人間界に降りた後、悠莉はルナスティア達と合流してある街の拠点に移った。
「よし……荷物はこれで全部だな?」
「ええ……食材はあとで買いに行けばいいからこんなところかと」
悠莉はソファーに座り、体を伸ばした。
ルナスティアも悠莉の向かい側のソファーに座って体を休めた。
「ルナ母、肩を揉む」
そう言い、ルナスティアの肩を揉む子は───。
「ありがとう、莉香。助かります。いつも、肩が凝ってしょうがなくて」
「ルナ母の胸は大きいから仕方ない。寧ろ、羨ましい」
そう言って、自分の胸を見下ろす莉香。
「ふふ……莉香の胸も十分大きいと私は思うけど?」
「それでも、母さんとルナ母には敵わない」
莉香はルナスティアの肩を揉みながら溜息を零した。
向かいの席では───。
「父様、どう? 私の胸、また大きくなったんだけど」
そう言い、悠莉に右腕に胸を押し付けるのは───。
「絢香……いつも、言っているだろう。無闇に抱きつくなと」
「パパ~~、私の胸はどうですか? 大きさでは姉様に負けますけど形なら敗けませんよ」
反対の左腕に胸を押し付けているのは───。
「雛乃………お前もだ。絢香に対抗して胸を押し付けるな……」
悠莉はそう言って、疲れた顔をした。
向かいの二人も苦笑い。
「他の子供たちは結婚しているのに何でお前たちは結婚してないのか分かった気がした」
「私、他の男になんか興味無い! 私は父様以外の男なんか嫌い!」
「うん、私も姉様に賛成~。他の男はいつも、いやらしい目で私たちを見てくるから嫌い!」
そう言って、二人は更に悠莉を密着させた。
「はあ………これは放って置いて、これからの事を話そう」
何か横から「ひどい!」「父様、遊びだったのね!」と声が聴こえたが黙殺した。
「とりあえず、先ずは様子見だ。期間は……5年位でいいか。この間に『託』に選定された子を見つける。見つかっても見つからなくても俺は5年経てば、世界を回り各地の勢力情勢を確認する」
「そうですね………それの方が効率が良いかと、私の方でも天界にいる友人に依頼してみます」
そう言い、互いに確認すると。
「因みに俺は変装するからな。正体がバレたら面倒だからな」
そう言って、悠莉は指を一回鳴らすと───。
パチンッ───。
ポンッ!
子供の姿になった。
「「「「………………」」」」
突然、黙る四人。
悠莉は首を傾げながら───。
「どうした?」
その瞬間―――。
「「「「可愛い~~~~~~~!!!!」」」」
空間が割れる位の大声を上げた。
「!?~~~~~~っ」
悠莉は悶絶。特に絢香と雛乃は耳元で大声を出したから余計に。
「うわー、父様の子供頃の姿は母様に見せて貰った、写真でしか知らないけど、実際に見ると全然違う!!」
「うんうん! パパの可愛さが100億倍だね!! モフモフ!」
絢香と雛乃は頬を擦りつけて抱き着いた。
向かい側は───。
「…………………////////」
莉香は顔から湯気を出し……。
ルナスティアは────。
「悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿、悠莉の子供姿……………………ふふふっ」
何か、ブツブツと言っていた。目からハイライトが消えているから正直、怖い……。
そして、悠莉は────。
「きゅう………………」
左右の胸に挟まれて落とされていた。
しかし、何という羨ま…………ゴホンッゴホンッ……けしからんことを!
しかし………ここにいる全員、やろうと思えば世界を軽く百単位で滅ぼせる力をもっているがとてもそうは見えないな………。
果たして、この調子で運命(さだめ)を覆すことが出来るのだろうか………?
続く……………。
★
あれから5年が経ち……俺の旅立ちの時も近づいた………。
まあ……また、簡単にその間にあった事を語ろう。
俺は初めて幼稚園に通ったのだが、何というか新鮮だったな。
俺は子供の頃は修行ばかりだったからどれも新鮮だ。
母親役のルナスティアはいつも俺を送る時、顔が輝いていたがどうしたのだろうか?
