夜明けの月   作:tomato88

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第3話

「なのはさん! すみません、遅れました!」

「すみません!」

「大丈夫だよ、2人とも。あの子たちには先にシャーリーのところへ行ってもらったから、わたしたちはゆっくり行こう」

 

俺とギンガはヴィータさんの訓練の最中、なのはさんから『新人フォアードチームに新しく実戦用のデバイスを渡すので2人も来るように』と連絡を受けた。時間はちょうど正午になっていた。

 

「チッ、隊長の命令なら仕方ねーか。お前ら、午前の訓練はこれで終了にするぞ!」

「「はい!」」

 

なのはさんと合流して歩き始める。この時間を使って、俺は聞きたかったことをなのはさんに尋ねた。

 

「4人はどんな感じですか?」

 

一応、このチームのリーダーである俺はヴィータさんから4人がどんな感じなのかは聞いていたのだが、やっぱり俺は直接指導しているなのはさんから聞きたかった。これは今後の作戦に関わることだ。

 

「んー、そうだね……。訓練にもよくついてきてると思うし、実際に各々のスキルも伸びてるよ。ただねぇ……」

「何かあったんですか?」

「スバルとティアナがね? 2人とも会話もしてるし、コンビネーションも取れてるんだけど、なんとなくギクシャクしているような気がするんだよね」

 

なのはさんはそう言って困ったような表情をしてた。2人の性格から考えて、俺はだいたい何が起こったのか見当がついた。チラリとギンガの方を見てみると、またあの子は……と頭を抱えていた。その姿はまさしく子供の喧嘩に頭を悩ます母親のようだった。

 

「なのはさん」

「ライトは何か知ってたりする?」

「いえ、そこまではわかりませんけど、あの2人なら大丈夫だ思いますよ」

「ライトがそう言うなら、わたしももう少し様子を見てみようかな」

「えぇ、是非そうしてください。だって……」

 

だって、スバルは俺とは違うんですか。

そう言いそうになるのを俺は慌てて口を紡ぐ。

 

「ん? どうかした?」

「いえ、なんでもないです」

 

ちょうどそんな時、目的の部屋まで到着した。

「あ、ここですよね? きっと、みんななのはさんのこと待ってますよ。早く入りましょう」

「わ、わかったからそんなに押さないでよ〜」

 

なんとか理由をつけてなのはさんに先に入ってもらい、俺は一息つく。誤魔化せたとは思っていない。だが、まぁ、問題の先送りにはなるはずだ。

 

「ライト、あなた今、何を言おうとしたの?」

 

今までずっと黙り込んでいたギンガが心配そうに俺の顔を覗き込んできた。事情を知っているギンガからすれば俺が何を言おうとしていたのか想像するのは容易いだろう。だからこその心配だ。

 

「大丈夫だ。今、変なことを言って部隊の仲を悪くしようとは思っていないからよ。ほら、さっきだって何も言わずに済んだろ?」

「そうだけど……」

 

納得のいっていなさそうなギンガの頭にこの話は終わりだという意味を込めてポンポンと二、三回叩く。

 

「ほら、先入るぞ」

 

なんとなく、自分のした行為が気恥ずかしく感じた俺はギンガを置いて、そそくさと部屋のなかに入ろうとした。

 

「ちょっとまっーーきゃ!」

「おっと」

 

何か柔らかいものが胸の中に飛び込んできた。扉のちょっとした出っ張りにギンガが足を引っ掛けてしまったのだ。

 

「大丈夫か? ギンガ」

「う、うん。 ありがとう、ライト」

運良くギンガを抱きとめることができた俺は状況を確認する。足を挫いたとかの怪我はなさそうだ。そう思った俺はギンガを抱きとめていた手を離した。しかし。

 

「ギンガ?」

 

俺が手を離してもギンガは離れようとしてくれない。

 

「どうかしたか? やっぱり何か怪我でもーー」

「ううん、怪我はしてない。でも、もう少しだけ……」

 

そう、上目遣いで俺のことを見つめてくるギンガはほんのりと顔を赤らめ年相応の女の子のような表情をーーーー

 

「すいませんが、いつまでそうしてるつもりなんですか?」

イラつきを隠そうとしない、冷ややかな声が後ろから聞こえた。顔を向けてみると、そこには満面のつくり笑いを浮かべたティアナが立っていた。

 

「そこでイチャイチャされると視界に入ってウザいんでやめていただけませんか?」

 

俺はティアナのその態度になんとも言えない不快感を感じたが、それをなんとか心の中だけで押しとどめることができた。

 

「悪かったな、ランスター。 ほら、ギンガも平気なら離してくれ」

「そ、そうね」

 

そう言って、ギンガはやっと俺から手を離してくれた。俺はギンガの寂しそうな視線とティアナの冷ややかな視線に挟まれ、1つ、ため息を吐いた。

 

 

▽▽▽

 

 

 

「作戦目的は頭に入ってるいるな? 一応念のために確認しておくぞ。 今回の目的はレリックの確保と列車内にいるガジェットの全破壊だ」

 

なのはさんと俺たち、それと操縦者のヴァイスさんの8人だけしかいないヘリの中はピリピリとした緊張感に包まれている。それもそうだ。これは新人たち4人に取って初めての実戦になる。加えて、機動六課始まって以来、最初の実戦でもある。いくらか現地に出ていたとはいえ、俺とギンガの顔にも緊張の色は隠せていない。

 

「今回は3つにメンツを分ける。スバルとランスターは列車中央から前列部を探索。だが、ランスターはリインさんに言われた通り、先ずは機械系を操っていると思われるガジェットの破壊に向かってくれ。それが終了次第、スバルと合流だ」

「「了解!」」

この2人は訓練校で鍛えられていたお陰か、いくらかは冷静でいられている。ティアナも納得はしていなくとも指示は素直に聞いてくれるようだ。問題はこっち。

 

「エリオとキャロには2人で後列部を見てもらおうと思っているんだが……大丈夫か?」

「はい! 任せてください!」

「だ、大丈夫です……」

 

エリオは男の意地か、ただ肝が据わっているのかどうかわからないが、先ほどから堂々とした、周りを気にかけるような振る舞いをしている。だが、反対にキャロは元々、気弱な性格なのか、その顔は不安でいっぱい、といったようなものをしている。

「キャロ、俺から1つアドバイスをしよう。怖かったら周りを見ろ。きっと、そこには頼りになる仲間がいるはずだ。それに、いざとなったら通信1つで俺やギンガが助けに行く」

「は、はい!」

不安は拭いきれていないとは思うが、今の俺にはこれぐらいのことしかできない。後はキャロが自分で頑張ってくれるしかない。

 

「ついでだ。他のやつもよーく聞いておけ。なのはさんの前で言うのもなんだがな、俺たちの1番の任務は生き残ることだ。命の危機に陥った時は目的を放棄してでも逃げろ。助けを呼べ。俺が言いたいのはそれだけだ。お前ら! 生き残ってこの作戦、完遂するぞ!」

「「「「はい!」」」

 

こいつらにあの人と同じ道は辿らせない。

 

「なのはさん、先行っちまったけどよ、誰から行くんだ?」

「俺とギンガが先行します!」

 

もしそうなるようだったら……

 

「頼むぜ『(クライム)(アンド)(バニシュメント)』俺の期待、裏切らないでくれよ……ッ!」

この身に変えても、俺がーー

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