悪魔のゲーム《魔法少女リリカルロード》 作:サイバー・エンド・ドラゴン
ではよろしゅうお願いします。
ここに……せっせとプログラミングを楽しんでいる一人の天才少女がいる。名をアリシア・テスタロッサ。彼女は今、ゲームを作っている。題材はネットゲー。
彼女の野望は全ての世界をまたにかけた歴史的偉業。自分のゲームで廃人を大量に作ろうと言うのだ。そしてその横には助手が1人。名をゲーム大好きオタクくん。勿論本名じゃない。アリシアが幼馴染のゲーム好きな少年にあだ名をつけ、その手伝いをさせている。だが間違えないでほしい。彼女達は大人ではない。まだ幼い子供だ。
「オタくんこんな感じでどうかな? 面白いと思う? 」
「う〜ん……もっとこう……激しい戦闘とかあったら面白いかもね。そうだ! 魔法は? 」
「魔法かぁ〜……うん! それでいってみよぉ〜! 」
今、歴史的ネットゲームが誕生する瞬間。ただしそのゲームは悪魔の如く、プレイヤーを現実で苦しめる狂気のゲーム。もちろん少女アリシアにその気はない。だができてしまったのだ。偶然……そしてアリシアがあまりにも天才だったが故に。
「あ……あれ? ママの働いてる所が……」
「光? 何だろ「オタくんふせて!? 」 ちょっ!? アッちゃーー
少女達は突然見えた光に呑まれ、逃れようのない呪いを受ける。この年、この瞬間……次元航行エネルギー駆動炉、ヒュウドラの暴走事故が起こった日であった。
これが少女達の運命を決め、さらにアリシアの作ったゲームを悪魔のゲームに染める原因となる。
「アリシア……アリシア!? 目を……目を開けて!? え……これオタ君のメガネ……オタ君はどこに」
アリシアの母、プレシア・テスタロッサもまたこの時道を違えてしまう。娘が死に、その生涯をかけて娘を蘇らせようと考え始めた。ただ……ここでわからない事が一つ。アリシアと一緒にいたはずの少年が消えたのだ。その場にはその少年がかけていた黒縁のメガネしか残されていない。
【ピ……ピ……ピ…………】
ただわかる事も一つだけあった。
【魔法少女……リリカルロード……起動】
アリシアが死ぬ間際で完成させたゲーム。そしてこのヒュードラの暴走事故。この二つは偶然にも噛み合い、ここに無限に進化し続ける悪魔を生み出した。
それは取り除けない無限に広がる生物にしてプログラム。ゲームとして擬態し、プレイヤーの人生を狂わせる狂気のゲーム。
だだしその実態は誰にもわからなかった。26年経った今の今までは…………
「ナノ今よ! 」
「うん! デスブリンガぁぁぁあああああ! 」
魔法少女リリカルロード。それはある時突然リリースされたネットゲーム。ただその制作会社、製作者、共に不明の謎のゲームは瞬く間に世界に広がった。そう……この地球でも。
魔導師、武闘、騎士。その3つの職種を基本としモンスター退治や悪魔、支配者などを倒していくゲーム。協力プレイで世界中どこのプレイヤーとでも繋がっている。そしてそのユーザー数は特定できない程であり、一体何人が参加しているのか全くわからない程の人気だった。
「やったわね、ナノ! 」
「うん、アリちゃんの足止めのおかげだね」
「ふふん、まぁ〜ね! 」
ここに白き魔導師とオレンジの騎士がいた。森でモンスターを倒したのだ。2人はリアルの友達。そして小学3年生とまだ幼い女の子だ。
でもこの白い魔導師。高町なのはは、このゲームにドップリハマっている。始めて数ヶ月だが、友達とかなりの頻度で遊んでいた。しかしそんなある日の事。
彼女は異変に気付く。
「あれ? こんな項目あったっけ? えっと……」
いつも通りゲームを開くとそこには見慣れない項目があった。タイトルに1つ項目が増えているのだ。
その内容とは……
『個別ストーリー』と言う項目。なのははそれを躊躇せずクリックした。すると彼女のアバターでストーリーが始まった。なのははそれを進めていく。
