異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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改善、分析、作戦

さて、いよいよ鳳凰星武祭(フェニクス)のエントリーが締め切られた。

出場枠が固まるのはまだ先だが、この星導館学園も完全にフェニクス対応モードになった。

授業もそういう配慮でプログラムされ、出場予定生徒とその支援者には訓練時間等に融通が効くようになっている。

 

最近の変わった事と言えば、天霧君が序列1位の中等部生徒と決闘した事だが、自分はその時たまたま外出していたのでリアルでは見逃した。

という訳で、放課後のトレーニングルームにて。

 

「ちわーっす。深見先輩はこちらですか~」

 

「誰?」

 

「おー 来たか夜吹。こっちだ」

 

「例の動画、持ってきましたよ。とりあえず見て貰えますか」

 

「よーし。ああ。こいつは新聞部の夜吹。まあ情報屋ってところだ」

 

「瀬名先輩ですか。夜吹英士郎です。お見知りおきを。で、これが天霧対序列1位の件です」

 

空間ウィンドウに決闘の様子が写し出される。アングルはイマイチだが、画質は良い。

 

「よし、買った。俺の端末にデータで送っておいてくれ」

 

例によって食堂のプリペイドカードを渡しながら言う。

 

「毎度あり~ ではでは」

 

夜吹の後姿に美咲が厳しい視線を送る。

 

「いいの?あいつ確か、天霧達と仲が良いんでしょ」

 

「確かにそろそろ、俺達の事が伝わるかもな。ただあのお姫様が俺の事まで警戒するとは思えん」

 

そもそもこれまで、あの二人とは接点無かったし、これからも試合までは会う事も無いだろう。問題無いさ。

そう言った自分だったが、この予想は外れる事になる。

 

 

※  ※  ※

 

 

煌式武装(ルークス)の、防御力強化の調整も形になりつつある。それだけでなく、また新しいアイデアが出てしまい、楽しいながら面倒な思いをする事になってしまった。

 

それは、VAL-310の再設定が終わり、微調整をしている時の事だった。

このルークス、いまでは前腕部を完全に覆う筒状の本体と、その上に追加されたアームガードとナックルで構成されるようになっている。

その時はたまたま双方のパーツの固定状態が甘く、ちょっと腕を振っただけでアームガードが前にずれてしまった。

瞬間、閃いた。

このアームガードを、任意に前方へスライドできたら。

それも高速、高圧で。

これって、いわゆるアームパンチになるんじゃないか。そう、あの量産型ロボットみたいに。

発動にはプラーナを使えばいい。

これで攻撃力の強化ができるぞ!

 

早速クラウスに話すと、この発想に驚くと同時に呆れられた。

どうやらこの世界、最低野郎達がむせるロボットアニメは存在しないらしい。

 

ちなみに美咲の方は、ナイフ型ルークスを投擲武器としても使用できる様に、推進力の付加と回収用のワイヤー射出構造を追加している。さらに投射後、ある程度コースをコントロールする事も考えているようだ。

何だか有線誘導のビットに発展しそうだなと言ったら部長と一緒にきょとんとしていた。

 

みんなもっとアニメを見ようよ。

 

 

※  ※  ※

 

 

自分の、というかルークスの攻撃力、防御力向上の目処が立った。特に防御の方は、今特訓している流星闘技(メテオアーツ)が上手くいけば更に向上が見込める。悪くない状況だ。

そういう訳で気分よく朝の校舎を歩いていた。授業は自主休講。(たまにはね)

もっとも自分にとって、気分良い時間という物は長続きしないらしい。

あんまり見たくない物が目に入ってしまった。

 

見かけたのは現在この学園の序列1位、刀藤 綺凛である。

それだけなら可愛い子供がいるなー、で済むんだが、近くにその叔父の姿もあったので、げんなりしてしまった。尊大、としか表現できない態度であれこれ言っている。

 

そりゃ精神年齢でいえば自分はむしろこの叔父の方に近いのだが、とてもあのように高圧的に振る舞う事などできはしない。自分の行動が周りの目にどのように映るか、全く考えていないようだが・・・

それにしてもあのおっさん、統合企業財体で結構な地位にいるはずだが、そこまで有能なのか?

そうか、ああいう一見アクの強いやり手、みたいな男は状況がハマれば一気に出世するな。

もちろん限界も早いが。

 

いずれにしろ、あれは真に優秀な人間がとれる態度ではない。

まあ、この後、挫折するのも納得だな。

 

ん、という事はそろそろ、この子と天霧君の再戦だな。

今度はリアルで見る事にしよう。

 

 

※  ※  ※

 

 

そして何事も無く再度の決闘は行われ、この学園の序列1位が変更になった。

周りはその話題で持ち切りなのだが、自分は我関せず、とばかりに教室を後にする。

 

当然この学校にも視聴覚室という物はある。

それも複数のインターフェイスと、3Dディスプレイを組み合わせたヴァーチャル・リアリティの体感も可能な豪華な仕様になっている。

その豪華な部屋で、3D化した映像を再生して、繰り返し見てみる。

隣には美咲だけ。

映し出されているのは天霧綾斗と刀藤綺凛の絡み合い、じゃなかった斬り合いである。

2戦目はリアルで見てもいるが、内容を分析するにはこのやり方が一番いい。

 

二つの決闘、その状況を一時停止、スロー、コマ送り等々を駆使してじっくりと観察する。

再生を繰り返す度に美咲の顔色が悪くなっていくが、納得するまで止めるつもりは無い。

 

「リアルで見た時はただ凄い、だけだったけど。こうして見ると、素人でもわかる事があるな」

前回と今回、どちらも5分以下の戦いだが、何度も見直した結果1時間以上経っている。

 

「で、どうすんのよコレ。とても対抗出来ないよね」

 

「まあ少なくとも、奴の剣撃を避けようなど考えるだけ無駄だな」

 

「どうにもならない?」

 

「俺はそこまで速く動けないし、体も大きいからなおさら不利だ。攻撃は受けて防御するしかない」

 

「でも、セル=ベレスタを使われたら・・・」

 

「目処はついている。ルークスの強化に防御用メテオアーツを組み合わせればな。実際の所はやってみないとわからんがね」

 

「本当に大丈夫?」

 

「どうかな。それに前の試合でもわかるように、セル=ベレスタを使ってこない可能性もある」

 

「そうか!それなら・・・」

 

とは言うものの、使ってくれた方が有利になるかもしれん。セル=ベレスタを5分以上使わせれば、天霧君は戦闘不能になるはずだ。

まあ、全力の奴相手に5分耐えるという難題があるねえ。はっきり言って不可能に近い。

 

「何にせよあの戦闘力の奴を相手にするんだ。防御に徹するとはいえあまり時間はやれないぞ。なるべく早くお姫様を倒してくれや」

 

「わかってる。・・・そうね、3、ううん、5分。5分くれればいい。頼める?」

 

「オーケー引き受けた。その間は完全に抑えるからそっちも好きにやってくれ」

 

あれ、奇しくも5分というオーダーが美咲から出てきた。まあ偶然だろうが、面白い事もある物だ。

まあいい。これで決まった。

 

フェニクスで彼らと当たった場合。

俺が天霧君を5分間、全力で抑えている間に、美咲がお姫様を倒す。

シンプルだが、他にやりようが無い。

そして、わかりやすい。基本作戦は決まったな。戦術はこれから考えればいい。

 

「よし!じゃあ次はお姫様のデータを見て対策考えるとするか」

 

戦い方を考える、というのも、結構楽しい物なんだね。

 

 

 

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