ハイスクールD×D~原初の龍神と赤龍帝~   作:火の鳥

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遅くなりましたが更新です。


シスター姉妹、はぐれ悪魔

 

 

《悠莉side》

 

 

ミルたんとの契約が破談?になった次の日。

 

「はぁ………」

「イッセー、気持ちは分かるがいい加減に切り替えろ」

 

俺はイッセーにそう言う。

 

「だってな……連続で契約破談だからな」

 

昨日、ミルたんの願いを叶えてしまったのは俺だ。なので契約は破談になった。

その後、ミルたんと一緒に『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』を見て夜が更けていった。イッセーも一緒に楽しんでいたが家に帰るときに契約が破談になったのを思い出して落ち込んだ。

 

だが、きょうの部活での報告のとき、契約は破談だがアンケートの評価はまたしても高かった。

リアス先輩も前代未聞の出来事の連発に困惑していたしな。

 

「まあ、元気だせ。イッセー。お前の夢への道はまだ、始まったばかりだろ?」

「悠莉……そうだな……こんな始めのところで落ち込んでもしょうがないよな」

 

イッセーはやっと少しだが元気が出たようだ。

 

やれやれ……世話が焼けるやつだ。

 

俺が内心でそう思っていると───。

 

「はわう!」「きゃあ!」

 

俺たちが歩いている道の後方から声が聞こえた。

それと一緒に何かが転がる音もした。

 

「……?」

「何だ?」

 

イッセーと一緒に振り返ると、そこにはシスターが二人も転がっていた。

 

一人は手を大きく広げ、顔面から路面に突っ伏している。もう一人は上にいる子に巻き込まれた感じで路面にうつ伏せで倒れていた。

 

「……だいじょうぶっスか?」

「おい、だいじょうぶか?」

 

イッセーは上で倒れている子の手を引き、俺は下で倒れている子の手を引いた。

 

「おぅぅ。なんで転んでしまうんでしょうか……ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ」

「いたた……アーシア、私を巻き込んで倒れないでよ。えっと、すみません。ありがとうございます」

 

声から察するに、イッセーと同年代か?

 

そう思いながら手を引いて、起き上がらせる。

 

ふわっ。

 

風でシスター二人のヴェールが飛んでいく。

 

スッとヴェールのなかで束ねていたであろう金色の長髪がこぼれ、ストレートのブロンドが夕日に照らされてあざやかに映える。

 

そしてシスターの素顔へ俺の視線が移る。

 

「え…………?」

 

俺は一瞬でその顔に目を奪われた。

 

目の前に金髪の少女がいる。ブルーの双眸が綺麗で可愛い子だ。

だが、問題はそこじゃない。似ているのだ、この子は。

 

あの娘に───。

 

俺は不意に思い出した、あの懐かしい日々を───。

 

 

『××さん。こんにちは』

 

『あ、××さん。今日は起きるのが早いんですね』

 

『私は××さんのことが大好きですよ』

 

 

俺は彼女を見つめて暫し、過去を回想していると───。

 

「あの……どうしたんですか……?」

 

心配そうな表情で彼女は俺の顔を覗き込んでくる。

 

俺はそれを見て、我に返って視線を逸らした。

 

「……すまない。少し君が昔の友人に似ていたもので、つい見つめてしまった」

 

俺がそう咄嗟に誤魔化すと、彼女はハンカチを俺の顔にあてた。

 

「何だ……?」

「泣いています……」

 

俺は慌てて顔に手をやると、頬が濡れていた。

 

「少し、動かないで下さいね。顔をお拭きしますから」

 

彼女が笑顔でそう言うので、俺は頷いてしまった。

 

目だけで横を見ると、イッセーは右隣のシスターの子に見惚れていた。

 

「はい。拭き終わりました」

 

そう言って、彼女は俺の顔から手を離した。

 

「ありがとう」

「いいえ、この位は当たり前です」

 

俺は彼女に礼を言い、落ちたヴェールを拾ってやる。イッセーも正気に返って俺と同じようにヴェールを拾っている。

 

「大きな荷物があるが、旅行かな?」

 

おれが彼女たちにそう質問するが彼女は首を横に振る。

 

「いえ、違います。この町の教会に今日赴任することになりまして……あなた方もこの町の方なのですね。これからよろしくお願いします」

 

蒼い瞳の彼女がそう言い、隣の彼女と一緒にペコリと頭を下げる。

 

この町の教会? この町に教会があったか?

