黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第39話

「一護…?なんで…。」

 

アイズは唖然と倒れ伏せっている一護を見ていた。自分より遥か上に位置する彼が敗北している姿など想像することができなかったアイズだったが、今こうして倒れているところを見ると気持ちが頭についていかなかった。そんな中、冷静さを失わなかったフィンが声を発した人物へと問いかける。

 

「君はウルキオラ…。君がやったのかい?」

 

「そうだ。」

 

「なぜ?」

 

「これを手に入れるためだ。」

 

ウルキオラはそう言って、ポケットから崩石を取り出した。

 

「「っ!!!!」」

 

一護の事情を知るフィンとリヴェリアは驚き、全身を強張らせる。

 

「なんだよそれ?」

 

事情の知らないベートたちは、皆疑問に思い、表情に出ていた。

 

「そうか、貴様らは黒崎一護から知らされていなかったらしいな。」

 

ウルキオラの言葉にアイズが反応する。

 

「貴方…何か知ってるの…?」

 

「貴様らに教えてやる義理はない。」

 

ウルキオラはそう言い、その場を去ろうとする。しかし、アイズたちは引き留めた。

 

「ねぇ!一護をこんなにして帰れると思ってんの!?」

 

「確かに、ウチのファミリアの仲間に手を出してそれはないでしょう?」

 

「前は油断したが、今度はきっちり殺してやるよ。」

 

「…許さない。」

 

「待て!!手を出すな!!」

 

フィンはやる気になっている団員たちに制止を呼びかける。

 

「何でよ!?」

 

「いいから止めるんだ!これは団長命令だ!」

 

フィンの言葉に皆は苦虫を潰したような顔し、動きを止めた。

 

「ほう…。力量差を感じることのできる奴もいるようだな。ただのゴミではなかったようだ。」

 

「てめぇ!!」

 

「やめろ!!ベート!!何度も言わせるな!!」

 

「クッ……。」

 

フィンは皆の一歩前に出て、質問をする。

 

「君は一護とそこまで力量差はないと思ってたんだけど…。違うかな?」

 

「……その通りだ。今ではこの状態での俺と、そいつとでは力量は同格だ。」

 

「じゃあ…、何故ここまで一護が一方的にやられているんだい?」

 

「簡単なことだろう?元のスペックが同じもの同士、そこに差をつけるのは…Levelだ。」

 

「Level…。そういうことか…。だが、君がこちらにきてからまだ一ヶ月ちょっと。その間でLevel2になるなんて普通じゃないな…。」

 

「誰がLevel2だと言った?」

 

「「「っ!!!?」」」

 

「ま、まさか…。」

 

「俺のLevelは…4だ。」

 

「バカな!!そんなことはありえない!一体どうやって…。」

 

「Levelとは、自身の魂の器だ。貴様らは困難を乗り越えてLevelを上げるようだが、俺は内在闘争によって自身を倒して限界を越え、Levelを上げた。」

 

「てめぇ!わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!」

 

「バカにも分かるように簡単に言ってやろう。俺の中に俺と全く同じ存在を創り出し、その都度もう1人の俺を倒しLevelを上げていった。」

 

「…そういう、ことかよ…。」

 

倒れて一護はゆっくりと体を起こす。

 

「「「一護!!!」」」

 

「大丈夫だ…。」

 

「やはり、存外しぶといな。」

 

「てめぇの目的はなんだ?崩石を手に入れてどうするつもりだ?」

 

「研究だ。井上織姫の言っていた、心とやらのな…。俺にも理解が出来てきたところだ。貴様と再開し、腹の底に黒い物が溜まるのがわかった。貴様と戦い、己が力を出せることに湧き上がるものを感じた。」

 

「なんだよ、やっぱり近付いてるじゃねぇか…俺たち人間によ。」

 

「…かつての俺であれば一瞬でその首を捩じ切っていただろうな。だが、確かにそうらしい。」

 

「ただ、なんでそれに崩石が必要なんだ…?」

 

「言ったはずだ。研究だと。人間などただ食われるだけの食料に過ぎん。だが、人間である貴様は虚夜宮の天蓋の上で俺を越え、俺を倒した…。心…つまり感情が己が力のプラスになる可能性がある。これを可能性ではなく、ハッキリさせる為に研究をする。感情の中で、己を強化するのは何か…。まぁ、モンスターでの実験を終え、おおよその予想はついたがな。」

 

「その…感情とは、何だい…?」

 

「憎悪だ。」

 

「憎悪……。」

 

「俺が試した中で、その感情を持ったモンスターが一番強かった。二組で移動していたモンスターのうち、片方を意識を奪わずに戦闘不能にさせ、もう片方を嬲り殺した。そして、俺に憎しみの感情を持たせ、俺が直々に確かめた。」

 

「相手がモンスターといえど、嬲り殺しは趣味が悪いな…。」

 

「どう殺すかなど些細なことだ。」

 

「チッ、だけど、崩石が必要な理由がわか……。テメェ…まさか…。」

 

