DRIVE SUNSHINE!! -加速する世界の中で-   作:Professor灰猫

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第1話 浦の星女学院の新任教師は何者なのか

 世界の破滅ってのは、突然やって来るみたいだ。

 

 例えばとあるアイドルのライブを観て楽しんでいる、その時にも。

 

 

 今から半年前、世界は突然静止した。

 世界の人々は急に身体が重くなり、動かなくなる。まるで、怪奇現象の様に。ただその中で、人々の悲鳴、爆発音は響き、静止したと言っても静かではなく、まるで世界の終わりが来たかのように騒々しかった。

 

 事件は後に────グローバルフリーズと呼ばれるようになった。

 この事件によって、世界中で1億人を超える、驚く程の犠牲者が出てしまった。人類史上最悪の天災である。

 

 

 だが、俺達は知らなかった。いや、俺は少なからずとも知っていた(・・・・・)。この世界が静止する中、戦っていた一人の戦士の事を。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 グローバルフリーズが起こってから半年後。亡くなった人々の魂は、勿論戻っては来なかった。それは多くの人々を悲しませ、絶望させた。

 

 だが、皆が皆そうではない。悲しんでいる暇があるなら、この壊れた街を復旧しよう。止まっていないで、周りの人々を助けよう、助け合おう。そしてグローバルフリーズに対する日本政府の対応も早く、消滅しかけた街は殆ど戻っていた。

 

 しかし、やはりあの事件は、人々の心に深い傷跡を残した。そして、ここにいる少年も、グローバルフリーズから時間が止まっていたのだ。

 

 

 彼、(とまり)エイトは目を擦りながら、取っ手に手と掛けて扉を押す。朝の陽の光を浴びたのだが、全くとしてやる気が出ない。そんな事を思いながら目の前の光景を見つめた。

 

 それはエイトが元々住んでいた場所とはかけ離れて、広々としたスペースが有効的に活用されていた。まるで、豪邸その物である。彼がここに来てから間もないので、あまり馴染めてはいないようだ。

 

 エイトはキッチンに行き、食パンを取り出す。少々乱暴に、トースターへとぶち込むと、スイッチを適当に捻った。ぜんまいばねを使った簡易的なタイマーが、チッチッチッと音を立てている。彼はトースターから目を離すと、テレビの電源を入れて、白いソファーにドスンと座った。

 

 

『先日、沼津市で謎の怪死遺体が発見されました。似た事件はこれを含めて4件目であり、その付近では『どんより』が多発しており、警察はどんよりとの関連性も含め、調査を進めております』

 

 

「まぁーた、どんよりか……」

 

 

 エイトはため息をつきながら、テーブルに置いてあった『ひとやすミルク』と呼ばれるミルクキャンディーを、口に放り込んだ。ミルクキャンディー独特の甘さが、彼の口の中に広がってくる。

 

 どんより────とは、あのグローバルフリーズと呼ばれた事件と、ほぼ同じ怪奇現象の事である。まるで時間が止まるかのように、身体が動きにくくなる現象。最近では警視庁が公認(?)で────重加速と名称が付いたようだが。

 

 それでも大体の人々はどんよりと呼んでいる。きっと、そんな生易しい呼び方で、怯える心を隠そうと必死なのだろう。今ではスマホアプリでどんよりの警告をしてくれる様なものも出てくる程、どんよりは日常化してきている。その度に人々は恐怖し、怯えているのだ。

 

 

 ────チ-ン

 

 

「おっ、焼けた焼けた」

 

 

 オーブントースターから、ベルみたいな音が鳴り響く。それは食パンが焼けたという合図であった。

 

 エイトはソファーから立ち上がると、オーブントースターから、少し茶色く焼けた食パンを取り出し、皿に乗せた。そしてソファーに再び座り、食パンを食べようと思ったが、まだひとやすミルクを舐め終わっていなかった。小さめになったひとやすミルクを奥歯でガリッとかじって碎くと、そのまま飲み込む。そして何も味付けしていない食パンを、サクッと口にくわえた。

 

 

「うーん……口が渇くな」

 

 

 食パンに口の中の水分が吸い取られていき、何だか変な感じがする。そう思ったエイトは、またソファーから立ち上がると、今度は冷蔵庫の前に行き、扉を開けようとした。

 

 

「ん? 張り紙か?」

 

 

 すると字が書かれた、小さな張り紙がエイトの目に入る。

 

 