 

俺はそれに少し疑問に思ったが深くは考えないことにした。

 

「この町に来てから困っていたんです。その……私たちは、日本語をうまくしゃべれないので……道に迷ったんですけど、道行く人皆さん言葉が通じなくて……」

 

瞳が翡翠色の彼女はそう言い、困惑顔で二人は胸元で手を合わせる。

 

俺は語学に関しては大抵の言葉は全部、覚えているから大丈夫だがイッセーは……あ、そう言えば悪魔の力でどんな言葉も通じるとこの間、リアス先輩も言っていたな。じゃあ、大丈夫か。

 

「教会なら知っているかも」

「多分、あの古い教会だろ」

 

俺とイッセーがそう言うと

 

「ほ、本当ですか! あ、ありがとうございますぅぅ! これも主のお導きのおかげですね!」

「ありがとうございます! この縁も主の導きのおかげです! ねぇ、アーシア」

「はい! 姉さま! やはり、主は私たちを見捨ててはいないです」

 

涙を浮かべながら、俺たちに微笑む翡翠の瞳の娘と丁寧に礼を言って笑顔を見せる蒼い瞳の娘。

 

俺は彼女たちの胸元で光っているロザリオを見て──。

 

俺は大丈夫だが、イッセーにはキツイだろうな。

 

こうして、俺たちはシスター二人を連れて、教会へと向かった。

 

 

 

 

教会に向かう途中、公園の前を横切る。

 

「うわぁぁぁぁん」

 

その時、公園の方から子供の鳴き声が聞こえてきた。

見ると、転んだのであろう膝が擦り剥けている。

 

「大丈夫、よしくん」

 

母親がいるから大丈夫だと思い、先に行こうとするが俺たちの後ろを着いて来たシスター二人は転んだ男の子のところに歩いて行った。

 

「おいおい」

「優しい娘たちだな」

 

俺たちも二人のシスターのあとを追いかけて公園に入った。

 

二人のシスターは座り込んで泣いている子供の傍へ近寄っていった。

 

「大丈夫? この程度で男の子は泣いてはいけませんよ」(蒼い瞳の子)

 

二人のシスターは子供の頭を優しく撫でる。

 

言葉は通じていないだろう。だけど、二人の表情は優しさに満ち溢れていた。

 

二人のシスターが自分たちの手の平を子供の怪我を負った膝に当てた。

 

次の瞬間、二人のシスターの手の平から淡い緑色と蒼い光が発せられ、子供の膝を照らしている。

 

この力は神器《セイクリッド・ギア》か……。

 

俺はこの光景を見ていると、俺の中にある神器が疼く。おそらく、共鳴しているのだろう。

 

光が消えて、二人のシスターが手を離すと子供の傷は治り、傷のあとなど綺麗に消えていた。

 

治療系の神器は珍しいな。何処の勢力でも欲しがる能力だ。

 

「はい、傷はなくなりましたよ。もう大丈夫」(翡翠の瞳の子)

 

二人のシスターは子供の頭をひとなですると、俺たちの方に顔を向ける。

 

「すみません。つい癖で」(蒼い瞳の子)

 

彼女は指をいじりながら笑う。

 

母親は軽く頭を下げると、子供を連れてそそくさと去ってしまった。

 

「ありがとう! お姉ちゃん!」

 

子供が母親に連れられながらも感謝の言葉を言った。

 

「ありがとう、お姉ちゃん。と言っていた」

 

俺はシスター二人にそう伝えた。彼女たちは嬉しそうに微笑んだ。

 

「その力は………」(イッセー)

