ハイスクールD×D~原初の龍神と赤龍帝~   作:火の鳥

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連続更新。


眷属悪魔、悪魔の仕事

 

 

《悠莉side》

 

 

「粗茶です」

「あっどうも」

「ありがとう」

 

俺は朱乃が淹れたお茶を飲む。

 

「うまいです」

「うん、美味だ」

「あらあら。ありがとうございます」

 

ほー、朱乃はお茶を入れるのが上手いな。今度、教わるかな。

 

俺がそう思っていると

 

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい」

「はい、部長」

 

朱乃はリアス先輩の隣に腰をおろす。

 

全員の視線を感じるな。特に木場とリアス先輩から。恐らく俺を眷属にするか見定めているのだろう。木場は俺の正体が分からないから警戒をしているのだけか。

 

俺はそれを感じながらイッセーを見る。

 

「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」

「はい」

「知っている」

 

俺はそれに普通に答える。イッセーにも知識は教えてあるから特に驚いたようすはなかった。

 

何か、余計に視線が強くなったんだが……………

 

俺が内心、溜息を吐くと───。

 

「朝も感じたけど、イッセーは驚かないのね。それにユウも」

 

リアス先輩がそう聞いて来たので、俺はこう答えた。

 

「イッセーは実物を見たことは無かったが文献だけなら、俺が見せたからな。俺の方は小さい頃から賞金稼ぎをしていたから何度も戦った事があるだけだ」

 

まあ……戦った連中は大抵、はぐれやテロリストばかりだったが。

 

リアス先輩はそれを聞くとさすがに驚いた顔をした。

 

「あなたは小さい頃から戦っていたの?」

「ああ。世界を旅するついでにな。とりあえず、話を戻すぞ。イッセーは堕天使の事は知っているから悪魔と堕天使の関係を教えてくれ」

 

俺は話の流れが変わりそうだったので、イッセーに堕天使と悪魔の関係性を説明してくれと言い、流れを戻した。

 

リアス先輩は頷いて話し始めた。

 

「私たち悪魔と堕天使は太古の昔から争っているわ。冥界──人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土で二分化しているの。悪魔は人間と契約し代価をもらい、力を蓄える。堕天使は人間を操りながら悪魔を滅ぼそうとする。ここに神の命を受けて悪魔と堕天使を問答無用で倒しに来る天使も含めると三すくみ。それを大昔から繰り広げているのよ」

「なるほど。分かりました。ということはオカルト研究部は隠れ蓑か何かですか?」

 

まあ、いまは余程のことが起きない限り、戦争なんて起きないだろう。

 

俺はリアス先輩の説明を聞いてそう思った。イッセーもこの部が隠れ蓑だと気づいているようだしな。

 

「その通りよ。オカルト研究部は私の趣味。本当は私たち悪魔の集まりなの」

 

リアス先輩がそう言ったことに俺は納得した。

 

イッセーは何か、考えているようだな。おそらくは───。

 

「………イッセー。あなたがいま考えている事を当てましょうか?」

「……?」

 

リアス先輩は知っているみたいだな。イッセーが何を思っているか。

 

「──天野夕麻」

 

その一言を聞いて、イッセーは目を見開いた。

 

「あの日、あなたは天野夕麻とデートをしていたわね」

「……冗談なら、ここで終えてください。正直、その話はこういう場で話したくない」

 

リアス先輩はイッセーの怒気を受けても動じずに言う。

 

「彼女は存在していたわ。確かにね」

 

リアス先輩はイッセーにはっきりと言う。

 

「イッセー……堕天使は記憶を操るのが得意な種族だ。だから、自身が存在していた証拠を消すことも容易い」

 

俺は堕天使の得意分野について説明する。

 

俺の説明が終わるとリアス先輩は指を一つ鳴らす、すると朱乃が懐から一枚の写真を取り出す。

 

「この子よね? 天野夕麻ちゃんって」

 

イッセーは辛そうな表情をして頷いた。

 

「この子は、いえ、これは堕天使。昨夜、あなたを襲った存在と同質の者よ」

 

これが黒歌の情報にあったことか。だが、本当に闇が関わっているのか?

 

俺はリアス先輩とイッセーの話を訊きながらそう考える。

 

リアス先輩はイッセーの様子を伺いながらも話を続ける。

 

「この堕天使はとある目的があってあなたと接触した。そして、その目的を果たしたから、あなたの周囲から自分の記憶と記録を消させたの」

「目的?」

「そう、あなたを殺すため」

 

イッセーは絶句した。

 

「な、なんで俺が!」

「落ち着いてイッセー。仕方なかった……いいえ、運がなかったのでしょうね。殺されない所持者もいるわけだし……」

「運がなかったって………まさかっ!」

 

まさか、その堕天使……イッセーの神器に気づいたのか? 微弱な反応しかしない神器を?