「次の実験はこの崩石を使い、憎悪の感情を持つ人間とモンスターを融合させ、強度を測る。」

 

「「「なっ!!!」」」

 

「ふざけんな!!させるわけねぇだろ!」

 

「人間をモンスターと融合させるだと……?何故そんなことを…。」

 

「何度も言わせるな。これは実験だ。」

 

「おい!フィン!こいつはここで倒すぞ!」

 

「待て!ベート!勝ち目はない!今は退くぞ!」

 

「テメェ!!まだそんなこと言ってんのか!?こいつはここで殺さなきゃやべぇ!」

 

「全滅したいのか!!!!!」

 

「「「っ!!」」」

 

フィンの今までになかったほどの切羽詰まっている声に、皆は驚き、フィンを見る。

 

「ここは撤退だ…いいな?」

 

「……チッ、わかったよ!!」

 

「フィン、俺はここであいつを倒す。」

 

「バカな!何を言っているんだ!?一護!!ここは一度退いて態勢を…」

 

「こいつは俺にしか倒せねぇ…。ここで退いたら、我が身可愛さに出来ることを投げ出した俺を、明日の俺は笑うだろうからよ。」

 

「一護……。」

 

「安心しろ、大丈夫だからよ。」

 

「わかった…。絶対に生きて帰れ!これは団長命令だ。」

 

「あぁ、わかった。帰ったら飯食えるようにしといてくれ。」

 

「一護…。」

 

ロキ・ファミリアの皆が撤退していった。

 

「さぁ、やろうぜウルキオラ。テメェをぶっ飛ばして止めてやるよ。」

 

「無駄だ。最早今の貴様は俺の敵ではない。」

 

「そうかよ…。だけど、崩石だけは返してもらうぜ…。」

 

「やってみろ。」

 

こうして、黒と白は互いにぶつかり合った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ねぇ!フィン!一護死んじゃうって!!今からでも助けに行こうよ!」

 

ティオナは隣を走るフィンに訴えかける。

 

「…駄目だ。わかってくれ…。全員が生存するには、これが一番可能性が高いんだ…。」

 

「団長…。」

 

フィンは唇を噛み、血を流しながらティオナに答え、それを見た皆が、フィンの葛藤を悟った。その中突然アイズが立ち止まる。

 

「おい!アイズ!どうした!?」

 

ベートは声をかけるが、アイズは反応せずに後ろに振り返る。

 

「待て!アイズ!戻る気か!?」

 

「おい!」

 

「…戻って一護を助ける。」

 

「アイズ!!」

 

「ここで好きな人を見捨てる私を、きっと明日の私は許せないと思うから…。」

 

そう言い残し、アイズは全速力で戻って行った。

 

「アイズ…。」

 

「振られちゃったね、ベート。」

 

「チッ、知らねぇよ。」

 

ティオナはベートを茶化したが、彼女の目は全く笑っていなかった。

 

「テメェこそ、一護の奴に気があんだろ?先越されるぞ?」

 

「しーらない。」

 

「おいおい、君たちまで戻らないでくれよ?」

 

「フィン…。」

 

「情けないけど、僕たちでは勝てない…。だけど、一応助っ人の候補いるんだ。」

 

「誰だよ…?」

 

「狛村殿のことだろ?」

 

フィンが答えようとすると隣からリヴェリアが答えた。

 

「その通りだ、一護一人では負けるとしても、彼と一緒なら勝てるかもしれない。そのためには1秒でも早くホームに戻らなければいけない。」

 

「そういうことか!」

 

「とりあえず皆速く戻るぞ!!」

 

「「「おう!!」」」

 

こうして、皆は狛村への救援要請のために足を速めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「やはり…。何度やっても結果は同じか。」

 

ウルキオラの前には天鎖斬月を地面について体を支えていた。

 

「まだ…終わってねぇよ…。」

 

「なら、これから終わらせるとしよう。」

 

ウルキオラは指先を一護に向け、霊圧を収束させる。

 

 

テンペスト エアリエル

 

 

突然ウルキオラの背後から風を纏った刀が飛んできて、ウルキオラの指先の霊圧の塊に当たり、霊圧が暴発した。

 

「一護!平気?」

 

「バカ、お前なんで戻ってきたんだ…。」

 

「助けに来たよ。」

 

「お前じゃ勝てねえ。早く逃げろ!」

 

「勝てる勝てないじゃない。勝たなきゃならないから戦う。そうでしょ?」

 

「アイズ…。」

 

「それも人間の心というやつか…。全くもって無駄だ…と、前であれば切り捨てていたな。……っ!?」

 

ウルキオラのポケットに入っている崩石が輝き出す。

 

「なるほど…その女を認めたわけか……。」

 

アイズの体が同じように輝き出す。

 

「アイズの心に…反応したのか…。」

 

アイズの手には今まで使っていた武器ではなく、一目で格が違うと分かるほどの煌びやかな装飾のされたレイピアが握られていた。

 

「これは、借り物の力…。だけど、使い方は解る。」

 

