さて、日曜日である。
今日もいい天気だ。
そういうえば今朝、お姫様と天霧君が正門前で待ち合わせしていたな。
という事は二人の初デートか。本人達、特にお姫様は否定するだろうが、デートにしか見えんぞ。
商業エリアを辺りを見て廻ったりするんだろう。実に初々しい。健全な青春だなあ。
一方自分と言えば、歓楽街の外れにあるピンク色したホテルの一室で、溜まった精力を美咲相手に発散していた。
比較すると実に不健全?仕方ないじゃないか。溜まるんだから・・・
その健全と不健全なカップルが、星武祭(フェスタ)という大舞台で戦う事になる予定なのだ。うーむ。こんな時に思い出してしまった。
「美咲」
「・・・何よ」
うわ~ 不機嫌そう。この状況が気にいらないのか。途中で止めたのが不満だったらむしろ嬉しいなあ。
「戦闘力を上げる方法は訓練だけじゃないよな」
「は?」
まあこんな時に話す事じゃないかも、だけどね。
「お前のルークス、調整させて欲しいんだが」
※ ※ ※
さて、いつもの煌式武装研にて。
テーブルの上には美咲の煌式武装の発動体があり、その周りに自分、美咲、クラウスの3人が立って見下ろしている。
しかし。それぞれ身長が180cm、172cm(あいつ背が低い方にサバよんでいた)、190cmの三者が並んでいると・・・
「ちょっとあんた達、部屋が狭くなるからせめて座ってよ」
うん、そう言われるのも解るよ。ちょっとかわいい眼鏡っ子系の、この部のリーダーが入ってきた。
「ああ、部長久しぶり。大学部の方はいいのか?」
「まあ一段落といったところよ」
「だったらちょうど良い。美咲のルークス、見てくれないか?俺達じゃちょっと、というところもある」
「ふーん。美咲のねえ。いいよ。何がしたい?」
この部長は美咲と同じクラスで、多少会話はする仲らしい。
取り敢えずコンセプトと現状の仕様を伝えて、自分のルークスを取り出す。さて、こちらも大改造になるかな。
空間ウィンドウに制御ソフトを表示させる。
ルークスのデータが次々と展開される。
「お前さんの発想は面白いんだが、そう簡単にはな」
「やはり時間がかかるか」
「ああ、そもそも何でメテオアーツで防御力を上げるんだ?」
そりゃ黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)に対応する為だ、とはまだ言えないな。
あらゆる物を切り裂くと言われ、打ち合うには同格の純星煌式武装(オーガルクス)でなければ不可能なセル=ベレスタではある。
だが、防御に特化したメテオアーツならどうだ?
何とかならないか?
まして使い手が初期状態の天霧綾斗であれば。
試してみる価値はある。もっとも時間がかかるならば・・・
「まずはこのルークス自体の強度を上げてみようか」
「そうだな、その方が早い」
「どこまでいけそうかな?」
「まず硬度という事なら、かなり上がる、それこそロックウェルCスケールで、60以上も楽に出る。だが上げ過ぎるとなあ・・・」
「わかっている。脆くなるな。衝撃に弱くなる」
つまり調整によってはルークス自体の硬度を最適に処理された鋼鉄以上に出来るが、その分脆くなる。
この二律背反は変わらない。では、どうするか。
「表面と内部で強度を変えてみるか?日本刀みたいに」
「流石にそこまでの調整は無理だ」
「クラウスでも駄目か」
「というかウチの装備局でも無理だろう。それこそアルルカントでもないと、そこまでの技術はないぞ」
「・・・ならば、分離構造にして、間に衝撃吸収体でも挟むか」
「それだ!」
※ ※ ※
数日後。
時間で借り切ったトレーニングルームにて。
先に来ていた自分がウォーミングアップをしていると、美咲が駆け込んできた。
「ごめん。遅くなった」