「はい。治癒の力です。神様からいただいた素敵なものなんですよ」

「私の力も妹と同じ力なんです」

 

微笑む彼女たちだけど、どこか寂しそうだった。

 

神器所有者はあまり幸福な人生を送れないと聞いているから、色々と苦労しているんだな。

 

隣を見るとイッセーも何処か複雑そうな顔をしていた。

 

俺たちは無言のまま、再び教会の方へ向かった。

 

 

 

 

公園から数分離れた先に古ぼけた教会が存在していた。

 

使われていないと思ったが、誰かがいるな。それも、数十人も。イッセーは……色んな意味で危ないな……。

 

俺は教会にいる者の気配を探り、数が多いことを確認するとイッセーの顔色を見たら、顔色が悪くなっていた。

 

「あ、ここです! 良かったぁ」(翡翠の瞳の子)

「ええ、ここで間違いないです」

 

地図の描かれたメモと照らし合わせながら二人のシスターが安堵の息を吐く。

 

「イッセー、大丈夫か?」

「ああ……少し気分が悪いけどまだ大丈夫だ」

 

俺たちは小声でそうやり取りした。

 

「道案内も終わったから帰るぞ」

「そうしよう。教会に近づくごとに悪寒が止まらないからな」

 

俺たちはそう言い合い、二人のシスターに言った。

 

「迷子のお届けも終わったことだし、俺たちはこれで」

「「待ってください!」

 

別れを告げて、その場を去ろうとした俺たちを二人のシスターが呼び止める。

 

「私と姉さまをここまで連れてきてもらったお礼を教会で──」

「すまないな。俺たちはこれから用事があるから」

「……ですが、それでは」(姉)

 

ここまで案内したお礼に紅茶を振る舞いたいと思っているようだが、俺はともかくイッセーはマズい。ここは回避せねば。

 

俺はイッセーに目配せした。

 

イッセーも頷き───。

 

「俺は神崎悠莉。下の名前で呼ばれる方が好きだから、悠莉でいい。君たちの名前は?」

「俺は兵藤一誠。周りからはイッセーって呼ばれてるから、イッセーでいいよ。君たちは?」

 

俺たちが名乗ると、二人のシスターは笑顔で応えてくれる。

 

「私はアーシア・アルジェントと言います! アーシアと呼んでください!」

「私はアーシアの双子の姉でリーティア・アルジェントと申します。私もリーティアと呼んでください」

「じゃあ、シスター・アーシア。シスター・リーティア。また会えたらいいね」

「では、また会おう。リーティア、アーシア」

「はい! イッセーさん、ユウリさん、必ずまたお会いしましょう!」

「ユウリさん、イッセーさん。縁がありましたら、またお会いしましょう」

 

深々と頭を下げるリーティアとアーシア。

 

俺たちも手を振り別れを告げる。彼女たちは俺たちが見えなくなるまで、ずっと見守ってくれていた。

 

リーティアはあの娘ではないと理解していても感情までは騙せないか………。

 

そう思いながら俺は家に帰る道を歩いた。

 

思えば、これが俺とリーティアの運命が重なった瞬間だった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

「二度と教会に近づいちゃダメよ」

 

その日の夜。

 

俺は部室で部長に厳重注意を受けていた。というより、怒られています。

 

「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで戦闘になるわ。今回はあちらもシスターたちを送ってあげたあなたたちの厚意を素直に受け止めてくれたみたいだけれど、天使たちはいつも監視しているわ。こちらが不穏な動きを見せたらすぐに光の槍が飛んでくるのよ?」

 

そんなに危険なことに足を突っ込もうとしていたのか……。

 

「それに、ユウ! あなたがいながら何故、イッセーを教会に近づけたの?」

「いや……あのシスターたちには悪意や敵意は感じなかったから、大丈夫だろうと思った………分かった。今回は俺が悪かったよ。流石に軽率だったな」

 

悠莉が言い訳を言っていると、部長は物凄い睨んだので悠莉も素直に自分の非を認めた。

 

