はい、おはようございます。 出かける前のハピナですよ!
今回はカルマ編基、序盤カルマ編を完結させたいと思います。
いわゆる、今回はカルマ編[後編]というわけになりますね。
若干のオリジナル注意報、後半の文章は完全に自己解釈。
それじゃ、この前の続きを始めていこうか。
おはようとも言えない時間帯、今はホームルームが始まる前の休憩時間だ。
天気は若干の曇り、涼しげな風が山の中で優しく吹いている。
こんなに静かな状況なら、ヘッドホンを付けるまでもない。
私がダメなのは人の声……周囲を気にしない、たくさんの人の声。
それが今となっては自然の音しかない、逆にすがすがしい位だ。
本当はずっと付けないで過ごせるのが一番なんだけどね……
世の中そんなに上手くいかないらしい、まぁ音楽鑑賞は好きだし別にいいか。
しばらく森の中を歩けば崖に着く、その眼下を見下ろせば街の景色。
「新木田さん?」
「あぁ渚、やっぱりこっちの方に来てたんだ」
水色の髪を結った生徒がこっちに気がついた……渚だ、カルマを追いかけて来たのだろう。
現にカルマもそこにいた、崖から生えた孤独な木に座って爪をかじる。
その顔には隠せない程の悔しさが滲み出ていた、目を見開いて明後日の方向を見る。
「わっ私は、殺せんせーを探しに来ただけだよ? いいからカルマに話をしてあげて」
「?……うん、ありがとう新木田さん」
私、だいぶ大事な場面に首を突っ込んでしまったみたい……
邪魔にならないように、早いとここの場から離れよう。
崖を後にする間、渚はカルマに声をかけていた。 カルマも、渚の言葉を聞いている。
邪魔してはいけない、殺せんせーはここにはいない。
別の所を当たってみよう……そんな考えの傍、ふとした幸運。
「おや? 新木田さん、教室にいたのではなかったのですか?」
森に入ろうとすると、ちょうど森から出てきた人影があった。 いやヒトじゃないけど。
黒のアカデミックドレスに黄色の身体と触手、彼は殺せんせーその人だ。
今までどこにいたんだろう? とにかく、宿題とみんなのノートを採点してもらおう。
「探しましたよ殺せんせー、みんなの課題を採点して下さい」
「ここまで探しに来させてすみません、もう少しだけ待ってもらえますか?」
え、待つの? 次に殺せんせーは
最初は待つ事に疑問を持った私だったけど、今の状況でなんとなく察する。
多分の事を追ってここまで来たんだろう、放課後にはまだなっていない。
「……カルマ君、ですか? また手入れをしにここまで?」
「少し話をしたいと思ってね、手入れをするかどうかは彼次第ですよ」
……よくわからない人だ、殺せんせーはヌルフフフと軽く笑って崖の方へ向かう。
私も殺せんせーについて行く、だってまだ採点してもらってないもん。
「カルマ君!」
カルマはふと何かを呟いたような気がしたが、内容までは聞こえない。
2人とも特に驚いたような様子は無く、訪れた殺せんせーを見ている。
「今日はたくさん先生に手入れされましたね、まだまだ殺しに来てもいいですよ?
もっと ピ カ ピ カ に磨いてあげます」
そう言って、殺せんせーは片手で指にあたる細い触手をすり合わせた。
その顔色は黄色と緑の縞模様……渚曰く、これは相手をなめている顔らしい。
捉え方を間違えればそれは煽りだけど、カルマは怒らずふと笑った。
「確認したいんだけど、殺せんせーって『先生』だよね?」
「……はい」
いや当然殺せんせーは先生なんだけど……質問の意味が私にはちょっとわからないかな。
渚も同じような疑問を持ったようだ、まぁ見た感じの様子からだけど。
それでも殺せんせーは真剣だ、表情はわからないけど声で大体わかる。
「先生ってさぁ……
「もちろん、『先生』ですから」
「そっか、よかった。 なら、殺せるよ」
「 確 実 に ……」
カルマは後ろ向きに倒れたかと思えば、そのまま崖の下に落ちていった。
銃を……しっかりと前に向けたまま、そのまま。
「 カ ル マ あ あ ぁ ぁ ! ! 」
私は思わず大声を出した、渚のとっさの行動もカルマには届かない。
あぁ……自分の声が遅く聞こえるのを感じる、場面はスローモーションになる。
カルマが、赤羽カルマが…… 死 ぬ ?
さぁ! どうする?
助けにくれば救出する前に撃たれて 死 ぬ !
見殺しにすれば先生としてのあんたは 死 ぬ !
ぁ……ふははは! あぁすっげぇ!! 走馬燈っぽいの見えてきた!
『大丈夫? 先輩……3-E、あのE組? 大変だね、そんなことで因縁つけられて』
『ぁ……!? でも、こ……こんな事したら君が……!!』
『うん? 俺が正しいよ、いじめられた先輩助けて、何が悪いの?』
『いいや赤羽、どう見てもお前が悪い!!』
……え?
