ハイスクールD×D~原初の龍神と赤龍帝~   作:火の鳥

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停滞していましたが久しぶりに更新です。


友達の救出 決戦! 赤龍帝VS堕天使 不死鳥VS闇の眷属

 

《イッセーside》

 

 

パン!

 

部室に乾いた音が響いた。

 

「何度言ったらわかるの? 駄目なものは駄目よ。あのシスター達の救出は認められないわ」

 

アーシアとリーティアをレイナーレに奪われた俺は、一度学校に戻り、事の詳細を部長に報告した。

報告した上で俺は、あの教会へ行くことを提案したんだ。

 

アーシアとリーティアを助けるために。だけど、部長はこの件は関わらずに静観すると言ったのだ。

俺は納得ができないので部長に無礼承知で詰め寄り、そして叩かれた。

 

部長に悠莉の事を聞かれたが、俺は途中で別れたと言った。今の悠莉は誰にも止められない。

悠莉には「少し一人にしてくれ」と言われたので公園で別れた。あの感じだと、恐らくはかなりキレているな。

 

悠莉は動く。なら、ダチの俺もここでジッとしているわけにもいかないんだ!

 

「なら、俺一人でも行きます。レイナーレが言っていた、儀式が気になります。堕天使達が裏で何かをするに決まってます。アーシアとリーティアの身に危険が迫る前に助け出さないと」

「あなたは本当に馬鹿なの? 行けば確実に殺されるわ。もう生き返ることはできないのよ? それがわかっているの?」

 

部長は諭すように俺へ言ってくる。

 

「あなたの行動が私や他の部員にも多大な影響を及ぼすのよ! あなたはグレモリー眷属の悪魔なの! それを自覚しなさい!」

「なら俺を眷属から外してください。俺個人であの教会に殴り込みます」

「そんなことができるはずないでしょう! どうしてわかってくれないの!?」

 

部長は激昂して俺に言うが、それでも俺はこれだけは譲れない。譲ることが出来ない!

 

「俺と悠莉はアーシア・アルジェント、リーティア・アルジェントと友達になりました。アーシアとリーティアは大事な友達です。俺達は友達を見捨てられません!」

「……それはご立派ね。そういうことを面と向かって言えるのはすごいことだと思うわ。それでもこれとそれは別よ。悪魔と堕天使は何百年、何千年と睨み合い、時には争ってきたわ。隙を見せれば殺されるわ。彼らは敵なのだから」

「敵を消し飛ばすが信条のグレモリー眷属が目の前の敵を消し飛ばさずに静観ですか?」

「…………………」

 

俺と部長は睨み合う。

 

視線は決して外さない。真正面から見つめる。

 

「あの子達は元々神側の者。私達とは根底から分かり合えない存在なの。いくら堕天使側に降ったとしても私たち悪魔と敵同士であることは変わらないわ」

「アーシアとリーティアは敵じゃないです!」

 

俺は強く否定する。あんなに優しい子達が敵なわけがない!

 

「そうだとしても私には関係ない存在だわ。イッセー、彼女達のことは忘れなさい」

 

忘れるだって? そんなことができるわけがない!

 

俺は部長にまた言い寄ろうとすると───。

 

朱乃さんがそそくさと部長に近づき、何かを耳打ちする。

 

もしかして部長たちも堕天使に関して何かを掴んだのか? 悠莉も何かを掴んでいたみたいだし。

 

朱乃さんの報告を耳にした部長は表情を険しくする。

 

やはり何かがあったみたいだな。

 

部長は俺を一目見たあと、今度は部室にいる全員を見渡すように言った。

 

「大事な用事ができたわ。私と朱乃はこれから少し外へ出るわね」

「部長。俺の話はまだ終わっていませんが」

 

俺は部長にそう言うが───。

 

「イッセー、あなたにいくつか話しておくことがあるわ。まず、一つ。あなたは『兵士』の能力についてどこまで知っているのかしら?」

「『王』以外の駒に『プロモーション』できるくらいですね……」

 

俺の答えに部長は頷いた。

 

「そうね。『兵士』の最大の強みは『プロモーション』ができること。それは当たっているわ。だけど正確には私が『敵の陣地』と認めた場所へ趣いたとき、『王』以外の駒に変ずることが出来るが正解よ」

 

本当にチェスのルールをそのまま使用しているんだな。

 

「あなたは既に体が出来ているけど悪魔になってから日がまだ浅いから『女王』へのプロモーションはまだ制御できないと思うわ。けれど、それ以外の駒なら変化しても制御出来るはずよ。心の中で強く『プロモーション』と願いなさい。そうすれば、あなたの能力に変化が訪れるわ」

 

なるほど……『プロモーション』と神器の力を合わせれば、一時的にでも力を増大させることが出来るかも知れない。

 

「そして、二つめ。イッセー、神器《セイクリット・ギア》を使う際、これだけは覚えておいて」

 

部長が俺の頬を手で撫でてくれる。

 

「──想いなさい。神器《セイクリット・ギア》は想いの力で動き出すの。あなたが悪魔でもそれは変わらないわ。想いの力が強ければ、神器はあなたの想いに応えてくれるわ」

 

──想いの力。悠莉がいつも言っていた力。それが強ければ、俺の神器は動いてくれるのか。

 

「そして最後に。イッセー、『兵士』でも『王』は取れるわ。これはチェスの基本よ。それは悪魔の駒でも変わらない事なの。あなたは強くなれるわ」

 

それだけ言い残すと、部長は朱乃さんと共に何処かに転移していった。

 

俺は一つ、息を吐くとそのまま部室を後にしようとした。

 

「兵藤くん」

 

木場が俺を呼び止める。

 

「行くのかい?」

「行く……いや、行かないとならない。アーシアとリーティアは友達だからな。助けに行かなければ俺は友達を見捨てたことになっちまう! そんなのはゴメンだからな」

「殺されれるよ? いくら神器を持っていても、プロモーションを使用しても、エクソシストの集団と堕天使達を一人で相手にするのは無茶だ」

 

そうだな。そんなことは俺でなくても分かる。でも、行かないといけないんだ。

 

「だが、俺一人だけじゃない。悠莉も来るからな。今回の件はアイツが一番、頭に来ているはずだ」

「彼も来るのかい?」

「そうだ。合流場所は決めていないけど教会の前で待ってくれているはずだ」

 

俺がそう言うと、木場は少しだけ考えて言った。

 

「それでも、二人だけでは足りないだろう? 僕も行く」

「いいのか?」

 

俺は木場に聞き返した。

 

「僕はアーシアさんとリーティアさんをよく知らないけれど、キミは僕の仲間だ。部長はああ言っていたけど、僕はキミの意志を尊重したいと思う部分もある。それに個人的に堕天使や神父は好きじゃないんだ。憎いほどにね」

 

そう言い、木場は僅かに憎悪を纏った殺気を出す。

 

「部長も言っていただろう? 『私が敵の陣地と認めた場所へ足を踏み入れたとき、王以外の駒に変ずることが出来るわ』って。これって遠まわしに『その教会をリアス・グレモリーの敵がいる相手陣地だと認めた』ってことだよね」

 

そうか……。部長のあの言い方はそういう事だったんだ。これで俺のプロモーションの昇格条件が揃った。

 

「部長はキミに行ってもいいって遠まわしに認めてくれたんだよ。勿論、僕がキミにフォローをしろって意味合いだとも思うけど。部長には何か考えがあるのだろうね。じゃなければ、キミを閉じ込めてでも止めると思うよ」

 

木場は苦笑しながら言った。

 

「……私も行きます」

「……子猫ちゃん」

「悠莉先輩も来るとはいえ、人数不足なのは変わりませんから」

 

子猫ちゃん! 普段は何を考えているのかはわからないけど、本当は優しい子なんだな。

 

「ありがとう、子猫ちゃん!」

 

俺は子猫ちゃんに感謝の言葉を述べた。

 

「兵藤くん。まだ、礼を言うのは早いよ。先ずはアーシアさんとリーティアさんを助けてからだ」

 

ああ、分かっているさ。木場。先ずは二人の救出が優先だ。

 

「んじゃ、いっちょ救出作戦といきますか! 待っていろよ! アーシア、リーティア!」

 

