さて、前回はイリーナ先生が『手入れ』をしたところで幕切れとしましたね。
さぞかしお怒りでしょう……これから先、反省するまで何をしでかすんだが。
そんなこんなで、今回は変態回後編となります。
今回も原作に沿って、お話を進めていきますよ。
ふつふつと怒りや苛立ちが溜まるクラスメイト、彼女も限界が近いようです。
こんにちは、あんな出来事があっても変態は授業をする気が無いそうです。
これはもう、絶対授業する気は無いでしょ! 自習と言ってもやっぱり限界がある。
今日出来る分の自作プリントも出しきってしまった、単語を暗記するのも飽きてきた。
今は自作の英文を、愛美ちゃんと菅谷の3人で日本語に直す作業で場を繋いでいる。
まぁ教科書の英文を参考にして作り上げた、二番煎じに過ぎない文章なんだけどね。
でもやっぱり2人共、流石に前が気になってきているらしい……その先は教壇。
「なぁ新木田、奥田、ビッチ姉さんっていつになったら授業してくれると思う?」
「ずっとしないと思うよ? 最初に言ったじゃん、置物同然だって」
「……その置物って言うのやめようぜ、言うたびにビッチ姉さんお前の事睨んでるぞ」
「注目してもらえるならちょうどいいじゃない、自習の風景でも見てもらえれば良いよ」
「でも、殺せんせーが教えた所はもう終わってしまっているんじゃないですか?」
「……まぁ、確かに今の英文も私の予測でやってるけど」
愛美ちゃんの正論に言葉が見つからず反論が出来ない、今の状況はそれに尽きた。
正直キツい、そろそろ授業をしてもらわないと自習さえ出来なくなって困る!
そんな苦労も知ろうともせず、変態はイライラした様子でタブレットを弄っている。
[必ず殺してやるわあのタコ! プロの仕事があの程度でタネ切れなんて思わないでよね!?
プランを変更する以上、あの3人じゃ役不足……
私の人脈から最適の手先を選び直すわ、もう一度機材も一から調達しなきゃ。
あぁもう! なんでWi-Fi入んないのよこのボロ校舎!!]
あまり強く叩いたらタブレットが壊れると思うんだけど……いやいっそ割れてしまえ。
そんな細やかな敵意を向けていると、不意にカルマが私の机に何か置いてきた。
見るとチラシの裏に文章が……ってこれ英訳? 英文自体も直され……ファッ!?
「英文作るならこの位ちゃんとした方が良いんじゃないのぉ? あちこち繋ぎだらけでガタガタじゃん」
「……ごもっともです」
ニヤリ顔でそう言われ私は苦笑いしか出来なかった、だって隣に新しい英文が書いてある。
彼なりに気を使った? ……いや、この分だと私の作った英文が簡単過ぎた程だよ!
今の英文が終わったら次に訳すのはこの英文かな、悔しいけどありがたいのには変わりない。
「あはは! 必死だねビッチねえさん、あんな事されちゃプライドズタズタだろうねぇ?」
「うるっさいわね!? ガキはガキらしく黙ってなさい!」
暇だったのかどうか知らないけど、カルマは変態をことばで弄び始めた。
つくづく恐ろしい人だと思うよ……でも、そんな弄りは意外にも途中で終わる事になる。
何が起きたかって、学級委員が何か決意したような顔で立ち上がったんだ。 眼光は鋭い。
「先生」
「……何よ」
「授業してくれないなら、殺せんせーと交代してくれませんか? 一応俺ら今年受験なんで」
力強い言葉だった、彼の言ったことはE組を代表して言ってると言っても間違いはない。
正直私も同じ気持ちだった、学級委員が代わりに発言してくれたのは目立たないし助かる。
……言ってくれたのは良かった、返ってきた答えが最悪な物だとは誰が予想したか。
「はん! あの凶悪生物に教わりたいの?
地球の危機と受験を比べられるなんて……ガキは平和でいいわねぇ?
それに聞けばあんた達E組って……この学校の落ちこぼれだそうじゃない?
勉強なんて今さらしても意味無いでしょ、諦めなさい」
周りから息を吸うような音、ショックの後に怒りが湧き上がってくるのを感じた。
何故わかるのかって? ……私も同じだからだ、
「そうだ! じゃあこうしましょ、私が暗殺に成功したらひとり五百万円分けてあげる!!
あんたたちがこれから一生目にする事ない大」
……『大金』とでも言おうとしたのだろうか? その前に、こいつの頭に消しゴムが投げられた。
「出てけくそビッチ!!」
「なっ……なによあんた達その態度っ殺すわよ!?」
「上等だよ殺ってみろコラァ! 殺せんせーと代われ!!」
「そーーだそーーだ!! 巨乳なんていらないもん!!」
「気にするとこそこなんだ!?」
「何よ! あんたも無駄な勉強するよりずっと有益でしょ!?