 

俺は口には出さないが疑問に思い、イッセーを見た。

 

イッセーは何かを確信したかのような顔をした。

 

「あの日、あなたは彼女とデートして、最後にあの公園で光の槍で殺されたのよ」

「やっぱり、あれは夢じゃなかったんですね! だけど、なんで俺が狙われたんですか?」

 

十中八九、神器絡みだろうな。微弱とはいえ、神器に気付いたんだ。敵は多少は出来る存在だな。それにまだ確定じゃないが闇の関与も可能性としてあるからどうなることやら………

 

俺はリアス先輩とイッセーの言い合いを訊きながらそう考えていた。

 

「彼女があなたに近づいた理由はあなたの身にとある物騒なモノが付いているかいないか調査するためだったの。きっと反応が曖昧だったんでしょうね。だから、時間をかけてゆっくりと調べた。そして、確定した。あなたが神器《セイクリッド・ギア》を身に宿す存在だと───」

 

リアス先輩はそう言い、イッセーは何かを考えているようだ。

 

「神器とは、特定の人間の身に宿る、規格外の力。たとえば、歴史上に残る人物の多くがその神器所有者だといわれているんだ。神器の力で歴史に名を残した」

「例を上げれば、ローマ皇帝とかモンゴルの王、チンギス・ハンなどがいる」

「現在でも体に神器を宿す人々はいるのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう? あの方々の多くも体に神器を有しているのです」

 

木場と朱乃も説明するが俺も例をあげて説明をする。

 

リアス先輩も俺たちに続く。

 

「大半は人間社会規模でしか機能しないものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かすほどの力を持った神器があるの。イッセー、手を上にかざしてちょうだい」

 

イッセーは疑問に思っているな。いきなり手を上げろと言われれば、しょうがないか。

 

「いいから、早く」

 

リアス先輩はイッセーを急かし、イッセーは左手を上にあげる。

 

「目を閉じて、あなたの中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみてちょうだい」

「一番強い存在……。ドラグ・ソボールの空孫悟(そらまご さとる)かな……」

「では、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」

 

懐かしいな。昔は俺も神器を出すのに苦戦したものだ。

 

俺は昔を懐かしみしながら……目を閉じて集中するイッセーを見た。

 

リアス先輩はイッセーの顔を見て確認すると───。

 

「ゆっくりと腕を下げて、その場で立ち上がって」

 

リアス先輩は更にイッセーに指示をする。

 

イッセーも腕を下げてソファーから立ち上がる。

 

「そして、その人物の一番強く見える姿を真似るの。心の中で強くね」

 

リアス先輩がイッセーにそう言うと、イッセーは少し恥ずかしがっていた。

 

リアス先輩はイッセーがなかなか、やろうとしないので急かす。

 

イッセーは覚悟を決めて腕を腰だめに構えた。

 

「ドラゴン波!」

 

イッセーはそう言い、腰だめに構えた両手を前方に突き出した。

 

俺はそれを見て、イッセーの左手に目を向ける。

 

「さあ、目を開けて。この魔力漂う空間でなら、神器も容易に発現するはず」

 

リアス先輩はイッセーにそう言い、イッセーもゆっくりと目を開ける。

 

カッ!

 

イッセーの左腕が輝き、輝きはしだいになにかの形を形成していく。

 

そして光が止んだとき、イッセーの左腕には赤色の籠手が装着されていた。

 

遂に目覚めたか……赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》。ただ見た感じだと目覚めただけでドライグはまだ起きていないようだ。

 

「なんじゃ、こりゃぁぁぁぁ!」

 

そう叫ぶ。イッセー。

 

神器《セイクリッド・ギア》は教えていないから驚くのは無理ないか。

 

俺がそう思っていると。

 

「それが神器。あなたのものよ。一度ちゃんと発現ができれば、あとはあなたの意志でどこにいても発動可能になるわ」

 

リアス先輩はイッセーにそう説明する。

 

俺はイッセーを見ると、イッセーの目はキラキラと輝いていた。

 

そう言えば、イッセーはこの手の神秘に満ちた物が好きだったな。錬金術も積極的に学んでいたし。

 

「あなたはその神器を危険視されて、堕天使──天野夕麻に殺されたの」

「この神器のことも夕麻ちゃんに殺されたことも分かりました。だけど、じゃあ何で俺は生きているんですか? あの時、確かに殺されたはずなのに」

 

イッセーは自分が夕麻に殺されたことを理解した上で、なんで自分は生きているのかを聞いた。

 

「瀕死のなか、あなたはわたしを呼んだのよ。この紙から私を召喚してね」

 

リアス先輩は一枚の紙を取り出す。

 

「これは私たちが配っているチラシなんだけど、イッセーはあの日、チラシを配っている使い魔からチラシを手に入れて堕天使に会った。そして、堕天使に攻撃されたイッセーは死の間際に私を呼んだの。私をほど願いが強かったんでしょうね。普段なら眷属の朱乃たちが呼ばれているはずなんだけれど」

 

なるほど。イッセーは死に際に強く願ったんだな、リアス先輩を呼び出せるくらいの何か強いイメージを持って。例えば、本人の髪の色とかな。

 

「召喚された私はあなたを見て、すぐに神器所有者で堕天使に殺されたのだとわかったわ。だけど、問題はここから。イッセーはあと一歩で死ぬところだった。堕天使の光の槍に身を貫かれれば、悪魔じゃなくても人間なら即死。イッセーもそんな感じだったの。そこで私はあなたを見たときに何かの運命を感じたの。だから、イッセーを救う道を迷わずに選んだ」

「やっぱり、あれは俺の夢じゃなかたんだ! 先輩が俺を助けてくれたんですね」

 

イッセーはそう言い、リアスを見る。

 

「そういうことね。ただし悪魔としてね。イッセー、あなたはリアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕悪魔として」

 

リアス先輩はそう言って、俺の方に目を向けた。

 

