ハイスクールD×D~原初の龍神と赤龍帝~   作:火の鳥

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連続更新です。

書いていたら長くなった……。


友達の意味

《イッセーside》

 

 

はぐれ悪魔討伐から次の日の深夜。

 

俺は今日こそは契約を取るべく、チャリを飛ばしていた。

 

そして、訪れたのは何処にでもある普通の一軒家だった。

 

一軒家の場合は何処から入れば良いのだろう? 窓? それとも煙突か!?

 

俺が頭を悩ませながら玄関を見ると、玄関の扉が開いていた。

 

おいおい……こんな深夜に物騒だな。すぐに空き巣に侵入されるぞ。

 

そう思いつつも、丁度良いのでそこから入らせてもらうことにした。

 

玄関口から中の様子を伺うと────。

 

……廊下、二階共に灯りは点いていないみたいだ。不審な気配も今のところ、感じられない。

 

となると───。

 

俺は廊下の奥にある部屋を見た。

 

あそこだけ部屋の扉が空いていて、灯りも僅かに灯っている………とりあえず、ここにいても仕方ないからあの部屋を調べよう。

 

俺は嫌な感じがしたので、玄関から土足で上がり、奥の部屋に進んだ。

 

部屋の前に着き、警戒しながら部屋の中の様子を伺う。

 

………不審な気配無し。突入する!

 

俺は警戒を怠らないように慎重に部屋に侵入した。

 

リビングか………特に異常は………っ!

 

俺は周りに異常がないか確認をしていると、リビングの壁に人間の死体が磔にされているのに気づく。

 

くっ! 何で気がつかなかった!? 不審な気配は無かったはず!?

 

俺は早める鼓動を落ち着かせながら、死体の状態を確認した。

※イッセーは悠莉と紛争地帯で修行もしたからこの程度の死体では動じないのだった。

 

逆十字で磔にされて杭で両手、両足、胴体の中心に的確に打ち込んでいる………。尋常じゃない殺し方だけど、これは殺しに慣れた奴の仕業! プロの犯行か!

 

俺は死体が磔にされている壁に血で書いたと思われる文字を発見する。

 

「これは………」

「『悪いことする人はおしおきよー』って、聖なるお方の言葉を借りたものさ」

 

後方っ! 馬鹿な! まったく気配がしなかった!?

 

俺はすぐに後ろを振り返り、懐から悠莉に持たされている拳銃……ベレッタ92を抜いて不審な男に銃口を向けた。

※拳銃は許可なく所持したら犯罪です。

 

「動くな! これはお前がやったな! 不審な動きを見せたら撃つぞ!」

 

俺は不審な男の姿を確認する。

 

若い……髪は白髪で、恐らく外人。年齢は……俺に近い年代だ。格好は……神父服!? まさか!?

 

神父は俺を見るなり、ニンマリと笑った。

 

「あらら~、勇ましい、悪魔くんではあーりませんかー」

 

マズい……敵は『悪魔祓い《エクソシスト》』、教会関係者か! しかも、見ただけで俺を悪魔と認知したことからコイツ相当、戦い慣れている!

 

俺は最大限に警戒しつつ、銃口を逸らさずに神父に向け続けた。

 

「俺は神父♪ 少年神父~♪ デビルな輩をぶった斬り~、ニヒルな俺が嘲笑う~♪ おまえら、悪魔の首刎ねて~、俺はおまんま貰うのさ~♪」

 

突然、神父が歌いだす。

 

何だコイツ? いきなり、歌いだした。何かの策か?

 

「俺はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属してる者でございますですよ」

 

敵……フリードが名乗ってきたんで単刀直入に聞く。

 

「おまえか? この人を殺したのは?」

「はいそうですよ~♪ 俺がサクッと殺っちゃいました。こいつ、悪魔を呼び出す常習犯みたいだったしぃ、もう殺すしかないっしょ」

「そんな理由で人を殺したのか!?」

「そんな理由~? 俺には十分な理由だけどねぇ~。つーかね、悪魔と契約するなんて人間として最低レベル、クズ街道まっしぐらっスよ。その辺ご理解できませんかねぇ? あー、無理ですね。クズの悪魔ですもんねぇ」

 

こいつ……快楽殺人鬼か! 言っていることが意味不明だ。

 

「人間が人間を殺すのはおかしいだろ! 神父が殺すのは悪魔だけじゃないのかよ!」

「悪魔の分際で俺に説教? ハハハ、笑える笑える。いいか、よく聞け、クソ悪魔。悪魔に頼るってのは人間として終わった証拠なんですよ。エンドですエンド。だから、俺が殺してあげたのさー。俺、悪魔と悪魔に魅入られた人間をぶっ殺して生活してるんで、お仕事でござんすよ」

「悪魔だって、代価で命までは取らない!」

 

俺はそう言い、発泡する。

 

ドンッ、ドンッ!

 

「おおっとー。悪魔からの素敵なプレゼントってか」

 

神父は素早く避けて、懐から刀身のない剣の柄と拳銃を取り出した。

 

ブィン。

 

柄だけの剣から、光の刀身が生えた。

 

悪魔祓いの武器! 銃だけだとマズい!

 

「セイクリッド・ギア!」

 

俺は左腕に神器を出した。練習していてよかったぜ。

 

「俺的におまえがアレなんで、斬ってもいいですか? 撃ってもいいですか? OKなんですね? 了解です。今からおまえの心臓にこの光の刃を突きたてて、このカッコイイ銃でおまえのドタマに必殺必中のフォーリンラブしちゃいます!」

 

神父が俺に向かって駆け出す。

 

俺は冷静に引き金を引く。急所を躊躇なく狙って。

 

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

俺が撃った銃弾は神父の剣で薙ぎ払われた。

 

速い! だが、接近戦なら剣も扱いづらくなるはずだ。

 

俺も神父に近づき、接近戦に持ち込む。

 

神父が剣を振り下ろして来たので、体を開いて躱すが───左足の太ももに痛みが走る。

 

俺が神父を見ると、神父の手に持つ拳銃から煙が上がっていた。

 

………っ! 撃たれた!? 銃声はしなかったのに!?

 

俺が一瞬、動揺した刹那───今度は右足のふくらはぎに痛みが走る。

 

「くうっ!」

 

俺は呻き、至近距離から銃弾を放った。

 

ドンッ!

 

だが、神父は難なく避け、後方に飛ぶ。

 

痛いが、耐えられないほどじゃない!

 

俺は両足の痛みを無視して神父に相対する。

 

「おー、頑丈ですなー。光の弾丸を放つエクソシスト特製の祓魔弾を喰らってもまだ倒れないなんて。だけど、痛いだろ? 思わず、達してしまいそうな快感がキミを襲うだろう?」

 

ああ……確かに、痛いさ。だけど、こんなの悠莉との修行に比べたら、屁でもないんだよ!

 

俺は銃を懐に仕舞って拳を構えた。

 

「わおっ! いいね、いいねぇ! やっぱり、無抵抗よりは反撃される方が萌えるね! だけどここのまま、俺に殺されてくださいってね!」

 

神父が駆け出そうとして───。

 

「「やめてください!」」

 

そこへ、聞き覚えのある女の子たちの声が。

 

神父と俺は動きを止めて、視線を声がした方に向ける。

 

───っ。

 

俺はその子たちを知っている。

 

「アーシア、リーティア」

 

そう金髪の二人のシスターがそこにはいた。

 

「おんや、助手のリーティアちゃんとアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの? 結界は張り終わったのかなかな?」

「! い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

「! きゃぁぁぁぁぁぁぁああ!」

 

アーシアとリーティアが壁に打ちつけられている死体を見て、悲鳴をあげた。

 

「かわいい悲鳴ありがとうございます! そっか、リーティアちゃんとアーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ。なら、とくとご覧なさいな。悪魔くんに魅入られたダメ人間の末路を」

「……そ、そんな………」(アーシア)

「……ひ、非道い………」(リーティア)

 

不意に二人の視線がこちらへ向く。目を見開いて驚く彼女たち。

 

「……フリード神父……この人は……」(アーシア)

 

二人の視線が俺を捉えている。

 

「人? 違う違う。こいつはクソ悪魔くんだよ。ハハハ、何を勘違いしているのかなかな」

「──っ。イッセーさんが……悪魔……?」

「……まさか……ユウリさんも………?」

 

その事実がショックだったのか、アーシアは言葉を詰まらせた。

リーティアは悠莉も、もしかしたら悪魔ではないかと思ってしまい、ショックを受けていた。

 

「あれ? キミたち知り合い? これは驚いた。悪魔とシスターズの禁じられた恋とかそのたぐい? マジ? マジなの?」

 

おもしろおかしそうにフリードは俺とアーシア、リーティアを交互に見ている。

 

知られたくはなかったんだけど、運命は残酷だよな………。

 

「アハハ! 悪魔と人間は相容れません! 特に教会関係者と悪魔は天敵さ! それに俺らは神にすら見放された異端の集まりですぜ? 俺もリーティアちゃんもアーシアちゃんも堕天使さまからのご加護がないと生きていけないハンパものですぞぉ?」

 

堕天使? 神父もシスターも神様の下で働いているんじゃなかったのか?

