平凡目指して暗殺教室(更新停止)   作:ハピナ

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……はい、ごめんなさい。 ヒロイン回だからって気合入れすぎて遅れました(´・ω・`)

こんばんは、週末ぐったりなハピナですよ。休日やっとこさ来たれり。

文章がいつもの倍になってるのは許してくだしあ……ごめんなさい。

今回はこの作品でヒロインと定義付けている奥田愛美、愛美ちゃんの主役回となっています。

それでは、別称『毒の時間』をお楽しみくださいませ。



(6)愛美の時間

おはよう、今日も私を出迎えた空の景色はご機嫌の晴天だ。 雲一つ無い清々しい青空。

 

 

今日は科学実験もあって理科室に来ている。 奥田さんの大好きな理科の時間だ。

 

また奥田さんと別の班だよ! 菅谷はいいから、彼女と組ませてよもう!

 

まぁ出席番号的に奥田さんとはかなり離れているから、諦めるしかないのかなぁ……

 

 

私たちの班はランダム式で『赤』の着色料について実験する事になった、赤は私の好きな色。

 

主はコチニール色素、原料は驚きの昆虫。 サボテンに生息するカイガラムシの一種。

 

考察は『昆虫から作る着色料の安全性』で決まりかな? よかった、面白いのが書けそう。

 

 

「赤色の色素って、他にはアリザリンとかあったんだっけか?」

 

「それ赤色の油性絵の具の原料だよ!? 西洋茜と混合するな美術ノッポ!」

 

「自己中よりはだいぶ進歩したけどやっぱり呼び方ひでぇな!?」

 

「いや、何でその話で会話が成立するんだよ」

 

 

……あぁ、しまった。 また菅谷の学力不足に振り回された?

他男子からのツッコミを喰らう、深呼吸して落ち着け自分。

 

とにかく、手順通りに丁寧にやったら実験は無事成功。

まぁ、一部ちょっと奥田さんに助けてもらったりしたけどね。

 

三角フラスコを持って理科室の証明にかざす、光が透けて赤色の水はキラリと輝いた。

 

 

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「お菓子から着色料を取り出す実験はこれで終了! 

余ったお菓子は先生が回収しておきます!!」

 

 

そう言って殺せんせーはマッハで余ったお菓子をかき集めた。

 

先生の表情は必死な様子、そんなにお菓子が欲しかったのか……

 

お菓子が欲しいのならいくらでも作れるのに! え、違う?

 

 

「給料日前だから授業でおやつを調達してやがる、あれ買ったの俺らだぞ!?」

 

「地球を滅ぼすやつがなんで給料で過ごしてるのよ!」

 

「確かに現実的だけど、回収するのならもっと方法あったろ……」

 

 

子供だろうが先生の気持ちはわかる、私たちだってお金が少なくなったら大変だよ。

 

でもそれを授業で回収しようとするかなぁ? 貧欲過ぎるよ先生……

 

後で食べようと思って密封出来る袋持ってきたのに、暗殺ついでに取り返そうか?

 

 

そんなちょっとした不機嫌の傍ら、奥田さんは立ち上がって理科室の後ろに移動した。

 

放課後残って作ったのだろうか? その両手には2つの試験菅と1つの三角フラスコ、

明らかに今回取り出した着色料じゃないことは凡人の私にもわかる。

 

何故って? だって、どれも色が付いていないか濁った色。

 

これがもし着色料だったとしても、理科が得意分野の奥田さんが……

授業通りの結果に出来ないなんてことはあり得ない。

 

奥田さんはそれらの薬品を持って教壇の前に来た、小さな声を頑張って張り上げる。

 

 

「あっ……あの、殺せんせー」

 

「にゅやっ!? 先生のお菓子は渡しませんよ!?」

 

「いや明らかに目的が違うだろ!?」

 

 

相変わらず前原さんのツッコミは素早く回数も多い、もうツッコミ担当になってるよ。

 

殺せんせーは焦りに対し反省をして、改まって立ち上がる。

抱え込んでいた触手もお菓子から離れた、変わらないニヤリ顔は奥田さんを見ている。

 

さぁ、ちょっと時間はかかったけど殺せんせーは話を聞いてくれる面持ちになった。

奥田さんは言葉を探して目が泳ぐ、言葉選びに苦戦したみたいだけど……うん、話せたみたい。

 

 

「毒です!! 飲んで下さい!!」

 

 

そう言って手に持っていた毒を殺せんせーに突き出……えぇ!?

