気付いたら2ヶ月ぶりの更新…… どうにかしたいですね。
次は戦闘メインになりそうです。
『骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね』
ヘリの中でなのはさんがそう言っていたのを思い出す。
『取引許可のでているロストロギアも数多く出店されるので、その反応をレリックと誤認したガジェットが出てきちゃう可能性が高い、とのことで私たちが警備に呼ばれたです』
リインさんはそう言っていた。だから、もしかしたら何も起きないかもしれないし、あるとしてもガジェットが何体か出てくるぐらいのはずだ。それに、今日は隊長達と副隊長たち、機動六課の最高戦力が揃っている。もし何か問題が発生したとしてもいくらでも対処できる。だから安心して任務に付ける。そう、そのはずなのに。
…………この妙な胸騒ぎは一体なんなのだろうか。
「こーらっ! 今は仕事中なんだからちゃんとしなさいっ!」
「イテッ。あー、すまん。ちょっとボーとしてた」
ギンガに脇腹を小突かれ、意識を戻す。
ここはホテル・アグスタの屋上。上から下まで景色がよく見えて、風がそれなりに強く吹いている場所だ。
今回の任務ではツーマンセルかもしくはスリーマンセルで分かれ、指定の場所を警備することになっている。そして、人数が少ないためら一度の報告がとても重要になってくる。だから俺とギンガのいる、上も下も見えるこの屋上は重要なポジションだ。なぜなら、ガジェットはどこから湧いて出てくるかわからないからない。もしかしたら空からということもありえる。
その時はギンガの『ウイングロード』を使うか、俺が撃ち落とすしか手段がないな。
「ねぇ」
「なんだ?」
背中越しから聞こえるギンガの言葉に返事を返す。
「何かあったの? 今日、ずっと落ち着かないようだけど…………」
顔は見えなくても、今のギンガは心配そうな表情を浮かべてるだろうなぁ、と容易に想像できる声色だった。
「別になんでもねーよ」
「ほんとうに?」
「ホントホント。ただなんとなく嫌な感じがするなって思っただけだ」
そう言ってギンガの方を見ると、何とも言えない顔をしていた。
「なんだよ」
俺が少し拗ねたような声を出すと、ギンガは、んー、と唸ってから絞り出すような声で言った。
「ライトでもそう思うときあるんだなぁ」
「いや、俺だってそう思う時ぐらいあるぞ?」
間髪入れずに突っ込んだ俺にギンガは怪訝な顔をした。
「私と2人の時の任務ではあんなに無鉄砲なライトが? ロクな作戦も立てずに突撃しちゃうあのライトが?」
「あぁ、その俺がだよ」
言っていることがあながち間違っていないから何も言い返せない。それでも最近はマシになったと思うけどなぁ…………
話が途切れたのを機に、俺たちはそれぞれの持ち場に戻った。
鳥の鳴く声と風で木が揺れる音、今はそれだけしか聞こえない。こんなに静かになるとやっぱり考えてしまう。 確かにギンガの言う通り、こんな嫌な感じがするのは初めてかもしれない。
…………いや、二度目だ。あの日も妙な胸騒ぎがしていたようなーーーー
ビーッ! ビーッ! ビーッ!