『泊ちゃ〜ん。挨拶、頑張ってねぇ〜!ちなみに今日のラッキーカラーは赤だよーん! だけど、運勢は凶だから気をつけてね! 純より』

 

 

「はぁ……ったく、課長ったら」

 

 

 それは、この家の持ち主である寺島(てらじま)(じゅん)からのメッセージだった。何故、エイトが『課長』と呼ぶかというと、彼は"警視庁特状課"という、どんよりなどの怪奇現象を専門とした課の課長なのだ。

 

 そして、自分の敬愛する父親や母親も()刑事で、特状課が設立される前までは、純の部下として働いていたらしい。つまり、知り合いという訳だ。

 

 最近は、やはりどんよりや怪死事件が多発している為、特状課も忙しいのであろう。しょうがないかとエイトは心の奥で納得し、冷蔵庫から牛乳を取り出した。

 

 牛乳とガラスのコップを持ってきて、再度ソファーに座ると、エイトは自分がここに来た理由を思い出していた。

 

 元刑事として戦った父親や母親の事、半年前のグローバルフリーズの事。

 

 

 そして、助ける事の出来なかった親友の事……

 

 

「……考えるのやーめた」

 

 

 そう言って牛乳をコップに注ぎ込み、食パンを口に詰め込む。そして牛乳を一気に飲んで、食パンを胃の中に流し込んだ。

 

 エイトは逃げたい事があると、毎回こんな事を吐くのだ。彼も逃げるなんて事はしてはいけないとは思っていたのだが、心に詰まった泥のようなものが、エイトを迷わせる。結局、映二はグローバルフリーズが起きたあの日から、ギアがかからないでいた。

 

 皿とコップを軽く水洗いした後、洗面所で歯を磨く。磨き終わると顔を洗い、ささっと寝癖を直した。

 

 

「あー、どれ着ていこうかな……」

 

 

 エイトは自室のタンスの中を開いて、頭を悩ませていた。実は今日、相当重要なところに行かなければならない。どれくらい重要かと言われれば、会社の社長に挨拶に行くくらい重要だろう。いや、最早一緒と言っても過言ではない。はっきり言ってしまえば、面接のようなものだからだ。

 

 

「やっぱ、第一印象は重要なんだけどなぁ……いや、これでいいか」

 

 

 エイトが手に取ったのは、嘗て自身が身に付けていた、淡い色のスーツ。ワイシャツとスーツを身に付け、ネクタイを締める。のだが、ネクタイは緩めており、スーツのボタンは開けておくなど、非常にだらしがなかった。

 

 だが、エイトにとってはいつものスタイルなので、彼自身は気にしていなかった。財布や、特殊な形をした車の鍵をズボンのポケットに突っ込んだ後、玄関をくぐった。

 

 庭に駐めている、赤い車体のスポーツカー────トライドロンの扉を開けて乗り込む。すると、突然。

 

 

 《今日ぐらい、スーツを整えたらどうなんだ。エイト》

「あぁ、ベルトさん」

 

 

 エイトしかいない車の中から、低めの男の声が響き渡る。普通の人から見たら、かなり異常な光景だが、エイトにとってはいつもの事である。それでも三ヵ月程前からなのだが。

 

 その声と共にスピードメーターと思わしき部分のディスプレイに、人の顔の様な表情が映る。そう、声の主はこのスピードメーター、では無くベルトだ。

 

 彼の名はクリム・スタインベルト────通称、ベルトさん。エイトはそう呼んでいる。ベルトに名前があったり、喋ったりするなど可笑しな事だ。最近開発された人工知能でも、こんなに流暢な日本語は話さない。

 

 

「いいんだよ、別にギアが入った訳では無いし」

 《はぁ……全く。君の父親である、シンノスケと瓜二つだよ。キリコくんの面影は、なかなか見当たらないねぇ》

「ははは……親父かぁ」

 

 

 確かに、とエイトは苦笑いしていた。ベルトさんは、エイトからは彼の父親である、泊シンノスケの面影しか見当たらなかった。

 

 

 《さぁ、行こうじゃないか。君の新たな職場に、挨拶にね》

「そうだな、ベルトさん。トライドロンのエンジン、蒸してくれよ!」

 《OK! トライドロン!》

 

 

 そう言って、エイトはアクセルを踏み込む。法定速度に引っかからないようにだが、トライドロンのエンジンを全開にして、その豪邸を後にした。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 場所は変わって、此処は静岡県沼津市の、内浦湾の西に張り出した岬にある女子高────浦の星女学院(うらのほしじょがくいん)。名前の通り、女子校である。