 

 

「ちょっと!? 奥田さ……むぐっ」

 

 

私は驚きの声が出そうになったけど、自分の腕で口を塞いだ。

うん、彼女なりの邪魔する訳にはいかない……けど、これは流石に驚くよ!

 

だって、ねぇ? あまりにもド直球過ぎない? 私かなりビックリしたよ?

 

周囲を見ると他のクラスメイトもコケていた、これじゃあ漫才かのボケも同じだよもう……

 

 

「……奥田さん、これはまた正直な暗殺ですねぇ」

 

「あっ……あのあの、わ……私皆みたいに不意打ちとかうまくできなくて……

でもっ! 化学なら得意なんで、真心込めて作ったんです!!」

 

 

うん、奥田さんには悪いけど声に出して言いたい……どんな 真 心 なのそれ!?

 

 

(お、奥田……)

 

(それで渡して飲むバカはさすがに……)

 

 

あまりの直球な暗殺方法、反応に困るような呆れ顔はきっとそう思っている。

 

奥田さんを否定する気は無いよ!? でも、殺せんせーはそれで飲むとは思えな

 

 

「それはそれは……では、いただきます」

 

 

い……え、飲むの!? 今それハッキリ毒だって、 え え ぇ ぇ ! ? 

 

殺せんせーは顔の特徴とも言える大きな口を開けて、そこに薬を流し込んだ。

 

口を閉じたかと思えば、ゴクリと喉で音を立てて飲み込んだ。

 

 

(……飲んだ!!)

 

(っ、飲んだのか!?)

 

(オイオイそれ毒だぞ!?)

 

 

それだけじゃない、なにやら震えだしたかと思えばその粘質な皮膚を振るわせ苦しみ出す。

 

まさか、毒の効果があった……!? 自分から自爆に走った?

 

いや、それならとっくの昔に暗殺出来ている。 狙いは一体なんだ!?

 

 

「!!……こ、これは……」

 

 

顔色が真っ青になる、殺せんせーの言うとおりこれはそろそろマズイか?

 

暗殺完了という若干の期待が周囲にあったけど……残念な事に、それはすぐに砕ける事になる。

 

何故ってほら、()()()()()()()殺せんせーの顔を見るなら……

 

 

(なんか、ツノ生えたぞ)

 

 

……うん、確かに殺せんせーの頭の上に小さなツノが生えた。 え、毒の効果ってこれ?

 

さっき顔色が真っ青っていったけど、これはそのままの意味で顔の色は明るい青色になっている。

 

 

「この味は、水酸化ナトリウムですね。 人間が飲めば有害ですが、先生には効きませんねぇ」

 

 

それ水酸化ナトリウムなんだ!? てっきり特殊な薬かと思ったけど、普通の毒だったよ!

 

というか、味で毒の正体がわかるってどんな味蕾を持っているんだ……少なくとも普通じゃない。

 

この先生は謎が多くて困る……あ、まともな効果が無いと知った奥田さんかガッカリしている。

 

 

「……そうですか」

 

「あと2本あるんですね、それでは」

 

「は、はい!」

 

 

次に手に取った試験管は最初と色が違う、最初の水酸化ナトリウムとは違うだろう。

 

最初が大丈夫で次がダメな可能性もありそうだけど……殺せんせーは流れるように飲み干した。

 

一連の動作はどこか余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)だけど、やっぱり顔色を変えて苦しみだした。

 

 

「うっ!? うぐあっ、ぐぐぐ……」

 

 

顔の色は黄味がかって薄緑……ツノの形が変化したかと思えば、今度は立派な翼が生えた。

 

 

(今度は羽生えた!!)

 

(どんな原理ならそうなるんだよ!?)

 

(……なんか、無駄に豪華な顔になってきたぞ)

 

「酢酸タリウムの味ですね。 では、最後の一本」

 

 

最後の1本は三角フラスコ、もう私はどう反応したらいいのか訳がわからないレベル。

 

菅谷に至ってはなんか次はどうなるんだ? ってワクワクした様子、ついに壊れたか?

 

いや、丸坊主とキノコ頭の男子生徒も同じような様子。

なんというか……無邪気な反応、その好奇心はまるで幼子だ。

 

 

(さて、どうなる!?)

 

(もっと豪華な顔になるのかな……)

 

(最後はどうなるんだ!?)

