カチ………カチ………キリ………キリ…………カチッ─―――
時は来た────。
運命(さだめ)を動かす為に───。
永き時が経ち、全てはこの時の為に────。
さあ…………我が『鎧』の継承者よ…………戦え………。
闇を…………駆逐せよ………我を殺した………闇を……殺せ………。
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
止めろ! 俺はもう、誰も殺さないと誓ったんだ!! 憎しみは何も生まないとお前も知っている筈だ!
龍よ!!!
ははははははははははっ!!!!!!!!
何、綺麗事を言っている!!! 所詮、戦いは怒りと憎しみしか生まぬ! それを貴様は知っている筈だ!! あの時、貴様の母が斬られた時に!! 怒りに身を委ねよ! 憎しみをこの身に宿せ!!!! 全ては復讐の為に!!!! 我を殺したあの神を殺す為に!!!!
違う! 俺は全てを救う為に戦っている。怒りや憎しみなど不要だ!
やはり、貴様は唯の偽善者だ!! ならば何故、悪を見逃す? 貴様の力なら貴様の言う様に全てを救える筈だ!! あの時、貴様がアイツを殺していればあの娘は死んでいなかったのではないか?
―――――――――――――っ!!!!!!
まあ、それでも貴様が否定するのならば歴代の所有者の様に我が貴様を乗っ取るだけだ!!!!!
何だと! そんなことなどさせるものか!
貴様の顔で我が貴様の妻や娘達を殺そうとすれば、あやつ等はどんな顔を見せてくれるかな? 絶望? 怒り? 悲しみ? 憎しみ? ああ………犯してやるのも一興だな! 自身の父に体中を陵辱をされ、心を壊され、全ての絶望を味あわせた後に殺すのも堪らないな!!!
貴様――――――――ッ!!!!!
ははははははははははっ!!!!!!!
そうだ! 怒れ! 憎め! 全ての怒りと憎しみは我の糧となる!!!! さあ……………殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!
止めろ………止めろ………止めろ………止めろ………止めろ………止めろ………!
我を殺した闇の神を殺せッ!!!!!!!!!!!!!
止めろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!
「やめろおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
ガバッ!
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ………ゆ……夢か………」
チュン……チュン……チチチチッ………。
カーテンから朝日が差し、雀の鳴き声が聴こえる……。
約千年振りか…………何で今頃になってアイツが出てきたんだ? やっぱり、この『鎧』を完全に使いこなすにはアイツが言う様に受け入れるしかないのか……?
※黒歌と白音が家に暮らし始めて一週間経ちました。
「ふう……今、考えても仕方ないか………起きるか」
しかし、Tシャツは汗でびしょ濡れだな。風呂に入るか。
そう思っていると───。
ドドドドドドドドドドドドドドッ!!!
な、なんだ!? 敵襲か!? そう思い部屋の扉を見ると。
バンッ!!
「何事ですか!!」
「どうしたにゃん!!」
血相を変えてルナスティアと黒歌が入って来た。
「黒歌、母さん………近所迷惑だぞ」
俺は溜息を吐きながら言った。
「朝からいきなり大声が響けば誰だって驚くにゃん!」
ごもっともだな。
「大丈夫だ。夢見が悪かっただけだから」
俺はベッドから降りて、黒歌の横を通る時に頭を撫でながら言った。
「じゃあ、俺は風呂に入ってくるから」
そう一言、言って下に降りって行った。
──山中──
この日の昼、黒歌と白音は俺の鍛錬の見学に来ていた。
鍛錬が一段落すると。
「突然だが明日か、明後日に俺はこの国から旅立つ」
俺は黒歌と白音にそう言った。
そう言うと、しばらく二人は固まり…………
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「……なんで?」
「うおっ!」
ショックを受ける二人。
「いやいや、歳を考えてもそれは無謀だって! 海を出るってどんだけ!?」
「そうだな、最初は南米のアマゾンに行って観光と遺跡巡りをして孤島で鍛錬を積みながら北欧に行こうと思っている」
「そういうことじゃないんだけど……」
幾らなんでもここまでぶっ飛んでるとは思っていなかった黒歌はいつものようにおちゃらけるような雰囲気にはなれなかった。