「イッセー、教会の関係者……特に『悪魔祓い《エクソシスト》』にだけは関わったらダメよ。神の祝福を受けた光は私たちを簡単に滅ぼせるわ。神器所有者が悪魔祓いならなおさら。それはすぐ目の前に死があるのと変わらないわ」

 

部長は真剣な顔で俺を直視する。

 

「はい!」

 

だから、俺も部長の目を見て真剣に答える。

 

「人間としての死は悪魔への転生で免れるかもしれない。けれど、悪魔祓いを受けた悪魔は完全に消滅する。無に帰すの。──無。何もなく、何も感じず、何も出来ない。それはどれだけのことかあなたはわかる?」

 

全てが無になる……。正直に言うと分からない。だけど、少なくともこれは分かる!

 

「部長。存在が無になることは正直に言って分かりません。けど、少なくとも死ぬことは分かります。俺は何回も死んだことがありますから、その度に走馬灯が頭に浮かびますよ。ああ……俺は死ぬんだなって。もう、四桁を超えた辺りから数えるのは止めたんですけどね………あれ? 部長、どうしたんですか?」

 

俺が部長にありのままのことを話していると、部長は呆然としていた。

 

「イッセー………あなた、堕天使に殺される前から死んだことがあったの?」

「はい、そうです。堕天使に殺されたときは正直、焦りました。悠莉がいなかったから」

 

俺がそう言うと、部長は悠莉を見た。悠莉は「余計な事を」みたいな顔をして溜息を吐いている。

 

「ユウ? イッセーが言っていた事はどういうこと?」

「ああー………それはだな………」

 

悠莉が珍しく歯切れが悪そうにしていると───。

 

「あらあら。お説教は終わりましたか?」

「おわっ」

 

いつの間にか、朱乃さんがいて悠莉に後ろから抱きついていた。

 

「………朱乃。前から思っていたんだが何でお前の気配だけは感知できないんだ?」

「あらあら。愛の力に不可能はありませんわ」

「朱乃……何か用事があったのではなくて?」

 

部長が朱乃さんに問いかける。まあ、あのまま放置したら永遠に話が進まないもんな。

 

「討伐の依頼が大公から届きました」

 

 

 

 

 

 

 

 

───はぐれ悪魔。

 

爵位持ちの悪魔に下僕としてもらった者が、主を裏切り、または主を殺して主なしとなった存在をさす。

 

悪魔の力は強い。少なくとも人間よりは。

与えられた力を己のために使いたいと思うのも致し方ないだろう。

そんな半端者どもは主のもとを去り、各地で暴れまわる。自己の欲望のためだけに。

 

それが「はぐれ悪魔」。

 

俺が堕天使のドーナシークに勘違いされたのがこれだ。

 

つまり、野犬。

 

野生の犬は害を出す。見つけたら、主人か他の悪魔が始末することになっている。

 

それが悪魔の絶対のルール。

 

はぐれ悪魔は他の勢力でも危険視されていて、天使、堕天使も「はぐれ悪魔」を見つけしだい殺すようにしている。

 

俺は部長、木場、朱乃さん、子猫ちゃん、悠莉と共に町外れの廃屋近くに来ていた。

 

「なるほど……。ここからでも濃厚な殺気を感じるな」

 

悠莉が楽しそうに言っている。

 

「部長。討伐対象はこの廃屋にいるようですわ」

 

朱乃さんが部長にそう言う。

 

今回、討伐依頼が来た「はぐれ悪魔」はこの廃屋に毎晩、人間を誘き寄せて、喰らっているみたいだ。

人間を喰らう………。もしかしたら、それが悪魔の本来の姿なのかもしれない。

 

今の時刻は深夜。暗闇が支配する時間だ。

 

廃屋の周りは草木が生い茂り、遠目に廃屋となっている建物が見えた。

 

「……血の臭い」

「ああ……腐臭した臭いも感じるな」

 

子猫ちゃんと悠莉が言い、子猫ちゃんは制服の袖で鼻を覆い、悠莉は表情を険しくした。

 

俺には血の臭いは感じないけど、周囲に感じる敵意と殺意はビシバシ感じるぜ!