「ユウ。イッセーへの説明は終わったわ。今度はあなたの番よ。あなたはあの時、人の身でありながら堕天使を圧倒していた。あなたは何者?」

 

リアス先輩はそう言い、俺を見つめる。

 

「俺が何者か……。簡単に言うと賞金稼ぎをしているただの人間だ、としか言えないがそれでは納得はしないのだろう?」

「ええ、そうよ。それだけでは納得することは出来ないわ」

 

うーん……。まだ、言うべきじゃない事が多いからどれを言えばいいのか判断に困るな。だけど、言わないと納得してくれない。

 

俺は喋る内容を考えていると───。

 

「ユウ。私はここの地域を管轄する者としてあなたが何者か追求しなければいけないけど、それを抜きにしても私はあなたを眷属として欲しいわ。学園でのあなたの事はよく知っている。あなたは有名だからね」

「ふ……。それは光栄だな。あのリアス先輩から直々のスカウトとは、ならば俺もそれに少しばかり答えるとしようか」

 

俺はそう言うと、右手に力を込めた。

 

「我が手に現れよ! 『鳳凰』、『火の鳥』」

 

俺は掌の上に神器を顕現(けんげん)させた。

 

「それは神器……?」

「ああ、これが俺の所有する神器……名を鳳凰と火の鳥と言う。見ての通り、刀の神器だ」

 

俺がそう言うと、リアス先輩は頷き、木場は少し反応した。

 

「能力や特性を教えてもらっても良いかしら?」

「その位は構わない。この刀は霊剣と呼ばれる物でな、自身の意思で任意に斬るものを選別することが出来る剣だ。能力は炎を司る剣だから炎を操る力だが、これはただの炎じゃない我が一族の象徴とされた炎だからな」

 

そう言って、俺は手に炎を灯らせた。それをリアス先輩に差し出す。

 

「物は試しだ。この炎を持ってみろ」

「え………? 大丈夫なの?」

 

リアス先輩がそう訊いて来たので、俺は頷いて答える。リアス先輩は恐る恐る、炎を受け取った。

 

「あら……? 熱くないわ?」

「我が一族の炎は任意のものしか燃やさない。あと眷属への誘いは見極めさせても構わないか?」

 

リアス先輩は炎に触れても熱くないのに驚き、興味を持った朱乃たちにも渡しながら、俺の言葉を聞いた。

 

「それは眷属になるのを前向きに考えていると捉えても良いのかしら?」

「そう捉えても構わない。仮に眷属にならなくてもイッセーがそちらにいる以上、俺はリアス先輩たちの協力は惜しまないつもりだ」

 

俺が眷属になることを可能性として入れている事にリアス先輩は笑みをこぼしながら言った。俺はリアス先輩が言ったことに、「そう考えても構わない」と返した。

 

「私は嬉しいけどユウは良いの? あなたにはメリットは1つも無いのに良いのかしら?」

「……今、リアス先輩と俺の運命は重なっている状態だ。ここから交わるのか交差するのかを見極めたい。勿論、リアス先輩の人となりも見るが、そういうのも考えて時間が欲しいだけだ。それだけでは駄目か?」

「ふふふ………悠莉くんは相変わらずですわね。本当に変わらない」

 

リアス先輩が俺にそう聞くと、俺は今考えている事を正直に言った。朱乃は俺の言ったことに何かを感じたのか、いつの間にか背後にいて抱きついて来た。

 

俺が気配を捉えられなかっただと!? そして子猫よ。そんなに睨むな。眼光だけで人を殺れそうで怖いんだが………。

 

「分かったわ。ユウはまだ、保留と。でも新しい眷属と仲間が増えたことには変わらないわ。だから、改めて紹介するわね」

 

バッ。

 

その瞬間、俺とイッセー以外の人の背中から翼が生える。

 

バッ。

 

俺が隣を見るとイッセーにも翼が生えた。

 

俺は驚かないが、イッセーは驚いているな。

 

俺がそう思っていると、木場がソファーから立ち上がり───。

 

「僕は木場祐斗。兵藤一誠くんと神崎悠莉くんと同じ二年生で、僕も悪魔です。よろしく」

 

木場は俺たちに爽やかスマイルを見せながら言った。

 

「……一年生。……塔城子猫です。よろしくお願いします……悪魔です」

 

子猫は頭を軽く下げて、言った。

 

「三年生、姫島朱乃ですわ。オカルト研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ」

 

朱乃は綺麗に頭を下げて、言った。

 

「そして私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー、ユウ」

 

最後にリアス先輩は堂々と言った。

 

俺はそれを聞きながら、これから面白くなりそうだと内心、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

俺は深夜、チャリを全速力で漕いでいた。

 

理由は簡単。チラシ配りと修行のためだ。

 

欲のある人間がこのチラシに願いを込めると、俺たち悪魔が召喚される仕組みだ。

 

だが俺が急いでいる理由はもう1つある。

 

手に持った携帯機器を見て、直ぐさま次の場所を確認すると俺は急いで自転車を漕いだ。

 

チラッ。と一瞬、後ろを見ると───。

 

俺の遠く後ろから土煙を上げながら走ってくる存在がいた。

 

「ゲッ! さっきよりも早い!」

 

俺はそう言って、更に速度を上げると───。

 

ドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

「はははははは!! イッセー、急がないと撃ち落とすぞ。自分で作って何だが、この弾は地味に痛いぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そう言って、俺を追い掛けてくる悠莉。

 

ひぃぃぃぃぃぃ!! 何かテンションが上がってないか、アイツ!? 危険だろう!!