 

 

効果は全くわからないけど、殺せんせーは今までにないくらい苦しんでいる……

口から零れるのは低い声、粘質な皮膚が震えるを通り越して波打っている。

 

ついに殺せんせーの全身は白色に強く発光し出した! ばっ、爆発する!?

 

いや実際に爆破されたら色々と困るんだけど……あ、やっぱりそんなことなかった。

 

私のアホな予想は外れた、多分この理科室にいる誰しもが予想を当てていない。

 

何故って、真っ白な顔の色で2つの点に棒の口……何の変哲もない真顔だったからだ。

 

 

(まっ、真顔になった……)

 

( 変 化 の 法 則 が読めねーよ!!)

 

 

うん、もはやどんな原理になっているのか理解するのは不可能に近い。

 

反応からして一番豪華……豪華なのか? 惨状? ……まぁ、どっちでもいいや。

 

とにかく意外な結果だ、これじゃあ殺せんせーの表情がわからない。

 

 

「王水ですねぇ。どれも先生の表情を変える程度です」

 

「……はい」

 

 

奥田さんはガッカリという感じの様子、あぁ……どうかそんなに落ち込まないで!

 

 

「てか先生真顔薄っ!? 顔文字みてーだな!」

 

「先生の事は嫌いでも! 暗殺の事は、嫌いにならないで下さい!」

 

「いきなりどうした!?」

 

 

王水の効力が薄かったのか先生の力なのか、しばらくして元の黄色に戻る。

 

通常の状態で言いたいことがあったのか、戻ってから奥田さんに先生は一言。

 

 

「それとね、奥田さん生徒1人で毒を作るのは安全管理上見過ごせませんよ」

 

「は……はい、すみませんでした……」

 

 

うへぇ、もっと落ち込んじゃった。 まさか実験を禁止するつもりなのか……?

 

さすがに奥田さんの得意分野を禁止するのは納得いかないなぁ!?

 

うん、対先生ナイフ持って置こう! 余計な事言うようなら 当 た ら な く て も 投げ

 

 

「放課後時間あるのなら、一緒に先生を殺す毒薬を研究しましょう」

 

 

よ……あれ? 逆に肯定、するんだ。 ちょっと……判断が速すぎたかな?

 

 

「……はっ、はいっ!!」

 

 

奥田さんも同じ事を思っていたらしく、暗い顔から一気に明るくなった。

 

まぁ……奥田さんが気を良くしたのなら良いか、殺せんせーも私の方見てるし当たらないなこれ!?

 

 

奥田さんと殺せんせーとの間で約束が組まれた直後、ちょうど授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

実験が早めに終わって時間が余っていたんだ、その時間が今のやり取りで潰れてくれた。

 

 

「では、今日の授業はここまで! 新木田さんとカルマ君はナイフも片付けてくださいね」

 

 

 

……あんたもか、ふと見たカルマは自然な笑みで何を思っているのかが読めない。

 

向こうは仕込みナイフだったようだ、袖の中に緑の刃をしまい込む。

 

私もナイフを鞘に収めていると、ご機嫌な奥田さんの姿が見えた。

 

 

「良かったね、てっきり禁止されちゃうかと思ったけどさ」

 

「ありがとう新木田さん、放課後頑張ります!」

 

「奥田さんなら失敗すること無いと思うんだけどね、ちょっと様子見に行っても良いかな?

まぁ……私がその研究の邪魔にならなければ、だけどさ」

 

「じゃっ、邪魔!? そんな事言わないでください、気軽に見に来ても大丈夫ですよ」

 

「……そう? ありがと、それじゃあお言葉に甘えて見に行こうかな」

 

 

やっぱり調子乗っちゃったかなって思ったけど、彼女は快く了承してくれた。

 

体力の無い私、物理的な方法はダメだと自分なりに理解したつもりだ。

 

間接的な色々な方法を考えていた、自分で暗殺道具作ったりとか罠作ったりとか……

 

でもそんなのはまだ想像に過ぎない、まずは現実的な方法から試すのが道理。

 

そこで考えたのが薬品だ、奥田さん相談しようと思ってたからちょうど良い。

 

まぁ相談とまではいかないけど、実験風景を眺めているだけでもきっと違う。

 

放課後が楽しみだな、2人でどんな薬品を作るのだろうか?