 

「そんなことはどうでもいいんで、お仕事を終わらせましょうかね。クズ男さん、OK?」

 

フリードが光の剣を俺に向ける。

 

今の状態だと、厳しいか……。両足だけ撃たれたとはいえ、治療していないからさっきから痛むし。アイツの剣を避けるのも限界がある。どうするか。

 

俺がこの状況をどうするか考えていると

 

俺とフリードの間に金髪の少女たちが入り込んだ。

 

俺の前に立ち、庇うように両手を広げた。

 

「……おいおい。マジですかー? リーティアたん、アーシアたん、キミたち、自分が何をしているのかわかってますかぁ?」

「………はい。フリード神父、お願いします。この方を見逃してください」(アーシア)

「……私からもお願いします。フリード神父、このお方を許してください」(リーティア)

 

───っ。

 

俺、悪魔なのに庇ってくれるのか……?

 

その一言に俺は声を詰まらせていると───。

 

『……イッセー! 聞こえるか?』

 

何処からか悠莉の声がした。

 

うん? 何だ? 悠莉の声がしたが………。

 

『イッセー。これは幻聴ではないぞ。念話だ』

 

なるほど。念話か! 悠莉、今何処にいるんだ?

 

『もう、すぐそこまで来ている。これからカウントダウンするからゼロの合図で二人を抱えて横に思いっきり飛べ!』

 

ああ! わかった!

 

『じゃあ、行くぞ? 3!』

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたといって、人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違っています!」(アーシア)

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああっ!? なにふざけたことをぬかしてるんだよ、クソアマが! 悪魔はクズだって、教会で習ったろうがぁ! おまえら、頭がどうかしてるんじゃねぇのかぁ!?」

 

『2!』

 

「たとえ、悪魔にもいい人はいます!」(リーティア)

「いるわけねぇだろ、バカがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『1!』

 

俺はフリードにバレないように体を身構えた。

 

「私と姉さまもこの前までそう思ってました……。でも、イッセーさんやユウリさんはいい人です。悪魔だってわかってもそれは変わりません! 人を殺すなんて許されません! こんなの主が許すわけがありません!」

 

悠莉……お前、悪魔じゃないのに二人には悪魔って認定されてるよ……。

 

『0!! イッセーぇぇぇぇ!』

 

俺は二人を両腕で抱えた。

 

「「きゃっ!」」

 

二人の声を黙殺して、怪我をしている両足に力を込めて、思いっきり横に飛んだ!

 

「神崎家、家訓第三条――っ!! 扉が無ければ───」

 

「なんですかぁ? ここに来て、助っ人登場みたいな?」

 

俺の行動と突然、何処からか声が聞こえてきたことにフリードは動きを止める。

 

ああ、そうだよ! フリード! この場に俺のダチが来たんだからな!

 

ブゥンッ!!

 

壁の外から風切り音がした。

 

「扉を創れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!

 

さっきまで俺たちがいた壁が爆裂した。

 

「なんだ………ぶはっ!!」

 

俺とアーシア、リーティアは壁から離れたので無事だがフリードは近くにいたため、壁の瓦礫が体中に当たっていた。

 

ガラッ。

 

「ふう………。神崎悠莉只今、参上!………なんてな」

 

粉砕した壁の向こうから悠莉が馬鹿デカイハンマーを持って姿を現した。

 

「次から次へと何なんですかい? せっかくこのクソ悪魔を狩れたってのにねぇ」

 

そう言いながら、フリードは瓦礫の中から這い出てきた。

 

その時───。

 

床が紅く輝きだした。

 

「今度は何事?」

 

疑問に思うフリードの足元にも閃光が走り、紅い光はある形を作っていく。

 

これはグレモリー眷属の魔法陣! まさか、みんなが!

 

カッ!

 

床に描かれた魔法陣が光りだす。そして、光の中から現れたのは俺の仲間たちだった。

 

「兵藤くん、助けにきたよ。神崎くんは……もういるみたいだね」

 

笑顔を見せる木場。

 

「あらあら。転移より早いなんて悠莉くんは凄いですわね」

 

え!? 転移よりも悠莉が早かったんですか!? 悠莉、相変わらず規格外だな。

 

「………神父」

 

子猫ちゃんも来てくれた。

 

「不意打ちゴメン! 悪魔のパーティに一撃目!」

 

フリードは構わずに斬り込んでくる。

 

ガキン!

 

フリードの一撃を木場が剣で受け止めた。

 

「悪いね。彼は僕たちの仲間だ! こんなところでやられてもらうわけにもいかないんだ!」

「おーおー! 悪魔のくせに仲間意識バッチリですか? 悪魔戦隊デビルレンジャー結成ですか? 熱いねぇ。萌えちゃうねぇ! もしかして、キミが攻めで彼は受けとか?」

 

鍔迫り合いを繰り広げているさなかなのに、フリードは舌を出して、舌と一緒に頭まで揺らしていた。

 

おい、クソ神父! 受けとか攻めとか言うなぁぁぁぁ! ただでさえ学園の女子達に兵藤×木場って疑いをかけられているんだからよぉぉぉぉぉぉぉ!! これ以上は勘弁してくれぇぇぇぇぇ!

 

俺が頭を抱えていると、木場も嫌悪の表情を浮かべていた。

 

「……下品な口だ。とても神父とは思えない……。だからこそ、『はぐれ悪魔祓い』をやっているわけか」

「はいはい! 下品でごぜーますよ! だって、はぐれちゃったもん! 追い出されちゃったもん! ていうか、ヴァチカンなんてクソくらえって気分だぜぃ! 俺的に快楽悪魔狩りさえ気が向いたときにできれば大満足なんだよ!」

 

鍔迫り合う両者。木場は穏やかな顔をしてるが眼光鋭く、フリードを睨んでいる。

 

一方、フリードは不気味に笑いながらこの戦いを楽しんでいるようだ。

 

「一番厄介なタイプだね、キミは。悪魔を狩ることだけが生き甲斐……僕たちにとって一番の有害だ」

「悪魔さまには言われたくないねぇ! 俺だって生きるために必死なの! てめぇら、糞虫みてぇな連中にどうこう言われる筋合いはねぇざんす!」

「悪魔にもルールはあります」

 

朱乃さんはフリードを鋭い視線で睨みながら言う。

 

「いいねぇ、その熱い視線。お姉さん最高。俺を殺そうとする思いがビンビン伝わってくるよ。これは愛? 違うね。 これは殺意! これ最高! 殺意は向けるのも向けられるのもたまんないね!」

「なら、消し飛ぶといいわ」

 

この声は部長!? 部長は俺の横から現れた。

 

「イッセー、ゴメンなさいね。まさか、依頼主のもとに『はぐれ悪魔祓い』が襲撃をするなんて計算外だったの」

 

謝る部長は俺の足の怪我を見るなり、目を細めた。

 

「イッセー……怪我をしたの?」

「……大丈夫です、傷は浅い方ですから」

 

足を軽く叩き、大丈夫とアピールする。まあ、やせ我慢だけど。

 

しかし、部長は俺の流れる汗でやせ我慢に気づいたのか、フリードに冷淡な表情を向けた。

 

「私の可愛い下僕をかわがってくれたみたいね」

 

低く重い声を出す、部長。

 

「えーえー。かわいがってあげたかったですよう。本当は全身を無数に斬り刻む予定でござんしたが、次から次から邪魔ばかり入るんで、それは夢幻となってしまいましたぁ」

 

ボンッ!

 

部長が手から魔力の弾を出して、フリードの後方の家具を消し飛ばした。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしているの。特にあなたのような下品極まりない者に自分の所有物を傷つけられることは本当に我慢できないわ」

 

これが部長の殺気……! 空間さえ凍りつくような重い殺気だ!

