平凡目指して暗殺教室(更新停止)   作:ハピナ

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2週間も休んでしまい申し訳なかった、病み上がりのハピナですよ。

ゾロ目今回はいよいよ最初のテスト期間に入ります、殺せんせーもどうやら張り切っている様子。

一方でとある男性も古校舎を訪れる、その男性とは一体誰なんだろうか?



(11)増加の時間

 

 

「さて、始めましょうか皆さん」

 

 

おはよう、今日の授業はそんな殺せんせーの明るい言葉から始まった。

今日はなんだか増えている……殺せんせーの分身? みんなの前で着々と数を増やしている。

 

 

「椚ヶ丘中学校にも、恒例の中間テストが迫って来ました」

 

「そうそう!」

 

「そんなわけで、この時間は」

 

「『高速強化テスト勉強』をおこないます!」

 

「先生の分身が1人ずつOne on oneで」

 

「それぞれの苦手科目を徹底して復習します!」

 

 

一人だけやたら英語の発音が多いのがいるなぁ……要するに、マンツーマンって事かな。

 

 

「下らねぇ! ご丁寧に教科別にハチマキとか、バカらしくて反吐が出る」

 

 

テストの時期というのが影響しているのか寺坂は、朝から不機嫌な様子だ。

 

うぅ、怖いなぁ……間にカルマがいて本当に良かったと思っているよ。

 

そんな事を私が思っている間にも、殺せんせーは順調に分身を増やしていった。

 

私の前にも殺せんせーの分身が来た、『社会』? うわっ、苦手教科がバレている。

 

寺坂の前に分身が出来るのは席の順番的に最後、何の強化かと思えば……何故か忍者。

 

 

「……は? 何で俺だけ忍者アニメのキャラクターなんだよ!?」

 

「寺坂君は特別コースです、苦手科目が複数ありますからねぇ」

 

 

だからと言って忍者にする意味が理解出来ないけど、そこは殺せんせーの遊び心かな。

 

 

「それでは始めますよ新木田さん、社会の教科書を出して下さい」

 

「……へ、え? あぁはい! 今取り出します!」

 

「慌てなくても大丈夫ですよ、新木田さんのペースで進めて行きましょう」

 

 

正直ちょっと驚いてしまった、分身の割には殺せんせーの声はハッキリとしている。

 

多少はノイズがかかったみたいになるかなって思ったけど……意外だな、全然聞き取れる。

 

教科書を取り出せば授業開始、社会は年号から出来事まで暗記の範囲が多いから苦手だ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

僕なりに思う、殺せんせーは最初E組に来た頃よりどんどん速くなってる。

 

 

「一発泣いて廃藩置県! 覚えられるよう文の横に泣いてる殿様を描いときます」

 

「でかっ!? というか、私のに描いてしまいますか? 私ならもっと描けますよ!

……あれっ、廃藩置県って要するにどういうことでしたっけ?」

 

「簡略化すればですが、藩はおしまい、これからは府と県! となります。

ヌルフフフ! 新木田さんもまだまだのようですねぇ?」

 

「なっ!? この位すぐ覚えるっての! 一発泣いて廃藩置県藩、藩はおしまい……えっと」

 

「『これからは府と県』ですよ」

 

 

国語6人、数学8人、社会4人、理科4人、英語4人、特別コースが1人。

 

 

「答えは例文の中に隠れてますよ? では、大ヒントをあげましょうか」

 

 

クラス全員分の分身なんて、ちょっと前まで3人ぐらいが限界だったのに。

 

そんな事を考えながら僕は勉強を進めていた、目の前には理科の殺せんせー。

 

わからない所が出て来て、殺せんせーに聞こうとしたら……急にぐにゅんと歪んだ!

 

 

「うわっ!?」

 

「急に暗殺しないで下さいカルマ君!! それ避けると残像が全部乱れるんです!!」

 

「意外と繊細なんだこの分身!?」

 

 

後ろの方を見てみれば、カルマが殺せんせーに緑のナイフを向けている。

 

隣から明らかに渡す目的じゃない投げ方で、固そうな飴が飛んできた。

 

カルマは見ずに飴を受け取って、包装を開けて口に放り込んだ。

 

噛み砕いて舌を出す……投げた本人は怒りそうになったのを殺せんせーに止められた。

 

なんだかんだ言って、2人は仲が良くなってきているんじゃないのかな?

 

 

「でも先生、こんなに分身して体力もつの?」

 

「ご心配無く! 1体外で休憩させていますから」

 

「それむしろ疲れない!?」

 

 

窓の外を見てみると、雑誌とジュースを片手にビーチチェアに座ってくつろいでいる。

 

本当に、逆に疲れないのだろうか? それは殺せんせー自身にしかわからない。

 

この加速度的なパワーアップは……1年後に地球を滅ぼす準備なのかな?