俺達三人は教会へ向かって動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

《三者視点》

 

 

空は暗く、街灯が照らす公園で一人の男が佇んでいた。

 

「…………………」

 

悠莉は目を閉じ、無言でその場に立っていた。

 

ピリリリリリリリリッ。

 

静寂が支配する空間で突如、携帯の着信音が響いた。

 

ピッ。

 

「………俺だ」

「……悠莉、あの件だけど裏付けが取れたよ。やっぱり、あの堕天使の独断だった」

「分かった。これで心置きなく、動ける」

「うん……じゃあ、また連絡する」

「ああ」

 

ピッ。

 

悠莉は通話を切ると、次の番号に発信した。

 

プルルルルルル………ピッ。

 

「もしもし。父様? どうしたの?」

 

電話に出たのは、絢香だった。

 

「絢香か、丁度良い。今すぐ、雛乃と莉香を連れて例の教会前に来い。いや、莉香は教会の周囲に結界を張ってもらうから教会前に来るのはお前と雛乃だけでいい。そう言うことだから準備出来次第、直ぐに来い」

「やっと裏付けが取れたんですね。分かりました。莉香に指示を出して、雛乃と共に教会に向かいます」

「ああ、頼むぞ」

「はい、父様!」

 

ピッ。

 

悠莉は通話を切り、一つ溜息を吐いた。

 

「……そこの影に隠れている二人。俺は今、急いでいる。とっとと姿を現せ」

 

悠莉がそう言うと、木々の間から隠れていた人物が姿を現した。

 

「また、会ったな。人間」

「会いに来たよ、人間」

 

現れたのはカラワーナとミッテルトだった。

 

「まあ……用件は大体、分かるがレイナーレの指示か?」

「いや……我々の独断だ」

「そうね。アンタは危険だからレイナーレ姉さまに牙を剥く前にウチらで始末しようってことになったんスよ」

 

そう言い、二人は槍を形成して、手に握る。

 

「先日の戦闘で俺には勝てないことは分かっているはずだ。それでもか?」

「……刺し違えても貴様は始末する。そう言う、覚悟でこの場に来ている」

「たとえ、この場で死ぬことになってもアンタだけは殺すよ。レイナーレ姉さまの為に」

「そうか……一応、俺と戦う覚悟は既に出来ているわけだ。だが──」

 

悠莉はそう言い、目を開ける。

 

「お前等は運が無かったな。俺は今、猛烈に機嫌が悪いんだよ」

 

悠莉は魔力のオーラを身体から立ち上らせて言った。

 

「出てきて早々に悪いがお前等はここで退場だ」

 

悠莉がそう言った、直後──。

 

ジャラララララララッ!

 

「なっ! これは!」

「なにこれ!?」

 

虚空から幾重にも蒼い鎖が現れて、二人を拘束した。

 

「何だこれは!?」

「う、動けない!?」

 

二人は暴れるが蒼い鎖はビクともしない。

 

「……いくら暴れようがこの鎖を壊すことはお前達には不可能だ」

 

そう言い、悠莉は二人に近づいていく。

 

「まあ、安心しろ。俺は尋問や拷問は得意な方だ。しかも、相手を傷つけることなくな」

 

笑いながら、徐々に近づいていく俺に二人は───。

 

「「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」」

 

夜の公園に堕天使二人の悲鳴が空に響き渡った…………。

 

 

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

俺は堕天使達を処理すると合流場所である、教会に向かった。

教会前に着くと、既に絢香達は到着していた。

 

「あ! 父様!」

「あ~! パパ、発見!」

 

二人は俺を見つけると、走り寄ってきた。

 

「首尾は?」

「莉香は結界を張りに途中で別れたよ」

「イッセーくん達もそろそろ、来る頃だよ~」

 

二人はそれぞれ俺に報告した。

 

「なるほど。ならば、後は待つだけだな」

 

俺はそう言うと、後ろから複数の気配を感じた。

 

ほう………。イッセーの奴、なかなかいい感じに気が高まっているな。これならば、一段回目の覚醒はもう直ぐだな。

 

そう思いながら、俺は後ろを振り向いた。

 

「遅いぞ。イッセー」

「悪い。少し遅くなった」

 

イッセーは苦笑しながら、俺に言った。

 

「木場と子猫も一緒なのか?」

「ああ。二人共、協力してくれるみたいだ」

 

俺は二人を見る。

 

「そういう事だから、僕達も二人に協力するよ。もう、君たちは僕等の仲間だからね」

「はい。悠莉先輩と兵藤先輩も私達の仲間です」

 

二人はそう言い、笑った。

 

「それより、悠莉! 何で、絢香ちゃんと雛乃ちゃんがお前と一緒にいるんだ!?」

「そうだね。そこは僕も驚いたよ。どういう関係なんだい?」

 

俺は子猫を見た。

 

「子猫、みんなに言った事は無かったのか?」

「はい……。今までは昔の恩人の家に同居しているだけとしか言っていませんでしたから。悠莉先輩が帰ってきたのも最近でしたし」

「そんなことより、何で悠莉は俺等の学年の2大美少女と知り合いなんだよ!?」

 

そう言い、イッセーは迫ってくる。

 

「イッセー……。絢香達と俺の苗字は?」

「え……。そういえば、同じ『神崎』だな」

「絢香と雛乃は俺の従姉妹だ。だから、一緒に居ても変ではない」

「それよりも、今はアーシアさん達を救出するのが先だよ」

 

木場はそう言い懐から何かを取り出す。

 

「一応、ここの教会の地図があるけれど神崎君には必要無かったかな?」

 

木場は笑いながら俺に聞いてくる。

 

「先月からこの教会はマークしてある。だから、地図は必要無いな」

 

そう言い、俺は教会の扉の前に歩み寄り……。

 

「金剛脚」

 

バキャ!

 

扉を蹴りで破壊して開けた。

 

「やることが大胆だね」

「少し、やりすぎな気もしますが……」

 

木場は苦笑しながら、子猫は前を警戒しながら言った。

 

「行くぞ。イッセー」

「ああ、悠莉!」

 

俺とイッセーは教会内部に同時に踏み込む。

 

教会内部は所々、壊されているところもあったが聖堂までは普通の教会と変わらない様だ。

 

「イッセー、周りは常に警戒をしていろ。敵は俺達が来ることは分かっているはずだ」

「ああ。分かっているぜ、悠莉」

 

悠莉とイッセーは警戒しながら聖堂まで進もうとすると───。

 

パチパチパチ。

 

何処からか拍手の音が聞こえて、柱の影から一人の男が姿を現す。

 

「またまた、再開! フリードですよぉ!」

 

先日の神父か。ここにいるということは、時間稼ぎか。

 

「俺としては二度会う悪魔と敵対した人間はいないってことになっているんだけどさ! 大抵の悪魔や人間なら初見であの世行きだから。一度会ったらゴートュー・ヘヴン! それが普通でしたから! だけど、お前等が俺の邪魔をしたから俺の信用はガタ落ち! ダメだよねぇ~~。俺の人生設計を邪魔しちゃさぁ! だ・か・ら。ムカつくし、死ねと思ってるわけよ。つーか、死ねよ! このクソ悪魔とクソ人間どもがよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そう言って、フリードは拳銃と柄だけの剣を取り出す。

 

ブィィン!

 

柄から光の刃が伸びる。

 

「てめぇら、リーティアたんとアーシアたんを助けに来たんだろ? あんな悪魔も助けるビッチな子達を救うなんて悪魔様はなんて心が広いのでしょう! てか、悪魔と悪魔に協力する人間に魅入られた時点であのクソシスター達は死んだほうがいいんじゃね?」

「お前と問答する時間など無い! 雛乃!」

「はい! お兄ちゃん」

 

パンっ!