そんな中でも白音の落ちこみようは激しかった。
「……行っちゃうの?」
「ああ、前から決めていたからな」
「……もう会えないの?」
その一言に黒歌も俺も少し虚を突かれた。
白音は涙を溜めて俺に詰め寄ってきた。
そんな彼女に俺は溜息を吐いて答えた。
「今生の別れではないから、またいつか帰るつもりだ。この世界にいる限りは一生の別れにはならない」
そう言う、俺に白音は恐る恐る聞いた。
「…怖くないの?」
白音は不思議でならなかった。
今まで逃げるように各地を転々としてきた。それに似た生活を悠莉はもっと広く、言葉の通じないような場所へ自分の意志で行こうとしているのだから。
自分は姉と一緒にいたのだけど、もし自分一人だけだったら……と思うと怖くなった。
自分だったら耐えられない……。
だけど、目の前の人は違う。
「怖い? 変なことを聞くな白音」
「え?」
白音の不安を笑い飛ばすかのように俺は答える。
「この日本だけじゃなく。海の先には未だ見ぬ強者と未知なる遺跡物があるんだぞ? 神話、神、魔王、堕天使、俺は今、楽しみで仕方ない。それに……」
「?」
「これが俺の信念だ! こうやってオレは正直に生きていく!」
本当に楽しそうに語る悠莉は日の光を浴びる。
両手を一杯に広げて決して偽らないその姿を白音に見せつけた。
「……」
白音は晴れ晴れとした悠莉の姿を見て顔を赤くさせた。
そんな中、黒歌は溜息を吐いて言った。
「だけど、ルナさんはどうするにゃ? それに言葉は?」
「母さんは説明すれば納得するから問題はない。言葉に関しても大丈夫。俺は世界各国の言葉を喋れるから」
世界各国の言葉を喋れるってどんだけなの………。
規格外な年下の子に戦慄しながら黒歌は一つ指を立てて提案をする。
「じゃあルナさんは私たちに任せてにゃ」
「良いのか?」
「友達だから当たり前にゃん」
黒歌の提案に悠莉は感謝した。
「黒歌、お礼に俺が叶えられる範囲での願いを聞くが何がいい?」
「あら、そんなつもりで言ったんじゃないんだけどにゃ~?」
「構わない。好きな願いを言うと良い」
黒歌はうーんと考える。
「今は保留にしとくにゃん。また会えた時の楽しみにしとくにゃん」
「分かった。決まったらいつでも良いからな?」
そう言えば、黒歌たちに渡す物があったな。
「そうだ。黒歌、白音これを」
俺は空間に腕を突っ込んで目的の物を手に掴むと黒歌と白音に渡す。
「これは………」
「首飾り?」
二人は渡された物を眺めながら呟いた。
「また会う、約束の証だ。これは俺が普段着けている、クロスのネックレスと同じ物だ」
「私のは漆黒だにゃん」
「真っ白……」
どうやら気に入ってくれたみたいだな。
「じゃあ、そろそろ帰るか。もう、夕飯だからな」
「分かったにゃん」
「うん……」
そうして俺たちは家に帰る為に山を降りていった。
次の日―――。
事前に準備は終わっていたので後はイッセーと朱乃のに別れを言うだけだ。
イッセーには午前中に言ってきたので次は朱乃のところだ。
俺が神社の鳥居を潜ると────。
「悠莉くーん!」
俺を発見した朱乃がオレを見つけてこっちに走ってきた。
「こんにちはー! 悠莉くんが私の家に来るのは珍しいね!」
「おう、朱乃。今日は朱乃に話があってな。上がっても大丈夫か?」
「良いよ~。今はお母さんしかいないから」
「それは丁度良い。朱璃さんにも話す事と渡す物があるから」
朱乃に案内されて俺は朱乃の家に上がった。
「こんにちは、悠莉くん。私と朱乃に話しがあるみたいだけど何かしら?」
「明日、旅に出るから別れを言いに来た。後は二人に渡す物があって来た」
「え……………?」
それを言うと、さっきまで騒がしかった朱乃は急に静かになって俺を見てきた。
「いつ帰ってくるの?」
「分からん、十数年はかかると思う」
目を見開いて驚愕、もしくは何を言ったのか分かってないような感じだった。
「何年って……いつ?」
「なるべく、早く用事を済まして帰って来たいが正確な年数は分からん」
そうとだけ言うと、朱乃の手が震え、ぎゅっと強く握られた。
「……やだ」
「うん?」
「やーだー!!」
さっきまで天真爛漫に笑っていた朱乃が急に泣いて悠莉の体に抱きついて来た。
「どうした、朱乃……」
俺は驚いて朱乃を見ると。
あのいつも笑っていた朱乃が目元に大粒の涙を零して鼻水も流して嗚咽を漏らしていた。
「なんで?……なんで行っちゃうの?」
「………………」