 

「イッセー。これから戦闘に入るけど、丁度良いから下僕の特性を説明するわ」

「下僕の特性?」

 

怪訝な顔をした俺に部長は言う。

 

「主となる悪魔は、下僕に特性を授けるの。ついでに悪魔の歴史も教えるわ」

 

部長は現在の悪魔の状況を語りだす。

 

「大昔、我々悪魔と堕天使、天使を率いる神は三つ巴の大きな戦争をしたの。沢山の軍を率いて、どの陣営も永い期間、互いに争い続けたわ。その結果、どの陣営も酷く疲弊し、勝利する者もいないまま、戦争は千年近く前に終結したわ」

 

部長の言葉に木場が続く。

 

「悪魔陣営も大きな打撃を受けてしまった。爵位を持った上級悪魔の大半が戦争で戦死してしまった。もはや、軍を保てないほどにね」

 

次に朱乃さんが続く。

 

「純粋な悪魔は最後の決戦で多くが戦死したと聞きます。しかし、戦争が終わっても、堕天使、神との睨み合いは現在でも続いています。いくら、堕天使陣営も神陣営も部下の大半を失ったとはいえ、少しでも隙を見せれば危うくなります」

 

部長が再び語る。

 

「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取ることにしたの。それが『悪魔の駒《イーヴィル・ピース》』」

「イーヴィル・ピース……」

 

前に悠莉に教えてもらった講義でなんか似たような単語を聞いたような……。

 

「爵位を持つ悪魔は『チェス』の特性を下僕悪魔に取り入れたの。下僕となる悪魔の大半は人間から転生した者だからって意味も込めてね。主となる悪魔が『王』。そこから『女王』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』、『兵士』と五つの特性を作り出したわ。軍を持てない代わりに少数の下僕に強力な力を与えることにしたのよ。この制度ができたのは数百年前だけど、これが意外にも爵位持ちの悪魔に好評になったの」

「好評? チェスのルールがですか?」

「駒の強さ、つまり眷属の強さを競うようになったの。その結果、チェスのように実際のゲームを、下僕を使って上級悪魔同士で行うようになったのよ。私たちは『レーティングゲーム』と呼んでいるけれど、このゲームが悪魔の間で大流行。今では大小様々な大会が行われていて、駒の強さ、ゲームの強さが悪魔の地位、爵位に影響するほどになったわ」

 

なるほど。ゲームが強ければ悪魔として立派であり、主として自慢にもなるわけか。

ふーむ。俺もいずれそのゲームに参加するのだろうか?

 

「私はまだ成熟した悪魔ではないから、公式な大会には出れないし、ゲームをする資格もまだ持っていないから、当分はゲームに参加をすることはないわ」

 

ゲームにはまだ参加は出来ないか。怖いのもあるけど興味はあるな。ゲームにはどんな内容があるとか。それに気になることもある。

 

俺の駒の『特性』だ。

 

「部長、俺の駒の役割や特性は何ですか?」

「そうね。イッセーは───」

 

そこまで言って、部長は言葉を止めた。

 

俺も敵の存在に気付き、丹田から気を流し、身体を活性化させる。

 

遠くない……敵は正面から来るか。

 

俺は前方を見据えていると───。

 

「不味そうな臭いがするぞ? でも美味しそうな臭いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 

汚い声だ……。コイツは今まで欲望のまま、力を振るい、人を喰ってきたのか!

 

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しにきたわ」

 

部長が億さずに言い放つ。

 

奥の暗がりから敵……バイザーも姿を現す。

 

その姿は上半身が裸の女性だった。

 

いや……違う。これはまだ身体の半分だ!