友達も出来た。兵藤 一誠っていう男の子だ。俺はイッセーと呼んでいる。
ただ驚いた事にイッセーの中にはドラゴンが宿っている。しかも、『赤龍帝』ドライグだ。
まだ、イッセーが小さいから微弱な力しか感じないが、いずれ目覚めるだろう。
通い始めて、少ししたある日―――。
男の子に苛められている女の子がいた。どうやら、小学生の子のようだ。近くの学校に通っている子だと推測した。
男の子たちは口々に「こいつの家、お化け出るんだぜ~」「呪いの子は近寄るなよー!」とか言っている。
子供は純粋過ぎる故に残酷な言葉を平気で口にする。子供のイジメはこういうのが怖いところだ。
さて……そろそろ、助けるか。女の子も泣きそうだしな。
俺は女の子を守るように間に入った。そして、俺は男の子たちだけに殺気を飛ばした。
「失せろ………ガキ共」
そう言ったら、アイツ等はすごい勢いで顔を真っ青に染めて「ごめんなさい、ごめんなさい!」と何回も土下座して走っていった。
何だ………。あの程度の殺気で逃げるとは軟弱な奴らめ。
天)いいえ、貴方が規格外なだけです。
何か、聞こえたぞ……。まあいい、悪は去った。これで完了だ。
そう思い、帰ろうとすると───。
グイッ!
誰かに腕を引かれた。誰だと思い、後ろを振り返ると───。
さっきの女の子が俺をジッと見ていた。
「ありがとう………」
「助けるのは当たり前だ。当然のことをしたまでだ」
俺はそう言った。
「怖くないの………?」
「何がだ?」
俺は分からないので聞き返した。
「私のお家、神社だから。皆、気味悪がるの………」
「ほう……和の家だな。ウチは普通の家だから羨ましいな」
「え………?」
女の子は驚いていた。
「ん………?何か、驚くようなことがあったか?」
俺は疑問に思い聞いてみた。
「だって、他の子は私の家を怖がるのに君は怖がらないから」
「ふむ……怖がる要素なんてあったか?」
そう言って、俺は首を傾げた。
「まあ、また虐められていたら直ぐに俺に言え。お前を護ってやるから」
そう言い、俺は笑顔を見せた。
「………………///////」ぽ~~~~っ。
何か、顔を真っ赤に染めたな。熱でもあるのか?
天)フラグ回収乙。
また、何か聴こえたぞ………。
「おーーい。大丈夫か?」
「!? ………えっと、大丈夫!」
「まあいいか。俺は帰るな。お前も遅くなるなよ」
そう言って、今度こそ帰ろうとすると───。
「そうだ! 名前、名前を教えて!」
女の子がそう聞いてきた。
「名前か? 俺は悠莉、神崎 悠莉だ! お前は?」
「私は朱乃。姫島 朱乃だよ。悠莉くん!」
そう言って、朱乃は笑顔を見せた。
「朱乃か……。良い名前だな。そうだ! 今日から俺たちは友達な。困った事があれば直ぐに言えよ。俺が駆けつけてやる」
「うん! 分かった。悠莉くん!」
「じゃあ、俺は帰るな。朱乃も寄り道しないで帰れよ」
「うん! バイバイ、悠莉くん!」
そう言い、朱乃は俺が見えなくなるまで手を振っていた。
あの日以来、朱乃に随分と懐かれた。俺は幼稚園生だから、朱乃とは常に一緒にはいられないが帰りに公園で待ち合わせて遊んだりした。
休みの日に初めて、朱乃の家に行った日、朱乃の親を見た時は驚いた。
何と、父親があのバラキエルだったのだから。力を封印しておいて正解だった。
俺の正体がバレたら面倒な事になっていたからな。
朱乃が抱きついて来るのでバラキエルの視線に本気の殺意が込められているのは勘弁して欲しかった。
その後、朱乃の母親の朱璃さんに何処かに引っ張られて行ったけど、奥から何かの断末魔が聞こえたのは気にしないでおこう。
新しい友達が出来て、一週間経ったある日―――。
朱乃と遊んだ後、家に帰る道を歩いていると……突如、結界が張られた。
「ふむ……俺に対して張ったわけではなさそうだな。どれ、見に行って見るか」
俺は魔力と気を少し開放して、屋根伝いに気配が在る方に移動した。
暫く、走っていると前方に複数の気配を感知した。
悠莉は左手を真横に伸ばした。
「よし……先ずは一人、潰すか。出ろ! 『鳳凰』」