 

俺はそう思いながらも、自転車を漕ぐ。

 

「ぬおおおおおおおおおおおお!! 頑張れ、俺! 逃げ切れば、俺の勝ちだぁぁぁぁ!!」

 

俺はそう絶叫して、今日もチラシ配りと修行の両方をこなした。

 

 

 

 

 

 

あの日、部長の眷属になった日に時は遡る。

 

あの時、出てきた翼はすぐにしまった。日常生活を送るには、不便すぎるからな。慣れてくると飛べるようになるらしいが、飛行の魔術を成功させたことが無い俺ではまともに飛べるのか、怪しい。はたして飛べる日なんてくるんだろうか……。

 

「私のもとに来ればあなたの新たな生き方も華やかになるかもしれないのよ?」

 

リアス先輩はウインクしながら言ってきた。

 

俺は悪魔に転生した代わりに、リアス先輩の下僕として生きないといけないみたいだ。

 

人間から悪魔に生まれ変わった者は、必然的に転生してくれた悪魔の下僕として生きねばならない。それが、悪魔のルール。

 

因みに悠莉はまだ、眷属の誘いは保留ってことになっているから悠莉は除く。

 

だが理解はしたけど、納得をするのは別物だ。

 

「でもね、悪魔には階級があるの。爵位っていうのがね。私も持っているわ。これは生まれや育ちも関係するけど、成り上がりの悪魔だっているわ」

「本当なんですか? いまいち信用出来ない」

 

文句を垂れる俺に、先輩は何やら耳打ちしてくる。

 

紅い髪から良い匂いがして、脳が蕩けそう。あ、これが魔力?

 

「やり方しだいでは、モテモテな人生も送れるかもしれないわよ?」

 

──っ。

 

その言葉が脳内を波紋の如く駆け巡る。

 

「どうやってですか!?」

 

頭で考えるよりも先に言葉が出た。

 

スケベ根性、ここまでくれば大したもんだ。

 

隣を見れば、悠莉は呆れている。

 

「純粋な悪魔は昔の戦争で多くが亡くなってしまったのよ。そのため、悪魔は必然的に下僕を集めるようになったの。新しい悪魔を増やすのは義務に近いものだから。

悪魔にも人間同様に性別があるから子供を生むことができるわ。それでも自然出生で元の数に戻るには相当な時間がかかってしまうの。悪魔という存在は極端に出産率が低いから。それでは堕天使に対抗できない。そこで素質のありそうな人間を悪魔に引き込むことにしたわけ。下僕としてね」

「やっぱり、下僕じゃないですか」

「もう、そんな残念そうな顔をしないで。話はここから。ただそれでは下僕を増やすだけで力ある悪魔を再び存在させることにはならない。だから、悪魔は新しい制度を取り入れたわ。力ある転生者──転生悪魔にもチャンスを与えるようになったのよ。力さえあれば、転生悪魔でも爵位を授ける。そのせいもあって、意外と世間に悪魔は多いわ。私たちみたいに人間社会に潜り込んでいる悪魔も少なくないしね」

 

しかし、悪魔たちも考えたな。実力さえあれば出世が出来て、その出世した悪魔が今度は自分の眷属を持って、その眷属も実力があれば出世しての繰り返しだからな。

 

「じゃあ! やり方しだいでは俺も爵位を!?」

「ええ。不可能じゃないわ。もちろん、それ相応の努力と年月がかかるでしょうけど」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!」

 

俺は叫んでいた。

 

「マジか! 俺が! 俺がハーレムを作れる!? 俺の夢が実現できる!?」

「そうね。爵位を得れば、可能よ。下僕にならあなたのしたいようにしてもいいはずよ」

 

俺の頭の中で雷鳴が轟いた。

 

現実社会じゃ、人間のままじゃ、出来なかったことが悪魔だと可能だと!?

 

ハーレムが夢や幻ではなく、実力さえあれば手が届く場所にあるなんて!!

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーッッ!!!! 悪魔、最高だぁぁぁぁぁぁ!! 夢じゃないよな! 現実だよな! 今なら秘蔵のエロ聖遺物も捨てられ──」

 

俺は上がったテンションを下げて考えた。

 

「いや、アレは駄目だ! 俺の宝だ! マイ・ソウルだ! それとこれは別だ。うん、別だ」

「ふふ。面白いわ、この子」

 

先輩がおかしそうに笑う。

 

「あらあら。部長が先ほどおっしゃっておられた通りですわね。『おバカな弟ができたかも』だなんて」

「すまないな。ウチのイッセーは欲望にバカ正直でな」

 

にこやかに笑う姫島先輩。顔に手をやり、溜息を吐く悠莉。

 

「というわけで、イッセー。私の下僕ということでいいわね? 大丈夫、実力があるならいずれ頭角を現すわ。そして、爵位も貰えるかもしれない」

「はい、リアス先輩!」

「違うわ。私のことは『部長』と呼ぶこと」

「分かりました。部長! 俺に『悪魔』を教えてください」

 

俺の言葉に部長は嬉しそうに声を出す。

 

「ふふふ、いい返事ね。いい子よ。いいわ、私があなたを男にしてあげるわ」

 

そう言って、部長は俺の顎を指でなぞる。

 

うおおおおおぉぉぉぉぉッ!! やってやるぜ!!