 

雛乃は両手を合わせて印を組む。

 

「捕縛陣、展開。『闇縫いの枷』」

 

雛乃がそう唱えて、両手を地面に重ねる。

 

すると───。

 

「何だ、こりゃあ!!?」

 

フリードの足元から闇が生まれ、実体化してフリードの両足を拘束する。

 

「合わせるぞ。イッセー!」

「ああ!」

 

俺とイッセーは同時に駆け出した。

 

「洒落せぇ!」

 

フリードは俺達に向けて、銃を乱射した。

 

「鋼《はがね》」

 

俺は鋼体術で防御をした。イッセーは──。

 

「プロモーション!」

 

戦車《ルーク》に昇格して銃弾を弾いた。

 

「セイクリッド・ギア!!」

 

イッセーはそう叫び、左腕に赤い籠手を纏う。

 

「マジですか?」

 

フリードはそう呟き──。

 

「「マジだよ!!」」

 

俺とイッセーは二人同時にフリードをぶん殴った!!

 

「あべしっ!」

 

フリードは後ろに大きく吹き飛ばされ、ブッ倒れた。

 

「あの時はよくも、撃ってくれたな。一発ぶん殴れてスッキリしたぜ!」

「お前如きは俺の敵ではない。とっとと退場を願おうか?」

 

俺とイッセーはそう啖呵をきって不敵に笑った。

 

フリードは柱に手を着いて起き上がるものの、ダメージが大きいのかよろよろと立ち上がった。

 

「クズ悪魔と人間に殴られたうえにムカつくことを言われていますよ。俺ちゃんってば……。──っけんな!」

 

フリードは低く声で怒声を張り上げた。

 

「ふざけんなよっ!! クソ虫共がぁぁぁぁぁぁっ!! 何、クソの分際でチョーシくれてんだよぉぉぉぉぉぉ! 殺す! お前達、二人は絶対に殺す!! ぶっ殺す!! 徹底的に解体してやるよ、クソがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

フリードはそう叫ぶが、俺達はフリードを囲うように左に絢香と雛乃、中央に俺とイッセー、右側に木場と子猫が立っていた。

それに気づき、周りを見て、自分の置かれた状況を確認するフリード。

 

苦笑しながら──。

 

「おーおー。これは俺様、大ピンチですねぇ。んー、俺的に悪魔や悪魔の仲間に殺されるのはカンベン願いたいので、退散しますかねぇ。クソ虫退治が出来ないのが心残りだけどぉ、でも死ぬのは嫌だねぇ!」

 

フリードは懐から丸い玉を取り出して、床に叩きつけた。

 

瞬間──。

 

ピカァ!!

 

強烈な光が俺達を襲う!

 

俺は一時的に視力を遮断すると何処からかフリードの声が聞こえた。

 

「おい。そこの雑魚悪魔とクソ人間……イッセーくんと……お前の名前は「悠莉だ」悠莉くんか。俺、お前達にフォーリンラブ。絶対に殺すから。絶対にな。俺のことを殴ったうえに雑魚宣言したクソ悪魔とクソ人間は絶対に許さないよ? んじゃ、ばいちゃ」

 

光が完全に治まり、視力を元に戻すとそこにはフリードの姿は影も形もなかった。

 

なるほど……。逃げ足だけは恐ろしく、早いな。もう、付近には気配を感じないとはな。

 

俺は逃げた敵を頭の隅に退けて、気持ちを切り替えた。

 

「行くぞ、みんな」

 

俺がイッセー達に言うと、みんなは頷いて、聖堂の奥にある祭壇の隠し階段へ足を向けた。

 

 

 

 

《イッセーside》

 

 

祭壇下の地下通路を歩く、俺たち六人。

 

悠莉と木場が先頭をつとめ、前へと進む。通路の途中に扉が幾つもあったが無視して奥へと進む。

 

悠莉と子猫ちゃんが

「この道の奥にあの人達の匂いがするから……」

「リーティアとアーシアの気配が奥から感じる」

と奥を指差してくれた。

 

確かに奥から禍々しい気配とアーシア達の気配を感じるな……。それにレイナーレの気配も。

 

俺は気合を入れ直して、歩みを進めた。

 

しばらく歩くと、大きな扉が姿を現した。

 

「ここだな」

 

悠莉はそう言い、俺達を見た。

 

「扉の向こうには、堕天使とエクソシストの大群がいる。そして、俺を襲撃した神田黎二と言う男もいるだろう。それでも行くか?」

 

悠莉はそう言った。

 

俺は──。

 

「ああ。勿論、行くさ!」

「僕もだよ」

「………私もです」

「私は兄様の指示に従います」

「私も絢香姉様と同じ~」

 

俺はそう言い、みんなも決意を込めて言った。

 

「そうか。では行こうか」

 

悠莉はそう言って、足を上げて構えを取り──。

 

「金剛脚・突」

 

ドガァァァァァッ!!

 

後ろ回し前蹴りで扉を吹き飛ばした。

 

そして──。

 

「随分と荒っぽい登場だけど、いらっしゃい。歓迎するわ、悪魔の皆さん。と人間たち」

「やはり、来たか。まあ、ああまで言われて来ないのは不死鳥一族の誇りに関わるかな?」

 

レイナーレと神田黎二が部屋の奥から声を掛けてきた。

 

俺達は部屋に入り、周りを見渡すと部屋中、神父と変な生き物だらけだった。

神父達は光の剣を手に持ち、生物は口から涎を垂らして牙を光らせていた。

 

俺は儀式場の奥の十字架に磔にされたアーシア達を見て、叫んだ。

 

「アーシアァァ!」

「リーティア! 助けに来たぞ!」

 

俺と悠莉の言葉に気づき、アーシアとリーティアがこちらに顔を向ける。

 

「…………イッセーさん?」

「…………ユウリさん?」

「助けに来たぞ!」

「もう少しの辛抱だ。待っていろ!」

 

俺達が微笑んでやると、彼女達は涙を流した。

 

「イッセーさん………」

「ユウリさん………」

「感動の対面だけれど遅かったわね」

「ふははは! 残念だが儀式はもう、終わる。タイム・リミットと言うやつだな」

 

儀式が終わる? 遅かった? どういうことだ?

 

俺は隣にいる悠莉を見ると、悠莉は顔を強ばらせていた。

 

「まさか……お前達はあの『儀式』を!!」

「正解だ。まあ、他に手段が無かったのだからしょうがないと諦めてくれ」

 

レイナーレの隣にいる男はそう言って、嗤う。

 

「「ああぁぁ…………!」」

 

突然、苦しみ出す。アーシアとリーティア。

 

次の瞬間──。

 

アーシアとリーティアの体が光りだす。

 

「「………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!!」」

 

アーシアとリーティアが絶叫を放つ。まるで、自分の中の何かが奪われるかのように。

 

「アーシア!!」

 

駆け寄ろうとした俺を神父達と生物が囲む。

 

「邪魔はさせん!」

「悪魔め、滅してくれる!」

「グルルルルルルルルッ!」

「失せろ! クソ神父共! お前等を相手にしている暇はねぇんだ!」

「俺も同感だ。闇に還れ。眷属共よ!」

 

俺と悠莉は迎撃の構えを取って突撃しようとするが──。

 

ドゴォッ!!

 

俺達の前にいた神父は子猫ちゃんの蹴りで壁まで吹き飛ばせれていった。

 

「……貴方達の相手は私達です」

「その通りだ!」

 

木場も虚空から漆黒の剣を取り出し、神父に斬りかかる。

 

ガキィ!

 

「舐めるな!!」

「なら、僕も本気を出そうかな?!」

 

木場がそう言うと、漆黒の剣から闇が具現化して神父の光の剣を覆い、侵食した。

 

「な、何だ!? これは!?」

「光喰剣《ホーリー・イレイザー》、光を喰らう漆黒の剣さ!」

「お前も神器《セイクリッド・ギア》所有者か!?」

 

木場も神器の所有者だったのか!?