一瞬、悠莉の左手首に着けているブレスレットが光を発した直後、左手には既に刀が握られていた。
悠莉は刀を鞘から抜いて
「さて………ゴミ退治だ!」
そう言い、気配を消して一気に相手の堕天使の背後から襲いかかった。
直前で敵は気づいたが、既に遅く。
「な────っ」
「遅い! 無限流『鮫(さめ)』
―――その技、獲物を捕食する鮫の如く───
悠莉は袈裟懸けに刀を振り抜いた。
ヒュンッ────。
ズバァ────。
「ぐわぁぁぁぁあああああっ!!!!」
「先ずは一人」
そう言い、刀に付着した血を振り払う。
「な、何だ! お前は!」
仲間が殺られて興奮しているのか、もう一人の堕天使は手に光の槍を創り出し、構えた。
「貴様に聞こう。何をしていた?」
「はっ! 脆弱な人間には理解できない事だ。話したところで意味は無い」
相手が人間だと分かったから、堕天使は冷静になり、逆にこちらを見下した言葉を言った。
「喋る気は無いか………まあ、分かってはいたが」
悠莉は肩を竦めながら息を一つ吐くと、刀を鞘に収めた。
「もう、面倒だからお前は焼滅しろ」
悠莉は堕天使に右手を向けた。
悠莉の行動に堕天使は怪訝に思っていると───。
「じゃあ、バイバイ」
右手の指を鳴らした。
パチンッ───。
ボッ───。
「へ………?」
ボォォォォォォォオオオオオオ───。
「何で、火が……ぎゃーーーーーーーーーーっ!!」
堕天使は不死鳥の裁きの炎にて焼滅した……。
「大丈夫か?」
悠莉は猫又二人に声を掛けた。
「あ……ありがとう」
「……………」
姉らしき猫又が礼を言うが妹の方はさっきまで襲われていた為か、体を震わせていた。
悠莉はそれを察して妹猫の前にしゃがみ、優しく頭を撫でた。
「もう大丈夫だ。怖い奴はいなくなった。だからもう怖がらなくてもいい」
そう優しく言って妹猫を抱き締めた。
それで緊張の糸が切れたのか妹猫は声をあげて泣いた───。
「泣き止んだか?」
「うん…………」
悠莉は泣き止んだのを確認すると立ち上がった。
「とりあえず、俺の家に行くぞ。他に堕天使がいないのは分かるが念の為に早くここから離れるぞ」
そう言い、悠莉は歩き出す。
それを見て、猫又姉妹も慌てて後を追う。
月が綺麗な、そんな日だった……。
家に着き、二人をリビングに通すとルナスティアがお茶を入れていた。
「おかえりなさい、悠莉。案外、早かったですね」
悠莉は椅子に座りお茶を啜る。
「お前たちも座れ。これからの事を話し合うから」
悠莉にそう言われ、猫又姉妹も悠莉の対面の席に座った。
ルナスティアもお茶を入れ終わりと悠莉の隣に座った。
「先ずは自己紹介だな。俺の名は神崎 悠莉」
「私は神崎ルナスティアです」
「私は黒歌にゃん」
「白音です………」
お互いの紹介が済ませると悠莉は聞いた。
「先ずは、お前たちはこんな時間に何をしていた?両親が心配するだろ?」
「えっと……両親は結構前に亡くなって……」
その問いに悠莉はバツが悪そうに表情を歪ませた。
「悪い………じゃあお前たちの住むところは?」
「…………」
悠莉の問いに黒歌は黙りこむ。
それを察したルナスティアは両手を叩いて言った。
「今日からこの家に住みなさい」
そして、とんでもないことを言った。
「…………は?」
黒歌は急な一言にキョトンとする。
「いやいやいや……なんでそういうことになってるのにゃ?」
「だって貴方たち住む所が無いんでしょ?」
「そうだけど……」
「じゃあ住みましょう」
「いや、だから……」
思わず、素の喋り方に戻ってしまった黒歌とルナスティアは互いに芸人のような漫才を続ける中、白音は出されていたお茶を飲み干した後、話が長くなると思ったのかテーブルから離れたところで筋トレをしている悠莉へトコトコ近付いてきた。
筋肉に負荷を掛けるようにダンベルで筋トレをする悠莉。
「……なにしてるの?」
「強さとは……日々の鍛錬と時間をかけた努力であると俺は思う………諦めずに常に前を見据えて鍛錬を続けるそうすることで己の中の弱い自分に打ち勝つ」
「……………」
悠莉の言葉を理解できなかった様子の白音は可愛らしく首を傾げて悠莉の横でじっと見つめる。