『頭おかしいのかお前!? 3年トップの優等生にケガを負わすとはどういうことだ!?』
……えぇ? 待ってよ 先 生
『E組なんかの肩を持って、身なりある者を傷つけた!
彼の受験に影響が出たら、ぉ俺の責任になるんだぞ!!』
……『味方』とか言っておいて、そんなこと言っちゃうんだ。
や ば い 、 死 ぬ
『お前は成績だけは正しかった、だからいつも庇ってやったんだ!
俺の経歴に傷が付くなら……話は別だ!』
俺 の 中 で 、
『俺の方からお前の転級を申し出たよ!
おめでとう、赤羽?
君も3年から…… E 組 行 き だ ! ! 』
『っぐわあああああぁぁぁぁ!!?』
そいつに絶望したら、俺にとってそいつは死んだと同じだ。
殺せんせー! あんたは俺の手で殺してやるよ!! さぁ、どっちの死を選ぶ!?
……それは意識も追いつかない一瞬の出来事、突然その場から殺せんせーが消えた。
次の瞬間、下の方から粘質な着地音とカルマが唖然となる声が聞こえてくる。
崖から落ちないように下を覗けば……そこにあるのは黄色の蜘蛛、いや触手の巣。
「カルマ君!」
「ぁ……!?」
「自らを使った計算ずくの暗殺、お見事です!
音速で助ければ、君の身体は耐えられない。 かといって、ゆっくり動けばその間に撃たれる。
そこで先生、ちょっと ネ バ ネ バ してみました!」
見れば、カルマは大の字で寝たまま動かないと思ったけど……
必死に銃を持った腕や足を上げようとするけど、黄色の糸を引いてくっついている。
「っくそっ! なんでもアリかよこの触手!?」
「これでは撃てませんねぇ? ヌルフフフ!」
というか、短時間でこの方法を思いついた殺せんせーも殺せんせーだ。
私なんて叫ぶことが精一杯だったのに、思考回路どうなっているんだろう?
……あ、そういえばなんの前触れもなく叫んだから喉が痛いや。
殺せんせーはまた軽く勝ち誇ったかのように笑うけど、その笑いは短期間で止まった。
「あぁ、ちなみに……」
「……?」
「『見捨てる』という選択肢は先生には無い、いつでも信じて飛び降りて下さい」
……不意に聞いた声、優しげな言葉。 それはまるで、天から降り注ぐ暖かな日光。
カルマはしばらく先生の顔を見たかと思えば、安心したような顔をした。
目を瞑って笑う、身体を委ねて笑う。 もはや脱出しようなんて力は一切入れていない。
こりゃ、ダメだ。 死なないし殺せない……少なくとも、『先生』としては。
しばらくして、殺せんせーはカルマを連れて崖を登ってきた。
心配になって身体を見たけど無傷、本当に良かったと思う。
渚は彼の事をある程度知っていたようで、崖の下を見下ろしていた。
「かっ、カルマ! 怪我はない? 無事で良かったァ……!!」
「新木田さんにはかなりビックリさせちゃったね、
渚君はある程度俺の事知ってたからそうでもないか」
「カルマ君、平然と無茶したね」
「別に? 今のが考えてた限りじゃ一番殺せると思ったんだけど、
しばらくは大人しくして計画の練り直しかな」
「おんやぁ? もうネタ切れですかぁ?
報復用の手入れ道具は、まだ沢山ありますよぉ?
君も案外、 チ ョ ロ い ですねぇ?」
殺せんせーの持つ手入れ道具の中には、なんか可愛いネコ耳が混じってる。
ホント先生のセンス良いよなぁ、私も暗殺すれば付けてくれるのかな?
……って違う違う! カルマは一瞬殺意が沸いたような顔をしたが、すぐ笑顔に戻った。
何があったのかは知らないけど、彼の中で確実に何か変わったのはわかる。
カルマは爽やかに笑って、親指で首を切るしぐさをしてみせた。
「殺すよ、明日にでも!」
(健康的で、爽やかな殺意……もう手入れの必要はなさそうですね)
殺せんせーは何も言わず、顔がオレンジになって赤い丸が浮かんだ。
渚も笑う、私も安心する。 一連の状況は落ち着く。
やれやれ……もう大丈夫そうだね、カルマ。
「んじゃ、帰ろうぜ渚君! 帰り飯食ってこうよ!」
そう言って、カルマは財布を片手で弄びながらその場を後にしようとした。
カルマは渚と仲がいい、私も採点してもらったらお暇しようかな。
……あれ、そういやカルマは財布を持っていたっけ?