 

俺はこの人のもとで悪魔として成り上がる!

 

どうせ、人間には戻れないなら、前を見て突き進むだけだ!

意外にもこの状況を受け入れてる自分に苦笑する。

 

エロくて良かった。変態で良かった。煩悩のままに生きる男で良かった! いま、真剣にそう思える。

人でなくなったから悩むなんて、俺らしくない。もっと、希望を持って生きていこうじゃないか!

 

「ハーレム王に俺はなるっ!!」

 

冷静に考えてみれば、この時俺は部長の魔力に影響されていたんじゃないかと思う。

 

だが、ハーレムを作れるのなら、細かい事は気にしない。

 

俺は心の中でそう決意するのだった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、悪魔人生開始から数日。

 

 

俺は夜中、チャリをひたすら漕いでいた。

 

「悠莉ぃぃぃぃぃぃぃ!! お前、少しは手加減しろよなぁぁぁぁぁぁ!」

 

そう。俺はチラシ配りと悠莉の修行も同時に行っている。

 

ルールは簡単だ。チラシ配りが終わるまで逃げ切ればいいだけだ。

 

悠莉は魔法攻撃は使用しない。その代わり───。

 

「うおっ! おい、悠莉! 今撃った弾はなんだよ! 掠っただけなのにすげぇ痛いんだけど!?」

「はははははっ! この弾はな、最高純度の聖水に数十年も浸した純銀から作られた特別な魔弾だよ。まあ、作るのに時間がかかるからコスト面での課題はまだあるが」

 

そう悠莉は銃火器を使用して俺を討ち取ろうとしている。

※比喩ではなくマジです。

 

だから俺は全力で逃げる! だってまだ死にたくないもん!!

 

おっと。ここ最近の出来事を語っていなかったな。必死に逃げていたから忘れていたぜ。

 

では、どうぞ。

 

 

集まりは旧校舎の部室。悪魔だから時間は当然、深夜。

 

悪魔なので夜や深夜の方が力を発揮できるらしい。

 

夜に力が増し、朝は半減する。俺が最近、朝起きれなかったのはそれが原因だった。慣れれば、そうでもないらしいが。

 

光は毒であり私たちを無にする力だ。そう部長に教えてもらった。

 

光を武器にする堕天使、天使は悪魔の天敵で会ったら逃げろとも言われた。

 

俺が悪魔に転生してしばらく放置されたのは自分の体の変化に自分で気づいて欲しかったかららしい。

時を見て俺を呼び寄せ、真相を話す予定だったのだがその日に偶然、堕天使に襲われたから運命を感じずにはいられない。

 

何はともあれ、俺はリアス・グレモリーの眷属悪魔として、最初に悪魔社会の仕組みを勉強する為に、下積みとしてチラシ配りをやっていた。ついでに悠莉との修行も。

 

部長曰く、最初に両親と出会った時に魔力で両親を『説得』したらしい。

うん、魔力って本当に凄い。

 

しかし、駒王学園が実は部長の領土で、学園の裏の支配者だと言われたときも驚いた。だが、学園の運営側も悪魔と関わりがある人間が多いため、グレモリー家に頭が上がらないようだ。

要するに、学園はほぼ部長の私有物だから、夜中に部室に集まってもお咎めは無しなわけだ。

 

話は戻るが、何故チラシ配りをしていたかというと。

眷属を召喚する魔法陣が描かれたチラシを、部長から渡された機器を使って欲望深い人間がいるところにチラシを投函する。機器のモニターには部長の縄張りマップが表示されており、これで次に何処に向かえばいいのかがわかる。

そして仕事──チラシを通じて、召喚され依頼人と契約し、願いを叶え、代償として代価をもらう。

 

そんなわけで俺は毎夜、自転車を漕いでチラシを配っている。

仕事中は認識阻害の魔法で気づかれないようになっている。

そうでなきゃ、今頃は補導されるか捕まっている。

それと同時に悠莉との修行と称した追いかけっこもしているから尚更だ。

急いで逃げているときに、何回か人を轢きそうになったのはご愛嬌だ。

 

しかし、毎日百枚近く投函しているのに、モニターの反応は尽きない。

それだけ人間は欲深い存在ってことか。

 

一度契約すれば、癖になってまた契約をするために悪魔を召喚するらしい。

昼間は神や天使の時間で、夜は悪魔の時間だという。

チラシは一度しか使えない使い捨てなので、またチラシを投函しないといけなくなる。

つまり、俺の下積み仕事は永遠に続くという事だ。

 

だが、千里の道も一歩から。石の上にも三年。塵も積もれば山となる。などと言うから、小さい石を一つ一つ、積み上げていけば良いだけだ。

 

そして俺もその内、契約を取りたい! 大きな契約を取ればそれだけ評価も上がる。

 

だから今は───。

 

「この死地から生き延びることだぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!」

 

俺は悠莉が撃ってくる銃弾をひたすら躱しながら夜の町を自転車で爆走するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

ある日の放課後。

 

俺たちはに向かって歩いていた。

 

最近はイッセーの修行や鍛錬ばかりで日々を過ごしている。

悪魔の仕事があるから今までのように夜の鍛錬はできないのでチラシ配りと一緒に鍛錬を行っている。

銃を乱射しながら追いかける俺をイッセーが逃げるものだったり、魔力爆撃をする俺から逃げるものだったり……あれ? 全部、イッセーが逃げるやつばかりだな。

まあ、そのお陰で悪魔になってからのイッセーの体力の把握と底上げが予定より、早く終わった。

 

