「ここは?」
自分は確か、城で子や孫に見守られて終わりを迎えた筈だった。
自分の人生を振り返るとレイドック王国の王子として生まれて波乱万丈な冒険の日々だった。
仲間達と越えてきた困難、大魔王に打ち勝ち、それぞれの道を生きて別れた仲間達。
父の後を継いで王として民のために務めてきて、少なくとも民には慕われていたと自負できる。
そしてその人生に幕が降りた。
王位は我が子に継承させて隠居して十年後に自分は天寿を全うした。
そして今は白い空間にいる。
あの世という死後の世界だと生前読んだ本にあった。
随分、質素だなぁと思う。
「ここは確かに死後の世界です『 』」
突然、背後から女性の声がした。
この声は自分はよく知った声だった。
振り向くとその声の主は思った通りの人物だった。
「ルビス様?」
自分の世界の女神とも精霊とも言われる存在だった。
「何故、ルビス様が此処に?」
わざわざ、女神である彼女が勇者とは言え人間でしかない自分に会いにくるとは思えない。
「『 』よ、勇者であった貴方に頼みがあります」
「頼みですか?」
「嘗て貴方と仲間達が倒した大魔王デスタムーア、かのものに匹敵する邪悪なものがハルケギニアという異世界に流れ着きました」
「!デスタムーアに匹敵する邪悪な者?ダークドレアムでは無いのですか?」
大魔王をも超える、ある王国が大魔王を倒すために悪魔召喚で呼び出した王国を滅ぼした強大な悪魔。
ダーマ神殿の隠し扉の最奥のダンジョンに潜んでいたあの悪魔。
「いえ、貴方が打ち負かしてからはあの場所に籠ってます、それにかのものは破壊の悪魔ですが、無用な手出しをしなければ何もしません」
そのダークドレアムを仲間達とやっとのことで倒したものの、消滅には至らないかったがデスタムーアと違い、破壊や殺戮を積極的に行うことはなかった。
「『 』、平穏に天寿を全うした貴方に再び困難に立ち向かえと言うのは酷な事だと、重々承知です。
所詮は異世界の事、断っても構いません」
断っても良いと言うルビス。
しかし『 』は
(勇者はいかなる困難に立ち向かう勇気ある者、そして人々を苦難から救う事こそ勇者の使命である、だったね)
何時だったか、勇者というものを説かれた事があった。
ならば勇者である自分の答えは一つだ。
「わかりました、そのハルケギニアに行きます」
「いいのですか?」
「はい、勇者は人々を苦難から救うのが使命ですから」
「…やはり勇者が貴方で良かったと思います」
「いえ、僕を助けてくれる仲間達が居たから勇者でいられたからですよ」
「では、貴方の仲間達にも来てくれるものがいれば送ります」
「お願いします」
「旅立つ貴方にこれを」
ルビスは袋と『 』の愛用した専用装備、ラミアスの剣、スフィーダの楯、セバスの兜、オルゴーの鎧が現れた。
「勇者の鎧には本来の能力とは別の力を与えてます。袋には一通りの道具と装備、装飾品、そして天馬の手綱と空とぶじゅうたん、マーメイドハープが入ってます、それと」
「ヒヒーン」
ルビスの隣に翼の生えた天馬、ペガサスが現れた。
「ファルシオン!」
共に旅をした大切な仲間の天馬、ファルシオンがいた。
「夢の世界から貴方の力になるために来てもらいました」
「そっか、またよろしくねファルシオン」
「ヒヒーン」
ファルシオンは嬉しそうに嘶いた。
「ハープはあまり使うことはないでしょうが入れておきます。そして」
ルビスは『 』に手をかざした。
パァ
『 』が輝き、収まる。
「呪文と特技を送ります。ですが、マダンテとビッグバンと天災系のは使えません、あの二つは威力が大きすぎるのです。使いどころを間違えば…」
「僕が化け物扱いですね」
コクリ、頷くルビス
「それと呪文はダーマ神殿で修得できるものはほぼ使えます」
「わかりました」
「最後に貴方が向かうハルケギニアという世界について教えます」
ルビスはハルケギニアについて語る。
あの世界同様に魔法は存在するものの、貴族である上流階級の者しか使えず、使えないものは平民と呼ばれて虐げられていることもある世界であると、国家間による戦争があったり、ハルケギニアの貴族から聖地と呼ばれるエルフが守る地を奪還するために幾度も戦争をしている世界。更には異世界の物が流れ着く事もある時空が不安定な世界だと。
「そして、その聖地は聖なる地とは程遠いものです」
その聖地の真実を語る。
「…この事は現地の者には秘密です、言っても信じないでしょう、この事は貴方があちらで信頼出来る者のみに伝えてください」
「はい」
「貴方の向かう地には多くの困難が待ち受けているでしょう、ですが私は信じてます、勇者である貴方の勇気と挫けぬ心を」
「はい!」
「これから貴方をハルケギニアに送りますがそこの貴族の少女に使い魔、モンスター使いのモンスターの様なものと思ってください、その貴族の少女はハルケギニアにとって重要な伝説の魔法を使うメイジとなる運命の少女とその少女に召喚される運命の異世界の少年を貴方が護ってあげて下さい」
「はい!」
「では、あの光をくぐればハルケギニアです、貴方同様に使い魔として召喚される少年と共にハルケギニアに降り立ちます」
振り返ると鏡のように光る輪があった。
「行ってきます。ルビス様」
「いってらっしゃい、『 』貴方に幸運と未来に光あれ」
ルビスに見送られ、光をくぐる『 』
ファルシオンも続く。
光の向こうに消えた『 』を見送ったルビス。
「すまないな、ルビス殿」
「いいのです、ブリミル」
ルビスに声を掛けたのはハルケギニアのブリミル教徒にとっては神とも言える伝説の魔法使い、始祖ブリミルだった。
どうやら、ルビスと『 』のやり取りを見ていたようだ。
「私の世界にも彼のような若者がいてくれたら良かったのだがな」
「居ますよ、貴方の意思を継ぐものが、だからこそ彼にその可能性を持つ少女を託したのです」
「有り難うルビス殿」
ルビスにブリミルは礼を言った。
(『 』殿、我が意思を継ぐものを頼みました)
ブリミルは心の中で『 』に希望を託した
勇者とブリミルを会わせる案もありましたが、断念しました。