そんな二人を見てルナスティアは微笑ましく思い、黒歌の説得を続ける。
「黒歌ちゃんでいいかしら? この申し出なんですけど、私も黒歌ちゃんと白音ちゃんを家に置いて、いえ、住んでくれないかと思っているんです」
「……なんでそこまでするのかが分からないのですが……」
「あれを見て下さい……」
ルナスティアが指をさす方向には……
「……それって楽しい?」
「人それぞれだが。鍛錬は自分を裏切らないからな、日々の努力は自分を強くする」
「……やっていい?」
「そこの台に色んなダンベルがある。自分に合うのを探して使うといい」
白音と悠莉が仲良く筋トレをしているを見てルナスティアは微笑む。
「悠莉があんなに楽しそうにしていること滅多にないんです……黒歌ちゃんたちのおかげだと思います」
「いや、何もしてないし……」
「でも悠莉が同い年のお友達を連れて来てくれたことが重要なんです。友達なんてイッセー君と朱乃ちゃんしかいませんから」
ルナスティアからそう言われると、黒歌は筋トレをして腕がプルプルと震えている白音を見て理解した。
(白音のあんなに楽しそうな顔……いつぶりかにゃ……)
今思い出せば両親が死んでからという者、すぐに堕天使二人組に追われる生活が続いていた。
両親の死に未だ回復してなかった時に命の危機によるストレスでずっと泣いていたか、夜もろくに眠れずに脅えていた顔しか見てなかった。
だけど、偶然に逃げてきたこの街で悠莉に助けてもらい、優しく抱き締めてくれた。
白音にとって驚きで、夢のようなものだったのかもしれない。
そして、まだ堅いけど自分を助けてくれた子と知り合って少し表情が柔らかくなったように見えた。
(戦いの時は見ていて怖かったけど……結果的にはあの子のおかげでもう逃げ回る必要もなくなったんだね……)
気まぐれで助けたかもしれないが理由はどうあれ、これで以前よりは自由になった。
これからの目的が無かった黒歌たちにとってこの申し出はとても有り難いものだった。
目の前でニコニコと笑う一人の人間を見て黒歌は決めた。
「それならここでお世話になってもらってもいいかにゃん?」
その黒歌の申し出にルナスティアは頬を緩ませて露骨に微笑んだ。
「もちろん。というよりもう親子になりましょうか?」
「にゃはは……」
ルナスティアのあまりの喜びように流石の黒歌も苦笑していると、傍から悠莉が横から現れた。
「何か、疲れて寝ちゃったみたいだ……」
「あらあら……白音ちゃんはもうおやすみ?」
悠莉が白音をだっこで運んでいた。
すやすやと寝息を立てて眠る白音にルナスティアは微笑み、黒歌はどこか安心したように息を吐いた。
「最近はずっと寝てなかったからかにゃ? よく眠ってるにゃん」
「なら俺の部屋に連れて行け。俺はソファーで寝るから」
その一言に黒歌は寝ている白音を悠莉から優しく受け取る。
「そんなに気を遣わなくてもいいにゃん。ソファーでも大歓迎だにゃん」
黒歌がそう言うと、悠莉は首を振って返す。
「女の子をソファーなんかで寝かしたら俺が母さんに怒られる」
ルナスティアがクスクス笑って悠莉を見つめる。
悠莉は指一本立てて黒歌を指してきた。
「その代わり、黒歌には明日、聞きたいことがある。だから、今はゆっくりと寝ていろ」
それを聞いた黒歌はそこから表情を少し引き締める。
「……分かったにゃ。私も君に聞きたいことがあるから丁度いいにゃ」
「ありがとう。では、明日話そう」
そう残した後、悠莉はリビングの電気を消してソファーに寝転がる。
そんな悠莉の姿を見てルナスティアは一言声を掛ける。
「毛布くらいはかけなさいね」
「ああ」
手を振って一言で答える悠莉にルナスティアは家の電気を消して寝室へ向かう。
そんな中で黒歌はルナスティアに尋ねる。
「あの……私たちが部屋で寝てもいいのかにゃん?」
「大丈夫ですよ。明日には部屋は空けておきますし、ああなったらもう動きませんから」
そう言われてしまったら納得するしかない。
だが、これも悠莉の優しさなのかと思い、黒歌は寝そべる悠莉の耳元で呟く。