 

 

「暗殺対象と一緒に作る毒薬ねぇ……」

 

「……後で成果を聞いてみよう」

 

 

渚と女子生徒の声を気に、みんな実験道具の片付けに集中する。

 

結局余ったお菓子は殺せんせーが持って行くみたい……ちぇっ、帰りにまた買い直そうかな。

 

一部失敗に終わった実験結果たちは先生のカメラで写真を撮ってくれるらしい。

 

後日レポート用の写真がもらえるんだとか……まぁ、廊下に張り出される先生の展示には勝てないけどね。

 

 

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「では、それをエタノールに投入しましょう。 気体を吸わぬように気をつけて」

 

「はいっ!」

 

 

時間を進めて放課後、同じ理科室でも私は授業の時と同じ理科室にいる。

 

奥田さんの顔は真剣そのもので、確かに私が観察していても気にも止めない。

 

順調に実験が進む中、ふと殺せんせーが口を開いた。

 

 

「……君は理科の成績は素晴らしいんですけどねぇ」

 

「……はい。 でもそれ以外がさっぱりで、E組に落されても仕方ないです特に……国語が」

 

 

確かに、私が彼女から主に理科を教わる上で国語もある程度教えているけど……

 

作文とか書かせていてもかなりおかしい点が発生しやすい、修正多々。

 

笑顔に話しながらも、奥田さんの瞳の光は暗くなる一方だ。

 

 

「言葉の良し悪しとか、人間の複雑な感情表現とか、何が正解かわからなくて。

 

……でもそれで構いません、数学や化学式は絶対に正解が決まってるから。

 

私には気の利いた言葉遊びも細かい心情を考える作業も必要無いんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、そんな笑いながら悲しい目が出来るのだろうか? 何があった?

 

そんな事情なんてわかるわけがない、だってそこまで深入りしていないもん。

 

でも……これだけはわかる、この感情は抱いちゃいけない危険な物。

 

そう、だってあの時も……()()()? あの時っていつのこと?

 

 私 は 今 何 を 思 い 浮 か べ た ?

 

……ダメだ、反射で出た言葉なのか全然思い出せない。

 

 

とにかく彼女を励ましたいのだけれども、この絶望は一筋縄じゃいかなそうだなぁ……

 

……ぅぁ、1ついけそうな案思いついたけどこれ失敗したら引かれるよ。

 

でもこんな状況じゃ彼女から歩み寄ってくるなんて事も無さそうだし……

 

ええぃ! こうなったら ど う に で も な れ ! !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 愛 美 ち ゃ ん ! ! 」

 

 

詰まった言葉を無理矢理出した結果、なんか変に裏返った声になってしまった。

 

第一声が変声ってちょっとひどすぎない? ……まぁ、後悔先に立たずってやつだ。

 

いやいや、今はそんな事気にしている場合じゃないでしょ 私 !

 

真剣さを出来るだけ伝えようと、私は着けていたヘッドホンを外して話をすることにした。

アルコールランプに熱せられて、小さな泡を立てながら熱くなるビーカーの音が耳に入る。

 

 

「はっ、はぃ……って、え!?」

 

「言葉の良し悪しがなんでわからないと思ったわけ?

 

人間の複雑な感情表現とか、なんで理解出来ないとか思ったの?

 

そんなに下手だったら、私はこんな愛美ちゃんに好感度持ててない!

 

ただでさえ、見てるだけでも話が伝わらなそうなこの私をだよ?

 

それは私自身が保証する、それなら間違い無いでしょ? だって私が対象だもん」

 

「……新木田さん」

 

「って……ここまで勢いでいったけど、ようはもっと気軽で良いって言いたかったのさ。

 

わっ、私が愛美ちゃんをいきなり名前呼びしたのもその原理。

だから……そっちも、私を名前呼びしても良い」

 

 

……途中から自分が勢いで言ってるのが恥ずかしくなってきた。

うん、勢いによる早口とか聞き取られるわけ無いよ!?

 

同じ事を2回も言い直す気には流石になれない……あぁ、この先どうしようか?

 

う〜〜ん、後から来た恥ずかしさで頭が上手く働いてくれない……なんか上手い言い訳を

 

 

「……蕾姫、ちゃん」

 

考え……「へ!? あれ、今の聞き取れた?」

 

「殺せんせーが助けてくれたんです、全部聞き取れました」

 

 

うん、いきなりの名前呼びはやっぱりビックリするものだ。 これを私はやったのか……

 

……え、というか今の早口の内容全部聞き取れたの!?