警告を表すアラームが鳴ったことで、思考が途切れた。
「ライトッ!」
「あぁ、わかってる。来やがったか……ッ!」
密かにガジェットが出てこないこと期待していたのだが、現実はそんなに甘くなかった。俺は1度、大きく息を吐き出し、頭の中をクリアにする。
「とりあえず、先ずは他の奴らと合流しなきゃな」
「えぇ、そうね」
現場指揮はシャマル先生が、ガジェットの撃破はヴィータさんとシグナムさんが向かうようだ。俺たちの仕事は万が一に備えて最終防衛ラインを設置すること。それプラス、今まで通りの警備。この好機に何かが起こらないとも限らないからだ。
「早いな、お前ら」
「流石に屋上から来るよりは近いですから」
俺の言葉にエリオが反応してくれた。俺とギンガが合流場所に着くまでに全員集合していた。対応も早く、ティアナの指示で定位置に就いているようだった。
あとは待つだけか…………
実践が始まってもなお、俺の胸騒ぎが収まることはなかった。
▽▽▽
ゼストはジェイル・スカリエッティからの通信を切ったルーテシアを横目で眺めていた。表情の乏しいルーテシアの横顔からは何を考えているのか窺えない。
「本当にいいのか?」
「うん」
ルーテシアは小さく首を縦に振った。
「ゼストとアギトはドクターのこと嫌っているけど、私はそんなに嫌いじゃ無いから」
「ふむ。ルーテシアがそうしたいのなら、そうすればいい。俺も少しながら手伝おう」
「ありがとう」
ゼストの言葉にルーテシアは口元に微かな笑みを浮かべた。
「始めるね」
広く場所を取ると、ルーテシアはグローブ型のブーストデバイス『アスクレピオス』を使って召喚魔法を発動した。大きな魔法陣の中から現れたのは大量の小さな蟲。ルーテシアはその全てが目標に向かって飛んで行ったのを確認すると、キョロキョロと辺りを見渡した。
「どうかしたんか?」
「2人はどこに行ったの?」
「あぁ。あいつらか」
ルーテシアの質問にゼストはオレンジ色の髪を持つ青年と小人のような赤髪の少女を頭に思い浮かべた。
「あいつらなら、向こうにいると思うぞ。罠を仕掛けてくると言っていた」
「そうなんだ。それじゃあ、私もそっちに行ってみようかな」
「そうか、わかった。俺はここにいるから気が済んだら戻ってこい。足元には気をつけるんだぞ」
「うん。行ってくるね」
そして、ルーテシアは小走りで森の中へと消えていった。
「なぁなぁ、こんなにトラップ設置することねーんじゃねーか? どうせ誰もこねーだろー?」
木陰に座って休んでいるアギトは自分の真上で嬉々としてトラップを設置している青年に声をかけた。ちょうど設置しているトラップのヒモを木に括り付け終わったのだろうか、額の汗を拭っている姿が目に映った。
「いや、そんなことは無い。きっと来る」
陽の光で顔は見えないが、アギトにはその声がはずんでいるように聞こえた。
「なんでそんなこと言えるんだよー?」
「さぁな。理由なんてねぇよ。ただなんとなく、そんな気がするだけだ」
そう言って青年は不敵に笑った。
▽▽▽
キャロが召喚魔法の発動を感じ取り、 大きな魔力反応が確認されたと報告を受けた時には、副隊長たちから抜け出たガジェットがすぐ側まで迫っていた。
「どうすっかなぁ。これ」
それと同時に、すぐ目の前でも何体かガジェットが召喚されているのが見て取れた。Ⅰ型が10機、III型が2機、合計12機。
通常の戦闘なら、召喚魔法を使った魔導師を叩く組みとガジェットを破壊する組の2組に分かれるが、これは防衛戦だ。そう簡単な話じゃない。
そうだな……副隊長たちも全て破壊したらこっちに来るようだし、それなら、仕方ないが魔導師の確保は諦めてここで全員でーーーー
「モーリス陸曹」
「なんだ、ランスター」
俺の少し前に立っているティアナは振り向かずにこう言った。
「ここはあたしたちだけで大丈夫ですから、陸曹たちは召喚魔導師をどうにかしてきてください」
「………………は?」
「もう時間がないんですから、早く行ってください」
確かに、ティアナたちだけでここを止めることが出来るのなら、それに越したことはない。だけど、やけにティアナの周りの雰囲気が張り詰めている。俺にはそのことが気になり、一抹の不安を覚えた。
「やれるのか?」
「大丈夫です。いけます」
俺の問いにティアナはそう断言した。その言葉に他の3人も大きく頷く。
「ライト」
ギンガがそろそろ行かないと、と目線で訴えかけてくる。
…………しゃあない、迷ってる暇はないよな。
「細かい指揮はティアナに任せる。わかってるとは思うが、無理はするな。きっと早いうちに副隊長たちも来るはずだ。それまで耐えるだけでいい」
「「「「はい!」」」」
「……頼んだぞ」
俺はギンガを連れてガジェットに見つからないよう遠回りしながら森へ入っていった。その後ろではもう戦闘が始まっているような音が鳴り響いていた。