イッセーも朱乃や子猫と仲良くなったみたいだしな。何故か、木場にはよく睨んでいるがなんでだろうか? やはり、イケメンだからか? 謎だ……。

 

俺たちは最近、通い慣れた旧校舎に入り、二階の部室に向かう。

 

「イッセー、そろそろお前に新しい魔術を教えようと思う」

「え!? マジか!?」

「ああ。錬金術の魔術で鉄や木材などの材料を媒介に物を創造して創りだすものだ」

「おお! やっと、創造の魔術を教えてくれるのか!」

「今日はお前の仕事があるから後日、時間を取って教える。リアス先輩には俺から言っておく」

「わかった」

 

俺たちはそんな会話をしながら歩き、部室のドアを開ける。

 

「入ります」

「来たぞ」

 

俺たちが部室に入ると、俺たち以外は全員揃っていた。

 

「来たわね」

 

俺たちを確認するとリアス先輩は朱乃に目を向ける。

 

「はい、部長。イッセーくん、魔法陣の中央に来てください」

「なるほど。遂にイッセーにも契約を取りに行かせるのか」

 

イッセーは朱乃に言われた通り、魔法陣の中央に入る。

 

「ええ、そうよ。ユウ。イッセーのチラシ配りも昨日で終わり。今日からイッセーにも悪魔としての仕事をしてもらうわ」

 

リアス先輩はそう言って、笑顔を向ける。

 

「遂に俺も契約取りですか!」

「ええ。初めてだから、レベルの低い内容からだけど。子猫に予約契約が二件入ってしまったの。両方は行けないから、片方はあなたに任せるわ」

「………よろしくお願いします」

 

子猫はペコリと頭を下げる。

 

「イッセー、頑張れよ。お前の夢のためにも」

「ああ、しっかりと契約を取ってくるぜ!」

 

朱乃がイッセーの刻印を魔法陣に読み込ませて準備が整うと。

リアス先輩がイッセーを呼び、手の平を出させる。

 

リアス先輩はイッセーの手の平に指先を軽くなぞる。

すると、イッセーの手の平が光り、魔法陣が書き込まれる。

 

俺はそれを面白そうに見つめると───。

 

「これは転移用の魔法陣を通って依頼者のもとへテレポートするものよ。契約が終われば自動的に部室に帰れるようになっているから」

 

リアス先輩はイッセーにそう言い、朱乃に目配せをする。

朱乃はそれを見て、魔法陣の中央から身を引いた。

 

「さあ、中央に立って」

 

リアス先輩はイッセーにそう促し、魔法陣の中央に立たせる。

 

すると、魔法陣が青く光り始める。

 

俺はイッセーに

 

「行ってこい、イッセー!」

「おう! 行ってくるぜ!」

 

俺たちはそう言い合うと

 

魔法陣は更に輝きを増し、その輝きが部室全体を覆ったとき。

 

イッセーは転移した───。

 

輝きが治まると、そこには───。

 

イッセーがいた。

 

俺は一瞬、驚いたがすぐに理由がわかった。

 

イッセーは何が起こったのか、わからないみたいだ。

リアス先輩と朱乃も困惑顔だ。

木場は溜息を吐いていた。まあ、こんな理由なら吐きたくもなるか。

 

俺はみんなを代表してイッセーに言う。

 

「イッセー……」

「な、何だよ……」

「そのなんて言えばいいのか………。転移の魔法陣はそれほど魔力を使わないのが特徴でな。人間でも魔力があれば使える。悪魔なら子供でも使える魔法だ」

 

俺がそう言うと、イッセーは顔に疑問を浮かべる。

 

「バッサリと言うと、お前の魔力は子供以下。あまりに低すぎて魔法陣が反応すらしないと言うことだ」

 

俺がそうはっきり、イッセーに言うと

 

「な、なんじゃそりゃぁぁぁぁ!?」

 

絶句する、イッセー。

 

俺は額に手をやった。

 

「……無様」

 

子猫がそう言うと、イッセーはがっくりと膝から床に崩れ落ちた。

 

「あらあら。困りましたわねぇ。どうします、部長」

 

朱乃も困り顔でリアス先輩に訪ねている。

 

「前代未聞だけど、イッセー。足で現場に向かいなさい」

 

リアス先輩がそう言い、イッセーは泣く泣く自分の足で依頼者のところまで向かった。

 

 

 

 

 

 

イッセーが依頼者のところに向かい、子猫も依頼者の元に向かった。木場にも契約が来たらしく、木場も転移して行った後。

 

この部室には俺と朱乃、リアス先輩しかいなくなった。

 

ふむ……この紅茶は美味いな。美味いんだが………。

 

「朱乃……。何でさっきから抱きつて来るんだ?」

「あらあら。悠莉くんはわかっている癖に……」

 

そう言って、更に腕を絡めてくる朱乃。

 

リアス先輩は向かいのソファーに座り、こちらを面白そうに眺めていた。

 

「ふふふ……。朱乃がこんな顔をするのは珍しいわ。本当に面白いわね、ユウは」

「何か、聞きたそうだな。リアス先輩」

「そうね。あなたには聞きたいことが山ほどあるけど聞いても答えてくれないんでしょう?」

 