 

部長は魔力を手に溜めて、フリードに放とうとするが───。

 

「! 部長、この家に堕天使らしき者たち者たちが複数近づいていますわ。このままでは、こちらが不利になります」

「正確には、堕天使が三人、悪魔祓いが20人くらいが迫っているんだが」

 

朱乃さんが部長にそう言い、悠莉は更に詳しい情報を教えていた。

 

って言うか、悠莉は何で気配だけでそこまでわかるんだよ!? 規格外すぎるだろ!

 

部長は朱乃さんと悠莉の報告を聞き、悔しそうな顔をしながらフリードを睨む。

 

「……朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地へ転移するわ。ジャンプの用意を」

「はい」

 

部長に促され、朱乃さんは転移の準備をする。

 

部室に戻るのか? でもあの子達は……。

 

俺はふいに視線をアーシアとリーティアに向ける。

 

「部長! あの子達も一緒に!」

 

俺は気がついたら部長にそう言っていた。

 

「無理よ。魔法陣を移動できるのは悪魔だけ。しかもこの魔法陣は私の眷属しかジャンプできないわ」

 

そんな……あれ? と言うことは悠莉も移動できないんじゃ!?

 

「部長! 悠莉はどうするんですか!? あいつも悪魔じゃありません!?」

「イッセー、俺は問題ない。先に帰っていろ。俺は少し、堕天使に聞きたいことがあるからな。後、リアス先輩、俺のことは気にするな」

 

俺が部長にそう言うと、悠莉は俺に先に行っていろと言った。部長はそれを聞いて苦しそうな、表情をした。

 

「何でだよ! お前もアーシア達も見捨てられるわけがないだろ!?」

「イッセーさん。私達のことはいいですから行ってください」(アーシア)

 

アーシアとリーティアは気丈にも微笑みながらそう言った。

 

「アーシア!」

「イッセーさん。また、また会いましょう」

 

それが俺とアーシアのこの場での最後の会話だった。

 

次の瞬間、朱乃さんの詠唱は終わり、床の魔法陣が再び紅く輝きだした。

 

「逃がすかって!」

 

フリードが切り込んでくるが───。

 

「貴様は寝ていろ!」

 

ドゴッ!!

 

「ひでぶっ!」

 

ダンッ! ガラガラッ…………。

 

悠莉に顔を蹴り抜かれて、壁にめり込んだ。完全に気を失ったのかピクリとも動かない。

 

それを見たのを最後に俺の視界は紅い輝きに覆われた。

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

イッセー達が転移するのを確認すると、俺はリーティア達を見た。

 

しかし、転移するとき朱乃と子猫が心配そうな顔をしていたな。帰ったら謝っておくか。

 

「ユウリさん………」

 

リーティアはそう言い、俺を見た。

 

「ユウリさんも悪魔なんですか……?」

 

アーシアが言い淀む、姉の代わりに俺に聞いてきた。

 

「いや、俺は悪魔ではないな。一応、人間だ」

 

まあ、ただの人間より厄介な存在ではあるが………。

 

俺はアーシアにそう答えた。

 

「……そうなんですか……ですが、ユウリさんは何故、この場に残ったのですか? 私達の心配をなさらなくてもよろしいのに……」

「リーティアとアーシアを心配したのもあるが、堕天使に幾つか質問したかったからな。……来たか」

 

俺はリーティアの問いにそう答えると、堕天使達の気配がすぐ近くに来たのを確認し、家の上部分を全部、吹き飛ばした。

 

ゴオッ!!

 

俺の攻撃で天井から上が全て、吹き飛び、空が見えた。

 

俺が起こした、いきなりの現象に堕天使達は驚いているようだ。

 

「!………貴様はいつぞやの人間!」

 

俺にそう言ったのはこの前、イッセーを襲った堕天使だった。

 

「おお! クズ。久しぶりだな。元気にしていたか?」

「こいつがドーナシークの腕をもいだ人間なんだ? キャハハハッ! ドーナシークってばダサいっての」

「ほう……人間にしては少しだけできるらしいな。だが、私達には通用はしないと思うが」

 

俺がクズにそう返すと、クズの両隣にいた堕天使が俺に反応する。

 

「黙れっ! ミッテルト、カラワーナ! あの時は油断をしていただけだ!」

「ふむ。と言うことは今なら油断をしていないから俺に勝てると言うのか?」

「当たり前だ! 今日こそはこの腕の借りを返してくれる!」

「そうか。ならば、やってみるといい。そちらの二人も攻撃しても構わん」

 

俺はそう言い、両腕を下げて無防備な構えにして、クズにそう言った。

 

「人間にしては自信があるようだがやめておけ。私達も攻撃に加われば、お前は塵も残らないぞ?」

「アハハハハッ! 人間如きがウチらの攻撃に耐えられるわけがないっていうか? 止めたほうがキミの身のためだよ? キャハハハハッ!」

 

堕天使二人はそう言って、笑った。

 

俺はそれを見て、嗤いながら言った。

 

「なるほど。怖いのか。そうなら仕方ない。クズだけが攻撃するといい」

 

俺がそう言った時、二人の雰囲気が変わった。

 

「人間……調子に乗っているのなら、今すぐ前言を撤回した方がいいぞ。そうしないと死ぬぞ?」

「へぇ………人間がウチらを舐めてくれたもんっスね。そんなに死にたいんだぁ? そんなに死にたいんだったら止めないけど、今すぐ土下座して謝ったら許してあげないこともないかもよ?」

 

額に青筋を浮かべながら堕天使……カラワーナとミッテルトは俺に言った。

 

俺は溜息を吐きながら

 

「やれやれ……前置きが長いな。雑魚ほど話が長いと言うのはどうやら本当みたいだな」

 

ブチッ!

 

「いいだろう……。そんなに死にたいというのなら望み通り、殺してあげよう! 死ね!」

「後悔しないでね? 人間。キミがウチらを馬鹿にするからこうなるんだよ? アハハハ、死んじゃえ!」

「フンッ! 本当は私だけでも十分だったが貴様がこの二人を挑発するからこうなるのだ。さあ、小僧! 我々に敵対したことを後悔しながら死ぬがいい!」

 

そう言って、三人は光で槍を形成する。

 

「また、その攻撃か……。同じ攻撃だと飽きるな」

 

俺がそれを見ながら呟くと

 

「「ユウリさん!」」

 

リーティアとアーシアが俺を見て、こちらに駆け寄ろうとするが

 

「遺言は言い終わったか? さあ、死ね!」

「じゃあ、バイバーイ♪」

「果てるがいい! 小僧!」

 

その前に三人は攻撃を放った。

 

高速で迫る槍を見ながら、俺はただ一言

 

「鋼《はがね》」

 

とだけ、呟いた。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

「そ、そんな………!」

 

リーティアとアーシアは悲鳴をあげた。

 

堕天使三人が放った三本の槍が俺に当たった。

 

 

堕天使三人はそれぞれ、嘲笑した視線を俺に向けた。「それみたことか」と。

 

だが、次の瞬間────。

 

三本の槍は空しく、砕け散った。

 

「な………!」

「え………!」

「何……っ!」

 

驚く三人。だが、俺は特に反応せずに言った。

 

「まだまだ未熟だな。光力の練りと収束が甘い。お前等、ちゃんと鍛錬を積んでいるのか?」

 

俺は三人の攻撃に対する正直な感想を述べた。

 

堕天使達は───。

 

「馬鹿な………!」(カラワーナ)

「嘘…………?」(ミッテルト)

「無傷だと……?」(クズ)

 

自分達の攻撃が全く効かないことに驚愕していた。

 

「あ…………っ!」

「よかった………!」

 

リーティアとアーシアは俺が無事なことに安堵していた。

 

「まあ、俺がここに残ったのはお前達に聞きたいことがあるからだ」

 

俺がそう言うと、堕天使達は怪訝な顔をする。

 

「私達に聞きたいことだと……?」(カラワーナ)

「ああ……簡単な質問だ。お前達は何を企んでいる?」

「何……! 貴様、どこでそれを!?」(クズ)

「ちょっとした個人的な情報網からお前等、堕天使が良からぬことを企んでいると噂を耳にしてね。何かをしようとしているのまでは分かったが、計画の全容までは掴めなかった」

 

俺はそこまで言うと、一白おいて───。

 

