黄金の蠍と魔法少女   作:Keiko

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聖闘士星矢→原作後
 注  アニメ設定若干あり
 注2 このネタを考えたのは『Ω』の開始直後だったので、『Ω』、『セインティア』、『ND』『エピソードG』『黄金魂』などとの設定や登場人物の性格とは食い違う可能性があります。


リリカルなのは→原作開始
 注  劇場版の設定とは食い違う可能性があります。
 注2 作者はアニメは一通り見ましたが、『とらいあんぐるはーと』シリーズはやっていません。『とらいあんぐるはーと』シリーズのイメージを大事にする方はご注意ください。


終わりと始まり

 暗い。

 そんな言葉すらも生ぬるい闇。

 そこにあるのは巨大な壁。そそり立つその壁の前に、その男達はいた。

 それぞれが黄金を(まと)い、闇の中にただ輝いている。

 先頭に立つ男が、弓を構えた。

 手には一本の矢。

 ゆっくりと彼は矢を(つが)えると、目の前の壁に、その切っ先を向けた。

 彼らは告げる。

 遺していく青銅の子らへと。

 ただ、未来という見えないものへ、彼らの背中を押すために。

 ただ、己がいたという過去を託すために。

 先頭に立つ男から、黄金の矢が放たれた。

 それは、まるで闇夜を照らす暁の太陽を思わせる輝き。

 その輝きは、辺りの暗闇を引き裂かんが如く。

 その瞬間、黄金をまとう彼らの胸に去来する思いがあった。

 彼らの女神。彼らの過去。彼らの過ち。彼らの弟。彼らの今。彼らの懺悔。彼らの師。彼らの友。

 彼らの―――

 その中の一人は、ふと、気がついた。

 まだ、謝っていなかったことを。

 彼の親友へ。

 まだ―――

 だが、その言葉を告げる前に急速に肉体の消滅が始まる。

 生きるための感覚が消えゆく中、その親友はふと、振り向いた。

 静かに笑みを浮かる親友を見て、彼は、ただ許されたことを知った。

 そして、全てが消えた。

===

 彼女、高町なのはは自分はごくごく普通の小学3年生だと、自負していた。

 いつまでたっても新婚気分が抜けない両親に、妙に仲の良い兄と姉。そんな家族の中で自分の立ち位置を弄びながらも、親友と呼べる存在もおり、幸せな日々を送っていた。

 だが、傍目に見れば、少々子供らしくない思考の持ち主でもあり、既に将来の心配をしている辺り、よくいえば大人びている子供だった。

 自分にできること、自分にしかできないこと。そういうものを探すところが、特に顕著な少女だった。

 その日も、彼女はごくごく普通に学校に行き、勉強をし、友達と話し、塾へと向かうつもりだった。

 それを近道と称したのは親友のアリサだった。いつもは通らない公園の道を。

 その道は、文字通り、彼女にとって人生の岐路だった。

 出会ったのは、フェレットのような動物だった。負傷しており、グッタリとしたその体は、いかにも頼りなさげで、少女たちは慌ててそれを動物病院へと運んだ。

 フェレットの首元で、赤い宝石が小さく光った。

 そして、夜。

 不思議な声に導かれるように、なのはは家を抜け出した。

 黒い夜道をひとりの少女がひた走る。不思議と誰とも出会わずに、彼女は目的の場所へとたどり着いた。

 昼間、彼女が友人と共に、怪我をしたフェレットを運び込んだ動物病院。そこはさながら、爆発でもあったかのような様相を呈していた。

 地面が爆ぜるようにひっくり返り、壁がひしゃげ、呆然とする彼女の目の前でまたひとつ大きな音を立てて木が折れた。

 視線を走らせれば、逃げ回るフェレットと追いかける黒い何か。

 フェレットは彼女が昼間出会った存在で間違いなく、黒い何かは彼女が見たこともない物体だった。彼女は咄嗟に逃げ回るフェレットを受け止めた。

 黒い何かは目標を見失ったのか、動物病院の壁を突き破って動けなくなる。

 

「…来て、くれたの?」

 

 なのはが言葉もなくその光景を見ていると、そんな声が聞こえた。声がしたのは自分の手の中、つまり、抱えているフェレットがしゃべったのだ。

 

「ウソッ!? 喋った!?」

 

 あまりの予想外に彼女は慌てる。フェレットを落とすのは回避したものの、頭は現在の状況についていくのがやっとだ。

 再び動き始めた黒い物体に、なのはは恐怖を覚えながら逃亡する。

 夢中で逃げ、隠れ、フェレットから促されて、フェレットの首にかかっていた赤い宝石を手に取る。

 

「君には資質がある。お願いです、僕に少しだけ力を貸して」

 

 なのはは促されるままにその宝石を握り締めた。わずかに暖かいそれは、ほんの少しではあるが安心感を与えてくれる。

 

「僕はある探し物のために、ここでは無い世界から来ました、でも僕一人の力ではどうにもできなかった…。だから迷惑だってことは承知しています。あなたのような資質を持った人に協力してほしくて、お礼はします! 必ずします! だから僕の『魔法の力』を!」

 

 正直言って、彼女には何がなんだかわからなかった。だが、状況は切迫しており、何よりも、このフェレットは助けを求めているのだ。

 なのはは意を決して、大きく深呼吸した。

 

「我、使命を受けし者なり」

 

 フェレットが言葉を紡ぎ、

 

「ワレ、使命を、受けし者なり」

 

 なのはがそれを繰り返す。

 

「契約の元、その力を突き放て」

 

「えと…契約の元、その力を、解き放て…」

 

「風は空に、星は天に」

 

「風は、空に、星は、天に…!」

 

「「そして不屈の心は…!」」

 

 なのはの口からは、自然と言葉が吐き出された。

 同時に、手の中の宝石も激しい点滅を繰り返す。

 

「「この胸に!!」」

 

 フワリとまるで風が起こったかのように髪がなびく。なのはは手に持っていた赤い宝石を掲げた。

 もう、フェレットの誘導は必要なかった。

 

「この手に魔法を!」

 

 なのはは目を開き、叫ぶ。

 

「レイジングハート! セェット・アァァップッ!!」

 

『Standby REDEY. SET UP』

 赤い宝石、レイジングハートが、その呼びかけに答えた。

 足元から、天すらも貫かんばかりの赤い光が立ちのぼる。

 それが、彼女の宿命を決定づけた瞬間だった。




7日 後書きにあった注意書きを前書きへ移す。
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