 

俺が感心していると──。

 

「イッセー、感心しているときではない。子猫と木場が敵を食い止めている間にリーティア達の下まで行くぞ! 絢香! 雛乃!」

「はい! 兄様!」

「うん! お兄ちゃん!」

「絢香は子猫と共に敵を薙ぎ払ってくれ。雛乃は木場の援護だ! 出来るな?」

「分かりました、兄様。存分に力を震わせて貰います」

「OK! お兄ちゃん。任せてよ!」

 

悠莉は絢香ちゃんと雛乃ちゃんに指示を出す。

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」」

 

そうこうしているうちに、アーシアとリーティアの体から大きな光が飛び出して来た。

 

2つの光の玉の一つをレイナーレは手に掴む。

 

「これこそ、私が長年欲していた力! これさえあれば、私は愛をいただけるわ……」

 

狂喜に満ちた顔でその大きな光をレイナーレは抱き締めた。

途端に緑色の眩い光が儀式場を包み込む。

 

「くっ! 何だ!?」

「クソ………。一歩、遅かったか……」

 

光が止んだとき、緑色の光を全身から発するレイナーレがそこにいた。

 

「うふふ……。アハハッ! 至高の力! これで私は至高の堕天使になれる! 私をバカにしてきた者たちを見返すことができるわ!」

 

高笑いするレイナーレ。その横で神田黎二はリーティアから飛び出した大きな蒼い光の玉を持っていた。

 

「レイナーレ。契約通りにこっちの娘の神器《セイクリッド・ギア》は俺が貰うぞ」

「ええ。最初の契約通り、私達に協力してくれたからその神器は貴方に上げるわ」

 

レイナーレがそう言うと、神田は蒼い光の玉をレイナーレと同じように体に取り込んだ。

 

「フハハハハハハ!! 遂にあの方を復活させる鍵を手に入れたぞ! これで俺は此度の功績で更に上の階梯(かいてい)を昇ることが出来る!」

 

神田も狂ったように嗤い、両手を宙に広げる。

 

「ふざけるな!」

「お前の思い通りにはさせない!」

 

俺と悠莉はアーシアとリーティアの方に向かって駆け出した。

 

「イッセー、手足の鎖は俺が壊すからお前はアーシアを受け止めろ。俺はリーティアを」

「ああ。分かった」

 

俺は悠莉の作戦に頷く。

 

「我が手に宿る、一条の雷。我が敵に裁きの雷を。『天の雷』」

 

カッ!

 

レイナーレと神田の間に虚空から雷が落ちる。

 

ドゴォォォンッ!

 

二人は左右に散り、空中に飛んだ。

 

「我が手に風を。蒼穹の気流をこの手に。『蒼き風・連』」

 

悠莉は走りながら次々と呪文を唱えて、魔法を放っていく。

悠莉の手から放たれた、蒼い風の塊は銃弾のように飛んでいき、アーシア達が拘束されている鎖を壊していく。

 

「イッセー!」

「任せろ!」

 

俺は拘束していた鎖が壊され、倒れ込んでくるアーシアを抱きかかえる。悠莉の方もリーティアを抱きかかえることが出来たようだ。

 

「アーシア、リーティア。迎えに来たよ」

「もう、大丈夫だぞ。リーティア、アーシア」

「…………はい……イッセーさん……」

「ユウリさん………」

 

返事をする彼女達の声は小さく、生気を感じさせないものだった。

 

何でこんなにも、アーシアとリーティアの気配が希薄なんだよ……。

 

「無駄よ」

 

俺の心中を聞いていたかのようにレイナーレは冷笑を浮かべる。

 

「神器《セイクリッド・ギア》を抜かれた者は死ぬしかないわ。その子達は死ぬわ」

「なら、アーシアとリーティアの神器《セイクリッド・ギア》を返せ!」

「バカ言わないで、私は上を欺いてまでこの計画を勧めたのよ。残念ながら貴方達はその証拠になってしまうの。でもいいでしょう? みんな、仲良く消えるんだから」

「ハハハハ。不死鳥の者も分かっているんだろう? もう、彼女達が助からないことは。だったら、彼女達を追って一緒に死ぬのもアリなんじゃないかな?」

 

神田の嘲りの言葉を聞いても悠莉は体を震わせて俯くだけだった。俺も悔しさで一杯だ……。

 

その時、下で神父達と闇の眷属と戦っている木場と絢香ちゃんが──。

 

「兵藤くん、ここでは不利だ」

「兄様、このままだと私達が不利です」

 

俺はそれを聞きながらも、レイナーレに言った。

 

「……初めての彼女だったんだ」

「えぇ、見ていて初々しかったわよ。女を知らない男はからかいがいがあったわ」

「……大事にしようと思ったんだ」

「うふふっ。ちょっと私が困った顔を見せると、即座に気を遣ったりね。でもあれは全部、わざと私がしてたのよ? だって慌てふためく貴方の顔、とっても可笑しいんですもの」

「……俺、夕麻ちゃんが本当に好きで初デート念入りにプラン考えたよ。絶対にいいデートにしようと思ってさ」

「アハハハハ! そうね! とても王道なデートだったわ。おかげでとってもつまらなかったけどね」

 

夕麻ちゃん………!

 

悠莉は静かに俺の話を聞いてくれていた。神田と言う男もニヤニヤしながら聞いている。

 

「夕麻……。そっ、貴方を夕暮れに殺そうと思ったからその名前にしたの。なかなか、素敵でしょう? なのに死にもしないで直ぐ、こんなブロンドの彼女を作っちゃって。しかも二人も。『ひどいわ、ひどいわ。イッセーくんたらぁ、またあのクソ面白くもないデートに誘ったのかしらぁ?』あ、でも田舎育ちの小娘達には新鮮だったかもね。『こんな楽しかったのは生まれて初めてですぅ』とか言ったんじゃない? アッハッハッハッ!」

 

アーシアやリーティアをバカにする発言は許していいものでは無い。俺は怒声を張り上げた!

 

「レイナーレェェェェェェェェェェッ!!!」

「腐ったガキがその名前を気安く呼ぶんじゃないわよ! 汚れるじゃない!」

 

狂気に顔を歪めながら嘲笑するレイナーレ。

 

コイツこそ、余程悪魔じゃないか……。

 

レイナーレは手に光の槍を生成して構えた。

 

「行くぞ、イッセー。リーティア達を抱えたまま戦うのは俺達には不利だ。一度、地上に出て態勢を整えないと」

 

悠莉はそう言い、苦しそうに息をしているリーティアを抱きかかえている態勢をお姫様抱っこに抱え直して準備をした。

 

「レイナーレが攻撃した瞬間に祭壇から飛び降りるぞ。あの男の牽制は俺がやるから、イッセーは真っ直ぐにこの部屋の入り口まで駆け抜けろ」

 

悠莉は小声でそう言い、俺に合図する。

 

レイナーレが槍を振りかぶった瞬間───。

 

「今だ!!」

 

悠莉のその声を合図に俺は祭壇から飛び降りた。

 

「チッ!」

「そう簡単に逃すとでも……」

「残念ながら俺なら可能だ。閃光指弾!」

 

パチンッ!

 

俺が儀式場を駆け抜けていると後ろから光が差した。

 

恐らく、悠莉が足止めをしたんだろう。まあ、直ぐに追いつくだろう。リーティアを抱えているからそんな無茶はしないだろうし。

 

「兵藤くん、ここは僕達で時間を稼ぐ。キミ達は地上に上がってくれ」

 

木場は神父を薙ぎ払いながら言う。

 

「イッセー……ここは木場と絢香達に任せて俺達は地上に上がるぞ。俺達が脱出しないと木場達も撤退出来ないからな」

 

悠莉も俺に追いつきながら、そう言った。

 

「絢香、雛乃。この場は任せたぞ」

「了解。兄様」

「任せてね、お兄ちゃん!」

「子猫ちゃん、兵藤くんと神崎くんの逃げ道を作るぞ!」

「……了解です」

 

四人は俺達の邪魔になりそうな敵を薙ぎ倒していく。

 

四人のフォローもあって俺と悠莉は一気に儀式場の入り口まで着いた。

 

「木場! 子猫ちゃん!」

「先に行くんだ! ここは僕達と彼女達で道を塞ぐ」

「……先輩達は早く逃げて」

「……でも!」

 

俺は振り返って後ろを見る。

 

「いいから行くんだ! 兵藤くん!」

「早く、上に行って! 私達の心配ならしなくても大丈夫だから」

「そうだよ。さあ、早く!」

「悠莉先輩……早く兵藤先輩を連れて行って下さい」

「分かった……。子猫、無茶はするなよ」

「……はい」

「行くぞ、イッセー! 皆の想いを無駄にするな!」

 

悠莉はそう言い、木場達に背を向ける。──俺も皆に背中を向ける。

 

「木場! 子猫ちゃん! 絢香ちゃん! 雛乃ちゃん! 帰ったら絶対に俺のことを『イッセー』って呼べよ! 絶対だからな!──いいか、俺達は仲間だからな!!」

 

それだけを告げて、俺達は走り出す。微かに四人が微笑んだ気がした……。

 

俺達はそのまま地下通路を一気に駆け抜けて地上を目指して行った………。

 

 

 

 

階段を上りきり、俺達はアーシアとリーティアを抱えたまま、聖堂へと出てきた。

 

「イッセー……。リーティアとアーシアをここに寝かせよう……」

 

悠莉はそう言って、聖堂の近くにある長椅子を指す。

 

「ああ……」

 

俺はアーシアを長椅子に寝かした。悠莉もアーシアの隣にリーティアを寝かせる。

 

苦しそうに息をするアーシアの手を握る。

 

神様……。この子達は何も悪いことはしていないんだ! だから、助けてくれ!

