遥が気が付くと、そこは見慣れない天井が広がっていた
遥「ここは」
涙音「マスター…?」
声の方を見ると、涙音が心配そうな眼で見ていた
遥「…涙音?」
涙音「良かった…気がつかれて…」
遥「おいおい…俺は不死身だ、簡単には死なない…それにしても此処は何処だ?」
?「気がついたか?」
黒髪で幸薄そうな顔の男子高校生の制服を着た少年が遥に近づくが、涙音が睨んでいた
遥「悪いな…涙音はいつもこんな感じだ…えっと…」
?「里見蓮太郎、天童民間警備会社のプロモーターだ」
遥「薊島遥、こいつは七星涙音だ」
涙音「…マスターの僕の涙音です…マスター、里見様と握手してみてはどうですか?」
遥「そうだな…」
遥は手袋をはずし、蓮太郎の手を取った
すぐに離すと涙音に耳打ちした
蓮太郎「おい、どうかしたのか?」
遥「いや…それよりも天童木更社長はいるのか?」
遥はここにいない人物の名を口にした
それにより、蓮太郎は警戒し、ホルスターから拳銃を取り出そうとしていた
だが、拳銃を抜くよりも早く涙音は、鉤爪を蓮太郎の首筋に突き立てていた
遥「涙音は俺に危害を加えようとするものには加減ができない…それに今のようになる…それと、此処の社長の名前を当てたのはお前の記憶を見たからだ」
蓮太郎「俺の記憶?」
遥「ああ、俺は触れたものの記憶を覗ける…それとお前の相棒、藍原延珠のことも見させてもらった…」
それを言った遥の目は蓮太郎を哀れんでいた
遥「…なんと言うか…お互いに大変だな…」
蓮太郎「おい、どういうことだ?」
蓮太郎は遥の言った意味が分からず、どういうことかを聞き出そうとしたが、それは別の人物に止められた
その人物は黒く長い髪の高校生らしき少女と小学生くらいの少女だった
遥「あんたが天童民間警備会社の社長、天童木更か?」
木更「な!?」
?「おお、お主は何でもわかるのか?」
遥「そうだな、蓮太郎の情報なら何でも知っているぞ?延珠」
延珠と呼ばれた少女は興味津々と言う顔で遥を見ていた
遥は少したじろぎ、木更は蓮太郎を見た
蓮太郎「何でも、触れた物から記憶を読み取ることができるそうです」
木更「触れた物から…何だか嫌な能力ね」
蓮太郎「そうですか?」
木更「考えてもみなさい、里見君、自分のプライベートまで覗かれるのよ!?」
蓮太郎は少し自分の私生活の事を思い出し、遥の力が危険だという事に気が付いた
遥本人は延珠の相手で大変そうに見える
だが、それは涙音によって止められた
涙音「マスター、そろそろ夕食の時間です」
遥「そうだな…何処か近くで食える店でも探さないとな……ん?」
遥が振り向くと木更がこちらを見つめていた
極貧生活を送っている彼女にとって外食はかなり羨ましい物だった
遥「…なあ、お前等さえ良ければ一緒に食べるか?介抱してもらった礼だ」
木更「本当!?」
遥「ああ…別に構わない…」
蓮太郎「俺等も良いのか?」
涙音「マスターが良いと言っているのだから大人しく従いなさい」
涙音は蓮太郎をにらみつけ、蓮太郎は冷や汗をかいていた
そんな蓮太郎を余所に、延珠は目を輝かせていた
近くのファミレスに来て、遥歌達は食事を共にしていた
延珠「蓮太郎、ここは美味しいな」
蓮太郎「食ったのなんて安売りの時以来だな」
涙音「どれだけ貧しいのか理解しました…マスター、本当によろしかったのですか?」
遥「仕方が無いだろ、まさか俺にここまでの妬みの目線を送る奴がいるなんてな…」
遥はそう言いながらビーフステーキを食べている木更を見た
木更はそんな視線を気にすることなく食べていた
蓮太郎「それにしても良いのか?俺等の分まで奢って?」
遥「問題はない、資金は仕事で稼いでいる」
蓮太郎「仕事? あんたも民警か?」
涙音「いいえ、医者です」
蓮太郎「医者!?」
それを聞いた蓮太郎は思わず立ち上がった
そして、周囲は蓮太郎を見てしまった
遥「落ち着け、厳密には裏社会の医者だ」
蓮太郎「だって、あんた俺と同い年だろ!?」
遥「ああ、だから闇医者だ、一応色んな所のお偉いさんとも精通しているから資金には困らないがな…」
遥は頼んでいたスパゲッティを食べ、その後、水を飲んだ
延珠以外の二人は目を丸くして遥歌を見ていた
遥「それはそうと、お前等黒い熊手を持った人間を知っているか?」
木更「黒い熊手?」
遥「知らないなら別に良い…」
そして、食事を終え、遥がレジで支払いを済ませた
その帰り道、木更と別れ、遥と蓮太郎達は同じ道を歩いていた
蓮太郎「なあ、なんで付いてきたんだ?」
遥「俺が行く方向が偶然お前等と同じだっただけだ…」
涙音「マスター、血の臭いがします」
涙音は遥に警告し、遥は竹刀袋から一本の日本刀を取り出し、抜刀した
そして、奥から口から血を滴らせた蚤の姿をしたガストレアが現れた
遥「蚤か…涙音…狩るぞ?」
涙音「イエス、マスター」
涙音は目を赤く輝かせ、鉤爪を装備して蚤のガストレアを殴った
その威力はすさまじく、ガストレアが簡単に空高く飛ばされた
そして、遥は落下地点に刀を構えて立っていた
遥「…幻月流剣術…【青梅】!!」
遥は蚤のガストレアを下から斬りつけた後、距離を取り、蚤のガストレアが地面に落ちた後、背中を切り裂いた
延珠「凄い…遥も涙音も…強い…」
蓮太郎「ああ…だが、まだ死んでいない…」
蚤のガストレアは何とか立ち上がり、遥歌達に飛びかかった
遥は刀をしまい、背を向けて一枚のディスクを取り出した
蓮太郎「おい!! 後ろ!!」
遥「問題はない…もう終わっている…」
その瞬間、蚤のガストレアの体が光の粒子に変わり、ディスクの中に吸い込まれ、光が収まるとディスクには蚤が跳ね回るアニメーションの描かれていた
蚤のガストレアがいた場所を見ると、そこには何もいなくなっていた
蓮太郎と延珠はそれをただ茫然と見ているだけだった
遥「回収完了…こいつはもう持っているから…涙音、頼んだ」
涙音「かしこまいりました」
遥はディスクを空に投げると、涙音は自分の前に来たタイミングでディスクを殴り、破壊した
遥「よし、涙音、今晩の宿を探すか…」
蓮太郎「おい、今のなんだよ!?」
延珠「ガストレアが光になってディスクに入って、涙音がドカーンって!!」
遥「そうだな…また今度説明してやるよ」
遥は刀を竹刀袋に入れ、涙音と共にその場を去って行った