 

 

「遠いな、ここ!」

 《まさか私も、車で三十分もかかるとは思わなかったよ……》

「課長は、何であんな所に別荘なんか建てたんだよ……」

 《恐らく、占いで決めた……そんな所だろう。それに、あそこから見る海は最高だ。何故、あの様な土地を、誰も買わなかったのだろうか……》

「ベルトさん、今は絶賛する時じゃないと思うんだけど……」

 

 

 その浦の星女学院の駐車場いるのは、停車しているトライドロン。そして、その中には新人芸人の漫才ばりの会話をしている、エイトとベルトさんだった。

 

 

「よし、じゃあ行ってくるわ、ベルトさん」

 《分かった。だがシフトブレスとホルダーは、しっかり付けていきたまえ》

「んな事、分かってるよ」

 

 

 エイトはトライドロンから降り、校門をくぐり抜けて見廻してみる。

 

 浦の星女学院の校舎は比較的古く、壁にヒビなどが目立っていた。しかし、海の近場に建っているためか、プールなどの設備は整っているようだ。浦の星女学院は比較的高いところに建っているので、ここからは駿河湾を一望出来る。

 

 

「あの〜! 泊先生っ!」

「あっ、のぞちゃん。久しぶり」

 

 

 すると、エイトの目の前に走って来る女の教師。見た目は若く、エイトと同じくらいだ。

 

 

「泊先生! ここでは、一条先生と呼んで下さい!」

「ええっと……一条先生。どうしたんですか?」

 

 

 はるちゃんと呼ばれた彼女は────一条(いちじょう)ノゾカ。エイトの中学、高校との同級生であった。今、彼女は浦の星女学院で教師をしている。

 

 

「始業式がもうすぐ終わりますよ!? 新任式はその前だったでしょう! 何堂々と遅れてるんですか!?」

「げっ……まずい」

「行きますよ、泊先生!」

 

 

 ノゾカはエイトの腕を引っ張ると、強引に校舎の中へと連れて行く。

 

 そうエイトもまた、今日から浦の星女学院で勤務する事となったのだ。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

『生徒の皆さん、始業式お疲れ様でした。次に、新任式へと移らせて頂きます』

 

 

「へぇー、曜ちゃん。どんな人が来るんだろうね?」

「んー、きっと若い人だよ! ノゾカ先生みたいな!」

「そうなかぁ? この学校に若い人なんて来るのかなぁ……?」

 

 

 入学式が終わり新任式へと移る頃、高海千歌と渡辺曜はそんな事を話していた。何にしろ、この浦の星女学院に新任とは、あの若いノゾカを除けば珍しい事だからだ。

 

 千歌と曜の周りには、新入生を含めて百人にも満たない生徒しか座っていない。今年は三十人も後輩がいただろうか。それ程までに少なく、この浦の星女学院は先程、理事長から廃校との発表が出されたばかりである。

 

 なのに今頃、新たに教師が来るというのだ。

 

 

「我が校の生徒の皆様。浦の星女学院の廃校が決定した事は、ご存知のことかと思われます。その為、この度カウンセリングの教師として、我が校に一人の新任教師を迎え入れる事になりました。それでは、泊先生。ご挨拶をお願い致します」

 

 

 生徒会長の黒澤ダイヤが、説明し終わりその場から下がった。本来なら、ここで新任教師が舞台裏から登場する筈なのだが。

 

 

「……来ないね」

「確かに……」

 

 

 生徒会長が話してから五分程。その新しく来る教師と思わしき人影は、どこにも見当たらない。次第に会場がざわついてきた。教師の中でも、どうしたんだと顔を見合わせている者がいた。ダイヤは何事ですのと、少々焦っているようだった。

 

 まて、考えてみれば新任式というのは、始業式の前に行うのではないのか。となると、一体どういうことなのだ。これはアホな千歌でも分かる事である。

 

 

「……って曜ちゃん、私アホじゃないからね!」

「えっ、私何も言ってないよ!?」

 

 

 おや、今誰か私の事を馬鹿にしたのではないか。いや、疲れているのかなと、千歌は不思議そうにする。

 

 

「いってぇ! ちょ、おい。のぞちゃん! 悪かったから蹴るなって!」

 

 

 そんな事をしている内に、舞台裏から新任教師が生徒達の前に登場した。

 