「……大体のことは推測することはできたが確信にまで至るものじゃない。証拠もないしな。だから、お前達に聞きたい。お前達が計画していることは何だ?」

「そ、そんなの教えるわけがないしー。レイナーレ姉さまなら知っていると思うけど」

 

俺がそう聞くと、ミッテルトがそう漏らす。

 

「なるほど……。そいつが首謀者か」

 

俺は薄く笑い、堕天使達に言った。

 

「聞きたいことは以上だ。とっとと帰れ。お前達の任務はこの子達の回収だろ? 俺と無理に戦う必要性はない」

「小僧……。見逃すというのか? 貴様の実力ならば私達と外にいる悪魔祓い達、全員と戦っても容易く始末できたのだろうに」

 

クズはそう言って、不審そうな目を俺に向けた。

 

「確かに、始末するのは簡単だが俺の立場的にそうはいかない事情があってね。ある確信が持てないと、俺も迂闊に動けない。だから、今回は見逃す」

「…………不気味な男だ。私達を簡単に殺せる力を持ちながら、何もせんとは」

「勘違いするなよ? 俺がお前等を見逃すのはある情報がないからだ。それが分かれば、お前達などすぐに始末するんだがな」

 

カラワーナが何か、勘違いをしていたので俺はそう警告した。

 

「まあいい……貴様にどんな事情があるかは知らないが、見逃すというのならば此方としても好都合だ。カラワーナ、ミッテルト。小娘共を回収して帰還するぞ」

 

クズはそう言って、リーティアとアーシアを回収するように言う。

 

「分かった………」

「はいはーい……」

 

カラワーナとミッテルトは俺を警戒しながらも二人をそれぞれが抱きかかえる。

 

「ユウリさん……」

 

リーティアが不安そうな顔で俺を見る。

 

俺はすまなそうな顔をするとリーティアに謝った。

 

「すまないな、リーティア。本当はお前達を助けたいんだが俺の立場は微妙でな。迂闊に行動することが出来ない。許してくれ………リーティア、アーシア」

 

俺は二人に頭を下げた。自分の不甲斐なさを詫びるようにただ深く、頭を下げた。

 

「…………やっぱり、ユウリさんは優しいお方です。周りの方々に迷惑が掛かるからご自分は動けないのですね………それでいいんです。私達は誰かの迷惑になることを望んではいません」

「はい……姉さまの言う通りです。私達は誰かに迷惑を掛けたり、誰かが傷ついたりすることを望んではいません。ですが、ご自分を責めないで下さい。私達はイッセーさんやユウリさんに傷ついて欲しくありませんから」

 

二人はそう言って、微笑んだ。

 

「イッセーさんにも言いましたが、また会うことはできます」

「アーシアの言う通りです。ですから、ユウリさん……また会いましょう」

 

それを最後に二人は堕天使に連れられていった。

 

俺はそれを見送り、強く拳を握り締めながらその場を後にした…………。

 

 

誰もいなくなった家で(フリードが気絶しているが)動くものがあった。

 

「………まさか、あの一族の生き残りがいるとはな」

 

そう言い、笑う存在。闇が濃くて体の全体像は見えないがどうやら声からして男のようだ。

 

「………アイツ等に協力して思わぬ収穫だったな。今回の任務はつまらないものだと思ったがどうやらこれから面白くなりそうだ………」

 

男はそう言うと、まるで最初からいなかったかのように消えた。

 

今度こそ、その場所には誰もいなくなった(フリードが気絶してるが)。

 

何か波乱が起きそうな風を残して…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

「もう一度、言ってみろ……!」

 

俺は今、怒っていた。自分でも自制できない程に。

 

「イッセー………」

「あらあら。どうしましょう……」

「…………一触即発」

「二人共、落ち着いて……」

 

部長達も困惑顔だ。

 

でもこれだけは許すわけにはいかない! コイツだからこそ俺は許せない!

 

だから───。

 

「黙ってないで答えろよ、悠莉!」

 

そう言い、俺は悠莉を睨むのだった……………。

 

 

 

 

時間は少し、遡る。

 

あの家から部室に帰還すると俺は部長に治療を施して貰い、朱乃さんに足の怪我に包帯を巻いてもらいながら『悪魔祓い《エクソシスト》』の説明を受けた。

悪魔祓いにも二通りの存在があること。正規の悪魔祓いと教会から追放されて、堕天使側に属した悪魔祓い。それが『はぐれ悪魔祓い』。

堕天使とはぐれ悪魔祓いは悪魔を殺す事に関して利害が一致しているらしく、手を組んでいると言われた。

部長にアーシア達を助けたいと進言もしたけどこちらは悪魔、向こうは堕天使。敵同士だからどうにもならないと言われてしまった。

そんな時だ、悠莉が戻って来たのは。

俺はすぐに悠莉に聞いた。アーシア達はどうしたかを。俺は悠莉なら助けているだろうと思ってしまった。俺と同じ考えを持つ、ダチならと………。

だけど……アイツは……悠莉はこう言った。

「堕天使達に返して、見送った」と。

最初、聞いたとき信じられなかった。コイツは何を言っているんだろうと。

でも、段々と理解が追いつくと今度は悠莉に対する疑念と怒りが体から湧き上がった。

気がつくと俺は怒りに任せて、悠莉の胸ぐらを掴んでいた。

 

 

 

 

最初に戻る。

 

「悠莉! 何で黙っているんだよ! 何とか言えよ!!」

 

悠莉は深く息を吐いて、言った。

 

「二度も同じことを言わせるな。リーティア達は堕天使達に返した。俺はそれをただ見送った。それだけだ………」

「悠莉ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

バキッ!!

 

俺は我慢が出来ずに悠莉を思いっきりぶん殴った。

 

「兵藤くん! 落ち着くんだ!」

 

木場が慌てて、俺を羽交い絞めにして押さえる。

 

俺は木場に押さえられながらも言った。

 

「悠莉、覚えているか? 1年前の夏にお前が俺に言った事を!」

 

俺がそう言うと悠莉は、ハッとして俺を見た。

 

「俺はお前に「悠莉はその力を何のために使うんだ?」って、そう聞いたよな? そうしたらお前はこう答えた」

 

俺は息を一度、吐いて言った。

 

「「俺のこの力は全ての弱き者を護るため、救うために使う」ってそう言ったよな? だけど、何だよ! お前、護れてねぇじゃねぇか! 救えてもいないじゃないか!」

 

俺は悠莉が言った一節を言うと、悠莉も一緒に言ってくれた。覚えててくれたって嬉しい気持ちもあるけどそれ以上に覚えているのに守れていないと言う、怒りもあった。

 

「お前が言ったことはただの口先だけの言葉かよ! 違うだろ! そうじゃないだろ! 悠莉、お前には力がある。言葉だけじゃなく、行動に移せるはずだろ! なのに何で、アーシア達を見捨てたんだよ! 悠莉!」

 

俺は言い切ると、少し息を整えた。

 

「………イッセー。今の俺の立場がどういうものか、知っているか?」

 

悠莉は俺にそう聞いてきた。

 

「悠莉の立場………?」

「俺はまだ、リアス先輩の眷属になっていないがお前や朱乃、子猫がいるのもあって色々と手伝ったり、協力したりしている。言うなれば、友達以上、眷属未満だな。だが、どういう理由だろうが、天使や堕天使からして見れば、俺は悪魔側の人間だ。下僕と思う奴もいるし、契約又は協力関係と思う奴もいる。そんな俺が堕天使側のシスターを奪うとどうなるか分かるか?」

 

悠莉は真剣な表情で俺にそう言った。

 

「まず、何かを要求されるだろう。お金や領土だけで解決できればいいが。だが、もし戦争にでもなれば今度こそ、どちらかが滅ぶまで争うだろう。悪魔と堕天使のどちらにも未だに戦争論を唱えるやつはいる。小さな事だがそれをいやらしく突いてくるやつは両方の陣営にいる。あの時は迂闊には動けなかった。確証もないのに動けば、それが戦争の引き金になりかねないからな」

 

悠莉は更に続けて、こう言った。

 

「あの堕天使達は何かを企んでいる。それは分かっているが立場的に手が出せない。俺が何処にも属していなければ自由に動くことは出来た。だが別に、俺は自分の選択した道を後悔している訳じゃない。イッセーは俺がリーティア達を見捨てたと思うのも間違いじゃない。俺は堕天使達の目的を探るために堕天使達を見逃し、泳がせた。それだけのためにリーティア達を堕天使の元へ返した。お前が俺に怒るのも仕方ない事だ。イッセー。殴りたいなら好きなだけ殴れ! 怒りたいなら好きなだけ俺を怒れ! お前の色んな気持ちを全部、俺にぶつけろ! 俺はそれだけのことをした! イッセー!」

 

悠莉の言葉を聞きながら俺は────。

 

分かってる……分かってるんだよ! お前にも考えがあって行動したと頭では分かってるんだよ! だけど………だけど、抑えられないんだよ! この気持ちは!!