ガキはガキらしく黙って大人しく私に従いなさい!!」
最後のこの女の言葉、何を思ったのか私を指差して言った……何が無駄な勉強だって?
「……痛っ!?」
不意に鳴る
目の前にいる女は頬を抑えている、どかせばその部分は赤くなっているだろう。
「新木田……さん?」
注目は嫌だ、でも今はどうでもいいや。 どうせ
「『出ていけクソビッチ』」
思考が怒りで止まってしまった頭は、最初の言葉の繰り返しで私の怒りを示した。
後は簡単、乱射するだけ。 さっき風船割る用に使った強めの銃だけど構わないよね?
痛いなら出ていけ! この場から!! 誰の行動も通じないなら私がやるしか……!!
「そこまでだ、気持ちはわかるが頭を冷やせ」
しばらく銃を乱射するのに夢中だった私は、
背後から来た烏間先生に全く気がつかなかった。
銃を取り上げられ、席に座らされる……その手際が良いったらありゃしない。
怒りが収まったのか一気に気疲れが襲ってくる、耐え切れず私は机に突っ伏した。
愛美ちゃんが大丈夫と気にしてくれたけど、同じ言葉を返すのが精一杯。
落ち着いてから起き上がった後、あの女は烏間先生が一旦職員室に連れ戻したと菅谷が言う。
気がつけば私の自作プリントとカルマの英文は、何故かクラス中に行き渡っていて……
誰の仕業かはすぐわかった、隣にいるカルマはニヤニヤしていて……おのれカルマァ……!
あちこちからコメント入りの解答用紙が返って来たとしても、お礼なんか言わないもんね!!
恥ずかしさで顔を上げられない、昼寝の中にしばらく狸寝入りが混じる事になったのは内緒の話。
放課後にある掃除は当番じゃないけどもちろん私も参加する、
聞けば銃弾のほとんどが黒板に当たったらしくちょっとがっかり。
後に、E組に新たな知識が追加されるなんて私は知らない。
『新木田蕾姫は怒らせたらいけない人物』、本人が知るわけがない。
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「なんなのよあのガキ共!!こんな良い女と同じ空間にいれるのよ?有難いと思わないわけ!?」
「有難くないから軽く学級崩壊してるんだろうが、
いいから彼等にちゃんと謝って来い。
このままここで暗殺を続けたいのならな」
「なんで!? 私は先生なんて経験無いのよ!? 暗殺だけに集中させてよ!!」
一向に反省の色が見えない、理解をするだけの力量はあるが固定概念に囚われている。
もはや下手な言葉は彼女に通用しないだろう、言わば『論より証拠』という状況らしい。
なら、『証拠』を見せるのが最善策だろう。 その方が伝わる情報量は多い。
「……仕方無い、ついて来い」
俺は一旦彼女と共に校舎を後にし、向かった先はそう遠くは無い森の奥。
恐らくそこはヤツのいつもの場所、ジュースを飲みながらマッハで何かをしている。
1ヶ月も立てばヤツが何をしているかなどわかる、差し詰め
「何してんのよあいつ? 早過ぎて何がなんだかわからないわ」
「テスト問題を作ってる、どうやら水曜六時間目の恒例らしい」
バインダーにマッハで文章や図を書き込んでいたが、予想外のくしゃみでジュースが零れた。
結果、ヤツが今書いていたテストの内の1枚が紫のシミで汚れ台無しになった。
「にゅやっ!?」
「あの1枚は作り直しだ」
「バカね、ぶどうジュースは高確率でシミになるのに。
……なんかやけに時間かけてるわね、マッハ20なんだから問題作り位すぐでしょうに」
……どうやらわかっていないらしい、奴の教師としての真価はそこに現れている。
「時間がかかるのも無理はない、1人1人問題が違うんだ」
「……え? 問題が違う?」
「生徒に見せてもらって驚いた、苦手教科や得意教科に合わせ、
クラス全員の全問題をそれぞれ作り分けてる」
俺たちの観察中も失敗も気にせず、新たな紙を取り出しヤツは再度無駄にした分を書き記す。
「千葉君は空間図形の理解が早いですねぇ、ヌルフフフフ……
少し高度な引っかけ問題を出してみますか」
「高度な知能とスピードを持ち地球を滅ぼす危険生物、
そんな奴の教師の仕事は完璧に近い……生徒達も見てみろ」
どうやら新木田と赤羽が自習が捗る様手を回してくれたらしいが、
それでも教師がおらず生徒だけとなると限界がある。
そこで教師不在の間、生徒たちには『暗殺バトミントン』をして待つよう指示した。