 だが、何かを叫びながら腰を抑えている新任教師は、よたよたとマイクの前に立つ。

 

 

「えー、えー、ああ」

 

 

 マイクテストをしているのだろうか、マイクをポンポンと叩きながら声を出している。調整が終わると、新任教師は咳払いをした。

 

 

「えっと、今日から浦の星女学院のカウンセリング教師として、着任した泊エイトです」

 

 

 泊エイトと名乗った彼を見た女子生徒達は、何だか顔がニヤついていた。

 

 それもその筈、この泊エイトという新任教師は180くらいはあるだろう高身長で、しかも稀に見ないイケメンである。口の下にポツンとあるほくろは、キュートさも醸し出していた。女子生徒達のハートは打ち抜かれてしまった。

 

 ネクタイやスーツなどはきちんとこそされていないが、またそれがいいのかもしれない。

 

 

「あ……っと」

 

 

 そんな女子生徒達の反応を見て戸惑っているのか、エイトは言葉が詰まっている。女子生徒の半数以上は、次に発せられる彼の言葉を楽しみにしていた。

 

 

「……自己紹介は以上です」

 

 

 ガタン……とこの場にいた全員が、崩れ落ちるような音がした。エイトから発せられたのは、意外すぎる言葉である。

 

 

「ちょっと泊さん! しっかりして下さい!」

『そうだな、エイト。こういう大切な場でこそ、ちゃんと話したまえ』

「あー、分かったって」

 

 

 幕の裏からノゾカの怒っている声が聞こえてくる。それを聞いたエイトは、横を向いて手で抑えるように分かったと言う。下にも目線を向けていたのだが、それを不可解に思った者は数名しかいなかった。

 

 また咳払いをして、壇上に両手を置いた。

 

 

「えー、俺は皆と歳が近いから……あ、いや男だから、話しにくい事もあるかもしれないけど、それだから相談してほしい事もあるんだよね。だから、何か不安な事があったら、俺に言ってくれ。これでも一応、皆よりは先輩だから。どうか、よろしくお願い致します!」

 

 

 自己紹介が終わると、生徒達からは盛大な拍手が贈られた。所々からは面白い先生だねーなどと、声が上がっている。ポツポツと黄色い声援もあった。

 

 エイトはそのまま、膜の裏にある控え室へと歩いて行った。

 

 

「あれ? 何だろ、あのミニカー……」

 

 

 その時、千歌だけは気付いていた。エイトの後ろを付いていく、一台の赤いミニカーに。

 

 

『これで、新任式を終了させて頂きます』

 

 

 司会がマイクを使って新任式の終了の合図、これで浦の星女学院の、始業式と新任式は閉会したのだった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「全く……一体、何なのですかあの方は……」

 

 

 一方、新任式が終わって生徒達が下校している頃、生徒会長であるダイヤは溜息をつきながら、明日の入学式に向けて書類などの整理に追われていた。

 

 ダイヤが溜息をつきたいのは書類の整理が大変とかそういったものでは無く、カウンセリングの教師として来た、あのエイトという男性教諭の事だ。

 

 

「何故、このような時期に新任教師を……」

 

 

 今、この浦の星女学院は少子高齢化によって生徒の数が減少、更にはあの怪現象であるどんより、通称重加速が、この付近で多発(・・・・・・・)。原因は謎のままだが、その影響で沼津市の中心へと移り住む人が多くなった。この浦の星女学院から転校していく生徒も、少なくはなかった。

 

 そのような事例が重なり、廃校が決定してしまった(・・・・・・・・・・・)。ダイヤも廃校が決定したからといって諦めた訳では無い。生徒会長としても、廃校は何とか回避したいのだ。

 

 だが、そこへあの新任教師が来てしまった。理事長も廃校によって不安が高まる生徒達のカウンセリングとして、彼を起用したのだろう。

 

 それでも、エイトの行動は気に食わなかった。ネクタイは締めていない、スーツもしっかり着こなしていない、挙句の果てには新任式に遅れてくるなど、ダイヤから見ればダメ人間のその姿であった。

 

 

「これからルビィも入学するといいますのに……これでは先が思いやられますわ……」

 

 

 明日の入学式を終えれば、自身の妹である黒澤ルビィもこの学院に通う事となるのだ。あんな教師がいる高校に、自分の妹を通わせていいのかとダイヤは頭を抱える。

 