 

「……………ちくしょうっ!!」

「おっと……!」

「イッセー!」

 

俺は押さえつけていた木場を振りほどき、部長の静止の声を無視して部室を出た。

 

くそ……くそ……っ! 俺は無力だ……! あの子達を救う力もない……。俺はまだ……弱いままだ…………!!

 

 

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

バタンッ!

 

イッセーが部室から出ていくのを見ながら、俺は自分で言った言葉に呆れる。

 

「………自分で言っていて反吐が出る、言葉だった……。どんな、最もらしい理由を述べようともリーティア達を見捨てたことには変わらないというのにな………」

 

俺が怒りに身を震わせていると………………

 

「あらあら……そんなに手を握りしめていましたから怪我をしてしまいましたわね」

 

朱乃が俺の握りしめて過ぎて血が滴っていた右手を優しく解きほぐす。

 

「………先輩、血が出ています」

 

子猫が同じく握り締め過ぎて血が滴っていた左手をときほどいてくれた。

 

いつの間にか、俺は拳を握りしめていたようだな………。それだけ、今回のことに自分自身、怒りに湧いていたんだろうな………。

 

俺は一旦、冷静になる為に大きく息を吸い、吐いた。

 

「すまないな………朱乃、子猫。心配を掛けた」

 

俺がそう言うと

 

「ふふふ……。先ずは、両手の怪我の手当をしますわ」

 

朱乃はそう言い、俺にソファーに座るように促す。

 

「分かった………」

 

俺は朱乃の言う通りにソファーに座ると朱乃は俺の右隣に座り、手の怪我の治療を始めた。

 

「………先輩は今も昔も自分一人で抱え過ぎです。少しは私達にも話して下さい」

 

俺がソファーに座ると子猫は俺の左隣に座り、反対の手の怪我の治療をしてくれた。

 

俺が治療を受けているのを見ながらリアス先輩は言った。

 

「ユウは後悔している……? 私達に関わったこと………」

 

リアス先輩はそう言い、顔を俯ける。

 

俺は息を一つ吐き、こう言った。

 

「イッセーにも言ったが、俺は自分の選択を後悔などしていない。そうでなければ、俺は今ここにいない。だから、リアス先輩が気に病むことはない」

 

俺はそう言い、笑う。

 

「分かったわ……。じゃあ。この話はこれでおしまいね」

 

リアス先輩はそう言って、両手を叩いた。

 

「ユウ。あなたから聞きたいことがあるわ。堕天使から何を聞いたの?」

 

リアス先輩は探るような目で俺に聞いた。

 

「まあ、流石に目的を喋ってはくれなかったが堕天使達が企んでいる計画の首謀者は分かった」

「それは誰なの?」

 

みんなが見つめる中、俺は言った。

 

「首謀者の名は、レイナーレ。恐らく、この堕天使が全てを計画した存在だ……」

 

俺はそう言ったのだった………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

「はぁ………」

 

現在、昼頃───。

 

俺は学校を休み、公園のベンチに座り溜息を吐いていた。

 

先日の神父……フリードから受けた傷はまだ完治していない。特製の軟膏でも治りが遅かった。恐らく、銃弾に込められた光力が思いのほか高かったのだろう。

この足では悪魔の仕事にも支障をきたすと思っていたら、タイミングがいいのか部長から電話が掛かって来て、明日は学校を休むように言われた。

昨日の事があって、悠莉と会うのは少し気まずかったから部長は狙っていて言ったわけじゃないけど正直、ありがたかった。

 

ぐーっ。

 

そんなことを考えているとお腹の虫が鳴った………。

 

そういえば、朝から何も食べていないな。昨日の事やアーシア達のことを考えていたら、いつの間にか昼か………。

 

俺は昼飯はどうするか、考えていると───。

 

ん……? 何か良い匂いがするな……? それにこの匂いはカレーか……?

 

俺は何処からかカレーの匂いがしたので何気なく、ベンチの横を見てみると───。

 

いつの間にか悠莉がいて、カレーを煮込んでいた……。

 

「おわあぁっ!!」

 

俺が驚いていると、悠莉は俺を横目で見て言った。

 

「全く……イッセーは俺がいないと直ぐに食が疎かになるな。こんなこともあろうかと作ってきて正解だったな」

 

俺が唖然としている中、悠莉はそう言って、これまたいつの間にか作っていたのか、ご飯を大釜で炊いていた。態々、釜戸まで作って………。

 

「悠莉……いつからいた?」

「んー……溜息を吐いていた辺りからだな」

 

俺がそう質問すると悠莉はご飯を大皿によそいながら答えた。

 

殆ど、最初からじゃねぇか!

 

俺がそう思っていると────。

 

「ほい。福神漬けとらっきょうは適当に入れておいた。とりあえず、先ずは食え。何を考えるにも先ずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできぬと言うだろ?」

 

そう悠莉は言い、笑った。

 

俺は渡されたカレーを受け取りながら、苦笑した。

 

全く………俺が気まずい気持ちを抱えていたのにお前はそんなのを気にせずに俺に接するな。難しく考えていた俺が馬鹿みたいじゃないか…………。

 

そう思いながら、「いただきます」と言ってカレーを食べた。

 

 

 

 

カレーを食べながら俺は悠莉に言った。

 

「悠莉。昨日はゴメン……俺、お前の気持ちも考えずに勝手なことばかり言って……」

 

そう、昨日は頭に血が昇って気がつかなかったがあの時、悠莉も両手が変色する程、手を握り締めていたのだ。

アーシア達を堕天使の下に返すことに一番、納得がいかなかったのは悠莉だということを俺は気がつかなかった。

 

悠莉は俺の謝罪を聞いても別に昨日の事は気にしていないと言うみたいに言った。

 

「イッセー………。お前は俺みたいにはなるなよ?」

「え………?」

 

俺が聞き返すと悠莉は続けて言った。

 

「俺みたいに立場などに縛られる存在ではなく、自分の考えを正直に言える存在になれ。そしてお前はただ前だけを見ていろ」

 

そう言い、悠莉は俺を見つめた。

 

俺は悠莉が何を指して言っているのかは分からなかったが、真剣な話なのは分かったんで頷いた。

 

「分かった。そうなれるように努力するぜ」

「イッセーならいずれなれるさ……なんって言ったって俺のダチだからな」

 

悠莉はそう言って、笑った。

 

俺はさっきまで感じていた居心地の悪い空気が無くなっていることに気づいた。

 

悠莉が来るまでアーシア達をどう助けようとか色々、難しく考えていたんだけど先ずは、この怪我を治さないと助ける前にやられちまうな。それからでも、遅くはないはずだ。

 

俺は前向きにそう考えて、カレーを食べていると────。

 

「……イッセーさん?」「……ユウリさん?」

 

聞いたことがある声が聞こえた。

 

俺はカレーを食べていた手を止めて前を見ると───。

 

そこにはさっきまで考えていたアーシアとリーティアがいた。

 

俺が突然の再開に驚いていると、悠莉は得意げな顔をした。

 

「ふふ………。まんまと掛かったな。人は誰しも空腹には耐えられない。この匂いに釣られてやって来るのは寧ろ、必然!」

 

悠莉はそう言って、カレーが入った鍋を指差した。

 

「そうなのか………?」

 

俺は二人に聞くと────。

 

二人は目を逸らした。

 

だが、人間の三代欲求には逆らえなかったのか…………

 

くぅーっ。

 

可愛らしい音が聞こえた。

 

「……はぅぅぅぅ///」「うぅぅ………///」

 

アーシアとリーティアは顔を真っ赤にした。

 

それを聞いた俺達はつい笑ってしまった。

 

「まあなんだ、食べるかい? お二人さん?」

 

そう言い、悠莉はお皿によそったカレーを二人に差し出す。

 

二人はそれを見て、まだ頬が染まったまま頷くのだった………。

 

 

 

 

「お、美味しいです!」

「はい。こんなに美味しい食べ物を食べたのは初めてです!」

 

二人はそう絶賛しながらカレーを食べている。

 

悠莉が出した、テーブルと椅子の上で。うん。もう、ツッコムのは止めよう。疲れるだけだし。

 

「アーシアとリーティアはカレーを食べたのは初めてなのか?」

「はい。話では聞いたことがあるのですが、実際に食べたのは初めてです! 感動しました!」

「噂ではすごく辛い食べ物と聞いていたのですが、実際に食べてみると噂ほど辛くはなくとても美味しいです!」

「なるほど。じゃあ、普段は何を食べているの?」

「基本はパンとスープが主です」

「後、お野菜とパスタの料理も食べます」

 

教会って話に聞くより、質素な食事生活なんだな。年頃の子達とかはそれだけで足りるのかな?

