Girls und Panzer  Re.大洗の奇跡   作:ROGOSS

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笑顔…?なのです!

「もう、そんなことないってー。服部さんも、私たちと一緒に戦車道をやってくれるって言ってたじゃん」

「だけどさ……」

「もう、梓は気にし過ぎなんだよー。そう思うよね、桂里奈ちゃんも」

「あいっ!」

「あやはどう思う?」

「そうだねー。でも、昨日は打ち上げにまで参加してくれたんだよ? 服部さんも私たちともう、一蓮托生……? だっけ、そんな感じじゃないのかなー?」

「……そうか!」

 

 突然大声を出す澤にウサギさんチームの面々がビクリと肩を震わせる。そんな様子にはまったく気づいていないまま、澤は上機嫌のまま下駄箱へと入っていく。今にでも鼻歌でも歌いそうな様子の彼女にメンバーは、どう声をかけるべきかと迷い続けた。

 

「上機嫌……」

「紗希にはわかっちゃうー? わかるよね?」

「本当に珍しくテンション高いね。何か良い事でも思いついたの?」

「もちろん! 私たちは服部さんと同じ一年生なんだよ! だから、私たちがみんなと服部さんが打ち解けることができるようにするべきだと思うの!」

「そ、そうかな……?」

「そうだよ! そもそも同い年なのにさん付けって変じゃない? よし、今日からは絵音ちゃんって呼ぼうかな。そうと決まれば!」

「あ、梓!」

 

 澤は意気揚々と階段を駆け上がっていく。

 目指す一年生の教室は4階。普段ならば、階段の段数が多いと皆で文句を言いながらゆっくりと上っているが、今日は違った。その足取りは軽い。思いつたことを今すぐにでも実行に移したい。しかもそれが、みほのために繋がるかもしれないならば、なおさらだ。

 絵音はいつも通り、教室の一番後ろの席で読書をしていた。ブックカバーをつけているため、いったいどんな本を読んでいるかはわからない。

 

「戦車道の本を読んでいるのかな……?」

 

 疑問を口にしながら絵音へと近づいていく。

 彼女はまだ気が付いていない。馴れ馴れしいと思われてひかれるかな? 構うものか。

 

「絵音ちゃん、おはよ……」

「ひぃっ!」

 

 とっさに絵音が開いていた本を机の中に隠す。

 あまにり挙動不審な行動に違和感を覚えるも澤は追及しないことにした。そんなことよりも今、絵音を名前で呼ぶことができた自分の勇気を称えていた。

 

「……はよ」

「え……?」

「お、おはよ……」

「ひぃっ!」

 

 絵音の顔を見て、澤は思わず腰を抜かす。

 それは彼女なりの精一杯の笑顔なのだろう。そうだとしても、表現のできない効果音が付きそうなニタリとした顔は、とてもじゃないが笑顔には見えない。ぎこちなく口角が上がり、目は笑っているというよりは、今にでも泣き出しそうな様子を見せている。

 笑いながら泣いている、しかも見方によっては怒っているようにも見えなくもない。

 間抜けな声をあげた澤は、恥ずかしさを押し殺しながら、素知らぬ顔で自分の席へ戻るしかなかった。

 

〇 〇 〇

 

「で……? わざわざ呼び出してまでしたかった話っていうのはそれなの?」

「その言い方はひどくないですか? 大問題ですよ! 大問題! せっかく話しかけてくださったのに……」

「にしても……絵音はもう少し堂々として良いとおもうけどね」

 

 三上が机の上にある本を眺めながらため息ながらにつぶやく。

 放課後、緊急招集をかけられた熊野と三上は渋々ながらも、絵音以外の誰もいなくなっている一年生の教室へと足を運んでいた。

 由多は用事があるらしく、招集には応じなかったが、絵音としては彼女がいてはややこしくなる未来しか想像できないため、都合がよかった。

 

「高校生にもなって恋愛小説読んでいたことをバレたくなくて、変な声あげて驚くやつがいるとはわね……」

「あかんね。うん、あかんよ。絵音。別に何を読んでいてもいいじゃないか」

「それはわかっていますよ! ですけど……その……私なんかが、恋愛小説読んでるなんて思われたら……なんていうか……」

「はぁ……何言ってるんでぃ! 大洗女子学園戦車道に骨を埋める覚悟ができたんだろ!? だったらありのままの自分をさらけ出さないでどうするんでぃ!」

「た、確かに……」

「三上はまともな思考回路の持ち主だからね。話し方に難があるけど」

 

 熊野の突っ込みをスルーしながら、三上がもう一度ため息をつく。

 下校時間までまもなくとなっていた。

 いつまでもショゲている絵音に付き合っていては、いつ来るかわからない見回りの先生になんとどやされるかわかりもしない。

 だが、熊野にも三上にも絵音の気持ちがわからなくもなかった。

 社会に学校にクラスに馴染めず、爪弾きにされた彼女たちだからこそ、共に手を取り合い戦車に乗ってきた。初めて友達を作る機会だったかもしれないのに、それを失ったことに対するショックは計り知れないだろう。

 

「まあ、そうだな。明日もう一度話しかけてみなよ。昨日はびっくりとしたとか何とか適当に理由をつければいいだけだから」

「はい……頑張ります……」

 

 とぼとぼと教室を出ていく絵音の背中を見ながら、今度は熊野がため息をついた。

 

「マーさん。絵音は本当に戦車以外はダメダメだな。普段は強気なくせに、こういう時は……」

「そう言ってあげるな。それを支えてあげるのも、私たちの役割だろ?」

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