リアス先輩はそう言って、紅茶を飲んだ。

 

「答えるかは俺が判断しますから、何でも聞いていいですよ?」

「そうねぇ。じゃあ、あなたと朱乃の関係は?」

「無難な質問だな。朱乃とは小さい頃の友達であり、幼馴染だな」

「なるほど。じゃあ、次ね。さっきの質問と同じだけど子猫との関係は?」

「子猫は小さい頃に行き倒れているところを拾った。その後、家に住まわせた。言うなれば、友達であり家族だな。こんなもんか?」

 

俺はそう言い、リアス先輩の質問に答えた。

 

「じゃあ……次は初めて会ったときも言ったけど、あなたは何者?」

 

リアス先輩がそう言ったとき、空気が変わった。

隣を見ると朱乃も真剣な顔をしていた。

 

「俺は何者か……。リアス先輩と敵対するつもりはありませんよ?」

「私は真面目に聞いているわ。全てを答えなくても、少し位は教えて欲しいわ」

「なるほど。今のままでは信用は出来ないと?」

「ええ。そう思ってもらっても構わないわ」

 

そう言い、リアス先輩は薄く魔力を体に纏う。

 

「これは答えではないですが、俺には護るべき存在がいます」

 

そう言い、俺は隣にいる朱乃の肩に手を回した。

 

「それは誰かしら?」

 

リアス先輩は俺にそう尋ねてくる。

 

「朱乃と子猫だ。この二人とは昔、約束したからな。何があっても護ると!」

 

俺が目に力を込めてリアス先輩を見つめると

 

「ふう………。わかったわ。今はそれで信用するけど、いずれは話してもらうわよ?」

 

一応は納得したのか、リアス先輩はそう言った。

 

「そう遠くない内にその時が来るさ。運命(さだめ)が道を示す通りならな」

 

俺はそれだけ言うと、静かに紅茶を飲むのだった…………

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

俺は部長の眼前に立ち、顔を真っ青にしていた。

 

昨日の初契約は結論から言うと破断だった。

依頼者の森沢さんの願いはどれも願いと代価が釣り合わないものばかりだった。

なので、ドラグ・ソボールで意気投合した俺と森沢さんは一晩中、ドラグ・ソボールを語り合ったり、ドラグ・ソボールごっこをして過ごした。

 

「前代未聞だよ」

 

木場は苦笑して言った。

 

そりゃそうだ。契約を取らずにただ語り合っただけなんだから。

 

「……イッセー」

 

低い声で名前を呼ばれた。

 

「はい!」

「契約が取ってこれなかった事については、まあいいわ。それよりも問題なのは、これ」

 

そう言って、部長は例のチラシを手に取った。

 

「……契約後、例のチラシにアンケートを書いてもらう事に成っているのだけれど、『こんなに人と話していて楽しかったのは初めてです。イッセーくんとはまた会いたいです』……。これ、依頼人さんのアンケートよ」

 

──っ!

 

森沢さん……。俺、何もできなかったのに……。

 

「こんなアンケート、初めてだわ。契約は取れなかったのに、評価は最高なんて。私もちょっとどうしたらいいか分からなくて」

 

部長は怒ってはいなかったようだ。でも、俺が契約を遂行できなかったのは事実だ。

 

「魔方陣から飛べないほど魔力が低い。契約は取ってこれない。でも、依頼者からの評価は最高。前代未聞尽くしだけれど、とても面白いわ。イッセー」

 

部長はそう言って、笑ってくれた。

 

「だけど契約の基本は守ってね」

「はい、部長! 俺、頑張ります!」

 

部長! 次こそは俺、やってみせます!

 

 

 

 

 

 

 

 

そう決意した日の夜。

 

俺に依頼が入り、チャリを飛ばして契約者のもとへ。

 

因みに今回は悠莉も着いてきている。何でもどうやって契約を取るのか興味があるみたいだ。

 

学園から30分の距離だが悠莉が運んでくれたので10分で着いた。

 

俺たちはドアの前に立ち、呼び鈴を鳴らす。返事はすぐに返ってきた。

 

『あいてます。どうぞにょ』

 

野太い声だ。『にょ』? いま『にょ』ってつけた?

 

俺たちは互いに顔を見合わせるとドアを開け、玄関から室内に入る。

 

恐る恐る中を進んで行き、部屋の扉を開けるとそこには───。

 

「いらっしゃいにょ」

 

圧倒的な巨体、そして圧倒的な存在感。

鍛え抜かれた筋骨隆々とした肉体を、ゴスロリ衣装で包み、双眸から凄まじい殺意をむけつつも、瞳は純粋無垢な輝きを放つという矛盾した事をやってのけている。

頭部には、猫の聴覚器官を模したもの、すなわちネコミミをつけていた。

 

漢だった。漢字の漢と書いて「おとこ」と読める漢だった。

 

俺はこれを見ても何も言わない悠莉が気になって隣を見ると───。

 

「……何という存在だ……まだ世界にはこんな猛者がいたとは……!」

 

ええっ!! あの悠莉が戦慄している!?

 

俺は驚いた。あの色々と規格外な悠莉が戦慄する存在がいようとは!

 

俺は唾を飲み込み、頬に流れる汗を拭い、緊張に震える手を握り締めた。

この圧倒的な存在感。今まで戦って来た猛獣が小さく見えるほどの重圧。

俺は直感した。気を抜けば、一瞬で理不尽な死が俺を襲うだろう。

 

「あ、あの……グレモリー眷属を召喚しましたか……?」

 

俺は勇気を振るい、依頼の話をした。

 

カッ!