……まぁ、今回は良いけど次から気を付けなきゃ。

 

そう言って、奥田……じゃなかった! 愛美ちゃんは耳から先生の触手を抜いた。

 

何をしたんだこの先生……どちらにせよ、説明し直す手間が省けたのはメリットかな。

 

 

「ごめんなさい……私、やっぱり国語を鍛えようという気にはどうしてもなれません。

 

でも、私みたいに話すのが下手でも伝わる言葉があるんですね。

 

……()()()()()、暗い気持ちだったけど少し元気になりました」

 

 

……『ありがとう』、か。 いつもの彼女なら『ありがとうございます』って言ってる。

 

ここまで来ても瞳は暗いままだ……でも、見せる笑みは一段と柔らかになっている。

 

少しは彼女の助けになれただろうか? まぁ、この様子じゃあ根本は治せていないだろうけどね。

 

それでもいいや、最初よりはかなり良い顔になったよ? 微笑ましいまでの可愛い笑顔。

 

 

「……そうですね、では、そんな君に先生から宿題をあげましょう」

 

 

話の終わり頃、殺せんせーは奥田さんに1枚のメモを手渡した。

……うん、見るからに中学生レベルの化学式じゃない事だけはわかった。

 

 

「これをですか……はい! 大丈夫です、ここにある薬品で調合出来ます!」

 

「出来るんだ!? こんな訳のわからない化学式をこの場で!?」

 

「新木田さんも1つ1つ理解すればわかる内容ですよ? というわけで」

 

 

殺せんせーの言葉の途中で一瞬の風、いつのまにやら私の格好は白衣と実験用ゴーグル。

 

ヘッドホンは壁付けフックにかけてくれた、無かったはずのこれはマッハで設置したのだとか。

 

……って、私マッハで着替えさせられたのか! 早過ぎてわからなかったよ!?

 

 

「新木田さんも実験にさんかしてみましょう、今日のレポートにも活かせますよ」

 

「えっ!? でも愛美ちゃんの邪魔になるんじゃ……というか面」

 

「最初に言ったじゃないですか、『気軽に見に来ても大丈夫』って。

蕾姫ちゃんも気軽に実験をして良いんですよ」

 

……あぁ、自分で言った言葉をキレイに返されてしまった。 不覚。

 

結構難しそうだけど……愛美ちゃんが気軽にしてて良いって言うなら、そうしようかな?

 

うん、せっかくだし今日2回目の実験を楽しんでいこう。

 

 

「では、新木田さんはその熱したビーカーを覚まして常温にしましょう」

 

「これですか? ってか、これしか熱せられてるの無いな」

 

 

その後は研究に私も加わって3人で実験をすることになった、意外にも結構楽しかったな。

 

私がわからない化学式も愛美ちゃんはスラスラ言える、理科の申し子かって思うレベルで。

 

後日この実験での内容を生かして班でレポートを作成したら……

本当に役立って花丸ならぬタコ丸100点になってしまった。

 

でかしたなんて上から目線で言って背中を叩いた菅谷を、教科書の角で懲らしめるのは後の話。

 

 

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「……で、その毒薬を作って来いって言われたんだ」

 

「はい! 理論上はこれが一番効果あるって!」

 

「結構時間かかったけど、日が沈む前には完成したよ。 これも愛美ちゃんの努力の賜物だね」

 

 

愛美ちゃんは目に見えてご機嫌だ、丸型フラスコに入った液体は怪しげな光を放っている。

 

私たちに話しかけたのは渚と昨日渚に話しかけていた緑髪の女子生徒。

 

女子生徒は確か茅野カエデとか言ってたなぁ……ほら、殺せんせーの言うなら名付け親。

 

 

「毒物の正しい保管法まで漫画にしてある、相変わらす殺せんせー手厚いな」

 

 

渚が使い込まれたメモ帳片手に読んでいる本は、昨日の研究結果をまとめた資料だ。

 

……うん、あの先生癖なのかいつも書きすぎる傾向にあるんだよな。

 

写真に至ってはいつ取ったんだってレベル、漫画は出版しても売れるだろう。

 

ちなみに、愛美ちゃんの持つ毒物を保管したのは実は私だ。

 

漫画の解説がわかりやすくて助かった、 イ カ が 悪 役 なのは気に入らないけど?