「ヒック……朱乃のこと……が嫌いに……なったの?……グス……もう悠莉くんと……もう会えないの?……グシュ……」
いつも泣くように泣き叫ぶのではなく、受け入れがたい事実に声も出せないような声だった。
「やだよぅ……もっと遊びたいよぉ……ヒック……もう抱きついたりしないから……グズ……もう迷惑かけたりしないから……ヒック……行かないでよぉ……」
ポロポロと零れる涙を幾ら拭っても止まることはない。
ずっと抱きついて泣き続ける朱乃に俺は母さんに持たされていたハンカチで朱乃の顔を拭く。
「とりあえず顔を拭け……」
「うん………」
ハンカチで顔を拭いた後、俺は朱乃の目を見据えて真摯に答えた。
「確かに、いつ帰るかは分からない。だが、俺は再びここに戻って来る。それだけは確かだ」
「……本当?」
「必ずだ。俺は嘘は吐かない。それに……」
俺は朱乃の目を見て言った。
「……まだ朱乃との約束を果たしてないからな」
「……あ」
朱乃は思い出した、始めて出会った日を……。
「だから、俺は再びここへ帰る。これは俺の意志だ」
「……本当に…」
「帰る。絶対にだ」
悠莉の言葉の節々からは決してその場しのぎの出まかせとは思えない凄みを含んでいた。
それに対して朱乃もついに分かってくれたのか、涙を拭いた。
「……まだ約束決まってない……」
「そうか、じゃあ帰ってから決めるといい」
「うん……ねぇ……」
「……なんだ?」
少し安心した悠莉が返すと、突然、朱乃が自分に近付き………。
頬に口づけした。
「……朱乃?」
「……こうしたかったの」
若干、潤んだ赤い目で悠莉を見ながら朱乃は微笑む。
悠莉は朱乃行動に驚いたが、朱乃が落ち着いたから良しとした。
悠莉は朱乃にある物を渡す。
「朱乃、これをお前に渡す」
俺は金色のブレスレットを朱乃に渡す。
「これは約束の証だ。俺は必ず、お前の元に戻って来る」
そして俺は朱璃さんに向き直る。
「朱璃さんにも渡したい物があります」
「あらあら、何かしら?」
そう言って朱璃さんは微笑む。
俺は内ポケットから勾玉のネックレスを取り出した。
「これを常に身に着けていて下さい。いつか必ず、役に立つ時がきますから」
「ふふっ。悠莉くんが言うからにはそうなんでしょうね。分かりました。常に身に着けておきます」
そう言い朱璃さんは勾玉のネックレスを着けてくれた。
「これで自分の要件は終わった。なので帰ります」
俺は朱乃の家を出た。
鳥居まで来ると見送りに来たのか、朱乃と朱璃さんがいた。
「また会おう、朱乃」
それに対して朱乃は遠ざかっていく悠莉を追いかける訳ではなく、手を小さく振って返す。
「……またね」
少女の呟きはとても小さく……儚かった。
だが、悠莉はそのメッセージを受け取って
片手を高々に挙げて応えた。
自分と同じように小さい背中も……今日だけはいつもより大きく見えた。
遠ざかる男の子を見えなくなるまで見続ける少女は……………。
この日、また一つ大人になった。
旅立ちの日―――。
悠莉はベッドから降りて引き出しから巨大なバッグを持ちこむ。
そして、日の出で淡く光る外に出ようと玄関で靴を履いていた時、一つの気配に気付いた。
「遂に行くんですね、悠莉」
「ああ、後のことは任せたぞ? ルナスティア」
悠莉は振り向いてルナスティアを真っ向から見据える。
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
そう言って悠莉は玄関から荷物をまとめて出た。
ルナスティアは静かに見守った。
「……みゃあ……」
「大丈夫……いつかは分からないけど必ず帰ってくるから……」
「……はい」
自分の部屋のベッドで黒歌は涙を流す白音を優しく抱いて包みこむ。
自分の目から流れるほんの一滴の雫を拭くことなく、二人はベッドの中で抱き合った。
その光景を眺めるのは、机の上の写真立てに入っている最近になって撮ったユナスティアと黒歌、白音、そして悠莉をセンターとした写真だけだった。
「ふあぁ……」
「おはよう。朱璃」
姫島家ではバラキエルと妻の朱璃が起きる。
夫婦は朝の眠気を吹き飛ばすために毎朝恒例の愛娘の寝顔を覗きこんだ。
だが…………。
「…………」
「ん?」
この日だけはいつもと違った。
「朱乃…………」
「……泣いているのか?」
今日だけは目から一筋の雫が流れ落ちた朱乃の寝顔だった。
この日、街から一人の少年が旅立った。
動きだした運命(さだめ)に逆らう為に。
自身の信念の為に。
少年は先を見据えて、歩いて行った………。
主人公の闇と朱璃さん救済フラグを立てました。
感想を待ってます。