Girls und Panzer  Re.大洗の奇跡   作:ROGOSS

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即戦力、探します!

「で、どうよ。西住ちゃん」

 

「そ、そうですね……たくさん練習すれば何とか……なるかな? とは……」

 

 みほは昨日の紅白戦を思い出し、苦笑いを浮かべた。

 初めて戦車に乗った人が多くいた……と、言うよりもみほ以外初めて戦車に乗ったので結果はあまり芳しいものではなかった。

 近距離でありながら砲撃を外すチーム、最後の最後で連携を維持できなかったチーム、泥に足を取られ走行不能になったチーム。

 

「やっぱそうだよねー。でも、何とかしてくれなきゃ困るんだよね。もちろん、私も協力するけどさ」

 

「私も、せっかくやるんですから皆に上手くなってほしいですけど……」

 

 人に教えるのは、あまり得意なほうではなかった。

 しかも、西住流のように固い戦車をやって欲しいとも思えない。

 これからは、自分が楽しめる戦車道を教えなくてはいけないと考えただけで、正直押し潰されそうだった。

 その気持ちを知ってか知らずか、角谷は干しイモ食べるー? などと聞いてきていた。

 

「そうそう。西住ちゃんには先に言っておこうと思ってたんだ」

 

「何をですか?」

 

「練習試合だよー」

 

「ええっ?!」

 

 まだ初めて数える程しか日が経っていないというのに、もう練習試合を組んだというのか!?

 みほは角谷の無謀さと大胆さに舌を巻いた。しかし、同時にみほは厳しいが苦言を呈さなくてはいけないと決心せざるを得なかった。

 たとえ、どれだけ安全に競技ができるよう改造されているとはいえ、それは実力をそこそこ付けた戦車乗りが扱う場合を想定されているものだ。

 まだ素人の域を脱していない、今の大洗女子学園戦車道が試合に臨んでは、怪我人が出る可能性があるとみほは恐れた。

 

「まだ早すぎる気がします……まずは、しっかり慣れないと怪我人が出る可能性もありますし……」

 

「そうは言ってもねー、もう日程も組んじゃったし。何とかなるでしょ」

 

 会長は何を焦っているんだろう?

 心の中で浮かんだ疑問をそっと胸に仕舞い込み、干しイモを食べ続ける角谷にみほは尚も交渉を続けた。

 

「……今の私達じゃ試合になりません。相手にも失礼になります。もう一輌くらい……即戦力になるチームがあったら別ですけど……」

 

「即戦力ね」

 

「心当たりあるんですか?」

 

 みほが聞くと、今まで窓の外を見ていた角谷が椅子をクルリと回しみほの方へ向いた。

 そして、満面に笑みでこう断言するのであった。

 

「ないっ!」

 

●○●○●

 

 その訪問者は昼休みに訪れた。

 いつものようにⅣ号の仲間で昼食をとっている時だった。彼女はオレンジ色の作業着を着たまま食堂に入ってきたせいか、周りからは奇異の目で見られていた。当の本人はまったくに気にしていないようで、みほの前に来ると笑顔のまま話しかけてきた。

 

「西住ちゃんだよね?」

 

「そうですけど……」

 

「ちょっと話があるんだ。来てくれない?」

 

 彼女はみほだけを半ば強引に連れ出すと、自動車部の部室へと案内した。

 中は工具が散乱しており、自動車のカタログや整備マニュアルといった様々な本が所狭しと並べられていた。

 

「ごめんね? 突然連れてきちゃって」

 

「い、いえ……」

 

「私はツチヤ。よろしくね」

 

「よろしくお願いします……あの、それで要件は……?」

 

「いやぁ、昨日はやりがいあったなぁ」

 

「やりがいですか?」

 

 突然何を言い出すのだろう?

 訝しむみほに気付いたのか、ツチヤは恥ずかしそうに頬をかいた。

 

「ごめんごめん、戦車の修理の話ね」

 

「あ……」

 

 破損した戦車は誰が修理しているのだろう? というみほの疑問が解決した瞬間だった。予算をどれだけ減らせるか、生徒会も苦心したあげく自動車部に修理を頼むことにしたのだろう。

 突然知らされた事実に、申し訳ない気持ちになりみほは思わず謝罪の言葉を表した。だが、ツチヤは良いって良いって、と笑い続けた。

 

「いい経験だったよー! これからもやりたいね!」

 

「それはよかったです……」

 

 嫌々やっているわけではないとわかり、みほはホッとため息をついた。

 

「今日来てもらったのはね、知らせなくちゃいけないことがあるんだ」

 

「知らせなくてはいけないことですか?」

 

「そうそう。実はね、この学校に戦車チームがあるんだよ」

 

「本当ですか!?」

 

 寝耳に水の話だった。

 会長は本当に見つけてきてくれたのか?

 話を進めようとするみほに、ツチヤは迷ったような表情のまま口を開いた。

 

「いやね、ナカジマ先輩の幼馴染がいる関係でよく修理を任されるんだけどさ……戦車道をやってるわけじゃないんだよね」

 

「戦車道じゃない?」

 

「うん、強襲戦車競技(タンカスロン)って知ってる?」

 

「タン……カスロン?」

 

 キョトンとしているみほに、やっぱり知らないかーとツチヤは言うと軽い説明を加えた。

 

「すごいですね。戦車の野良試合なんて」

 

「ね、私も初めて聞いた時は驚いたよ。しかも、そのチームかなりの腕前で、あの界隈だと有名人らしいよ」

 

 かなりの腕前、その言葉にみほは魅かれていた。

 正直な話、野良試合などする人がどのような人柄なのか想像できなかった。

 それでも、今の大洗女子学園戦車道に必要な人材だと直感が告げていた。

 

「まぁ、私もナカジマ先輩に言われて伝えただけだからさ。明日、試合があるみたいだし会長と見に行けば? 多分、会長もそのつもりだよ」

 

「そうですね。わかりました、ありがとうございます!」

 

 みほがお礼を言うとじゃあねー、と言いながらツチヤは部屋を出て行った。

 どんな戦いをしてどんなチームでどんな人達なんだろう? ワクワクとビクビクを抑えきれぬまま、みほは残りの授業を過ごしたことは言うまでもない。




ツチヤさん、好きですよー。
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