「ったく、危なくなったら退けよ?」

 

「一護こそ、休んでても良いよ。」

 

「バカ言うな。行くぜ。」

 

一護とアイズは並び立ち、ウルキオラへそれぞれの武器の鋒を向ける。

 

「ほう…。いいだろう…来い、貴様らをこの俺が試してやる。」

 

「「馬鹿に…すんな(しないで)!!!」」

 

一護とアイズの二人は左右に別れ、ウルキオラを挟み込むように移動し、アイズは突きを放ち、一護は刀を上から振り下ろした。ウルキオラは一護の刀を自身の刀で受け止め、アイズのレイピアを蹴って逸らして躱す。

 

「成る程、貴様は仲間が来た安堵、女は力を得た昂揚感。と言ったところか。動きも目に見えて良くなっている。」

 

「随分と理屈っぽくなったじゃねぇか!ウルキオラ!!」

 

「今すぐそんな余裕なくしてあげるから!」.

 

一護とアイズはウルキオラの前後を取るようにし、常に片方がウルキオラの死角に入るように立ち回り、アイズが背後から鋭くウルキオラの首に向かって突きを行う。それをウルキオラは屈んで躱して、一護の胸倉を掴み引き寄せ、アイズの攻撃に当てようとする。迫ってくるアイズのレイピアを一護は頭を横に倒して躱し、ウルキオラの腕を掴んで刀を振るい、ウルキオラを斬る。そして二人はいったん離脱した。

 

「ごめん、一護。」

 

「いや、大丈夫だ。それより…硬えな…。」

 

一護の一太刀はウルキオラの腹を浅く斬っただけで、大したダメージは与えられていなかった。

 

「なるほど…やはりメンタル次第で動きがここまで変わるか…。まさか一撃喰らうとはな。」

 

「テメェこそ、随分と硬くなってるじゃねぇか…。」

 

「…速い。」

 

「数的優位をよく活かしている。勝手のような無謀な突撃もなくなった。だが、それでもまだ俺は倒せん。貴様が本気を出さぬ限りな。」

 

「………。」

 

「一護の…本気…?」

 

「…アイズ。ここからは退がっててくれ。」

 

「っ!?どうして?」

 

「ここから先、お前を巻き込まねえ自信がねぇ…。」

 

「でも、あいつは…」

 

「任せろ。お前のお陰で随分とウルキオラの速度にも慣れてきたしな。」

 

一護はアイズの前に出て、手を顔に持っていく。そして、顔の前に持って行った手を引っ掻くようにして動かすと、そこから角のついた仮面が一護の顔を覆う。

 

「い…ちご……。」

 

「その仮面は……。成る程、あの時のか。随分とうまく制御が出来るようになったものだ。口がきけるかどうかだが…」

 

「悪イガ、ソンナニ長クハ保タネェ。一瞬デ終ワラセル。」

 

一護は一瞬でウルキオラの背後をとり、背中を斬る。少し深く刀入り、ウルキオラは響転で一護から距離をとる。

 

「確かに、通常の卍解状態に比べると、かなり早くなっているようだ…。だが、残念だったな。その程度では…っ!」

 

 

虚閃

 

 

一護は角の間に霊圧を収束させて虚閃を放った。

 

「時間ハ掛ケラレネェッテ言ッテンダロ!」

 

一護はそのまま角から虚弾を放ちながら切り掛かる。

 

「チッ、仕方ない。っ!?時間がない…か。」

 

ウルキオラは刀で自分の指先を斬る。

 

 

王虚の閃光

 

 

「ッ!!マズイ!!」

 

一護は響転でアイズの前に移動し、天鎖斬月を構える。

 

 

月牙天衝

 

 

2つの膨大な霊圧がぶつかり合い、広かった洞窟が更に大きく広がった。

 

「ぐ……大丈夫か?アイズ。」

 

「うん…なんとか…。あ、仮面が。」

 

「あぁ、限界だ…。ウルキオラの奴は…?」

 

「わからない…。」

 

二人は辺りを見回すが、ウルキオラの姿を見つけることは出来なかった。

 

「逃げた…の?」

 

「ウルキオラが逃げるほど追い詰めてねぇはずだけどよ。」

 

疑問に思っていた一護とアイズの元に何者かが到着した。

 

「大丈夫ッスか〜?」

 

「う、浦原さん!?」

 

「誰?」

 

「どうも初めまして〜、アタシは浦原喜助と申します。黒崎さんのお友達ってところッスね。」

 

「浦原さんが来てたからか…。」

 

「何が…?」

 

「ウルキオラが退いたのは、浦原さんが来てたのを察知してたんだろ。」

 

「ウルキオラ…。どうやら色々と問題があるみたいッスね。」

 

「あぁ、ウルキオラのやつに崩石を奪われちまった…。」

 

「成る程…。取り敢えず地上に戻りましょうか。狛村隊長にも渡したいものがあるんス。」

 

「あぁ、分かった。」

 

こうして三人は地上へと戻って行った。

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