 

 

「きっと私を応援してくれてるんです、国語なんてわからなくても私の長所を伸ばせばいいって」

 

「……ちょっと、それは違うんじゃないかな? あぁうん、深い意味は無いよ」

 

「なんだそりゃ? 言ってること成立しないぞ」

 

「 う る さ い 美 術 ノ ッ ポ ! ! 」

 

「まぁまぁ……あ! 来たよ、渡してくれば?」

 

 

やっぱり美術ノッポは腹が立つ、私だって話すの得意じゃないんだよ!

 

ふざけた長髪を引っ張るのは止めさせられてしまった、彼女が指さす先には殺せんせー。

 

愛美ちゃんは花が咲いたような笑顔を見せたかと思うと、先生の元行ってしまった。

 

そういやもうすぐホームルームか、その一環で投与するのかな?

 

 

「はい! 先生、これ」

 

「奥田さんさすがですね、新木田さんもありがとうございます……では、早速いただきます」

 

 

自分に一番効く毒だというのに、やっぱり躊躇無く飲み干してしまった。

 

しかもそれを奥田さんに作らせて……教養バカにも程がある。

 

……ん? ちょっと待てよ、今まで違和感無かったけどなんかおかしい。

 

やばい、なんか 嫌 な 予 感 がしてきた……!

 

 

「愛美ちゃんそれ飲ませるのやめた方が」

 

「……ヌルフフフフフ! ありがとう、奥田さん。

君の薬のおかげで・・・先生は新たなステージへ進めそうです!」

 

「……えっ? それってどういう……」

 

 

もう殺せんせーの皮膚は振動を超えて地鳴りを起こしているかのように思える。

 

ニヤリ顔は不気味な笑いに見えるし、瞳は意味ありげに光を放っている。

 

……怖い。 まぁそれだけなんだけど、一応愛美ちゃんを先生から距離を放す。

 

 

「……っ!?」

 

「溶けた!!」

 

「溶けたァ!?」

 

「溶けたの!?」

 

 

変化が終わった時、生徒たちはその意外な変化に驚きを隠せない。

……強化されるでもなく、ただ溶けただけなんだから。

 

 

「君に作ってもらったのはね、先生の細胞を活性化させて流動性を増す薬なのです。」

 

 

と言ったかと思えば天井に張り付き、

 

 

「液状ゆえにどんなスキ間も入りこむ事が可能に!!」

 

 

今度は生徒の机の中……ってちょっと!? そこ私の机! 粘液でめちゃめちゃになるって!!

 

 

「しかもスピードはそのままに! さぁ、殺ってみなさい!!」

 

 

あぁもう! やりたい放題だよこの先生!!

余裕綽々にしながら磨かれた鉄みたいに無駄にメタルに輝いてるのがムカつく!!

 

 

「ちょっ……無理無理!?これ無理!! 床とか天井に潜り込まれちゃ狙いよう無いって!!」

 

「なんだこのはぐれ先生!?」

 

「どうにかなんねぇのかよオイ!!」

 

「素手じゃ無理だ! 誰か水槽持って来い!」

 

「いや教室のドア開けたら廊下に逃げられるだろ!?」

 

 

もはや教室内は唐突な暗殺大会で大パニックだ、飛び回る先生を追いかけて私の目も回る。

 

愛美ちゃんは呆然としていたけど、茅野さんが愛美ちゃんの面倒を見てくれていた。

 

……うん、彼女の呼び方が思いつかなかった、とりあえず『さん』付けをして呼ぼう。

 

 

「奥田さん、先生あの薬毒って言ったんだよね?」

 

「……だっ、騙したんですか殺せんせー!?」

 

 

休憩がてらに見たその表情は彼女なりの怒りだ、この分だとかなり怒っている。

 

それでも殺せんせーは態度を変えない、これから語ることも普通な口調。

 

 

「奥田さん、暗殺には人を騙す国語力も必要ですよ」

 

「えっ……」

 

「どんなに優れた毒を作れても……今回のように、

バカ正直に渡したのでは暗殺対象に利用されて終わりです。

 

渚君君が先生に毒を盛るならどうしますか?」

 

 

急に別の生徒に話を振ったな、渚は一瞬『えっ』と声を上げたけど答えを出す。

 

 

「うーん……先生の好きな甘いジュースで毒を割って、

特製手作りジュースだと言って渡す……とかかな?」

 

 

って、ものの数秒でそれを思いつくか……さすがはあのカルマの親友だ。

 

それよりも、愛美ちゃんが何か考え込むような様子で先生を眺めている。

 

彼女なりに思考しているのだろう、実感したら考えを改めざるを得ない。

 

渚の具体的な考えを聞いて。自分なりに思うところがあったのだろうか?