まず彼女は一般人から始まる。まるで彼女のゲームでの始まりをなぞるかのように、ストーリーは完成されていた。これは新手のサービスなのだろう。なのはは面白いこのストーリーに釘ずけになった。
一般人だった彼女は森の獣道で小動物に出会う。それは赤い玉を首にぶら下げたフェレットだ。怪我をしているそのフェレットを彼女は村の医者に見せる。幸い大した怪我ではなかった為、彼女は医者にフェレットを任せて自分の家に帰った。
だがその夜、彼女は頭に響くような声を聞いた。不思議なその声。彼女はすぐに家を出た。自分が助けを求められている。彼女は無意識に走り出していた。
「ど、どうなるの? 」
走り出した彼女が向かったのは、あのフェレットのいる医者の家。なんとなく、彼女はそこに行かなきゃいけない気がしたのだ。すると医者の家は粉々に壊れていた。
彼女がそこで見たものは傷だらけのフェレットと魔獣。その首にはやはりあの赤い玉が揺れていた。しかし一般人の彼女にはフェレットを助ける事ができない。彼女はただの村人なのだ。
「ダメだよ、早く逃げなきゃ。じゃないと魔獣に……あ! 」
なのははそれを見てゲームの自分のキャラクターを心配した。だがそんな心配をよそに、彼女はフェレットと抱えて魔獣から逃げ出すことに成功する。ただし完全に逃げ切れたわけではない。魔獣は彼女を追った。
そして……もう彼女は逃げる事を止める。正確には逃げずに戦う事を選んだ。そんな彼女の決心を汲むように、フェレットが言葉を発する。彼女は驚いた。もちろんリアルのなのはも。
「喋っちゃったよフェレット…………」
彼女は願った。魔獣と戦う力を。魔獣を一撃で葬る力を。するとフェレットは言う。力を貸してくれと。そう言い、フェレットは自分の首にかかっている赤い玉を渡した。
彼女はそれを手に取り願う、力を。そしてフェレットに言われた通り呪文を詠唱する。すると赤い玉は起動した。それはデバイス。魔導師が武器として扱う相棒。その1つがこの赤い玉。レイジングハート。
「やった! 」
覚醒した彼女は魔獣を砲撃魔法で射抜いた。その威力はまさに一撃必殺。彼女が始めてデスブリンガーを覚え、使った瞬間だった。
そこで……彼女の個別ストーリーはend。その項目はクリック出来ないものとなった。だが彼女は満足感を覚え、さらにこのゲームにハマる。
「それでね、私のキャラがね? 魔導師になったの! 」
「へぇ〜いいなぁ……私そんな項目出てないわよ? 出現条件とかあるのかしら? ね? すずか? 」
「そうだね、私も出てないかな。あ! ねぇ今日モンスター狩りに行かないかな? そろそろ強いの倒せそうな気がする! 」
3人はゲームの話で盛り上がっていた。それはあの個別ストーリーの話。でもなのは意外その項目は出ていないと言う。そんな時、紫っぽい髪をした女の子。月村すずかがモンスター狩りを提案した。
「そうね、少しレベルの高い所行ってみましょう? 」
「うん! 行こう! ん? そう言えばみっちゃんは行かないかな? 」
みっちゃんとはなのはと幼馴染の男の子だ。今はいないが、その子もこのゲームをしている。なのはは放課後に電話をした。男の子は今日は休みであったあった為、伝えられなかったのだ。
「と言うわけでみっちゃんどうかな? 」
「う〜ん……今日はちょっとダメかな。ごめんね、なのちゃん」
「ううん。大丈夫。それじゃまた明日ねみっちゃん! 」
「うん。おやすみなのちゃん」
なのはは電話を切った。内心残念で仕方がなかったが、用があるなら仕方ないと諦める。そしてアリサとすずかと3人でモンスター狩りへと出かけた。