 

「……私、少しの間だけでも……お友達が出来て………幸せでした………」

「……私とアーシアには一生、お友達が出来ないと思っていましたから……だから、嬉しいんです……」

「何を言ってんだ!? まだ、二人に見せていないものや連れて行きたい場所があるんだぞ! 動物園だろ! 水族館も! そうだ、遊園地にも行こうぜ!」

 

俺は必死に色々な場所を思い浮かべる。笑いながら話している筈なのに涙が止まらなかった。……もう、この子達は助からないのだと心の何処かで思ってしまっているから。必死になってそれを否定しようと俺の口から言葉が次から次へと溢れ出す。

 

「他のもほら、アレだよ、アレ! ──そうだ、俺達のダチにも紹介しなきゃ。松田と元浜って言って、ちょっとスケベだけど、すっげぇイイ奴らなんだぜ? 絶対にアーシアとリーティアの友達になってくれる! そんでさ、みんなでワイワイ騒ぐんだ! バカみたいにさぁ!」

「……松田や元浜以外にもウチのクラスには桐生って女子がいるんだがな。そいつも、紹介するよ! アイツは意外に面倒見がイイ奴だからな。アーシアやリーティアとも直ぐに友達になれるさ!」

 

悠莉もリーティアの手を握りながらそう言う。俺と同じで涙を流しながら……。

 

「……この国で生まれて……イッセーさんとユウリさんと同じ学校に行けたら……どんなにいいか……」

「きっと……毎日が幸せで……とても楽しい日々なんでしょう……」

「行こうぜ! 俺達の学校に来いよ!」

「ああ! なんだったら、俺が理事会に働き掛けて、二人の転入手続きをしてやるから! だから、生きろ! 死ぬな!!」

 

アーシアの手が俺の頬を、リーティアの手が悠莉の頬を撫でる。

 

「私達のために泣いてくれる………」

「こんなに嬉しいことはありません………」

 

アーシアとリーティアの体から生命力が抜けていくのが感じ取れた。

 

「「ありがとう………」」

 

その言葉を最後に俺達の頬を触れている二人の手が静かにゆっくりと落ちていく。

 

彼女達は微笑んだまま、逝った。

 

呆然としながら彼女達の死に顔を眺める。悠莉もリーティアの手を握ったまま、顔を俯けている。

 

何でだ? 何で、この子達が死なないといけない? だって、こんなに良い子達なんだぜ? 傷ついた相手なら誰でも……悪魔でも治してくれる優しい子なんだ。

──なのに、何でこの子達が死ぬんだ? 死ななきゃいけないんだ? おかしいだろ!?

 

「なあ、神様、いるんだろ! この子達を連れて行かないでくれよ! 頼む! 頼みます! この子達は何もしてないんだ! ただ、友達が欲しかっただけなんだ!」

 

天に、神に訴えかけても俺の声に応じる者はいない。

 

「俺が悪魔になったから、ダメなんスか!? この子達の友達が悪魔だからナシなんスか!?」

 

俺は力がない。誰かを……アーシアとリーティアを救うだけの力が無かった。だけど、そんな後悔を今更しても、彼女達が再び微笑むことは無い……。

 

「なぁ、頼むよ……神様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

俺が天に向かって叫ぶ───その後ろから。

 

「悪魔が教会で懺悔? タチの悪い、冗談ね……」

「ははは……。今の彼は絵で書くと『姫を失った、騎士』の絵そのものだな。見ていて、面白かったぞ」

 

俺達の後ろからレイナーレと神田が嘲笑しながら階段を上がって来た。

 

「……レイナーレ!」

「神田……黎二!」

 

俺達は二人を睨みつける。

 

「神田黎二……お前には色々と聞きたいことがあるから少し、俺と一緒に来てもらおうか?」

 

悠莉は神田に手を翳す。──すると、悠莉と神田が淡い光に包まれた。

 

「……強制転移か……。なるほど、決着を着けようと? 不死鳥の者よ……?」

「イッセー……。お前はレイナーレと決着を着けろ。俺もこの男と決着を着ける!」

 

そう言い、悠莉と神田は何処かに転移して行った。

 

俺はレイナーレを見る。

 

「ふふっ。ほら、見て。ここへ来る途中、『騎士』の子にやられちゃったわ……」

 

レイナーレは傷口に手を当てる。

 

淡い緑色の光が手から発せされ、傷を塞いでいく。

 

「見て、素敵でしょう? どんなに傷ついても治ってしまう。神の加護を失った私たち堕天使にとってこれは素晴らしい贈り物だわ」

 

それはアーシアの神器《セイクリッド・ギア》だったはずだ。何で、レイナーレが使えるんだ……。それに木場、子猫ちゃん、絢香ちゃん、雛乃ちゃんは無事なのか……?

 

「これで私の堕天使の地位は磐石に。ああ、偉大なるアザゼル様、シュムハザ様、お二人の力になれるの」

「知るかよ」

 

俺はレイナーレを静かに睨みつける。

 

「堕天使とか、悪魔とか、そんなもん、この子達には関係なかったんだ!」

「神器《セイクリッド・ギア》を宿した選ばれた者のこれは宿命よ」

「何が宿命だ! 静かに暮らすことだって出来たはずだ!」

「それは無理」

「何が!」

「神器《セイクリッド・ギア》は人間にとって分に余る存在。どんな、素晴らしい力であろうと異質な力は畏れられ、そして爪弾きにされるわ」

 

俺は思い出す。アーシアとリーティアのあの悲なしみに満ちた瞳を。人とは違う力を持ったゆえに、運命(さだめ)に弄ばれた子達を!

 

「仕方ないわ……。それが人間という生き物だもの。こんな素敵な力なのにね」

「……でも俺達は。俺達はアーシアとリーティアの友達だ! 友達としてアーシアとリーティアを守ろうとした!」

「でも死んじゃったじゃない! アハハッ! その子達、死んでるのよ? 守るとか、守らないじゃないの。貴方達は守れなかったの! あの時も、今も!」

「……分かってるよ。だから、許せねぇんだ……! お前も! そして、俺も! 全部、許せねぇんだ!!」

 

俺は拳を握り締める。力が欲しいと渇望する。

 

「返せよ……!」

 

『想いなさい……。神器《セイクリッド・ギア》は想いの力で動き出すの。その想いが強ければ強い程、必ずそれに応えてくれる』

 

「リーティアを返せよ……!!」

 

『イッセー。本当の力というのはな。常に困難と絶望に直面している時に発揮される。お前にもし、そんな時が訪れたら、願え。そして、想え。それらの想いはきっと、お前の本当の力を呼び覚ますきっかけになるはずだ』

 

「アーシアを返せよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

『良いだろう……。お前のその想いに応えよう。クククッ! 忌々しいがあの男に鍛えられた力が今ここに芽吹く! 今はまだ、俺の声はお前には届かないが近い内に会えるだろう。……会える時を楽しみしているぞ、『相棒』』

 

『Awakening!! Red comes Kaiser!!』

『Dragon booster!! The ignition!! LadderⅡ!!』

 

「…………ッ!」

 

俺が叫びに呼応するかのように、左腕が輝く。手の甲から宝玉が現れて、左腕全体が光の覆われる。

光が収まったとき、左手から肘までには赤い籠手が装着されていた。

更に手の甲の宝玉が輝き、宝玉の上に何かの紋様が浮かぶ。

同時に俺の体を大きな力が駆け巡る。左腕を起点に全身へ。

 

「うあああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

俺は溢れ出る力に驚きながらも、レイナーレに向かって一気に駆け出す。

 

嘲笑を浮かべる敵に向けて拳を突き出す。

 

ブンッ!