 

なんにしても、殺し屋にはやっかいな暗殺対象で……

 

 

「とここまではわかりましたか渚君?」

 

「……あっ、はい!」

 

 

定期テストを控えた生徒には、とても心強い先生だ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

中間テストに向けて私たちが勉強に励む一方、烏間先生とビッチ先生は教員室にいた。

 

真剣以外何にも無いような顔をしている、その目線の先では

1人の男性が見慣れた立方体のパズルで遊んでいた。

 

椚ヶ丘中学校で知らない人はいない重要な人物、私でさえ知っている。

 

その人は完成した立方体のパズルを机の上に置くと、先生たちを見て質問を投げかける。

 

 

「この六面体の色を揃えたい、素早く沢山しかも誰にでもできるやり方で。

あなた方ならどうしますか? 烏間先生、イリーナ先生」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「さようなら殺せんせー!」

 

「また明日も頼むぜ!」

 

「明日こそは暗殺してやるんだから!」

 

 

聞き流せる授業は極力聞き流しながら勉強に励んでいたら、いつの間にやら時間は放課後。

 

今は荷物を持って教員室の前の廊下を歩いている、殺せんせーにちょっとした用事。

 

テスト対策でわからない箇所が出来ちゃったからなぁ……

 

急に殺せんせーが歪んだのに驚いたせいで忘れて、その時は聞きそびれてしまった。

 

殺せんせーを探して進む先、その姿はすぐに見つかった。

 

 

「ヌルフフフ、明日は殺せるといいですねぇ」

 

 

そんな事を言いながら教員室に入っていく殺せんせー、私は当然声をかけようとした。

 

 

「まっ、待って! 新木田さん!」

 

 

何故か、後ろから手を引かれて渚に止められてしまう……私の後ろにいたんだろうか?

 

 

「渚、何で止める? 私は殺せんせーに用事が」

 

「しぃーーっ! 今教員室に来ているみたいなんだ、烏間先生やビッチ先生以外の誰かが」

 

「……お客さん?」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「答えは簡単、分解して並べ直す……とても合理的な解答です」

 

 

殺せんせーが教室に入ったのは、ちょうど男性が答え合わせをするタイミングだった。

 

机の上を見れば、立方体のパズルがパーツになってバラバラに分解されている……これを素手で?

 

 

「初めまして、『殺せんせー』」

 

 

男性は殺せんせーの名前を呼んでにこやかに微笑んだ。

殺せんせーは知らないらしく、男性の顔を見たまま動かない。

 

この男性は……私立椚ヶ丘学園理事長、浅野(あさの)學峯(がくほう)。 私はこの先生の事をよく知っている。

 

何故って言われたら……うん、色々あったんだよ! 明確な事は悪いけど思い出したくない。

 

 

「この学校の理事長サマですってよ」

 

「俺達の教師としての雇い主だ」

 

「……にゅやッ!? こっこれはこれは山の上まで!!

それはそうと、私の給料もうちょいプラスになりませんかねぇ」

 

 

マッハでお茶を出したり肩を揉んだりと気遣いのラッシュをかます殺せんせー、

肩揉みにお茶って……いつの間に熱湯なんて沸かしてきたのだろう?

 

渚は呆れたような表情をしながら、いつも持ち歩いている手帳に何か書き足している。

 

『殺せんせーの弱点⑥上司には下手に出る』……弱点メモ、ってどんな弱点なのよ!?

 

 

「こちらこそすみません、いずれご挨拶に行こうと思っていたのですが、

あなたの説明は防衛省やこの烏間さんから聞いていますよ。

まぁ、私には……全て理解できる程の学は無いのですが。

 

なんとも悲しい生物ですね、世界を救う救世主となるつもりが

世界を滅ぼす巨悪となり果ててしまうとは」

 

 

理事長先生が言っているのはどういう事だろうか? 私と渚が知らない事を知っている?

 

 

「……いや、ここでそれをどうこう言う気はありません。

私ごときがどう足掻こうが地球の危機は救えませんし」

 

 

それを言った後、理事長先生はふと烏間先生に耳打ちをする。

 

 

『よほどの事が無い限り私は暗殺にはノータッチです、充分な口止めも頂いてますし』

 

 

……ノータッチ? 口止め? 声が小さ過ぎて、読唇でもよくわからなかった。

 

 

「……助かってます」

 

「ずいぶんと割り切っておられるのね、嫌いじゃないわそういう男性」

 

「光栄です……しかし、この学園の長である私が考えなくてはならないのは……

地球が来年以降も生き延びる場合、つまり仮に誰かがあなたを殺せた場合の学園の未来です。

率直に言えば、ここE組はこのままでなくては困ります」

 

 

()()()()()E()()……渚もその言葉の意味が分かったらしく、唇を強く噛んでいる。

 

どんな意味かは殺せんせーがそのまま言葉にして、台詞として静かに話した。

 

 

「……このままと言いますと、成績も待遇も最底辺という今の状態を?」

 

 

「もちろんです、あなたは働き蟻の法則を知っていますか?