 いや、別の趣向で考えてみよう。これはルビィの男嫌いを治すチャンスでもあるのだ。これからルビィは社会に出て、働いていかなければならない。そうなると男性との接触も不可避だ。あの気安そうなエイトなら、ルビィの男嫌いを治してくれるのでは。まて、気安過ぎてルビィがエイトにくっついていくのではないだろうか。これでは教師と生徒の禁断の恋に……

 

 

「あぁぁぁぁ! 何を考えているのですの(わたくし)はぁぁぁぁぁ!」

 

 

 いつの間にか過剰な妄想に入ってしまっていたダイヤは、頭を両手で押さえ込んで一人絶叫していた。ダイヤ以外は誰も、この部屋にはいない。この絶叫は数分は続いていた。

 

 

「はぁ……私とした事が取り乱してしまいましたわ……。もう帰りましょう」

 

 

 書類の整理も終わった所なので帰ろうと立ち上がり、書類を棚にしまい鞄を持ち上げようとした。

 

 

 その時、身体の動きが鈍くなる。そのような感覚がダイヤを襲った。

 

 

「っ……!? どんよりですの……!?」

 

 

 そう、あのどんよりが発生した。ダイヤの足取りは重くなり、木の枝から飛び立つ鳥の羽の動きは遅く、揺れる木々もゆったりとしていた。

 

 まだ、これならいつものどんよりと同じ現象であったのだ。

 

 

 しかし、今日は違う。

 

 

「確かに大企業のご令嬢って感じだなぁ!」

「ばっ、化物!?」

 

 

 ダイヤの目の前には、まるでコブラの様な機会で作られたモノ。人間の言葉を話す化物が存在していた。胸には『031』の数字が刻まれている。その機会生命体は、ダイヤに近づくと片手で首を掴み持ち上げたのだ。

 

 

「かっ……!? く……るし……」

「はっはぁー! とんだ上物だなぁ!」

 

 

 ダイヤの首が締まっていく。呼吸が出来ず意識が朦朧とし、目の前の機械生命体が不気味に話す声も聞き取れなかった。自分の手を見れば、気持ち悪い程に赤く染まっていく。このまま、この様な化物に殺されてしまうのだろうか。ダイヤに絶望が迫った。

 

 

「がっ!?」

「(何……です……の……?)」

 

 

 しかし、ダイヤに死は訪れなかった。その機械生命体にミニカーの様なモノが突撃し、機械生命体を弾き飛ばした。ダイヤの身体はそのまま生徒会室の床に落下し、声を出す間もないまま気を失った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 重加速が治まった生徒会室。そこには痛がりながら、床に転げ回っている機械生命体────ロイミュードと。

 

 

「まさか新任初日にロイミュードとはね、ベルトさん」

 《全くだよ。しかも生徒を襲うなんてね》

 

 

 泊エイトと、エイトの腰に巻かれたベルトさん、兼────ドライブドライバーの姿があった。そしてロイミュードの周りを飛び交うは、意志を持ったミニカー────シフトカーが存在していた。

 

 

「おのれぇぇぇ……よくも、俺の邪魔ぉぉぉ……!!」

「邪魔するに決まってんだろ。人の命が危なかったんだ」

 

 

 ロイミュードが低い声で叫ぶが、エイトは当たり前だと、その言葉を除けた。

 

 

 《ここで戦えば、施設を破壊してしまう可能性がある。場所を移そう》

「だな、おらぁ!」

「ぐっ……!?」

 

 

 ベルトさんの指示に従い、エイトはロイミュードを蹴り飛ばして窓から突き落とす。場所は校舎の裏側、木々が生い茂る山の中へと移っていた。

 

 

「やっぱ、りんなさんの作った靴やばいな……よし、この場所なら何とかなるだろ。行くぜ、ベルトさん!」

 《OK! Start your Engine!》

 

 

 エイトはドライブドライバーのイグニッションキーを捻る。ドライブドライバーからはエンジン音のような音が鳴り響いていた。そして右手に握られたシフトカー────シフトスピードを回し、左腕に巻かれているシフトブレスに装着する。エイトはそのまま、シフトスピードを押し倒した。

 

 

 《DRIVE! type SPEED!》

 

 

 ドライブドライバーのディスプレイには『S』の文字が、赤く浮かび上がる。すると、エイトの身体が赤い装甲に包まれて、何処からともなく飛んできたタイヤが、肩から身体を横断するかのように掛かったのだ。そうしてエイトは謎の戦士に変身してしまう。