 

「その程度の早さじゃ、私を捉えられないわ」

 

レイナーレは簡単に俺の攻撃を避けた。

 

「だから言ったでしょう? 壱の力が弐になっても、私には敵わないって」

 

俺は即座に振り返り、拳を再び構える。

 

『Boost!!』

 

宝玉から再び音声が聞こえて、甲の宝玉に浮かぶ文字が『Ⅰ→Ⅱ』に変わる。

 

ドクンッ!

 

俺の体に更なる力が湧き上がる。

目の前の敵を倒すための力が増していく。

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺は力を拳に収束して再び、レイナーレに詰め寄る。

 

ブンッ!

 

だが、また俺の攻撃は空を切る。

 

「へぇ! 少しは力が増した」

 

レイナーレは空中で両手に光を集めて槍を形成する。

 

「ふんっ!」

 

そして、2つの槍を俺目掛けて投擲する。

 

俺は力を足に収束して、避けようとしたが止めた。

 

ズドンッ!

 

光の槍が両太腿を貫く。

 

「…………ッッ!!」

 

俺はそれを歯を食いしばり耐える。

 

全身に激痛が走っているが、俺は構わずに槍に手を伸ばす。

槍を両手で掴み、一気に引き抜く。

 

ズボォ!

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

更に全身に痛みが走るが俺はそれを意志の力で押さえ付ける。

 

ジュゥゥゥゥゥゥゥ!

 

傷口から煙が立ち昇る。槍を引き抜いた両手からも。

光が外と内から両手と太腿を焼き焦がす。

 

「光は悪魔にとって猛毒。触れるだけでたちまち身を焦がす。その激痛は悪魔にとって最も耐え難いよ? 貴方の様な、下級悪魔では」

「それがどうした……。こんなもん、アーシアとリーティアの苦しみに比べたら……」

 

俺は両手の光の槍を両拳に力を込めて──。

 

バキィ!

 

握り砕く。

 

「どうってことないんだよ!」

 

『Boost!!』

 

『Ⅱ→Ⅲ』へ。

 

「大したものねぇ。下級悪魔の分際でそこまで頑張ったのは褒めてあげる。でも……」

「グ……ッ!」

 

俺は僅かに片膝を着く。

 

く……っ! 予想以上に光力が強い! 全身に力を入れていないと倒れちまいそうだ!

 

「やっぱり、それが限界ね。下級悪魔程度ならとうに死んでもおかしくないに。意外に頑丈ね?」

 

ハハッ! 悠莉の奴に散々、扱かれたからな。頑丈さに掛けては人一倍強いと自負しているよ。

でもここで終わりなのか? 俺はまだ、アイツに一撃も攻撃を当てていないのに……。

 

俺はふと、アーシアとリーティアの方を見る。

 

こんなに煩くても静かに眠る彼女達。

 

煩くてゴメンな、二人共。俺は大丈夫だから。頑丈さと根性には誰にも負けないつもりだから。だから、問題ねぇ! 悠莉だって問題ねぇ! アイツが敗けるところなんか、想像出来ないからな! だから、見ていろよ。アーシアとリーティアが悔しかった分は俺と違う場所で闘っている悠莉がさ、全て晴らしてやるか!

 

そう思っていると、俺の口はひとりでに言葉を紡ぐ。

 

「神様……じゃ、ダメかやっぱ。悪魔だから魔王か……」

「………?」

「いるよな、きっと。魔王……。俺も一応、悪魔なんで頼み、聞いて貰えますかね?」

「なーに、ブツブツ言ってるの? あまりの痛さに壊れちゃったぁ?!」

 

俺は全身に力を込める。

 

「頼んます……」

 

俺はゆっくりと立ち上がる。

 

「後は……何も要らないですからぁ!」

 

体がふらつくが力を全身に流して持ち直す。

 

「そんな、嘘よ!」

 

レイナーレは目を見開く。

 

「だから、コイツを………」

 

悪魔の翼を広げる。

 

「……一発、殴らせて下さいっ!!」

 

俺は立ち上がった。

 

「立ち上がれる筈ない……。体中を光が内側から焦がしてんのよ!? 光を緩和する能力を持たない、下級悪魔が耐えられるはず……」

 

ああ……。だから、こんなにも痛いんだな。全身を炎で燻られるみたいに。

 

「ああ……痛ぇよ」

「ヒッ!」

 

俺は一歩、踏み出す。

 

「超痛ぇ……」

「……………ッ!」

 

更に踏み出す。

 

「今でも意識がどっかに飛んでっちまいそうだよぉ……」

 

ふらつきながらも確実に近づいていく。

 

「でも、そんなのどうでもいいくれぇ──テメェがムカつくんだよ!!」

 

『End boost!!』

『Explosion!! Limit liberation!!』

 

更に籠手が変化して、左指までも赤い装甲に覆われる。まるで、ドラゴンの爪の様に。

そして宝玉から光が一層強く、溢れ出る。

 

これは……。

 

眩い光に包まれながら、俺はまた一歩進む。

 

「この波動は中級……上級……いえ、それ以上の!? あ、有り得ないわ! その神器《セイクリッド・ギア》は唯の龍の手《トゥワイス・クリティカル》がどうして……!?」

 

俺はレイナーレが動揺しているときにも一歩、一歩と進む。

 

「ヒィッ!」

 

レイナーレは顔を恐怖で染めながら一歩、退きながら手に光の槍を形成する。

 

「う、嘘よぉ!?」

 

そして恐怖しながら投擲してきた。

 

俺はそれを一瞥して──。

 

「鋼《はがね》」

 

一言、呟いた。

 

レイナーレが投げた槍は俺の体に当たった瞬間、砕け散った。

 

ガシャァァァンッ!

 

「ヒッ! いやぁぁぁぁっ!」

 

それを見た、レイナーレは更に恐怖し、俺に背を向けて逃げようとする。

 

俺は足に力を込めて駆ける。一気に距離を詰めてレイナーレに肉薄する。

 

ガシッ!

 

おいおい。ちょっと、軽く地面を蹴っただけなのになんて加速力だよ。これもこの籠手の力なのか?!

 

グイッ!

 

俺は飛び立とうとするレイナーレの手首を掴み、引き寄せる。

 

「逃がすか、バカ!」

 

レイナーレの顔が青ざめていく。

 

「私は……私は至高の!」

 

俺は左腕を思いっきり振りかぶる。

 

「吹っ飛べ! クソ天使ぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

全ての力を込めて、堕天使に拳を打ち込んだ。

 

ドゴオォォォォォォッ!!

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ…………っ!」

 

ガッシャァァァァァン!!

 

レイナーレは教会の大きなガラス窓に叩きつけられて、ガラスを砕きながら外へと吹っ飛んで行った…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

《悠莉side》

 

 

俺は神田と共に郊外の小高い丘に転移した。

 

「………ここで戦うのかい? なかなか、いいところだな」

 

神田はそう言い、周囲を見渡す。

 

「一つ、聞きたい」

「ん? 何だい?」

 

俺は一つの疑問を片付けることにする。

 

「お前はリーティアの神器《セイクリッド・ギア》が何なのか、分かっているのか?」

「ふふっ。何かと思えば、そんなことか。どんな神器か分かっていなければ、こんな計画は立てないよ」

 

俺は丘の真ん中で歩みを止めて、振り返る。

 

神田も俺を見る。

 

「リーティア……彼女の神器《セイクリッド・ギア》の名前は神々の祝福《ゴッド・ブレッシェント》。彼女の妹である、アーシアが持つ『聖母の微笑《トワイライト・ヒーリング》』と同じようにどんな対象の傷を治す力があるが……それだけなら、俺等は態々、上に内緒で独断で計画を進めたりはしない。この神器の真の力は対象の呪いによる痣や傷を治せるところと死者をも甦せる力があることにある。神滅具《ロンギヌス》には属さないが、能力だけなら神と同じ力を宿した神器だ」

「かつて、一度だけ存在が確認された『奇跡の神器』と言われた神器だ。まさか、再び所有者が現れるとは思わなかったよ。さて……聞きたいことは聞いた……」

 

俺は右半身に構えて、神田に言う。

 

「さあ、闘おうか?」

「……そうだな。そろそろ、始めるか」

 

神田は体から魔力を解放して、虚空から鋭利なナイフを幾重にも出して俺へと向ける。

 

俺は気と魔力を身に纏い、両手を手刀の構えにする。

 

一瞬の静寂が辺りを包む………。

 

その時、木の上に止まっていた鳥が飛び立った。

 

バササッ!