 

「そうか。なら、よく味わって食べなよ。悠莉のカレーは絶品だからな」

「「はい。美味しくいただきます」」

 

でも、なんでこの公園にいたんだ? 二人は休み時間があったので出てきたと言っていたけど、あの目は何かに怯えて逃げてきた目だ。向こうで何かがあったのか? 聞きたいけど、気軽に聞けることじゃないよな。せっかく、今はうれしそうな顔をしてカレーを食べているし……。うーん………うん、難しく考えるのはやめだ! 俺がしたいようにしよう。

 

俺はそう考え、アーシアとリーティアに言った。

 

「アーシア、リーティア」

「「は、はい」」

「今日は遊ぶぞ」

「「え?」」

「次はゲーセンだ」

 

 

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

やっと、いつものイッセーらしくなったな。ふっ。何も考えない方がイッセーらしくていい。

 

俺はそう考えながら、イッセーとアーシアの方を見ていた。イッセーはレーシングゲームをしていた。

 

「峠最速伝説イッセー!」

「速いです! 速いです、イッセーさん!」

 

そう言えば、学校の帰りにイッセーと松田、元浜とよくゲーセンに寄って競っていたな。ふふ……まだそんなに経っていないのに懐かしいもだ。

 

俺は向こうに行かないで、俺の横にいるリーティアに聞いた。

 

「リーティアは行かなくていいのか?」

「はい。私はここで見ているだけでも楽しいですよ! 見るものが新鮮なものばかりですし」

「そうか。楽しんでるなら良いんだ」

 

俺がそう言うと、リーティアは楽しそうな笑顔で言った。

 

さっきまでの何かを憂いていた顔はしなくなったな。ここはイッセーの判断に感謝しないとな。

 

俺がそう思っていると、アーシアが何かに目を取られたかのようにクレーンゲームの方に行った。

 

「リーティア。アーシアの方を見ていてくれ。俺もイッセーを連れて向かうから」

「はい。分かりました」

 

俺がそう言うと、リーティアはアーシアの方に向かった。

 

俺はそれを見送り、何かに打ち震えているイッセーに近づいた。

 

「イッセー……何か達成したかのようにしているが、レコードでも更新したのか?」

「おお! 悠莉。そうなんだよ! 久しぶりにやったんだけど腕は落ちていなかったぜ!」

 

イッセーはそう言い、ひとしきり感動に浸っていたがアーシアが近くにいないことに気づくと俺に聞いてきた。

 

「悠莉、アーシアは?」

「アーシアならリーティアと一緒にクレーンゲームコーナーにいる」

 

俺はそう言って、イッセーを連れてリーティア達のところに移動し。

 

俺達がそこに着くとアーシアとリーティアがそれぞれ違うクレーンゲームの前に張りついていた。

 

俺はリーティアの方に行き、何を見ているのか見てみた。

 

あれは最近登場したタツノオトシゴをモチーフにした、『タッツー』だっけか?

 

俺は未だに俺に気づかずに『タッツー』に釘付けになっているリーティアに言った。

 

「あれが欲しいのか?」

「きゃあっ! な、なんのことですか……!?」

 

俺がそう聞くと、何とも苦しい誤魔化しをした。

 

俺はそれをスルーしてクレーンゲームの中を見た。

 

一番、近くて取りやすいのは……あった。ふむ、あれなら簡単だな。

 

「あ、あの……ユウリさん?」

 

俺は景品を落とす穴の近くに、『タッツー』の首が真上に向いているやつを見つけると200円を入れて、クレーンを動かした。

 

タイミングはシビアだがそれほど難しくはない。

 

俺は狙い通りの位置にクレーンを動かすとアームを下ろすボタンを押した。

 

ウィーン。

 

さて、どうかな……。

 

俺がアームの行方を見守っているとリーティアは俺よりも真剣な顔でアームを見ていた。

 

俺はそれを横目で見ながら笑うと再びアームを見た。

 

俺に目論見通り、アームは『タッツー』の首を掴み持ち上げた。

 

そのまま、途中で落とすこともなく穴の上まで移動して────。

 

カタンッ。

 

見事、景品である『タッツー』を落とした。

 

「わぁーー! すごいですよ、ユウリさん!」

「まあ、今回は運が良かったな」

 

俺はそう言いながら取り出し口に落ちた『タッツー』のぬいぐるみを手にする。それをリーティアに渡す。

 

「ほい、リーティア」

「え?」

 

俺がぬいぐるみを渡すとリーティアはポカンとした。

 

「それ、欲しかったんだろう? 今日の記念に俺からのプレゼントだ」

「良いんですか……?」

「ああ」

 

俺がそう言うと、リーティアは笑顔になってお礼を言った。

 

「ありがとうございます、ユウリさん。このぬいぐるみ、大切にしますね」

「ははは、その位のぬいぐるみなら、またいつでも取ってやるよ」

 

俺は言いながら、イッセーの方を見るとイッセーもアーシアに何かのぬいぐるみを渡していた。俺がイッセーに目配せするとイッセーも頷いた。

 

「この位で喜ぶのはまだ早いぞ! まだまだこれからだ! リーティア、今日は遊び倒すぞ! 行くぞ!」

「は……はい! ユウリさん!」

 

俺はそう言って、リーティアの手を掴み、イッセー達と一緒にゲーセンの奥に向かった。

 

 

 

 

 

 

「あー、遊びすぎたな」

「久しぶりにこんなに遊んだぞ」

「はい……少し、疲れました」

「楽しかったですけど、少し疲れましたね……」

 

四人で苦笑しながら、近くの公園の噴水広場のベンチに座っていた。

 

時刻は3時を少し過ぎた位、日は傾いているがまだ夕方には早い時間。

 

あれからゲーセンの他に色んな店に行って、その度にリーティアとアーシアの反応が新鮮で退屈はしなかった。イッセーも楽しんでみたいだし、今日は本当に楽しい時間だった。

 

「よし! 俺、飲み物を買ってくるから何がいい?」

 

俺が感慨に浸かっていると、イッセーはそう言いベンチから立ったが

 

「いたた」

 

痛みに顔を軽く歪め、膝をつきそうになった。

 

「……イッセーさん、怪我を? もしかして、先日の……」

 

アーシアが目ざとく気づき、イッセーをベンチに座らせて患部を調べていた。

 

俺はその一連の動きに感心していると──。

 

「ユウリさん、初めてお会いした時から気になっていたのですがその腕の痣のようなものは何でしょうか?」

 

リーティアが俺の右の二の腕に浮かんでいる痣の事を聞いてきた。

 

「これか……。これは大分、昔に受けた一種の呪いというやつだよ。治療しようにもどんな魔術も効かなかったからお手上げ状態だけどな……」

 

俺はそう言って、痣に触れていると

 

「もしかしたら私なら治せるかもしれません。ユウリさん、右腕を軽く上げてもらってもいいでしょうか?」

「ああ……別にいいが……」

 

俺は怪訝に思いながらもリーティアの言う通りに右腕をリーティアが見やすいように痣が前に向くように軽く上げる。

 

「では、いきます」

 

そう言って、リーティアは目を閉じて両手を痣の上にかざした。

 

この呪いの傷を治す……? リーティアの神器はアーシアと同じタイプの神器ではない? なら一体………。

 

俺は疑問に思いながら、見ていると

 

腕の痣が少しずつ薄れていった………。

 

「く………! これは強い負の感情によって斬られた傷ですね……。なんて強い、憎悪なんでしょうか……」

 

そう言って、額に軽く汗をかきながらリーティアは更に力を込めた。

 

