名無しのモブ子ちゃんが出ます。(今後出るかは不明)
他作品ネタちょっとあります。
以上の事柄をご了承くださいませ。
「おはよう」
「おっはよー」
そんな朝の挨拶が交わされる教室に、なのはは足を踏み入れた。
「おはよー」
「あ、なのはちゃん。おはよう」
「おはよう、なのは!」
真っ先に返事をしてきたのは、友人であるアリサとすずかだ。なのはは思わず笑みを浮かべると、二人に近づいていく。
すずかはニコリと笑うとなのはに話しかける。
「なのはちゃん、今日はちょっといつもより遅かったね」
すずかの言うとおり、いつもならば同じバスに乗り三人だったが、なのはから『遅れるから先に行ってて』とメールをもらっていたのだ。
現に、なのはは、珍しく士郎に送られて学校に来ている。
「あ、うん。ちょっと色々あって…」
「色々って何よ」
アリサがなのはの曖昧な返答にツッコミを入れる。
「うんと、ユーノ君のこととか…」
ウソは言ってないよね、となのはは罪悪感を隠しながら告げる。
本当は昨日の話し合いの興奮やら、これからの不安やらでなかなか寝付けず、朝寝坊してしまったというのが真実なのだが。
おかげで朝から高町家は大騒ぎである。
だが、なのはを送ることになった士郎はどこか嬉しげで、車内でも学校のことや友人のことを尋ねてきていた。
父親と二人で話すことはあまり多くないなのはも新鮮で、嬉しく、いつも以上に饒舌に喋っていたことを今更ながらに自覚している。
「あ、あのフェレットねー。なのはの家で飼って大丈夫なの?」
先日、なのはと共に怪我をしたフェレットのユーノを見つけていた二人は、心配そうな表情になった。
「なのはちゃんち、喫茶店やってるもんね」
なのはとのメールのやりとりである程度の事情を知っている二人のコメントに、なのはは「にゃはは」と笑って、
「うん。でも、ちゃんと私が面倒見るって約束したし、それに飼い主さんが見つかるまでだから、大丈夫だよ」
「そっか。なら良いけど」
アリサが安堵したように息をつくと、すずかも頷いて、
「そうだねー。あ、せっかくだから、今日なのはちゃんの家に行っても良い?」
「うん!」
なのははその言葉に喜色満面で頷く。その時、担任の教師が入ってきたため、おしゃべりは中断となった。
席に着いたなのはは、首から提げているレイジングハートから、念話で話しかけられた。
『(では、マスター。今日からご要望通り本格的な魔法の練習を始めさせていただきます。これは基本的に
なのはもまた念話で返事をする。
『あ、うん。分かった』
前日の夜の話し合いの結果、なのはは当面のジュエルシード集めを手伝うということで、レイジングハートに魔法の指導を頼んでいたのだ。
危険なジュエルシードはほうっておけない。
だが、なのはとユーノだけでは心配。
ならば、対策を取らなければならない。
高町家の面々は結局そんな結論に落ち着いた。
基本はなのはが魔法の使い方をしっかりと覚え、ユーノはひたすらジュエルシードの探索となのはの補助。
実際ジュエルシードがあらわれた場合は、なのはとユーノ、そして手が空いている士郎、恭也、美由紀、ミロの誰かがなのはとともに現場に急行し、戦闘が必要な場合はこの4人が担当。
そして、なのはが封印。
これが理想の流れである。
(って、決まったけど、基本的にはミロさんにお願いするんだろうな)
なのはの考えは大体合っている。
士郎は喫茶店での仕事。美由紀や恭也は学校や部活。
戦闘要員の中で一番時間に自由が効くのはミロだからだ。
『(Mr.ミロの戦闘能力は、魔道士よりもはるかに高みに有り、有り体に言えば「次元」が違います)』
レイジングハートが念話で伝えてくる。
なのはは疑問に思って問い返した。
『そうなの? 魔道士ってすごい魔法とか使えれば同じくらい強くなれるんじゃないの?』
自分は初心者だからまだまだだろうけど、と付け加えて尋ねれば、
『(
『そうなんだ…』
イマイチ実感がわかないなのはは、そう返事はするものの内心首をかしげている。
『(そこも含めて
『うん。頑張る。改めてよろしくね、レイジングハート』
