁ」

 

 

「はは、そうだな……っと、それで話しは戻るわけだけど、あれがどんなものか理解してて戦いを挑もうとしたのか?」

 

 

「え? うん、魔王でしょ? 流石に勝てるとかは思ってないけど、今の自分がどうなのか確かめてみたいなって」

 

 

「そうか……あー……」

 

 

 リムルさんはなにやら仮面の奥で私のことをじろじろ見ているようだ。

 不快なわけじゃないんだけど、そう探られるような視線を受けると居心地が悪い。

 やがて、ついと視線をあげたリムルさんは、静かに首を振りながら私に言葉を投げてきた。

 

 

「同郷をみすみす死なせに行かせたりは出来ないな。考え直してくれないか? 別に、無理して君があれを倒す必要なんて何処にも……」

 

 

 リムルさんが口にしたのは諫めの言葉。

 私じゃ魔王に対抗できないと分析して、私の身を気遣ってくれたんだろう。

 でもね、違うんだよリムルさん。

 私がやるのは、人に言われたからじゃない。……いや、人に言われたからきっかけが出来たんだけど、それでもこのやろうという意思は私のものだ。

 だから──

 

 

「──喰らい尽くせ! 混沌喰(カオスイーター)!」

 

 

「な……全員、その妖気(オーラ)に触れるな! って、おい?!」

 

 

 リムルさんの気が一瞬それた隙に、私は魔王へと突っ込んだ。

 黄色い妖気(オーラ)が私をめがけて伸びてくるけど、その動きはそこまで俊敏なものじゃなかった。

 普段あんなものより速いものを追い掛けている私にとって、それをかいくぐることはそれほど難しいことじゃない。

 下がっていくオーガ達とすれ違うように魔王の前へと辿りつくと、私は刀で魔王に向けて斬りかかった。

 私には剣の才があるわけじゃないから、当然魔王の隙を突いて体に一太刀、とは行かない。

 当然のように肉切包丁(ミートクラッシャー)を間に挟み、私の攻撃を防ごうとする。だけど──

 

 

「──ッ?! ぬぐッ……!」

 

 

 見るからに非力な私の攻撃を弾くはずのその武器は、まるで豆腐を裂くかの如く私の持つ刀によって両断された。

 魔王自身は辛うじて身を捻り回避したけど、今の事実に戸惑っているようだ。

 その様子を確認しつつ、私は一つの検証を開始するべく動き出した。

 

 

 

 

 

 

あとがきに転生する?

〉Yes

No




ゴ「前回、なんか攻撃をまともに喰らってたっすけど、自分の次の出番はいつっすかね」

ガ「ふむ、恐らく次々回までは出番はないであろうな」

ゴ「うへぇ……というか、オリキャラの方が目立ってないっすかね」

ガ「……」

ゴ「……」

ガ・ゴ「「……はぁ」」

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