「構わんさ。それより落ち着け。何かあったのか?」
今日は珍しく焦った顔をしているな。
「あの1年の転入生。リースフェルトのタッグパートナーだよ!」
「そうか。決まったか」(まあ知ってたけど)
「・・・平然としているけど、いいの?」
「何が?」
「あの1年、セル=ベレスタを使うのよ。知ってるでしょ」
「まあな。でも相手が誰だろうと俺のやる事は変わらない。お前の為にリースフェルトのの相方を抑える。それだけだ」
「本当にいいの?」
「自分の女の為なら何でもしてやりたい。俺にもそういうところはあるんだよ」
「ごめん」
「謝るところじゃないね。ここは」
そう、お前は俺の女だ。都合の良い時にヤルだけの女のつもりだった。でも今は違う。始まりは良くなかったかもしれないが、その後だんだんと・・・
「俺はお前に惚れたんだよ。だから何とかする」
「・・・ありがとう」
しばらくぶりに見た笑顔は、最高に美しかった。
※ ※ ※
さて、結構忙しくなってきたな。
自分と美咲のルークスの調整。それと同時にトレーニング。ルークスの性能が変わると、それに合わせた訓練もしなければならない。メテオアーツの発動も訓練が必要。
週末以外は放課後しか使えないので、毎晩12時頃まで寮に戻れない事がある。
毎回寮監に理由をつけて連絡しているので、問題にはなっていないが、そのうち教師から指導が入るかもしれない。
その日の夕方は、先にルークスの調整を終えて(まだトライアル段階だが)、効果を見る為にトレーニングルームへ向かっていた。そういう状況なのでクラウスも一緒だった。
そのクラウスが最初に気づいた。
「お、カミラ・パレートだ!エルネスタ・キューネまでいる。何でうちに?」
「あそこのアルルカントの生徒?クラウス、貴方知ってるの?」
「そりゃまあな。最大派閥の代表で煌式武装開発の天才だ。悔しいが俺ではとても及ばないな」
「技術力ではそんな物だろうな。気にするなよ」
「わかっている。だがエルネスタ・キューネが何故?別派閥の代表のはずだが。そもそもなんでここにいるんだ?」
「まだ発表になってないだろうが、噂位聞いてないのか?」
「! 煌式武装の共同開発?本当だったのか!?」
煌式武装研究部ともなると、そういった情報は限定的ながら入ってきたりする。
「マジで?でもそれだとうちにしかメリット無いんじゃないの?」
「その通りだな。一体何故・・・?」
「実はこの前の騒動、裏で糸を引いていたのはアルルカントだったんだな」
「おいおい。じゃあ何でこんな事に・・・ってまさか!」
「そう。うちの会長様は表沙汰にして文句をつけるよりは、黙っていて向こうから見返りを得る事にしたんだろ」
「うーむ。ともあれこれから新しい技術が得られるという事だな!」
ふむ、少し釘をさしておくか。
「クラウス。あまり奴らに関わるなよ。特にエルネスタ・キューネには」
「何でだ?確かに性格はアレだが。でも技術者としてはむしろそれ位の方が」
「奴はうちの生徒を買収して有力学生を闇討ちさせ、データまで得ていた。そんなやり方はどうなんだ?」
「・・・」
「カミラ・パレートはまだ常識人だが、協力していた時点で同じだ」
クラウスはどうも技術面でアルルカントの研究部門に憧れに近い物を持っているらしいが、尊敬に値しない人間もいる、という事も知っておくべきだろう。
「確かに技術者という物は、予算や技術に制限が無ければ、あいつはイカレている、と呼ばれるようなアイデアをひねりだして当然だ。だがあまり人に迷惑を掛けるやり方はどうよ」
それに、この件では美咲が怪我をするところだった。
やはり、自分的には連中は好きになれないのだ。
夕陽を浴びつつ、多分また悪だくみをしているであろう他校生徒二人を眺めながら、そう思った。