見学にはちょうどいいだろう、その光景を彼女に見せる。
「……? 遊んでるだけじゃないの?」
「俺が教えた『暗殺バドミントン』、動く目標に正確にナイフを当てるためのトレーニングだ。
暗殺など経験の無い彼等だが、もちろん賞金目当てとはいえ勉強の合間に熱心に腕を磨いてくれる」
「…………」
その光景を彼女は黙って見ていた、まともに観察した事が無かったのだろう。
それが生徒たちの本来の姿だ、暗殺ばかりに集中していた彼女は高確率で見ていない。
……そろそろ言葉をまとめるべきか、充分な『証拠』は既に揃っている。
「暗殺対象と教師、暗殺者と生徒。 あの怪物のせいで生まれた
この奇妙な教室では誰もが2つの立場を両立している。
おまえはプロである事を強調するが、もし暗殺者と教師を
両立できないならここでは
ここに留まって奴を狙うつもりなら、見下した目で生徒を見ないのが賢い選択だぞ」
『プロとして劣る』この言葉には流石に答えたらしく、彼女は口をつぐみ俯いた。
「生徒達がいなくなればこの暗殺教室は存続できない、
だからこそ生徒としても殺し屋としても対等に接するべきだ。
それができないなら殺せるだけの殺し屋などいくらでもいる!
順番待ちの一番後ろに並び直してもらうぞ!!」
「……っ!」
どうやら我慢の限界だったらしく、拳が真っ赤になるまで握りしめその場を立ち去った。
……追いかけるまでもない、それで諦めるのだとしたらそれまでだったという事になる。
後は彼女次第だ、俺は生徒たちに教室に戻るよう指示を出さなければ。
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「烏間先生は鬼だぁ……自習には限界があるからって、何もスポーツを指示しなくてもさぁ……」
「でも蕾姫ちゃん頑張ってたよ、私のチームは負けちゃいましたけど」
「せめて愛美ちゃんと一緒のチームだったらなぁ……
周囲ほとんど男ばっかりだったから大変だったわ」
「ホントお前体力が劣ってんな、瞬発力はあるんだが」
「うるさい美術ノッポ」
「なんで!?」
今の私は短時間の体育をやらされてヘトヘト、さっきも体育やったばっかりなのに何故やった?
そういえば男子が話してたの聞いた事あるなぁ……鬼教官だっけ? なんでそんな人がいるのよ。
そんな感じで愚痴りながら授業が終わるまで昼寝でもしようかと、
ヘッドホンの電源を入れようとした……まぁ未遂に終わった。
何故って、この教室では聞き慣れないヒールの音が響いたからだ。
何か黒板に英文を書いたかと思うと、振り返って教室全体に目を見据えた。
「You are Incredible in bed. Repeat!」
……え、何? 急に何? 多分周りも同じくポカーンとしてる、実際私も困惑気味。
「ほら、言って!!」
いや急に言ってと言われましても……ある意味当然というか、
みんな一応は発音したけどバラバラ、得意不得意も影響している。
その辺は構わないらしく、教壇に立つ女はそのまま話を続けた。
「アメリカでとあるVIPを暗殺した時に、まずそいつのボディーガードに接近したわ。
その時彼が私に言った言葉よ、意味は『ベッドでの君はスゴイよ』という意味になるわ」
それを聞いて、クラスの大半は『中学生になんて文章読ませんだよ!』と反応を示した。
……いや、ただの文章だしそんな反応する事も無いでしょ!
変に反応する方がおかしいよ、意識してないなら無駄に反応する必要は無い。
「外国語を短い時間で習得するには、その国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。
相手の気持ちをよく知りたいから、必死で言葉を理解しようとするのよね。
私は仕事上必要な時、その方法で新たな言語を身につけてきた。
だから、私の授業では『外人の口説き方』を教えてあげる。
プロの暗殺者直伝の仲良くなる会話のコツ身につければ、実際に外人と会った時に必ず役立つわ」
話が半分くらい終わったところで、男子の半数が鼻の下を伸ばした……情けない。
岡島に至っては鼻の下がぽとりと床に落ちそうだ、美術ノッポは定規を投げつけておく。
涙目でこっちを向いて『理不尽!?』って言いたげだけど、変態に課す慈悲は無いね。
「受験に必要な勉強なんてあのタコに教わりなさい!