「ん? ああぁぁ!!? ちょ、それ 先 生 の 財 布 ! ! 」
「だから、職員室に無謀で置いとくなって!」
「かっ 返 し な さ い ぃ ! ! 」
「いいよぉ?」
案外カルマ素直に投げて財布を返した、殺せんせーは慌てて受け取る。
……あれ? 殺せんせーの様子がおかしい、財布の口を下にして軽く振って指差している。
「え? なっ……中身抜かれてますけど!?」
「あぁ、はした金だったから 募 金 しちゃった!」
「ぬ ぅ お あ あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ! ! ! ! 」
殺せんせーは灰色になって悲鳴をあげたかと思うと、カルマに苦情の嵐だ。
うわぁ……彼は『悪魔』だ、言葉はそれに尽きる。 大抵の事に動じない私でも苦笑いが出てくる。
カルマは笑いながら歩き去る、追いかける殺せんせーの苦情は止まらない。
渚も彼なりに安心した様子で、2人について行って崖を後にした。
……って、ちょっと!? 殺せんせー!?
「先生私の採点忘れてるでしょ!? ちょ、みんなの分もあるんだって!!」
私は慌てて殺せんせーを追いかけた、確かに空気だったけど忘れたら嫌だよ!?
……まぁ、時間かかっちやったけど後に採点してもらえたから良いか。
これを期に、カルマは本当にしばらく大人しくなってくれている。
やっと静かに戻る……ほんの少し、私の目指す『平凡』に近づいたかな。
そんな事を考える傍ら、殺せんせーの苦情は段々と大きくなる。
結局、私は外していたヘッドホンを付け直して電源を入れた。 やっぱり、うるさいのは苦手。
……あれ? こんな長いことヘッドホン外してたのは久しぶりだな。
私もちょっとは成長したのかな、殺せんせーの声も曲越しでもよく聞こえるのはこの時知った。
うぅ、殺せんせーの苦情がまだ聞こえる……ちょっとだけ曲の音量を上げよう。
曇り空はすっかり晴れて、夕暮れの太陽が影を地面にのばしている。
上を見たまま歩いていたせいか、アスファルトのひび割れに足を引っ掻けた。
誰もいなくてよかったなぁ……かっこ悪いまでに僕は転んでしまった。
「痛てて……あ、僕の眼鏡」
転んで、眼鏡を落として、そして思い出した。
あの、地獄のような日々にふと現れた紛れもない希望。
そういえば……あの日の天気も、こんな夕方だったなって思い出した。
僕はあの中学でE組だった、家の手伝いが忙しくて……あまり勉強出来なかったのが原因かな?
止まらないE組いじめ……当然だ、そういう立場だったから。
そう諦めていた自分もいたからかもしれない、実際諦めていた。
あの日もA組の生徒のストレス発散につきあわされていた…… 痛 か っ た !
青あざは当然だった、でも……眼鏡を落としたのはかなりの不運。
彼がいなかったら、僕の眼鏡はぐしゃぐしゃに踏みつぶされていたと思う。
どうでもいいかもしれないけど、僕に取ってはとても重要な話。
僕……生まれつき『弱視』で、眼鏡がないと見えないんだ。
あの時も、『どうせ頭が悪いんだから勉強出来ないようにしてやる』って……
そこに、赤髪の彼が来たんだ。 当時A組だった、赤羽カルマが。
もしあのときに眼鏡が壊されていたら、僕は……
新しい眼鏡を買うお金なんて、当時の僕の家には無い。
今僕が通う高校にだって受からなかっただろう、確実に今よりひどい現状になっていた。
赤羽カルマ、今はどうしているんだろう?
あの後、彼は停学になって僕と同じE組になったという話を聞いた。
あのときは言いそびれたけど、もしまた会えたのなら言いたい。
僕のせいでE組行きになって『ごめんなさい』という、謝罪の言葉と……
「……助けてくれたお礼、言ってなかったな。 あの時の僕は怯えすぎだよな」
あのとき僕を救ってくれた事に対する、感謝の言葉。
……君の
今の学校では風紀委員をしている、まぁ……僕が元E組なことは隠してるけどね。
彼ほど頭は良くないけど、せめて僕なりの正義感をしっかり持って生きよう。
本当に……『ありがとう』、赤羽カルマ。 あの時君が助けてくれたから、今の僕がいる。
……はい、というわけでカルマの手入れ完了です。
カルマに助けられた眼鏡の彼に関しては、
この位の後日談があっても良いかなって小話を導入。
じゃなかったら、カルマは一体なんの為に行動したんだ……
まぁその辺はそれぞれの解釈によるでしょう、私は正義感だと思っています。
カルマを意味する業は『不合理だと思ってもやってしまう宿命的な行為』、
その意味のままに原作者さんは彼を動かしたと思いますね。
さて、次回は愛美ちゃん主役回かビッチ教師のどちらかを書く予定です。
どっちから書くかは決まっていませんが、まぁぼちぼちと書いていきます。
それでは皆様、また次回。 土 曜 授 業 ってなんとかならんのか^q^