予定通り小説を書くのって難しいですね…(白目)
―――ここは…どこだろう…
なのははフワフワとした感覚に包まれていた。
―――えっと…私、寝てるんだよね。
確かに、自分は宿題を終わらせて、ベッドに入って眠ったはず。
―――じゃあ、これは、夢?
そのはずだ。
だが、周りは何も見えない。暗闇に包まれている。
―――あ、目を開けなきゃ。
なぜそんな発想になったのかはわからないが、なのははそう思った。ゆっくりと目を開けた。
いつの間にか、なのはは立っていた。
ザーザーと音を立てて降る雨の中。足元は草でフカフカしている。
そして、目の前には乱雑に置かれた石、石、石。
―――こ、れ…!
なのはは思わず手で口を覆う。
おそるおそる数歩近づくと、石を覗き込んだ。
そこに書かれているのは、英語らしき文字と、8つの数字。
―――お墓…なの…? これ、全部が…!
目の前に広がるのは、文字通りの墓地。
自分が住む街にも墓地はあるが、ここにある墓はそれよりも数が多い。
そして、目の前にある墓石は未だ新しいのがいくつか。
―――何…これ…何で…
恐怖になのはの表情が歪む。
ヂャリン。
そして、彼女は響いた音に驚いて振り返った。
―――あ
そこにいたのは、一人の青年。
長い髪に黄金の鎧。手には小さな花束。
見間違えるはずもない。
―――ミ、ミロさん?
その彼は、雨の中、傘もささずに一人で歩いてきていた。
―――あ、あの。
なのはは声をかけたつもりだった。
だが、彼は声が聞こえていないかのようになのはの横を素通りすると、先程まで彼女が覗き込んでいた墓石の前に立つ。
―――あの!
なのはは思わず大声を上げる。だが、彼は振り向かない。
―――もしかして…見えて、ないの?
夢だから、という一言で切り捨ててしまえばそれだけだが、なのはは困惑した。
ふと、青年が歩いてきた方向を見ると、そこには一人の人間がいた。
―――誰…ですか…?
声に出して問いかけるも、やはり聞こえていないのか全く反応してくれない。
短い髪に金の鎧。強い意志を感じさせる瞳が輝く。
不安げな表情の彼だったが、そこへもう一人の青年が現れた。
新たに現れた方の青年は、変わった眉が印象を深くし、長い髪を首の後ろで軽く結っている青年だった。柔和そうな印象を与える彼が言う。
「アイオリア」
「ムウか」
先に来ていた青年は突然名前を呼ばれたのにも関わらず、落ち着いた表情で振り返る。
ムウと呼ばれた青年はアイオリアと読んだ青年の横に立つと、彼と同じようにミロの背中を見た。
しばしの沈黙の後。ムウが言う。
「…今は、一人にしてあげるべきですね」
「…そうだな」
わずかに息を切らしていた二人は、そう言い合うと踵を返す。
「まったく。誰ですか? ミロがいなくなったなんて無意味に騒ぎを大きくしたのは」
「お、俺じゃないぞ」
そんなことを言い合いながら、二人はこの場を立ち去っていく。
―――ムウさんに、アイオリアさん
名前に聞き覚えはあった。ミロが自分の友人であり仲間であるとなのはに話した人物たちと同じ名前である。
―――何で、私、この夢を…
なのはは少し迷うも、結局はミロのそばに戻る。
―――お墓参り?
その問に答える人間はいなくとも、それ以外には考えられない。
なのははふと、ミロを見上げる。
雨が降るなか、墓に花を捧げたミロは小さく呟く。
「カミュ…。お前の好きな花らしいな。わざわざ氷河が送ってきたぞ」
―――…え?