なのは達のパーティはなのはが魔導師でアリサは騎士。すずかは武闘といい感じに分かれていた。アリサが前衛で敵を足止め、すずかがそれをサポート。その隙になのはが砲撃を決めるのが彼女達の基本スタイル。3人ともレベルは低いがチームワークはいい為本来倒せないモンスターも倒す事ができた。
今回は少し違う。
モンスターを倒し、3人はゲームの中でハイタッチした。ただここは今までより少しレベルの高い場所。モンスターの出現頻度が普通より高い。今倒しても次が出てくるのだ。
「え、もう!? 」
「下りなさい、ナノ! ファイヤぁぁぁぁああああ、ブレイク! 」
「アリちゃん!? 」
「下がってナノちゃん! フリージングショット! 」
「スズちゃん!? 」
砲撃担当のなのはは即座に下がるしかなかった。ただ前衛の2人はそろそろHPとMPが尽きる頃合い。まだアイテムも充実していない彼女達はもうはやジリ貧だった。アリサがブレイドで敵を斬り裂き、すずかが拳で叩く。しかし敵が強すぎて倒す事ができなかった。
「あ、きゃっ!? 」
「アリちゃん!? ハッ!? きゃぁぁぁああああ!? 」
「アリちゃん、スズちゃん!? くっ……デス……ブリンガぁぁぁああああああ! 」
アリサとすずかは魔獣にやられHPが1となった。次に何かを喰らえば終わり。なのはは残りMPを考えずに砲撃を撃ちまくった。だがそんな事をしていて後が続くはずがない。なのははMP切れとなり、魔獣はアリサとすずかを襲う。しかしなのはは2人の前に立ちはだかった。
「ダメぇぇぇええええええ! 」
「ナノやめなさい! 」
「ナノちゃん!? 」
たかがゲームで、そう思うかもしれない。何をそんなに必死に守る必要が、何度でもやり直せるではないか。そう思うかもしれない。
「かっ、はっ!? 」
「ナノ!? 」
「ナノちゃん!? 」
だが事このゲームに限っては違う。このゲームで死ぬと言う事はやり直しがきかない。つまり、今まで育ててきたキャラが消滅してしまう事を意味する。
2人を庇ったなのはは今まさにそうなろうとしていた。魔獣の攻撃をまともに受け、残りHPは2人と同じ1。絶対絶命だ。すると、オオカミ型の魔獣はなのはに向かい、炎を吐き出した。これは本来回避不可な技。なのはは死を覚悟した。
だが……
それは1人のヒーローによって防がれた。
「え? 」
「大丈夫!? ナノちゃん? 」
「みっちゃん! 」
「ぐっ!? ……このっ……シールド、スライサぁぁぁああああああ! 」
助けに入ったヒーローはシールドで攻撃を防ぐと、それをそのままブーメランを飛ばすように投げた。すると魔獣の首を片っ端から飛ばし、その場の魔獣を全滅させる。
「よかった……ギリギリだった」
「ミツ、遅いじゃない! もう少しで全滅する所だったんだから! 」
「だ、ダメだよアリちゃん!? せっかく来てくれたんだから。それにミツくん来る予定じゃなかったみたいだし」
「みっちゃんカッコよかった! 」
「ちょっ!? ナノちゃん!? 」
なのははミツに飛びかかった。もちろんゲームの中でなのだが、ミツはこの日3人から盛大に感謝された。ミツの職種はなのはと同じ魔導師。ただ本職は防御。ただしミツの場合、レアスキルを持っており、そのシールドを攻撃に転換する事が可能。
レアスキルとはゲーム内のキャラクターが独自に持つ固有スキル。そしてそれはプレイヤーによって違う。アリサとすずかはまだ発現していないが、なのはは表示だけは魔力収束と絶対空間認識力として出ている。まだ使いこなせてはいないようだが、アリサとすずかは羨ましいようだった。
次の日、なのはにとって運命的な……いや、人生が狂う日がやってきた。
「何か聞こえる……」
「え? 何も聞こえないわよ? 」
「う、うん……」
学校の帰り、なのはは頭に響くような声を聞く。何か特別な感覚を覚え、その方向に走り出した。アリサとすずかもその後を追う。