リーティアの瞳の色と同じ、蒼い輝きが一層強くなる。

 

俺はそれを見ながら、驚愕していた。

 

馬鹿な……! その傷はアイツによって付けられた傷だぞ! 生半可な呪いではないはずだ。まさか、リーティアの神器は……いや、それこそバカなだ! あの神器はここ何百年、姿を消して久しい……。もう、二度と使い手は現れないかもという推論さえ言われる程だ。

 

俺が目の前の現象に頭を悩ませていると。

 

「……少々厄介でしたが無事、呪いを治すことが出来ました」

 

そう言って、リーティアは手を退かして言った。

 

「まさか、こんなことが……」

 

右腕の呪いの痣が確かに消えていた。

 

「ユウリさん、体の状態はどうですか? 恐らく、治ったことによって何かしらの変化があるはずですけど」

「そうだな……。今まで腕にあった重みと言うか、違和感が無くなったな」

 

リーティアに俺はそう答えた。

 

向かいのベンチを見れば、イッセーの傷もアーシアの神器によって治っていた。

 

「しかし、リーティアの力はすごいな、治すのを諦めていた呪いの痣を治療できるなんて。これって神器《セイクリッド・ギア》だよな?」

「はい、そうです……。私の神器は怪我よりも寧ろ、呪いなどのものを治療するのに特化しているみたいですから」

 

リーティアは複雑そうな顔をしながらも笑顔を見せた。向かい側にいるアーシアも何だか顔が暗い。

 

「何かあったのか……?」

 

俺がそう聞くと───。

 

リーティアとアーシアは顔を俯けて語った。それは想像を絶する人生譚だった。

 

 

──それは「聖女」と祭られた双子の姉妹の物語──

 

欧州のとある家に生まれた双子の姉妹は生まれてすぐの時に気味が悪いという理由だけで孤児院の前に捨てられた。

 

捨てられた孤児院兼教会でシスターと自分と似た境遇の孤児達と共に育てられる。

 

そんな信仰深い姉妹の人生に転機が訪れたのは八歳の頃──。そして、姉妹に宿る力が目覚めたのも同じ時だった。

 

ある時──偶然、負傷をした子犬を見つけた姉妹は神に祈った。「この子犬の怪我を治してください」と。すると、子犬は姉妹の身から流れ出た光によって怪我が治ってしまった。その現場をカトリック教会の関係者に見つけられる。

 

それから、双子の姉妹の人生は変わる。

 

姉妹は、カトリック教会の本部に連れて行かれ治癒の力を宿した「聖女」達として、担ぎ出された。

 

訪れる信者に加護と称して、体の悪いところや怪我などを治療してあげる。

 

姉妹の意思など関係なしに。

 

姉妹は待遇に不満はなかった。教会の関係者はよく世話をしてくれるし、怪我をした人を治すのは嫌いではない。

 

自分達の力が人様の役に立つのは嬉しいくらいだ。

 

神様が授けてくれたものに姉妹は感謝した。

 

だけど、姉妹は寂しがっていた。姉妹には心を許せる友人が一人もいないからだ。

 

「聖女」。この肩書きで自分達に優しくはしてくれても、友達になってくれるものはいなかった。

 

そして姉妹は知っていた。教会の人間達が裏では自分達のことを異質の目で見ていることを。自分達を人間ではなく、「人を治療できる生物」と見ていることを。

 

ある日、姉妹に運命の転機が訪れる。

 

たまたま教会の近くに倒れていた悪魔を姉妹は治療してしまったのだ。

 

たとえ悪魔でも怪我をしている存在は治したい。姉妹の生来の優しさがそうさせたのだろう。

 

そんな姉妹の優しさが人生を一転させる。

 

その光景を偶然見ていたシスターが、それを内部に告発する。

 

教会上層部は驚愕する。治癒の力の存在は確認されていても悪魔まで治癒できる力は規格外だったからだ。

 

そして教会は審判を下す。悪魔すら治療できる力は異端だと、「魔女」だという烙印を押された。

 

こうして聖女として崇められていた姉妹は悪魔を治療できるというだけで今度は「魔女」として恐れられ、呆気なくカトリックに捨てられた。

 

行き場のない姉妹を拾ったのは日本にある「はぐれ悪魔祓い」組織。その意味は堕天使の加護を受けなくてはならなくなったという意味だ。

 

間違っても姉妹は一度も神への祈りを忘れたことはない。感謝も忘れたことはない。なのに、姉妹は捨てられた。

 

神はそんな信仰深い姉妹を助けてはくれなかった。

 

姉妹が一番ショックだったのは、教会で自分達をかばう者がただの一人もいなかったことだ。姉妹の味方は誰一人としていなかった。

 

 

「……きっと、私の祈りが足りなかったんです。ほら、私は姉さまと違って、抜けているところがありますから。地図があっても道に迷うくらいバカな子ですから」

 

姉妹──リーティアとアーシアは笑いながら、涙を拭った。

 

ミカエルの馬鹿者が……! 『システム』に支障を来すと言って異端扱いにして捨てるとはどういう神経をしているんだ! これは次に会った時にO☆HA☆NA☆SHIだな♪

 

俺が心の中でミカエルにお仕置きをすることを決定するとリーティアが言う。

 

「私も祈りやお勤めが足りなかったのでしょう。これは主の試練なのです。私達が未熟なシスターだから、こうやって修行を課したのです。だから今は我慢のときなのです」

 

笑いながら自分に言い聞かせるようにリーティアは言う。

 

イッセーを見ると、拳を震わせながら怒っていた。

 

「お友達もいっぱい作りたいんです。私達、夢があるんです。お友達と一緒にお花を買ったり、本を買ったりして…………おしゃべりして…………」

 

リーティアとアーシアは涙を溢れさせていた。

 

これは教会の構造もそうだが『システム』をちゃんと制御できていないから起きている現象でもある。神の座が空の状態は危険か………。いずれ、あの計画も打診せねばなるまい。だが今はこの現実をどうにかせねばな。

 

俺はそう考えるとイッセーを見る。イッセーも俺の意図が分かったのか頷く。

 

「アーシア、リーティア、俺と悠莉が友達になってやる。いや、俺達、もう友達だ」

 

イッセーの言葉にアーシアとリーティアはキョトンとしている。

 

「イッセーは悪魔だけど、契約で友達になるわけじゃないぞ。友達は常に対等な関係だからな。気軽に遊びたいときに俺達を呼べばいい。俺達のケータイの番号を教える」

 

俺とイッセーはポケットからケータイを取り出す。

 

「……どうしてですか? 私達に同情しているんですか?」(リーティア)

「特に理由もないし、同情なんかもしていない。今日、俺達は一緒に遊んだだろ? 話したり、笑い合ったり、互いに悔しがったりもしただろう? なら、俺達とリーティア、アーシアは友達だ! そこに人間も悪魔もロボットも関係ない! 俺達とリーティア、アーシアは友達だ!」

「……それは悪魔の契約ですか?」(アーシア)

「違うさ! さっきも悠莉が言ったように友達は対等の関係だ。俺達とアーシア、リーティアは本当の友達になるんだ! 難しい話は抜き! 話したいときに話して、遊びたいときに遊んで、そうだ買い物も今度、俺達が付き合うよ! 本でも花でも服でも何でも買いに行こう! な?」

「まあ、同性じゃないのは勘弁な。それは後日、俺のツテで紹介するから」

 

リーティアとアーシアは口元を手で押さえて、更に大粒の涙を溢れ出させた。

 

今度は顔を嬉しそうに変えて

 

「……イッセーさん、ユウリさん。私達、世間知らずです」(アーシア)

「これから俺達と一緒に町へ繰り出せばいい! いろんなもの見て回れば、問題ないさ。足りないときは悠莉が教えてくれるさ」

「……日本語も喋れません。田舎暮らしだったので文化もわかりませんよ?」(リーティア)

「それは俺が教えよう。イッセーだと不安だからな。「悪かったな!」まあ、俺はスパルタだがしっかりと日本語とは何か?を体に叩き込むから大丈夫だ!」

「「……友達となにを喋っていいかもわかりません」」

 

俺はリーティアの手を、イッセーはアーシアの手を握る。

 

「「今日一日、俺達と普通に話せていたじゃないか。それでいいんだよ。俺達はもう友達としての話をしていたんだよ」」

「「……私達と友達になってくれるんですか?」」

 

「ああ、これからもよろしくな、アーシア、リーティア」

「まあ、よろしくな。リーティア、アーシア」

 

俺達の言葉に彼女達は泣きながら笑って頷いてくれた。

 

これで俺達は友達だな。次は紹介していいのか悩むなが松田と元浜か……。変な影響はないよな?