その名前にハッとしたなのはは、もう一度墓石を見る。
国語の成績はあまりよくないなのはだが、今の言葉だけで、この墓石が誰のために作られたものなのか、それに、何故、ミロがこの雨の中わざわざここまで来たのかを理解した。
「まあ、この雨では長くはもたんだろうが文句は受け付けん。俺に花の世話などどちらにしろ無理だからな」
だから、一刻も早く持ってきたかったとミロはわずかに笑いながら告げる。
―――あ
だが、気づいた。
気づいてしまった。
笑みを浮かべるミロは、同時に苦しそうな、寂しそうな表情を浮かべていた。
なのははその笑みを知っている。
何故ならそれはかつて自分が幼い頃一人の時ずっと
「ッ!!!」
ハッとなのはは目を開ける。
ドッドッと心臓がうるさい音を立てている。
「……夢…?」
なのはは、心臓のあたりを両手で抑えながら、ゆっくりと呼吸する。
「…」
のろのろとなのはは体を起こす。
呼吸がまだ荒い中、なんとなく、彼女は時計を見た。
「まだこんな時間…」
いつもよりもかなり早い起床に、なのはは思わず呻く。
机の上にいるユーノは傷が癒えきっていないのか、未だおとなしく眠っていた。
なのははベッドから降りると、カーテンを開ける。そして、自分の家の庭で体を動かしているミロを見つけた。
「…」
ミロは自然体のまま、ゆっくりと呼吸をする。次に、全身に
(問題はない、か)
嘆きの壁の前で一度死んだはずの体。
それが、何故完全なかたちで復活しているのか。
しかも、今のところ何の不具合も見つからないが、それが逆に恐ろしくも感じる。
何度か両手のひらを握り締めたり開いたりして感覚を確かめたあと、彼は自然体の姿勢から構えを取る。
素早く拳を放ち、次に、右足を軸足に回転するように空中に蹴りを放つ。ヴォンッと通常では考えられない音を立てて風が起こる。
(俺を蘇らせたとして、メリットがあるのは誰だ? アテナ? ならば、何故異世界に俺はいるのだ?)
答えが見つからない自問自答を繰り返しながらも、体の動きは止めない。
(ジュエルシードが関係しているかもしれんが、まだ断定はできんな。そもそも…)
しばらく鍛錬をしながら考えていると、ふと、視線を感じて顔をそちらに向ける。
「ナノハか。おはよう」
「お、おはようございます…」
庭に面した廊下から顔を出したなのはは、驚いた様子でミロを見ている。
「えと、ミロさんて体柔らかいんですね」
「よく言われる」
こともなげにミロは返しながら、180度開脚を終えると立ち上がる。
そして、足を揃えた状態からゆっくりと右足を上げる。膝は曲げず、ただまっすぐ垂直に。あげた右足は完全に体についている。つま先までピンと伸ばしており、いうなれば、立ったまま前後180度開脚をやっているようなものだ。
しかもそれで終わりではなく、ミロは右足を下ろすと、そのまま体の後ろに持っていく。
上半身を軽く曲げ、右足の膝を曲げ、体の後ろに回した右足を頭の上まで持っていく。
もちろん、そのあいだの動きのあいだも左足はピクリとも動かない。
そして、右足をおろして最初の直立に戻ると、左足も同じ動きをする。
なのははそれを見ている間中、開いた口がふさがらなかった。
「よし。ストレッチはこんなものか」
(…私の知ってるストレッチと違う)
全身タイツのストレッチ男も真っ青だ。
「あれ? おはようなのは。早いね」
珍しいと言わんばかりの表情で、美由紀がなのはに声をかける。
「おはよう、お姉ちゃん」
なのはも挨拶を返したところで、美由紀は庭に立つミロにも言った。
「ミロさんもおはようございます」
「おはよう」
ミロは直立の姿勢に戻ると挨拶を返す。
「ミロさんって体柔らかいんですね」
「…そのセリフ、ナノハも言っていたぞ」
「あれ!?」
完全に丸かぶりした姉妹に思わずミロは苦笑し、なのはもクスクスと笑う。
美由紀は笑わないでよーと文句を言っていたが、
「あ、すみません。私、これから朝練するんでそろそろ行きますね」
「そうか」
「お姉ちゃん、頑張ってね」
美由紀は言い残して、ミロに軽く会釈し、なのはに手を振ると、道場の方へと去って行った。
残されたなのはとミロはしばしその背中を見送る。