するとそこには1匹も怪我をしたフェレットが。しかしなのははその瞬間、どこかで見たようなデジャビュを覚えた。ただなんだったかと言われればよく思い出せないでいた。
「早く病院に」
「「うん! 」」
3人は走った。怪我をしたフェレットを抱え。ただふとフェレットを見たなのははその首にかかっているペンダントを見て、またしてもデジャビュを感じた。見た事がある。そう思わずにはいられない。
だがその夜なのはは思い出す。このデジャビュの正体を。
それはフェレットを病院に預け、家に帰った夜に起きた。なのははまた声を感じ取った。誰かが助けを求めている。放っておけない。そう思ったら走り出していた。家を出て、感じるがままに走り出す。
するとあの病院に着いた。しかし病院はほぼほぼ半壊状態で、そこにはフェレットが逃げていた。なのははこの瞬間思い出す。デジャビュの正体。それはゲーム。なのはが個別ストーリーをやり、そこで見たストーリーそのものを今体験しているという事だった。
フェレットが逃げ、病院が半壊している訳は黒いもやの怪物。もちろんなのはも最初は目を疑った。ゲームの魔獣のような生物が現実にいる訳がない。だがフェレットがなのはの胸に飛び込んできた事でその疑いは消えた。抱えたフェレットが喋りだしたのだ。ゾワッとした感覚がなのはを襲う。
「ふぇっ!? 喋った!? 嘘だ嘘だ嘘だ!? 」
「助けに来てくれたの? 」
なのははフェレットを抱えて逃げた。とにかく逃げた。しかしなのはの脳裏に逃げ切れないという思考がよぎる。ならどうするのか。戦えばいい。でもどうやって?
なのははゲームの内容を思い出した。フェレットの赤い玉。それでなんとかならないかと。
「ね、ねぇ! それでなんとかならないの? 私が魔法でもなんでも使って! 」
「どうしてその事を……できる! 僕に力を貸してください! 」
なのははフェレットから赤い玉を渡された。ゲームと同じように。そして、まだその存在もわからない。名もわからないそのデバイスに。なのはは呼びかけた。
「僕の言ったとおりに復唱してください! って……あれ? 」
「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て」
「嘘……」
「風は空に……星は天に」
「な、何者なのこの子…………」
「そして不屈の魂はこの胸に。この手に魔法を、レイジングハート」
「どうして名前まで!? 」
「セェェェット、アップ! 」
なのはは起動させるキーを知っていた。それはゲームとまるで同じ物だったのだ。だがなのははその全てを覚え、それが正しいものだと思った。何の疑いもなく。
そしてなのはは変わった。魔法少女の姿に。ゲームの自分のアバターと全く同じ姿として、この場に現れる。
【初めましてマスター。魔法についての知識はお有りですか? 】
「大丈夫、ゲームと同じなら! レイジングハート、お願い! 砲撃1発で、沈めるの! 」
【え……ご存知なんですか? そ、そうですか……オーライ、マイマスター! ……ディバインバスター】
「ターゲット……ロック……今! 」
なのははは敵の黒いもやをロックし、デバイス、レイジングハートの引き金を慣れた手つきで引いた。
「
【ちょっ!? それ違いますよ!? 】
「あはは……もう何が何やら…………」
なのはの砲撃は見事に黒いもやを撃ち抜いた。フェレットは頭が真っ白になり、助かった事も忘れ呆然となのはを見る。これが……なのはにとっての始まり。運命という歯車が、狂い出して瞬間だった。
一方その頃。すずかにも異変が起こり始めていた。それは1人でゲームをやっているすずかに起こった事。
すずかのモニター、そのゲームのタイトル画面に見慣れない項目が存在していた。それは…………
「個別……ストーリー? あ!? これって!? 」
次回もよろしゅうお願いします。