 

 

「貴様ぁぁ! 何者だァ!」

 

 

 ロイミュードが立ち上がり、謎の戦士となったエイトを指さして声を荒らげた。

 

 

「俺は『仮面ライダードライブ』! お前、ひとっ走り付き合えよ!」

 

 

 謎の戦士兼────仮面ライダードライブは、膝を曲げ腕を添えて構える。ロイミュードは他に『043』のバット型ロイミュードと『082』のコブラ型のロイミュードを引き連れ、ドライブに襲いかかった。

 

 

「はぁっ! おらっ!」

 

 

 ドライブは低姿勢で潜ってかわし、確実にパンチを決めていく。だが、相手は機械生命体であるロイミュード三体。数の暴力もあって、横から来た031と082の攻撃を避ける事は出来なかった。

 

 

「っ……クソっ!」

 《エイト! 戦略を変えていきたまえ!》

「分かってるよ、ベルトさん! 来い、フレア!」

 

 

 ドライブが手を掲げると、その右手にはオレンジのシフトカー────マックスフレアが飛んでくる。シフトブレスのシフトスピードを取り外し、マックスフレアを取り付けて押し倒した。

 

 

 《タイヤコウカーン! Max Flare!》

 

 

 後方にいた043を弾き飛ばして、炎を纏ったタイヤがドライブに装着される。直ぐに横にいた082に炎のパンチを押し込む。その隙を見て、082が飛び掛ってこようとするのだが。

 

 

「次はコイツだ! スパイク!」

 

 

 ドライブに飛んできたのは緑の刺々しいシフトカー────ファンキースパイク。ファンキースパイクをシフトブレスに装填、押し込む。

 

 

 《タイヤコウカーン! Funky Spike!》

 

 

 針のようなタイヤがドライブに装着。そして飛び掛って来た082を回転させたタイヤでダメージを与えつつ、上にはじき飛ばす。更に043も棘のキックで、宙に上げた。

 

 

「お前だ、シャドー!」

 

 

 そしてもう一台飛んで来たのは、紫の車体のシフトカー────ミッドナイトシャドー。シフトブレスに装填して、倒す。

 

 

 《タイヤコウカーン! Midnight Shadow!》

 

 

 手裏剣のようなタイヤがドライブに装着。落下してきたロイミュード二体を、高速の連続パンチで叩いて、叩いて、叩きまくった。

 

 

「おらぁぁぁ!」

 

 

 そして二体のロイミュードは宙で爆散した。出て来た数字のコアも、共に砕け散る。これはロイミュードが消える瞬間だった。

 

 

「おのれぇぇぇ!」

「はっ!」

 

 

 すかさずドライブは両手に手裏剣状のエネルギーを生成し、031にぶつけた。031は火花を散らしながら、草むらに転がっていった。

 

 

 《決めるぞ、エイト!》

「あぁ、ベルトさん!」

 

 

 《ヒッサーツ!》

 

 

 ドライブは再びシフトスピードを装填して、ドライブドライバーのイグニッションキーを捻ると、シフトブレスのボタンを押した。

 

 

 《Fullthrottle! SPEED!》

 

 

 そしてレバーを倒すと、031にタイヤ状のエネルギーが挟み込み弾く。そして走って来たトライドロンがドライブの周りを旋回し、そのトライドロンを蹴って031をキックする。さらにトライドロンを蹴ってもう一発、もう一発と確実にキックを決めていった。

 

 

「グ……ァァァァァァァァ……!?」

 

 

 そして031は爆散。出て来たコアも粉々になった。

 

 

 《Nice Driveだ! エイト》

「おう、ありがとな。ベルトさん」

 

 

 シフトスピードを取り外したドライブは、元の姿であるエイトに戻った。ベルトさんをディスプレイには笑顔の表情を浮かべている。

 

 

「また、人を守れたよな。親父……」

 

 

 エイトは空を見上げる。こうして、一人の少女の命は守られたのであった。

 

 




書きたかったんや。ただ、それだけ

サンシャイン!!小説に挑戦してみました!やったぜ

ダイヤさんってこんなんでよかったのかな……わからん

ドライブの原作通りには進めません。オリジナル力を出していきたいです

ラブ武神!の合間に書いていたので、投稿してみました。いわゆる気休め小説的なやつです。

サンシャイン!!はまだアニメが始まっていないので、本格的になるのは八月かな……

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