 

その瞬間───!

 

俺達は同時に飛び出した。

 

バッ!

 

神田はナイフを幾つか俺に向けて射出して拳に魔力を纏い、飛び込んで来た。

 

俺はそれらを弾き落としながら、間合いを詰めていく。

 

ガガガガガガガガガガガガッ!

 

「流石は不死鳥! 俺の攻撃を難なく防ぐか」

「この程度の攻撃など、寝ながらでも捌ける」

 

互いに言葉の応酬を交わしながら闘う。

 

そして、俺と神田も接近戦が可能な間合いに入る。

 

俺も神田も迷わずに接近戦を選択する。

 

神田は魔力を纏った拳を、俺は気を纏った掌底を。

 

「ハァ!」

「金剛掌!」

 

ドンッ! ドォン! ドンッ! 

 

ぶつかり合い、交差して離れてまたぶつかるを何度か繰り返すと──。

 

「埒があかないか。──疾風破斬!」

 

俺は右腕を高速で振り抜いた。

 

振り抜いたときの衝撃波がかまいたちとなり、敵を襲う。

 

「器用だな、不死鳥よ。ならば、こちらもお見せしよう。奥義というやつを」

 

神田は俺の攻撃を躱しながら、そう言う。

 

「ほう……。奥義か。それは面白そうだな。是非、見せてくれ」

「余裕の口を吐けるのもこれまでだ」

 

神田はそう言い、ナイフと魔力弾の数を増やす。

 

「たかが数が増えたところで!」

 

俺はナイフと魔力弾を手刀で切り落とすか、掌底で弾き落としていると──。

 

ギュンッ!

 

一本のナイフが後方の丁度、俺の死角から接近する。

 

「ふんっ! この程度で!」

 

俺は後ろを見ずに的確に切り払った──筈だった。

 

グサッ!

 

いつの間にか、俺の右肩には大型のボウイナイフが突き刺さっていた。

 

「何……っ! 確かに切り払った筈。なのに、俺の感知外からの攻撃だと!」

 

俺は右肩を押さえながら追撃で放たれた、魔力砲を回避した。

 

「急所を狙ったつもりだったんだが咄嗟に攻撃をずらしたか。だがそれがいつまで続くかな?」

 

神田はそう言い、魔力弾を更に放ってきた。

 

「くっ!」

 

俺が放たれた攻撃を回し受けで受け流すと更にまた増えたナイフ群を捌いていく。

 

今度は真正面からテーブルナイフが三本飛んできた。

 

「はぁっ!」

 

俺はそれを拳で打ち砕いていくが──。

 

ドスドスドスッ!

 

くっ! また迎撃したのに感知外から!?

 

今度は二の腕、左太腿、脇腹とテーブルナイフが刺さる。

 

「ハハハハハッ! また急所の攻撃を避けるとはな。流石は不死鳥一族! ここまで来ると化け物だな」

 

神田はナイフ群を更に虚空から召喚して俺に放ってくる。

 

「チッ! 疾風連破斬!」

 

俺は連続でかまいたちを飛ばす。

 

ガガガガガガガガガガガッ!! ヒュンッ!

 

大半は撃ち落としたが幾つか撃ち漏らしたナイフが飛んでくる。

 

九時の方向、二時の方向、五時の方向の三つ! ならば!

 

俺は両手を合わせて魔力を練る。蒼き気流が周囲に流れる。

 

「我が手に渦巻く風を。天の風の加護が我を包む。『蒼き嵐・螺旋』」

 

俺は両手を開き、嵐を解放する。

 

ゴオオオオオオオオオオッ!!

 

迫る全てのナイフを叩き落とす。

 

よし……! これなら。

 

俺は全てのナイフを叩き落したのを確認すると神田の方に向かおうとした──だが……。

 

ヒュんッ!

 

ドスッ! パシッ! ガキィ!

 

やはり、攻撃を落としたにも関わらず、ナイフが感知外から飛んできた。

三本の内、一本は背中に刺さったが残りの二本は左手で白刃止めして、右手で弾き落とす。

 

何だこれは!? 撃ち落としたはずなのにまるで幻のナイフを攻撃して本物ナイフが俺に突き立っていく! このカラクリは何だ!?

 

俺は態勢を崩して地面に肩膝を着いた。

 

「どうだい? 俺のフェイク・ナイフイリュージョンの味は! 今はナイフだけだが本当は魔力斬撃や魔力砲でも可能な攻撃なんだよ! しかし、怖いねぇ。まだ本気では無いとはいえ、もう俺の攻撃を防ぎ始めて来たか。不死鳥一族……かつて我々が一番に恐れた相手だけはある。恐ろしい順応能力だ」

 

俺はそれを訊きながら奴の攻撃を分析する。

 

幻のナイフを死角から放つことで本物と認識させて本命のナイフを相手に認識させることなく放つ攻撃。人間が作ったものには完璧は無い。きっと、この攻撃にも致命的な綻びがあるはずだ。

何処だ……? 何処にある? 考えろ……。視認した攻撃には幻は無い筈だ。………ん? 視認した攻撃? 認識外の攻撃……視覚や気配でも読めない攻撃……まさか!?

 

俺が一つの結論に達すると──。

 

「しかし……解せないな。不死鳥よ、お前は何で本気を出さない? いや、出せない? ここには結界を張っているのだろう? 最初に会った公園は人払いの結界は張っても、認識阻害の結界は無かったから分かるがこの場所はそうではないのだろう? ここは町の郊外で更には視覚阻害、認識阻害、感覚阻害、気配遮断、魔力遮断、人払いの結界、極めつけには空間隔離。ここまでしたにも関わらず、外の存在を気にするとは……。そんなに誰かに気づかれたくは無いのか?」

 

神田は探る様な視線を俺に向ける。

 

「正確にはまだ、気づかれたくは無いが正解だ。まだ、俺の存在は気付かれる訳にはいかない。まあ、時間の問題かも知れないが……。だが今はまだ、その時では無いのは確かだ」

「外の目を気にしなければ、俺の攻撃をここまで受ける事も無かったのではないか? そこまでして気づかれたくはない存在とは……」

「いや……外の存在を気にしなくても、最初の一撃は受けるつもりでいた。それが贖罪になるかは分からないがそれでも甘んじて攻撃を受けなければいけなかった。それが俺の罪に対する罰だ!」

「あの娘達が死んだのは別にお前のせいではあるまい? 唯、あの娘達は運が無かっただけだ。それを気にするとは……。不死鳥一族は今も昔も変わらないな。まあ、俺は人伝てに聞いただけで会うのはこれが初めてだがな」

 

神田はそう言い、肩を竦める。

 

「……俺は今回のこの一件は一番、頭に来ているんだ。確かにあの時、出会わなければ俺はここには居なかったかも知れない。だが、俺達は出会ってしまった。交差するだけの運命(さだめ)が重なってしまった。俺は……この出会いに感謝している。昔に無くしてしまった想いを思い出すことが出来たのだから……」

 

俺は立ち上がる。

 

「だから、俺はあの子達を……リーティアとアーシアを護る! 俺はあの子達の友達だから!」

「だがお前達はその娘達を護れなかった。そうだろう?」

「ああ……。だから、俺は自分が許せない。立場を気にする自分も、それに迷わずに従う自分も! 全てが許せないんだ!」

 

俺は自身の身を炎で包む。──すると、体に刺さっていたナイフは全て、消えていた。

 

「なっ!」

 

神田は驚愕の声を出した。

 

「俺はもう随分と生きてきた。その間に色んな人を見た、色んな人に出会った。出会いも別れも、人の生き死にも数え切れない程見てきた。だからかな……ある時から、俺は涙を流せなくなった。いや、本当はその原因も分かっている。だが、俺はどのような理由があろうと人の死に……リーティアの死に涙を流せなかった自分が憎いし、許せないんだよ!」

 

俺の胸中を昔の情景がよぎる。あの時、あの光景を。大切だったアイツの姿を。

 

「ここからは俺の力の一部を見せてやる。だが、その前に──現れろ、『鳳凰』、『火の鳥』」

 

俺は左手から『鳳凰』を、右手から『火の鳥』を現す。

 

「周囲に更に結界を。三重……いや、五重の重ね曼荼羅結界を張れ」

 

『鳳凰』と『火の鳥』は俺の命に従い、周囲に飛んでいく。

 

「そして──」

 

パァン!