 

高速移動なものの、殺せんせーは態度だけでも愛美ちゃんと向き合って淡々と話す。

 

 

「そう! 人を騙すには相手の気持ちを知る必要がある。言葉に工夫をする必要がある。

 

上手な毒の盛り方それに必要なのが国語力、君の理科の才能は将来皆の役に立てます、

 

それを多くの人にわかりやすく伝えるために……毒を渡す国語力も鍛えて下さい」

 

「は……はいっ!!」

 

 

……結局、すごい事に愛美ちゃんは納得をしてしまった。

 

何のことをって、あれだけ国語が苦手だった愛美ちゃんが

今までに比べて格段と違い積極的に話すようになったんだ。

 

まだ若干日本語がおかしいところもあるけど、まぁ大人しい時の私よりは……ねぇ?

 

明らかに面持が変わった、なんかこう……芯が強くなったって感じかな。

 

 

「あっはは、やっぱり暗殺以前の問題だねぇ」

 

「……そっ、そんなこと言わないでください!」

 

 

殺せんせーの話が終わった直後に飛び出たカルマの意地悪、これに反抗する愛美ちゃん。

 

これが彼女の積極性の第一歩となった、彼女にしては結構頑張った方だ。

 

まぁ直後、カルマの目線に驚いて私の後ろに隠れちゃったけどね。

 

そんな怖い目してないのに……まだまだってやつかな? これは。

 

 

何がともあれ、一連の毒の時間で愛美ちゃんは成長を果たしたってわけ。

 

これ以降一番良いと思ったのが私や他の女子だけじゃなくて、

他の男子生徒にも積極的に話すようになったことかな。

 

どちらにせよよく笑うようになった、彼女の未来はこの先明るい。

 

 

「あれ? 殺せんせー、そういえば」

 

「んん? どうしました渚君?」

 

「あぁいや、殺せんせーの身体に何か絡まっているなって」

 

 

渚の言う通り、殺せんせーの身体にはいくつかの物が入り込んでしまっている。

 

先生が言うには初めての液状化で細かいところまで意識がいかなかったのだとか。

 

理論上だけ知っていたって話なのかな? 次からこんな失態はしないという。

 

 

「すみませんねぇ、なにやらアクセサリーも混じっているようです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ちょっと、待って? それ、嘘、粘液で……ドロドロ!? ダ メ ! !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 に ゅ や あ ぁ っ ! ?  新木田さん、どうか落ち着いて」

 

「返して! 返、 返 せ ! ! 」

 

 

液状化した殺せんせーの身体に手を突っ込んだ、躊躇なんて一切ない。

 

必死の一言に尽きる、文房具や粘液をかたっぱしから掻き分ける。

 

途中菅谷に力づくで止められてしまった……ちょっと!? 邪魔しないでよ!!

 

 

「新木田さんほら、無事ですよ! あなたのペンダントです!!」

 

 

……気が付けば触手が私のペンダントを持っていた、目の前に差し出されている。

 

息、上がってる。 めちゃめちゃにされたと思ったのに新品のような状態。

 

マッハでキレイにでもしたのだろうか? どっちにしろ、良かった……。

 

しまったな、周りの目線が集まってしまっている……かなりマズい。

 

これだけはあんまりみんなに見られたくな

 

 

「おいタコ、そんなんで大丈夫か? 人様の物汚してよ! それとも弁償か!?」

 

「これは大した物じゃ……ん、え?」

 

「そうよ! どう責任取るつもりなわけ!?」

 

「それ新品だったんだぞ~~!」

 

「すっ、すみません! 全てキレイにして返します! 弁償だけはご勘弁を!!」

 

 

……あれ、なんかよくわからないけどあんまり注目を浴びずに済んだのかな?

 

突っ込まれたくなくて言い訳を考えたけど、それは寺坂の第一声に埋もれてしまった。

 

殺せんせーは自分の身体を揺さぶって必死にまぎれた物品を取り出そうとしている。

 

それも激化した暗殺から逃れながらだ……先生も大変だね、これ。

 

 

「蕾姫ちゃん、それ……大切な物なんですか?」

 

「詳しい話はわからんがあんまり見られたくないんだろ?