 

俺はそうかんがえていると………。

 

「無理よ」

「それは貴様が言うことではないな、堕天使」

 

イッセーは驚いて声がした方へ向き、俺は普通に返す。

 

「ゆ、夕麻ちゃん………?」

「立ち聞きとは趣味が悪いな? それとも本当にお前の趣味か? 堕天使よ」

 

俺が言った言葉に不愉快そうに眉を潜める堕天使。

 

「ドーナシーク達の報告で聞いていたけど、実際に会うと数倍、むかつくわね。人間。それにそっちの男は生きていたんだ? しかも、悪魔なんて最悪じゃない」

 

そう言って、イッセーの方を見てクスクスと笑う。

 

「……レイナーレ様………」

 

アーシアが堕天使をそう呼んだ。

 

レイナーレ……? なるほど。こいつが計画の首謀者か。

 

「……堕天使さんが、何か用かい?」

 

イッセーがそう問いかけると、レイナーレはイッセーを嘲笑する。

 

「汚らしい下級悪魔が気軽に私へ話しかけないでちょうだいな」

 

レイナーレは心底汚らしいものを見るかのような侮蔑的な目でイッセーを睨む。

 

そうか……こいつがイッセーを殺した堕天使……。

 

「その子達、アーシアとリーティアは私達の所有物なの。返してもらえるかしら? アーシア、リーティア、逃げても無駄よ?」

 

やっぱりな……。大方、監視の隙を見て、逃げてきたと………。そんなところか。

 

「………嫌です。私達、あの教会には戻りません。人を殺すのを平気な顔で出来る組織の下になんて。………それにあなたたちは私達を………」

 

はっきりとリーティアは拒絶の言葉を返す。

 

「そんなことは言わないで頂戴、リーティア。あなたの神器はアイツが必要みたいだけど、アーシアの神器は私達の計画に必要なのよ。私達と一緒に帰りましょう? これでもかなり探したのよ? あまり迷惑をかけないでちょうだい」

 

近づいてくる、レイナーレ。

 

リーティアとアーシアは俺達の影に隠れて体を震わせた。

 

俺とイッセーは彼女達を庇うように前へ出る。

 

「待てよ。夕麻……いや、レイナーレ! お前、アーシア達をどうする気だ?」

「下級悪魔、私の名前を呼ぶな。私の名が汚れる。あなたに私達の間のことは関係ない。さっさと主の下へ帰らないと、死ぬわよ?」

「おいおい、レイナーレよ……。俺を忘れてもらっては困るな。たかが中級堕天使如きがほざくなよ?」

 

俺はそう言って、気と魔力を練る。

 

だがレイナーレはそれを見ても、ただ笑うだけだった。

 

俺が不審に思っていると───。

 

「私があなたに何の対策もしてきていないと思っているのかしら?」

「…………?」

 

俺は周囲の気配を探るが不審な気配は感じない。

 

「ふふっ。あなたの相手はアイツがしてくれる見たいよ?」

 

そう言って、レイナーレは右手の指を鳴らした。

 

パチンッ。

 

その瞬間───目の前にダガーナイフが二本迫っていた。

 

!! 何!! いつの間に!

 

俺は一瞬、驚いたが冷静に手刀で弾き落とした。

 

落とした終えた時───眼前に知らない男が肉薄していた。

 

「!! チッ! フェイクか!」

「正解。あんたは俺とちょっと向こうに行こうか?」

 

そう言い、男は魔力を纏った拳を突き出してきた。

 

く………っ! 避けることは出来るが、後ろにはリーティアが!

 

俺は瞬時に決断した。リーティアをイッセーの方に突き飛ばし、射線から外す。

 

そして、俺は瞬時に障壁を構築して防御態勢を敷いた。

※この間、数秒の出来事。

 

ドッガガガガガガガガガガッ!!!

 

男は障壁ごと後ろの林に俺を吹き飛ばした。

 

なかなか、いい感じの魔力の練りだ……。だが……!

 

俺は瞬時に手に気弾と魔力弾を100個ずつ創ると全てを精密操作して時間差で飛ばした。

 

「ははは! いきなりの挨拶にしては過激だな。不死鳥一族の生き残りよ!」

 

男はそう言い、俺の攻撃を迎撃していく。

 

俺を不死鳥一族の生き残りだと知っている! やはり、コイツは……!

 

俺は残りの弾で男の周囲を全て囲み、気弾と魔力弾を射出する。

 

「おっと……これは危ないかな?」

 

カッ! ドッガァァァァァァアアアアアアアンッ!!

 

俺の予想通りの相手ならこの程度の攻撃では………。

 

俺は爆発の煙が辺りを包み込んでいる中、目を凝らすと───。

 

「流石は彼の伝説の一族だ。今の攻撃は並の相手では……いや、上級悪魔ですら消し飛んでいる攻撃だったよ。凄いねぇ……」

 

男はそう言い、肩を竦めながら煙の中から歩いてきた。

 

「やはり、無傷か……。お前、闇の者だな? 所属は何処だ? 闇の黙示録《アポカリプス》か? それとも闇《ダークネス》の名も無い派閥の者か?」

 

俺は男にそう質問した。

 

「まあ、一部正解。闇《ダークネス》の者だけど、所属は今はまだ教えないかな。代わりに俺の名前を教えるよ。俺の名前は神田黎二(かんだ れいじ)」

 

そう名乗った敵……神田黎二。

 

「ならば俺も名乗り返そう。俺は不死鳥悠莉。知っての通り、不死鳥一族の生き残りだ。さて、そこで提案なんだが神田よ………。そこを退いてはくれないか?」

「それは出来ない相談だ。不死鳥の者よ。俺を退かしたければ実力で退かしてくれ。まあ、ここで出せるのならばだが……」

 

チッ……! コイツ、見抜いているのか?! 俺がこの場では全力を出せないことを……。

 

「あなたは何故か、周囲……正確にはこの町の外からの目を嫌うな? 力を使って何か不都合でもあるのかい?」

「………さて、何のことかな?」

「ふふふ………。まあ、惚けるなら別に良いけどあなたの護る対象は今、どうなっているかな?」

 

しまった! 奴の目的は最初から俺をイッセーから引き離すことだったのか。

 

「どうやら、気づいたようだね。でも行かせない。彼女は……リーティアは俺達の計画に必要でね。あなたに……不死鳥の者に渡すわけにはいかなくてね」

「なら、一瞬で始末すれば良いだけだ………鳳凰よ、現れ………」

 

俺は一気に勝負を決めようとするが……神田は手を耳に当てて誰かと会話をし始めた。

 

「……………了解。こっちも足止めは出来たよ。うん………じゃあ、途中まではキミ達の計画通りで………」

「まさか………!」

 

俺がそう言うと、神田は笑みを深くして言った。

 

「ご明察。向こうは回収は終わったよ。何か、予想以上に悪魔くんに抵抗されたみたいだけど……レイナーレが不機嫌だったよ。下級悪魔の癖にって」

 

クッ! 流石にまだ、イッセーには中級堕天使は早かったか………。

 

俺は歯を食いしばりながら拳を震わせた。

 

「まあ、このままで終わる気がないなら儀式場に来るといい。俺は待ってるよ」

 

神田はそう言い、転移魔法で転移していった…………。

 

「………………………」

 

クソッ! まんまと敵の術中に嵌ったというわけか!

 

「確かに……リーティアとアーシアの気配がここから消えたか………」

 

恐らく、あの教会か……! 堂々と余裕そうに言っていたからな。

 

俺は怒り任せに後ろにある木に拳を振るった。

 

ドンッ! ……メキ……メキ……メキ……ドドーーーーンッ!!

 

木は根元から折れて、倒れた。

 

「いいだろう……神田。貴様の宣戦布告は受け取った。後悔しても知らんぞ……」

 

俺はそう言って、イッセーのところに向かって行ったのだった。

 

怒りに体を震わせながら……………………。

 




ふう……。ようやく、更新出来ました。

新しいオリジナルヒロインの登場! 彼女は物語にどう関わって行くのか……。

そして、今まで沈黙を保っていた、闇の者も登場。

次回は決戦! 勝つのは光か闇か、どちらになるのか…………。

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