こうして、なのはの魔法の修行と勉強が始まったのだった。
時間は過ぎて帰宅時、なのはがアリサとすずかと3人で昇降口まで来た時。
「あ、いたいた。なのなのー」
そんな呼び声がかかった。3人が驚いて振り向けば、同じクラスの少女が携帯を片手に近づいてくる。姉と弟がいるそのクラスメイトの少女は少し変わっていて、友人に奇妙なあだ名を付けて回っていることでも、有名だった。なのはを呼んだ「なのなの」もそのひとつである。
その彼女が近づいてきて言う。
「突然ごめんね」
「良いけど、どうかしたの?」
なのはが不思議そうに尋ねると、その相手の少女はケータイを見ながら、
「今、うちの大学生のお姉ちゃんからメールがきて…えっと『喫茶翠屋に新しく入った外国人のイケメン店員について以下のことについてなのはちゃんから聞いて来て欲しい。っていうか聞いてこい』って」
ひどい命令系のメールだったが、彼女自身はそれを気にしている様子はない。
「ええ!? 新しいバイトの人!?」
「ちょっとなのは!? 初耳なんだけど!?」
だが、それにはすずかとアリサが食いついてきた。なのははそんな友人二人の反応にちょっとビビリながらも、
「え、えっと…もしかして、ミロさんのことかな?」
「あ、待って。えーっと、名前は、ミロさんね。何処の人?」
「ギリシャから来たって」
「ギリシャ人!? おお。それは意外ね」
クラスメイトの少女はピピピと携帯にデータを打ち込んでいる。なかなかの速さだ。
「質問その3。彼女はいそう?」
「ええ!? ど、どうなんだろう…。そういう話は聞いたことないけど…」
というか、別世界から来てるため、そんな話すら今のところなさそうだなとなのははちょっと思った。
(あ、でも、やっぱり強くてかっこいいからいたのかな?)
そんなことを考えていると、次の質問が飛ぶ。
「いないっぽい、ね。あ、次で最後。質問その4。年齢は?」
「にじゅう…えーと…21だったかなぁ…。ごめんね、うろ覚えで」
「ううん! こっちもゴメンね、変なこと聞いて」
クラスメイトの少女は最後のその文を打ち込むと、
「ありがとね、なのなの。私も今度その新しいイケメン店員さん見に行くから!」
「う、うん」
「行くだけじゃなくてちゃんと買い物しなさいよ」
至極もっともなアリサのツッコミにクラスメイトの少女は
「アリリン厳しいー」
「アリリン言うな」
とアリサと言い合って、もう一度なのはに礼を言うとその場を去っていった。余談だが、すずかは『スズッチ』などと呼ばれている。
なのは達3人は彼女を見送る。と、ガシっとアリサはなのはの腕をつかんで、
「なのはー? どういうことー?」
「う、うう。ちょっと怖いよ、アリサちゃん…」
なのはは思わず後ずさりしかけて、すずかがそんな二人の間に入った。
門の前で、3人はアリサをいつもどおり迎えにきていた運転手に、喫茶店『翠屋』に行って欲しいと頼む。運転手である鮫島は電話で何か確認をとったあと、了承の意を示して、車を発進させた。普通の小学校ではありえない様子ではあるが、彼女たちが通うのは私立校。こんなお出迎えも日常茶飯事である。
その車の後部座席で、3人は会話を続ける。
なのはが一番最初に反論した。
「隠してたわけじゃないよ。確かに、働くっては聞いたけど、いつからかはわからなかったし」
「それ以前に、ギリシャ人なんて珍しい人が何であんたの家でバイトしてんの?」
「えと、その人って昨日の朝、なのはちゃんをバス停まで送ってくれた人だよね?」
アリサとすずかから続けざまに問われて、なのはは目を白黒させながらも答える。
「う、うん。えと、ミロさん、いろいろあって、うちに住み込みで働くことになったから」
すずかが不思議そうに訪ね返す。
「住み込み?」
「うん。バイト代から衣食住代とか引いた分を渡す形にするってお父さんと話してた」
「だから、色々って何よ」
「うう、それは…その…プライベートな問題だから…」
さすがのアリサも、そう言われてしまっては、黙らざるを得ない。同時に、なのははそれを知っているのかと、勘づいた。なので、話題を変える。
「でもまあ、確かに、イケメンよね」