みんな殺せんせー見てるし、今のうちに首にかけちまえよ」

 

「あぁ、うん……珍しく仕事するんだね菅谷」

 

「いや俺は元からこんなだぞ!?」

 

 

とにかく、先生から返してもらったペンダントは首にかけて制服の中に隠す。

 

本当は登校と下校の時に着けるんだけど……校則違反でも今は仕方ないか。

 

運が良かったのか、これについて知られたのは愛美ちゃんと菅谷だけだ。

2人はこれの事を隠しておいてくれるらしい、そうしてもらえれば助かるよ。

 

 

「あぁ~~あ、結局先生の手の平の上で転がされて終わりってことか……」

 

「良いの蕾姫ちゃん、学べたことはたくさんありますから」

 

「無駄に半分が漫画な分厚い研究資料が手に入ったりとかしたみたいだからな」

 

「まぁ、これがあるおかげで昨日のレポートで満点取るのは間違いないけどね」

 

「これからの勉強は国語にも力を入れていきたいと思います、着けるべきは国語力です!」

 

「俺も鍛えて国語力を付けていきたいな、なぁ新木田?」

 

「……もちろん美術ノッポはおまけだけどね、調子に乗られたら困る」

 

「 理 不 尽 だ な オ イ ! ? 」

 

 

事の最後は愛美ちゃんの気合の入ったガッツボーズ、シメはこれで決まり。

 

……というか、このままじゃホームルームをする時間が無くなってしまう。

 

事務連絡が無いのはさすがに困る、ここは手伝ってあげるか。

 

えっと、ボールペンに付いた粘液は柔らかい布でふき取ってっと。

使用中ノートは粘液を取り除いてから、風通しの良い窓際で乾かして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーの力の前では、猛毒を持った生徒でもただの生徒になってしまう。

 

まだまだ……先生の命に迫れる生徒は出そうにないや。

 

僕もみんなに負けてられない、遅れをとらないように頑張っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日生徒達がヤツから授業を受けている時間、俺は職員室にいた……

 

やっていたこと? 防衛省への報告書の提出だ、特筆すべきことでもない。

 

そんな時だった、あの知らせを電話越しに聞くことになったのは。

 

 

「……しかしながら本部長、それは生徒達に不安を与えはしないでしょうか?」

 

「烏間君、君は生徒の不安と地球の不安……ど っ ち が 優 先 だ ? 」

 

「…………」

 

「国の決定だ、もとより素人の子供達に殺れるとは思っておらん」

 

「……それで、その人物はどのような?」

 

「手練だよ、世界各国で11件の仕事の実績がある。

正真正銘……()()()()()()をヤツの元へ送り込む」

 

 

国の決定となれば、俺はそれに従うしかない。

 

プロの暗殺者が来るのは割とすぐ、数日後になるという通達。

 

生徒たちに支障は出そうなものだが……それを極力無くすのが、俺の仕事だ。

 

 

その人物の詳細を聞いた、気になる事があるとするならば……

その暗殺者の最大なる武器は『誘惑(ハニートラップ)』という事くらいか。

 




なんか、蕾姫の菅谷天敵感が増してる気が……まぁ 気 の せ い でしょう(白目

原作では愛美ちゃんの過去は語られていないので、
あまり不用意に掘り下げられないのがかなりの苦難ですね。

えぇ、私が彼女の過去を作っても良いんですが……極力原作キャラは弄りたくありません。


蕾姫は普段大人しいですが、時折とある事がスイッチとなって感情が暴走しますね。

彼女のパニック時は、液状化した殺せんせーの体内にも容赦無く手を突っ込む程w

この辺は私なりの解釈になりますが、殺せんせーの体内に手を入れる事は可能としています。

まぁ、そんなの誰も試したがりませんがね。

液状化した殺せんせーは様は『液体も同然』多少の固形物はありそうですが、
簡単に言えば水と同じ……なら、同様に手を入れる事も可能だと思ったのです。


さて、今回で単行本の第一巻はおしまいになりますね。 愛美ちゃん回分ければ良かったと後悔onz

次回は例の新しい英語教師を呼び込みますか、うへぇあのビッチか……

まぁ最初ということで彼女には思う存分暴れてもらいましょう、手加減はさせますがさすがに(白目


それでは皆様、また次回。 次ももう少し少ない文章量になるよう意識します。
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