「今日は色々とありがとうにゃ。おやすみ」
そう言ってリビングから黒歌が出ていくのを確認すると、悠莉は呟いた。
「運命(さだめ)が動き始めたか……」
これから起こることに気を引き締めて悠莉は眠りについたのだった。
★
《白音side》
「んにゃ………」
朝の日差しがカーテンから漏れた時、小さな声が漏れた。
わたしは目を覚まして目をこする。
「ここ……」
初めて見る風景に疑問を感じる。
そこで気付いた。自分は今、ベッドの中にいたのだと。
「……ねむねむ」
初めて味わうベッドの感触のわたしは虜になって、再びベッドの中へ入ろうとした。
そんな時、下から楽しそうな声が聞こえた。
「………声?」
笑い声に吊られてわたしはベッドからヒョコっと顔を出す。
《三者視点》
神崎家の朝は基本、早い。
現在、朝の六時なのだが、そこのテーブルにはルナスティア、悠莉、そして黒歌がいた。
「そうですか……悠莉が……」
「はい……ちょっと事故に遭った所を助けられて……」
「どんな事故でしたか?」
「変態に襲われていたのを見つけて吊るした」
「それなら安心ですね」
向かい側で黒歌がお茶を吹きだすのだが、ルナスティアはそれを冗談として受け止めてただ笑うだけだった。
黒歌は悠莉に慌てて耳打ちする。
「そう簡単に確信を言っちゃだめにゃ!」
「問題ない、事実だしな」
「あ~……」
この理由に黒歌もなぜだか嘆息しながら牛乳を飲み干す悠莉を見つめていた。
そんな時、悠莉は白音の気配を感知した。
「あ、やっと起きたかにゃ」
黒歌は猫の聴力で気付いたのか、寝室に通じるドアを見る。
すると、そこから小さな影がひょっこりと姿を現した。
「あらあら♪」
ルナスティアは嬉しそうにその影を見ると、そこには目を擦る白音がいた。
「姉さま……」
「おはよう。起きるの早いのね」
姉妹の間で朝の挨拶をかわすと、ルナスティアが新しく小皿を用意した。
「白音ちゃんも朝ご飯どうぞ」
「……あ」
ここで白音も思いだした。
ここは急遽住むことになった場所であり、悠莉が招いてくれた家だということを。
白音はトコトコとテーブルへ向かい、姉の近くの席に座る。
そんな白音にルナスティアはご飯をよそい味噌汁と冷たいジュースを差し出す。
「はい、たくさん召し上がれ」
「うわぁ……」
目の前には出来立てのご飯と味噌汁、魚の焼き物、卵焼き、煮物とお漬物が並んでいた。
美味しそうな料理に白音が目を光らせて覗く。
「白音、早く食べちゃいなさいな」
姉に急かされると、白音はご飯をモグモグと食べていく。
そんなあまりに可愛い食事にルナスティアは微笑ましそうに見つめる。
「いいですね…………本当の娘が出来たみたいで……」
『ルナスティア………お前、自分の娘がいるだろう』
『だって………最近、忙しいのかなかなか会えませんし……白音ちゃんを見ているとソフィアの小さい頃を思い出して………』
念話でやり取りする悠莉とルナスティア。
「ごちそうさまでした………」
そう言って両手を合わせる白音。
「あらあら、お粗末さま」
ルナスティアはニコニコしながら言った。
朝ご飯から数時間が経った。
ルナスティアが買い物に行ってる間に黒歌と悠莉は話しこんでいた。
なお、黒歌と一緒にいる白音は猫耳と尻尾を出している。
「なるほど……堕天使はお前たちの力を狙ってこの世界には来たと」
「そうにゃ。私たちは猫又って妖怪で特にその中でも貴重な猫魈(ねこしょう)って種類だから狙われたにゃん」
「なるほど……道理で黒歌と白音の気は普通の猫又よりも力が強いと思ったら………」
「しょうがないにゃ、狙われるのは前からだにゃん」
黒歌の膝の上で白音は難しい話に付いていけておらずにコックリコックリと眠そうにしている。
「それにドラゴンには不思議な……」
「力と戦を呼び寄せ……」
ここまで来て、白音は寝てしまった。
昼が過ぎ───。
昼食を食べ終わり、悠莉は家の周辺を案内している。
昼食後に黒歌や白音に上目遣い+涙目の最強コンボでお願いされたからだ
※ルナスティアの入れ知恵です(笑)
こう言われて断れるか? 否!! 無理だ!!