私が教えられるのは、あくまで実践的な会話術だけ。
もし……それでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出ていくわ。
……そっ、それなら文句無いでしょ? ……あと、悪かったわよ。 いろいろ」
最後の方はかなり小さな声だったけど、ちゃんとクラス全体に届いたらしい。
意外な台詞に私が呆気に取られている間……E組は、壮大な笑い声に包まれた。
「何ビクビクしてんだよ! さっきまで殺すとか平気で言ってたくせにさ」
そりゃあ銃を乱射されたらビビるのも無……いや、ヒビっていたのは別の理由らしい。
銃を乱射されてビビらない方がおかしいと思うけど、場慣れってやつなのかな?
「なんか普通に先生になっちゃったな」
「もうビッチねえさんなんて呼べないね」
前原と岡島の2つの言葉を筆頭に、どんどんE組の雰囲気が明るくなっていく。
呼び方を改善した方が良いなんてみんな言い出して、教壇に立つ
「……!! あんた達、わかってくれたのね……!」
「考えてみりゃ、先生に向かって『姉さん』だなんて失礼な呼び方だったよな」
「うん、呼び方変えないと」
そこで誰も余計な事を言わなければ、目の前の女性は『イリーナ先生』と呼ばれていただろう。
「じゃあ、『ビッチ先生』で」
この赤髪の発言が無ければね……カルマ、あんた小悪魔通り越して完全なる悪魔だよ。
「えっ……と? ねぇキミ達、せっかくだから『ビッチ』から離れてみない?
ホラ、気安くファーストネームで呼んでくれて構わないのよ」
「でもなぁ、もうすっかりビッチで固定されちゃったし」
「うん! イリーナ先生よりビッチ先生の方がしっくりくるよ」
「そんなわけでよろしく! ビッチ先生!」
「授業始めようぜビッチ生先生!!」
盛り上がりを見せるE組全体、その反面目の前の女性は何故か怒り出してしまった。
「キーッ!! やっぱりキライよあんた達!!」
この雰囲気にこの状況、これには怒るのも無理はない。
まぁ、みんながそうするなら私も『ビッチ先生』って呼ぶ事にするけどね。
そんな感じでこの古校舎に加わったビッチ先生、けれども……やっぱりこの先生は好きじゃない。
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「すっかり馴染んでますねぇ」
「……まぁ、一時は危なかったがな」
俺たちが廊下から様子を見ていると、やっとまともに授業が進み始めたようだ。
磯貝の積極性がこの結果を生み出したのだろう、あの行動は評価すべき点だ。
先ほど暴走をしていた新木田も大人しく授業を受けている、
彼女がいつも行っている『授業内容の先取り』は通用しない。
「……ありがとうございます烏間先生、やはり生徒には生の外国人と会話をさせてあげたい。
差し詰め、世界中を渡り歩いた殺し屋などは最適ですねぇ。
新しい形でのあの授業は語学力が伸びるでしょう、知識の幅が広がりますねぇ!」
[……こいつ、ここまで見越した上で?
こいつはこのE組の教師になった理由を、頑なに語らない。
だが暗殺のために理想的な環境を整える程、学ぶために理想的な環境に誘導されてしまっている。
皆が踊らされているようだ、このモンスターの触手の上で]
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……参ったなぁ、教科書とか全然見ないでやってるから暗記した内容が通用しないな。
わからないところも多々ある、この分じゃ他のクラスメイトに
教えてもらわなきゃ完全に出遅れちゃうよ!?
その辺も殺せんせーの狙いだとしたら勝てっこない、もっとあの人の意表を突く必要がある。
必要だ……もっと、誰も考えつかないよう『斬新なアイディア』が。
こんな考えをする辺り、私が目指す平凡とはかけ離れて行ってるのを自分でも感じている。
言い訳だけどそりゃそうさ、暗殺者だなんて普通じゃない教師が入ってきたんだから。
さて、一通りの事態が落ち着いたようなので追記としてここで話しておきますか。
話すのはビッチ先生部下御一行のその後の話、前回の後どうなったのでしょう?
そりゃまぁ、持ち込んだ荷物かっ下げて元々待機していた理科室に戻りましたよ。
流石に銃声(蕾姫)には驚いたようですが、殺せんせーが話してくれたみたいです。
しっかしおかしな対面だ……ターゲットと暗殺者が向かい合って話すなんてね。
2人の暗殺者はやはりというかナイフで殺せんせーを狙ったらしいけど、
リーダーであるElijhaはその話を大人しく聞いてホッとしていたはず。
その後彼らは本当に報酬を受け取らず退散しました、
「俺たちはまだ未熟なのかもしれない」と言い残して。
哲学っぽくなってしまいますが、『暗殺者』とは学び続ける人種だと思いますね。
なんだかんだで次回は(10)、平凡目指して暗殺教室も話数2ケタに突入します。
それでは皆様、また次回。 11話は確か……この学校の全校集会は気分が悪い。