 

ずんっ。

 

重い足音が響き、次に姿を現したのは巨大な獣の体。

女の上半身と獣の下半身を持った、キメラに近い存在だった。

 

武器は両手に槍をそれぞれ所持、足は四足あり、全ての足に鋭い爪が生えている。

尾は蛇の姿をしていて、独立して動いている。大きさも結構ある。大体、5mはあるな。

 

俺が悠莉に戦わされた、魔獣や獣よりも姿がバケモノだな。

 

「主の元を逃げ、己の欲求を満たすためだけに他者に迷惑をかけるあなたは恥ずべき存在だわ。グレモリー公爵の名において、あなたを消し飛ばしてあげる」

「こざかしい、小娘ごときがぁぁぁ! 貴様が私に説教をするとは一億年早いわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

見当違いなことで吠えるバイザーに部長はただ鼻で嗤うだけだった。

 

「雑魚ほど自分の行いに気がつかないものね。祐斗!」

「はい!」

 

バッ!

 

木場が部長の命を受けてバイザーに飛び出す。

 

速い! 悠莉ほどじゃないが、俺がなんとか目で追えるほどのスピードか。

 

「イッセー、さっきの続きをレクチャーするわ」

 

部長が俺に言ってくる。

 

「祐斗の役割は『騎士《ナイト》』、特性はスピード。『騎士』となった者は速度が増すの」

 

俺は木場の動きを見る。徐々に速度が増してきて、俺でも動きを捉えることが難しくなってきた。

バイザーも攻撃するが、木場の動きに対応出来ずに攻撃が空振っている。

 

「そして、祐斗の最大の武器は剣」

 

木場はバイザーの背後で一度、足を止めるといつの間にか手に西洋剣を握っていた。

木場は鞘から剣を抜き放ち、バイザーに斬りかかった。

 

斬ッ!

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁあああああああっ!!」

 

木場が剣を高速で振るって、バイザーの両腕を斬り飛ばした。

 

「これが祐斗の力。高速で動き回る足の速さと、達人級の剣さばき。2つが合わさることで、あの子は最速のナイトになれるの」

 

部長の説明を聞きながら、俺はバイザーの足元を見ると、子猫ちゃんがいるのが見えた。

 

「次は子猫。あの子は『戦車《ルーク》』、戦車の特性は──」

「このチビがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ズズンッ!!

 

バイザーの巨大な足が子猫ちゃんを踏み潰したかに見えたが───。

 

ぐぐぐ…………。

 

バイザーは子猫ちゃんを踏み潰しきれていなかった。

 

逆に子猫ちゃんがバイザーの足を徐々に押し上げていく。

 

「『戦車』の特性はシンプル。バカげた力、強靭な防御力。あんな悪魔の力では子猫を潰すことは出来ない」

 

グンッ!

 

バイザーの足を完全にどかす子猫ちゃん。

 

「……チビって言うな」

 

子猫ちゃんがバイザーのどてっ腹に鋭く重いパンチを打ち込んだ。

 

ドゴンッ!

 

バイザーの体が後方に吹っ飛んだ。

 

「最後に朱乃ね」

「はい、部長。あらあら、どうしようかしら」

 

朱乃さんは笑いながら、倒れているバイザーの元へ歩きだす。

 

「朱乃は『女王《クイーン》』。私の次に強い者。『兵士』、『騎士』、『戦車』、『僧侶』、全ての力を兼ね備えた無敵の副部長よ」

 

朱乃さんを睨みつけるバイザー。

 

「あらあら。まだ元気みたいですね?それなら、こんなのはいかがでしょう?」

 

朱乃さんが空に向かって、手をかざす。

 

カッ!

 

「ガガガガガッガガガガガガガガッッ!!」

 

天空から雷がバイザーに落ちて、全身を感電させ、丸焦げにする。

 

「あらあら。まだ元気そうね? まだまだいけそうですわね」

 

カッ!

 

「ギャァァァァァァァァァ!!」

 

再び、バイザーに雷が落ちて、全身を感電させる。

 

更に朱乃さんは三発目を撃ち放とうとして───。

 

「朱乃。魔力の練りがまだ甘い。雷とはこう撃つんだ」

 

カカッ!