まあ、こんな理由で近所を案内していると。
「案外、店とか少ないにゃ」
「他の町もこんなもんだ」
話しながら歩いていると、そこで同い年くらいの子供と遭遇した。
そして、悠莉を見た子供たちは…………。
「うわああぁぁぁぁぁぁぁ!! 処刑人だああぁぁぁぁぁぁ!!」
「ごめんなさいいいいいぃぃぃぃ!! もう、悪いことはしませぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」
急に泣いて逃げてしまった。
黒歌はその光景にまたも呆気に取られて聞いてきた。
「……あの子たちは?」
「……悪ガキ共だ」
「いや、でもあんな脅え方は……なにかしたの?」
「海に放り込んで、動物園のライオンの前に放り込んで……それだけだな」
「あぁ……」
肩を竦めながら言うと、黒歌は納得した。
そりゃ怖がるわ。
というかその子は死んでないよね?
そう思っていると、白音が代わりに聞いていた。
「なんで仲良くしないの?」
純粋な質問だった。
今まで友達が欲しくてたまらなかった白音と友達を遠ざけている悠莉。
「仲良くしないわけではない。現に俺と仲良くする友達が二人いるからな」
言いながら悠莉は笑う。
「ただ俺は子供だからといって悪いことを平気でする奴が許せないだけだ。アイツ等は相手の気持ちも考えず、人が気にしているような事を平然とするからな。それに……」
「?」
「何も理由無しに自分よりも弱い相手をいじめ、嗤うような野郎には絶対にならない。真の男ならどんな奴とも正面からぶつかって勝利を手に取る!!……これが俺の信念だ」
拳を空に掲げながら不敵に笑う悠莉に黒歌は不覚にも見惚れてしまっていた。
昨日の夜のあの冷酷な瞳などを見た時は恐怖したが、今は……自分の信念を語る彼は立派な男の顔をしていたのだから。
すぐにいつも通りに黒歌は装う。
「そっか……じゃあ……白音とは友達にならないかにゃん?」
「え?」
「ん?」
突然、黒歌が白音を前に出して言うと、白音も悠莉も意外そうに洩らした。
「黒歌、何を言っているんだ?」
「にゃ? 何がにゃ?」
「もう俺とお前たちは友達だろうに」
「え…………?」
「しかも、一緒に暮らすから……家族でもある……」
黒歌は驚いた。もう自分たちが悠莉の友達になっていることに。
「良いの………?」
「良いも悪いもない。それとも白音は嫌か?」
「嫌じゃない………」
「なら、それで良いんだよ」
「それなら私も友達かにゃん?」
「当たり前だ……黒歌も友達で家族だ」
「じゃあ友達ってことで。よろしくにゃん」
「は…はい……よろしくです……」
物静かに悠莉を見て照れる白音の姿が生き別れの妹を思い起こされる。
アイツも引っ込み思案だったが、慣れた奴には素を出す子だったな。
(多分、この白音も同じタイプだな……)
「話が終わったとこで、次を案内するぞ」
「おー」
「にゃあ」
そうして悠莉たちが別の場所に行こうとすると…………。
「悠莉くーーん!」
「?」
「にゃ?」
後ろから別の声が聞こえたと思って黒歌と白音が振り向く。
「朱乃か……?」
黒歌たちが見たのは母親らしき人物に手を引かれている少女がこっちに手を振っていた。
「悠莉くん!」
「あら? 悠莉くんじゃないの」
そう言って手を振ってくるのが見なくても分かる。
悠莉も手を上げて振って返すと、朱乃は一層嬉しくなった。
「あらあら、朱乃はいつも悠莉くんにお熱ね……」
「うん! だって大好きだもん!!」
「そうなの。将来が楽しみだわ」
「うん!」
明るく会話しながら遠ざかっていく親子に悠莉は苦笑しながら言った。
「朱乃は相変わらずだな」
「あの子は?」
「俺の二人いる友達の一人だ」
悠莉は簡単に説明すると再び歩き出す。
「じゃあ、行くぞ」
「分かったにゃん」
「うん………」
そう言って悠莉たちはまた町を歩くのだった………。
黒歌と白音の神崎家での生活記録はここで終わる。
次は何が起きるかは運命のみが知っている………。
修正しました。