 

俺は柏手をする。手の先に意識と力を集中させる。

 

「姿を現せ、『不死鳥』」

 

俺は打ち合わせていた手を離す。──すると、両手の間に一本の朱金の線が伸びる。

俺はそれを掴むと、横薙ぎに振り抜く。

 

ゴオゥ!

 

そこには一本の日本刀が握られていた。

 

「何だ……!? その強大な力を秘めた刀は!?」

 

神田は初めて動揺と恐怖の声を出した。

 

「この刀は銘を『不死鳥』。銘から分かるようにこれは不死鳥一族の当主のみが持つことを許させた刀だ」

「まさか……!」

「俺は不死鳥一族の最後の生き残りであり前当主の息子だ。俺は不死鳥一族第三十五代目当主。不死鳥悠莉」

 

ザンッ!

 

俺は『不死鳥』を地面に突き立てる。

 

「『不死鳥』は更にこの場に結界を構築、そして闘いが終わるまで維持しろ。なに、直ぐに終わらせる」

『分かりました。我が主よ……』

 

『不死鳥』から慎ましい感じの女性の声が聞こえる。

 

「その刀には意志が宿っているのか!?」

「いや? 神が宿っている。俺の一族の開祖が契約を交わした神、天空神『不死鳥』がな」

「な……っ!?」

「さて……ここまで結界を張れば、俺の力が外に漏れる事もあるまい。──全・リミッター解除」

 

俺は自身にかけていた制限リミッターを解除する。

 

その時、風が凪いだ。世界が変わる、近くにいた動物も一目散に遠くに逃げる。

 

「う……あ……」

 

神田は掠れた声を発する。

 

「それが……お前の本気か……!」

「いいや、これはリミッターを解除しただけだ。俺にはまだ本来の力を封じている封印術式が掛かっている。リミッターを解除しても全力の六割の力しか出せない」

「は……は……これで六割……? 何だよ、この力の差は……!? 圧倒的じゃないか……」

「いや、流石に封印状態だと勝てない相手もいるぞ。須弥山の帝釈天がそうだな」

 

俺はあのプライドが高いハゲを思い出す。アイツ、「天」の称号を持つ俺にバリバリ対抗意識を持っているからなぁ。それが無ければ付き合いやすい奴なんだが……。

 

「アジアの最大勢力の主神とも面識があるだと……どこまで化け物なんだ……」

「……不死鳥一族が大昔に滅ぼされた要因の一つが強大な力ともう一つが神器を創ることが出来る事だ。まあ、これが滅ぼされた最大の要因かもしれないがな。そしてこれから俺がお前に見せるのは俺が創り出した神器の中でも特に強力な力を宿した神器(じんき)と呼ばれる物だ。心して見るがいい!」

 

俺は前方に手を翳して唱える。

 

我が呼び声に応えよ。祖は倭の国の始まりの神から生まれし存在にして始まりの炎也。

祖は神にして、炎を宿し、鍛冶を司る者也。その名を持って我が敵を古の炎にて燃やし尽くせ。

 

我が前に姿を現せ、『カグツチ』

 

ゴォアアアア!

 

翳した手の平から炎が生まれる。炎は次第に形を成して一つの武器と成る。

 

それは『矛』。

 

古の時代の日本と中原(ちゅうげん)より生まれた槍の前身となった、古来の武器。

矛は槍と違い、刺突だけでなく斬ることにも向いた武器。だが、扱いの難しさと槍の普及により次第に廃れていった武器でもある。

 

「10神器の一つ、『カグツチ』。炎を司る神が宿りし、神ノ矛だ。10神器の中で一番、戦闘に特化されているのがコイツだ」

 

俺は矛を軽く振るう。

 

ゴオッ!

 

その際に『カグツチ』の炎が火の粉となって周囲に広がる。

 

矛の長さは軽く二mを超える。そして刃の長さだけでも70cmはある代物。

 

「さあ、覚悟はいいな……?」

「ま、まだだ……! まだ俺は負けたわけではない!」

 

そう言って神田はナイフと魔力弾を放つ。

 

「お前はこの技を見破れていないだろ! 勝負はここからだ!」

「ああ……それか」

 

俺は『カグツチ』で自分に当たるものだけを切り払う。

 

そして、死角からナイフが飛んでくる。

 

「この技の欠点は……」

 

俺は目を閉じて、カグツチの矛先を地面に刺す。

 

「『焔舞い』」

 

その瞬間──。

 

俺の周りを中心に炎が立ち昇る!

 

ジュゥゥゥゥゥ!

 

「視覚や感覚に頼らなくても自分の周りの防御を固めるだけで防ぐことが出来る点だ。いくらお前が視覚の隙を着く幻を見せても、感覚を惑わす術を使おうとも、もう俺には効かないし、効果は無い。特に強力な防御術を持つ、相手にはお前のこの奥義は相性が悪い」

 

俺の死角の何処からか来たナイフは、カグツチの炎で焼き尽くされた。

 

「今度こそ、これで終わりだ!」

 

俺は駆け出す。

 

「無限流秘奥義『隼』」

 

俺は神田の視界から消える。

 

「なっ! 消えた!?」

 

俺は超高速で移動しながら言う。

 

「正確には違う。目に見えない速度で動いているだけだ」

 

敵《獲物》を補足し、一撃で命を刈り取る狩人

 

その速さ、敵《獲物》が最後に見るのは、残像だけ

 

俺はカグツチを敵の心臓に突き立てた。

 

「がはっ!………いつの間に……」

「お前が死ぬ前にリーティアから奪った神器《セイクリッド・ギア》は返して貰う。『簒奪者《テイク・ハンター》』」

 

俺はそう言い、左手を神田の胸の前に翳した。

 

「……捉えた! 奪え!」

「何ッ! ぐあああああっ!」

 

俺は神田の体からリーティアの神器を吸い上げた。

 

パシッ。

 

俺の手には神器の能力の媒介となるクロスのペンダントが握られていた。

 

「これでお前は用済みだ。炎よ、罪深き咎人に断罪の炎を。『裁きの審判』」

 

俺はカグツチに魔力を込めた。

 

ゴオオオオオオオオォォォ!!!

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁ…………っ!! 俺はここで終わりだが覚えておけ。不死鳥! あの方は………深淵の闇《ダーク・アビス》は動き出すと……!」

「何……?!」

「はははははは………ははははははっ!!」

 

神田は狂ったように嗤いながら『裁きの審判』の炎で焼き尽くされていった………。

 

俺はそれを見届けると神田が最後に言った言葉が思い起こされる。

 

「深淵の闇《ダーク・アビス》は動き出すか……。まさか、大昔の亡霊が再び現代に復活するとはな。動き出すというのは『王』が選定されたからだな」

 

やれやれ……。これから、忙しくなりそうだ。

 

俺はそう思いながら、教会に向けて転移をするのだった…………。

 




すいません……。色々とゴタゴタしていたので更新が遅れました。

この話で終わらせようとしましたが次話に持ち越しました。やはり、長くなったので。

次回は早めに更新します。次回で原作一巻が終わります。

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