「…うん。カッコイイと思う」
「あ、なのはちゃんがそういうのは珍しいかも」
「そーねー。ね、なのは、実際はどう思ってるのよ」
「ど、どうって…えっと…お兄さん、かなぁ…」
「なーんだ」
「なんでつまらなそうなの!?」
アリサがなのはをからかい、なのはがツッコミ、すずかがクスクスとおかしそうに笑う。
そうこうしているうちに、車は『翠屋』の近くで止まる。しばらくしたら迎えに来るようにと、アリサは鮫島に言うと、最後に車を降りた。
傍目に見ても、『翠屋』は繁盛しているのがわかる。今も女子高生らしき5人組の一団が、なのはたちとすれ違いながら会話をしていた。
「見た!?」
「見た見た! マジだった!」
「恭也さんもカッコイイけど…」
「くっ、だめよ私! 揺れるな魂のペンデュラム!」
「何を言ってるのかさっぱりわからんわ」
そんな会話をBGMに3人は『翠屋』へ歩み寄る。
「ありがとうございましたー」
出入口で桃子が客を見送ったところで、なのはたちに気がついた。
「あら、おかえりなさい、なのは。それに、いらっしゃい、すずかちゃん、アリサちゃん」
「ただいま」
「「こんにちはー」」
桃子はニコリと笑うと、3人を喫茶店の中へと招き入れた。
混んでいた時間が一段落したのか、席はそれなりにすいている。
「いらっしゃいま…ああ、なのはか」
扉が開いたため、振り返ったミロはなのはを見て、言葉を止める。
士郎に半日かけて接客業を叩き込まれたおかげと、元来人当たりのいい性格のためか、彼は意外にもバイト業になじんでいた。ちなみに、いつもはそのままにしている長い髪も、桃子の手によってポニーテールにされている。その点は渋々といった彼の様子であったが、危うく『ミツアミ』などに可愛らしくされそうだったのは、それはもう必死で阻止した。
「ただいま、ミロさん」
なのはもニコッと笑って返事をした。ミロはなのはと一緒にいる二人に目を留め、「友人か?」と尋ねる。
「うん。クラスメイトで親友のアリサちゃんとすずかちゃん」
「は、はじめまして」
「こんにちは」
若干緊張気味に、二人が挨拶する。親友という言葉にミロは頷くと、
「ミロだ。訳あってなのはの家で世話になっている」
そう軽く言葉を返す。なのはが何か言う前に、注文に呼ばれてしまい、彼はなのはに軽く謝るとそちらに向かう。それを見送って、なのは達3人は開いているボックス席に着いた。
3人がそれぞれ注文をして落ち着いた頃、桃子が3人分の飲み物とケーキを持ってきた。
「はい、どうぞ」
「あ。ありがとうございます」
すずかが丁寧に礼を言いながら受け取り、アリサもそれに習う。なのはもまたそれらを受け取ると、
「お母さん、ミロさんやっぱり人気?」
「そりゃもうね」
桃子はクスクスと笑いながら答える。実際そのとおりだった。
午後からは試しのバイトとして士郎から言われて始めたミロだったが、その良い意味で目立つ容姿のおかげか、翠屋は嬉しい悲鳴を上げることになった。
ミロにしてみれば、忙しいばかりのいい迷惑だったかもしれないが、日頃から鍛えている彼は文句ひとつ言わずに働いてくれており、それも桃子達には嬉しいばかりだった。
「結構すごかったわよ。黄色い悲鳴が」
「へー」
そう返事をしながら、なのははちらりとミロを見やる。彼は今注文をとって厨房に向かうところだった。
「それじゃあ、三人ともごゆっくり、ね」
「「はい」」
アリサとすずかが桃子の言葉に返事をすると、桃子はその場を立ち去る。未だミロを目で追っているなのはに、アリサは真剣な様子で言った。
「なのは」
「え!? な、何!?」
「さすがに12才差は犯罪じゃないかしら」
「……? ……! ち、ちち違うよ! そうじゃないから!! 絶対違うからっ!!」
一瞬何を言われたのか理解できずになのはは首を傾げたが、すぐに全力で否定しにかかる。
「顔が赤いわよー?」
「ううう! アリサちゃんの意地悪!」
「ま、まあまあ、二人とも」
すずかがその二人の仲裁に入った。そんな騒ぎを横目にただ桃子はクスクスと笑い、よく話が聞こえてなかったミロは(元気だな)などと何処か暢気に思っていたのだった。