 

「ヒデェェェェェェェェェェェェェ!!」

 

何故か、悠莉が参加していた。

 

「あらあら。すごいですわ。悠莉くんも魔法を使えるのね」

「使えるな。それより、朱乃はもっと魔力を練ろ。そうすれば、威力が上がる」

「えっと………こうですか?」

 

ピカッ!

 

「ハンバァァァァァァァァァァァ!!」

 

おいおい……。何かバイザーが可哀想になってきたぞ。

 

「ふむ。まあまあだな。これでもまだ、練りが甘い。俺が教えてやるから、もっと魔力を収束しろ」

「あらあら。悠莉くんとの共同作業ですわね」

 

悠莉と朱乃さんは攻撃をしながら話していた。

 

「ユウも参加してるけど、一応教えておくわね。朱乃は魔力攻撃が得意なの。雷や炎、水といった、自然現象を魔力で起こす力ね」

 

なるほど。悠莉と同じことが出来るということか。しかし、バイザー……憐れだ。

はぐれにならなければ討伐されることがなかったのに。

 

「あらあら。まだまだ、耐えられますね? 次はどうしようかしら」

「まだ、保つだろう。この程度で死んでもらっても困る」

 

二人とも怖いよ……。それにバイザーが既に威力テストの実験台になってるよ。

 

「あ、言い忘れてたけど、朱乃はSよ。それも究極のS」

 

部長はそう言って、朱乃さんの補足説明をする。

 

部長………そんな、情報は欲しくなかったです。

 

「うふふふふふふふ。どこまで私たちの攻撃に耐えられるのかしらね? ねぇ、バケモノさん。まだ死んではダメよ? トドメは私の主なのですから。オホホホホホホホッ!」

「くくくくくっ。なかなか、頑丈だな。これならあの技の威力テストが出来るな。精々、死なないように耐えてくれよ? はぐれ悪魔さんよ!」

 

そう言って、また攻撃を再開する二人。

 

それからしばらくの間、悠莉と朱乃さんの魔力爆撃は続くのだった…………。

 

 

 

 

朱乃さんが一息吐き、悠莉が満足した頃、部長が確認して頷いた。

 

虫の息のバイザーに近づく、部長。

 

「最後に言い残すことはあるかしら?」

 

部長がバイザーに聞く。

 

「殺してくれ」

 

バイザーはそう一言、言った。

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

ドンッ!

 

部長の手の平から巨大な魔力の塊が撃ち出される。

 

魔力の塊がバイザーを包み込むと───。

 

そこには何も無かった。部長の言葉通り、消し飛ばされたようだ。

 

それを確認すると、部長は息をつく。

 

「終わりね。みんな、ご苦労さま」

 

これで討伐は終了か。実力的にはそれほど強い部類には入らないけど人間には脅威だな。

 

俺はそんなことを考えながら、先ほどの悪魔の駒での俺の役割だ。

 

「部長、聞きそびれたんですけど」

「何かしら?」

「俺の駒の役割と特性は何ですか?」

 

俺は部長に聞いた。大体は予想しながら。

 

「『兵士《ポーン》』よ。イッセーは『兵士』なの」

 

部長は微笑みながら教えてくれた。

 

「なるほど。それなら俺と相性は良いですね」

「あら? 残念がらないのね。『兵士』はチェスの中では一番の下っ端よ」

 

部長は少し、意外そうに言うが、俺はそれほど気にしなかった。

 

「普通の人ならそうなんですが、俺には『兵士』が合っています。戦況によって様々な役割に切り替えられる、万能な駒ですから」

「ふふふ。イッセー。あなたは本当に面白い子ね」

 

そう言って、部長は笑う。

 

ふーむ。そんなに変かな? まあ、兵士は遊撃や陽動が主な役割だから、俺には丁度良いのは間違いない。

 

俺は部長に向きなおって

 

「部長。改めまして、『兵士』の兵藤一誠。これからも部長のために頑張っていきます!」

 

俺が部長にそう言うと

 

「ええ。改めてよろしくね、イッセー」

 

笑顔でそう言ってくれたのだった………。

 

こうしてはぐれ悪魔の討伐任務が終わったのだった。

 




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