「ミユキは何をしに行ったんだ?」
「お兄ちゃんとおねえちゃんは剣術の鍛錬してるんです」
「ほう」
確かに、ミロの目にも素人離れしたように見えた兄妹だった。動き一つ一つに隙がないのだ。
恭也に関しては、ミロに対して警戒心を解いていないというのもあるだろうが。
「ナノハはやらないのか?」
「私、運動が苦手なんで…」
にゃははと恥ずかしげに告げるなのは。
「ナノハ」
「はい? ってわわっ!?」
ミロはなのはに近づくと、縁側に座っていたなのはをひょいと立たせた。
「暇なら付き合え」
「えぇ!?」
ニヤと笑ってみせるミロに、なのははものすごい嫌な予感がした。
「…えーっと…」
数分後、たまたま通りかかった士郎が見たのは。
「イタタタタタタ! 痛いっ! それ以上は腰が折れますうぅぅ!!」
「心配するな。折れるほど力は入れていない」
「嘘だあああああっ!!?」
庭に面した縁側で開脚をして体を前に倒すストレッチで悪戦苦闘するなのはと、呆れた様子でその背中を押してさらに倒そうとするミロだった。
ちなみになのははほぼ体が倒れていない。派手な悲鳴を上げてはいるが、ミロはなのはの背中を押す手にはほとんど力を入れていないようだった。
ミロは一つため息を着くと、
「どれだけ体が硬いんだお前は…」
「ミロさんがおかしいんですっ! 人間の関節とか無視した動きしないでくださいっ!」
「ほう。もっと力強く背中を押せとな」
「にゃああああ!!? ごめんなさいいぃぃっ!」
コントか。
士郎はそんなツッコミを心の中だけで行う。
「あ、お父さんっ! 助けてっ!」
「人聞きが悪いぞ、ナノハ」
「ははっ、仲が良くてなによりだなぁ」
「お父さーんっ!」
そんなやりとりがあったあと、ミロはなのはの背中から手を離すと、なのははすぐに足を閉じてさする。
「うう、痛かった…」
「この程度で音を上げてどうする。いざというとき体動かなければ困るのはお前だぞ、ナノハ」
ミロの辛辣な意見に、なのははぷいっとミロがいる方向とは逆方向に顔を向けると、
「いいもんっ いざなんて無いしっ」
「おい、拗ねるな」
「拗ねてませんっ」
ぷくっと頬を膨らませるなのはに、困ったなとミロは頭をかく。ちらりと士郎を見るが、士郎は驚いた様子でなのはを見るだけだ。
「まったく」
あてにならないと判断したミロは、なのはが向こうを向いているのをいいことに彼女をひょいと抱き上げて、
「わわわっ!?」
そのまま庭に降りると、
「そらっ!」
「きゃー!?」
なのはを抱えたまま、グルグルと回り始めた。
きゃーきゃーとなのはは悲鳴を上げているが、それはどう聞いても遺憾や怒りよりも喜びや楽しさが溢れ出ているようにしか聞こえない。
士郎はどこか唖然とした表情でその様子を見ている。
やがて、回転が止まると、ミロが問いかける。
「よし、機嫌は直ったか?」
「つーん」
「ぬ。手ごわいな、ナノハ」
なのはもミロも口ではそう言っているが、表情は楽しそうに笑っている。
「仕方あるまい。この
「?」
なのははワクワクとした表情で首をかしげる。
ミロは一度なのはを地面に下ろす。
しかし、その奥の手が披露される前に、
「なのはっ!!」
道場から飛び出してくる青年が一人。
「お兄ちゃん!?」
なのはが驚きの声を上げる中、恭也は走り寄ってくる。
「なのは、大丈夫か!? 今、悲鳴が!」
「大丈夫って何が?」
なのははキョトンとして恭也を見上げる。
士郎は苦笑しながら恭也に声をかけた。
「恭也。なのははミロさんに遊んでもらっていただけで…」
「なっ! なのははは遊ばれてたのか!?」
「多分、お前の言っている意味は違うぞ」
士郎が落ち着けとツッコミを入れた。
日本語の細かいニュアンスまでは理解できていない、なのはとミロは首をかしげる。
突然飛び出していった恭也を追って美由紀も道場から顔を出す。
「もう、恭ちゃんったら」
そして、はぁと一つため息を吐く。
なんだか混沌としてきてその場に、桃子の「朝ごはんできたわよー」の声が響くのだった。
【悲報】今回もユーノの出番なし【淫獣】
仕方ないね。
それもこれもなのはちゃんが可愛すぎるのがいけない(錯乱)
8日 ラストを若干変更。
ご指摘ありがとうございます。