 

効果音が鳴り、漢の目が光る。

俺たちと漢の間の空間が闘気で歪んだような錯覚さえした。

 

俺は拳を構え、悠莉は俺を庇うかのように前に出た。

 

「そうだにょ。お願いがあって、悪魔さんを呼んだにょ」

 

野太い声から、信じられない言語が飛び出す。

にょ? やっぱりにょ!? 聞き間違えじゃなかったの!?

馬鹿な! そんなことが許されるのか!?

 

「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」

「異世界にでも転移してください」

「多次元世界にでも転移しろ」

 

俺たちは即答した。

無理! 無理だろ! 不可能だろ!

あまりに規格外な願いに俺は頭を抱えた。

隣を見ると、悠莉も頭を手で押さえて苦悩していた。

 

その体なら、異世界を駆け巡っても生きて帰ってこれる! 似たような無茶した俺が太鼓判を押すよ!

 

「それはもう試したにょ」

「「試したのかよっ!」」

 

俺と悠莉の声がハモる。

と言うことは悠莉が言った多次元世界にも行ったのか!? あんた本当に人間か!?

 

「でも無理だったにょ。ミルたんに魔法の力をくれるものはなかったにょ」

「いや、ある意味この状況が魔法や奇跡より凄いけど」

「もう、こうなったら宿敵の悪魔さんに頼み込むしかないにょ」

 

いや、宿敵って………。

 

「悪魔さんッッ!!」

 

ミルたんの一言で部屋全体が震えた。

 

「ミルたんにファンタジーなパワーをくださいにょぉぉぉぉッ!!」

「いえ、もう十分にファンタジーだよ! どんな世界でも頂点に立てますよ」

 

どんな過酷な世界でも生きていけるよ! だから、これ以上の力を求めないで!

 

俺が担当する依頼者は変態ばかりか!? どういうことだよ、これ!?

 

俺が更に頭を抱えていると───。

 

「その願い、俺が叶えよう!!」

 

さっきまで俺と同じように頭を抱えて、沈黙していた悠莉が突然、そう言った。

 

「ミルたん……その願いを叶えよう。君なら悪用することはないだろう」

「えっ!? 悠莉! それは可能なのか!?」

 

俺は悠莉にそう聞いた。

 

「ああ。可能だ、イッセー。昨日、創造の魔術をお前に教えると言ったよな?」

「ああ、確かにそう言っていたな。それがどうしたんだ?」

「それの応用で魔法の杖を創造する」

 

俺は驚いた。そんなことが可能だとは。

 

「それはミルたんを魔法少女にできるにょ?」

「理論上は可能だ」

 

ミルたんが悠莉に聞き、悠莉も可能性としては出来ると答えた。

 

「では、早速準備に取り掛かろう。イッセー、手伝ってくれ」

 

悠莉はそう言って、いつの間に持って来たのか床に魔法陣を描こうとしていた。

俺も息を一つ吐いて、気持ちを切り替えて悠莉の手伝いをした。

 

 

 

 

「よし! これで準備完了だ!」

 

悠莉がそう言い、描くのを終えると俺も指示されたところを描き終わり、手を止めた。

 

「ミルたん。両手を魔法陣の上に置いてくれ」

「こうにょ?」

「ああ、それで大丈夫だ。では儀式を始める」

 

悠莉はそう言って、持ってきたリュックから色々な材料を取り出した。

 

木の棒、宝石、鉱石、剣、銀、用途不明な液体。

色んな物を魔法陣の上に置いた。

 

「これで創るのか?」

「そうだ。これだけあれば創れるだろう。後はミルたんのイメージしだいだ」

「イメージ?」

「この魔術は錬金術にも通じるものだ。だから、創るときはそれを想像するイメージが必要なんだ」

 

悠莉はそう言って魔法陣に魔力を流す。

 

「さあ、ミルたん! 願うんだ! 魔法少女としての君の姿を!」

「ミルたんを魔法少女にしてくださいにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!」

 

ミルたんがそう叫び、魔法陣が一層光り輝くと───。

 

「うおっ!」

「これは………!」

 

光が治まり、視力が回復するとそこには───。

 

「これが魔法少女の力なのにょ……?」

 

薄いピンクのゴスロリ衣装に変わり、キツキツの衣装ではなくしっかりと体にフィットして尚且つ、ネコミミとネコシッポも装着されている。

極めつけはミルたんの持っているものだ。錫杖に近い長さの杖で色は柄がピンクで先端に着いている丸い水晶みたいなのは赤い色だ。

 

テレビで見たことある魔法少女に近い格好だ。

 

「悠莉……成功か?」

「ああ……成功だ」

 

ミルたんが自分の格好を見て、杖を回していると

 

ヒュンッ、ヒュンッ、ヒュンッ!!

 

杖を回すのが早すぎて見えないんだけど………。

 

「どうだ、ミルたん?」

「すごいにょ! 体からファンタジーな力が溢れるにょ」

「それは良かった!」

 

ミルたんは喜んでいるようだ。

これで終わりだけど契約はまた破談だな………。

 

俺は喜んでいるミルたんを見ながらそう思うのだった…………。

 




やっとここまで来ました。

次回は遂にあの子が登場です。

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