どんな集団でも20%は怠け、20%は働き残り、60%は平均的になる法則を。

 

私が目指すのは!5%の怠け者と95%の働き者がいる集団です。

『E組のようにはなりたくない』『E組にだけは行きたくない』……

95%の生徒がそう強く思う事で、この理想的な比率は達成できる」

 

「なるほど、合理的です! それで、5%のE組は弱く惨めでなくては困ると」

 

「今日D組の担任から学校に苦情が来まして、

『うちの生徒がE組の生徒からすごい目で睨まれた』『殺すぞと脅された』とも」

 

 

それを聞いた渚は血の気が引いたみたいに顔を青ざめた、苦情について心当たりがあるのか?

 

私には心当たりも無いしさっぱりだ、理事長先生はまだ話を続けている。

 

 

「暗殺をしてるのだからそんな目つきも身に付くでしょう、それはそれで結構。

……問題は、成績底辺の生徒が一般生徒に逆らう事です。

それは私の方針では許されない、以後厳しく慎むよう伝えて下さい」

 

 

……やっぱりこの先生は嫌いだ、()()()()()()もその方針に沿っての対応だったのだろう。

 

いいかげん見てるのもうんざりしてきて帰ろうとしたら、理事長先生の手元で金属音が鳴った。

 

 

「殺せんせー、一秒以内に解いて下さい」

 

「えっ、いきなり!?」

 

 

理事長先生が殺せんせーに投げて渡したのは、金属の棒を曲げただけの簡単な作りの知恵の輪。

 

マッハで触手を動かし1秒後、触手と知恵の輪が絡んで殺せんせーはめちゃくちゃになる。

 

ただの知恵の輪なのになんてザマなんだ……渚もそんな事を思ったらしく、

彼は冷や汗をかいたままメモ張を取り出して追記をした。

 

『殺せんせーの弱点⑦知恵の輪でテンパる』……

とても簡潔、もう少し別の書き方は無かったのだろうか。

 

 

「噂通りスピードはすごいですね、確かにこれなら……どんな暗殺だってかわせそうだ。

でもね殺せんせー、この世の中にはスピードで解決出来ない問題も山ほどあるんですよ。

今あなたがある、その絡まった状態のようにね」

 

 

結局、終始理事長先生は無機質な微笑みを崩す事は無かった。

殺せんせーの絡まった状態に見向きもせず、教員室を後にした。

 

 

「では、私はこの辺で」

 

 

……まるで元から知っていたかのように、急に私と渚の前に現れて。

 

理事長先生は渚に視線を合わせて言った、中身なんてない乾いた偽善の台詞。

 

 

「やあ! 中間テスト、期待してるよ頑張りなさい!」

 

 

渚の表情が無感情に乾いていくのを感じた……イラっとした、だから言い返してやった。

 

 

「はい! 理事長先生を驚かす事が出来るよう頑張ります!」

 

 

カサカサに乾いた笑みを吹き飛ばす勢いで言ってやった、もちろん悪い意味でに決まっている。

 

理事長先生はそんな私の言葉にさえも表情を崩さないまま、廊下を歩いて行ってしまった。

 

先生は相変わらずだ、これで中間テストに加え新たな不安要素が増加してしまった。

 

……頑張るしかない、少なくともあの先生の思い通りにはなりたくない!

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

とても乾いた『頑張りなさい』は……一瞬で僕を、暗殺者からエンドのE組へ引き戻した。

 

それなのに、どうして新木田さんは言葉を言い返せたんだ? 2つの衝撃が今の僕にある。

 

本当はお礼を言うべき場面なんだろうけど……今の僕の口は、疑問を出すのが精一杯だった。

 

 

「新木田さんは、なんで言い返せたの?」

 

 

そう聞くと、新木田さんはハッとなって考え込んでしまった。

目線を伏せるようにして……僕に目を合わせないままだけど、答えてくれた。

 

 

「……2回目だったから」

 

「えっ?」

 

「もう帰る、殺せんせーに用事あったけど明日でいいや」

 

「あっ、ちょっと待って!」

 

 

僕は新木田さんを引き止めようとしたけど、彼女は逃げるように廊下を走って行った。

 

言いたくない事を聞いちゃったのかな……後を追う気にはとてもなれない。

 

僕も早く帰ろう、あまり遅くなると母さんに怒られてしまう。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

暗殺対象としてのこいつはほぼ無敵だ、暗殺を完全にコントロールして支配している。

 

だが教師としては無敵ではない、この学校にはあの強力な支配者がいるからだ。

 

奴もあれだけ言われ落ち込むで済まないらしい、対抗心を象る炎の気迫が背後に見える。

 

E組がこの先どうなるか……その行く末は、2人の教師の手にかかっている。

 





まことに残念ですが、今回愛美ちゃんの出番はありませんでした……土下座。

次回は様々な生徒が台詞を持つ回なので、原作寄りとはいえ多少の融通は効くと思います。

愛美ちゃんの出番も増加させていきたい……美術ノッポ? 知らない子ですねぇ。
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