遂に鳳凰星武祭(フェニクス)の開幕となった。
8時過ぎに、シリウスドームの専用控室に集合させられた。開会の合図と同時に、パートナーを隣に2列縦隊で行進。メインステージに入る。
周りの観客席からは大歓声。こういう雰囲気は少し苦手なんだが・・・
運営関係者の挨拶が始まったので、退屈になった自分は周りを見回してみる。
他校の生徒も中央の演壇に向かう形で整列している。
そういえば、これ程の他校生徒を見るのは初めてだな。何というか、個性がはっきり分かれているなあ。
ああ、そういう風に演出されているんだったか。確かに面白くはあるが。
しかし。制服はやはりうち(星導館)が一番普通か?
長かった開会式もそろそろ佳境だ。運営委員長が出てきた。
確かマディアス・メサだったか。星導館のOBで相当な実力者。ただこうやって実際に見て、演説を聞いてみるとやはり胡散臭いおっさん、にしか見えんな。何か妙な事を企んでいるらしいし。あ、今一瞬天霧君を見ていたな。ちょっとキモいぞ。
その委員長がもっともらしい事を言い、観客が盛り上がったところで長かった開会式も終了。
ちょっと疲れたかな。身体的でなく精神的に。
さて、この後どうするかだが。美咲、何かあるか?
「今日は試合無いから、ここにいなくてもいいんだけど、どうする?どっかでご飯食べて帰る?」
「そうだな。ゆっくりした後、適当に試合見て帰るか」
「あ、そう言えば第2試合は・・・」
「いや、天霧達の試合は多分見ても意味が無いよ。それよりも他校の連中だな」
参考になる試合があればいいんだけど。
※ ※ ※
一旦外に出て、ドームの周りを歩いてみる。
この辺りは一度来た事があったが、その時と比べると人の数が比較にならない。
まあ星武祭が始まったとあれば当然だな。
おかげで昼食の店を見つけるだけで時間がかかってしまった。まあ時間はあるから構わないんだけど。
しかし色んな所で空間ウィンドウが展開され、試合の動画が見られている。ああ、天霧君の初戦、瞬殺試合が話題になっているのか?それに例のパペットの試合も。
内容は知っているが、一応チェックしておこうか。どうせ遅い昼食だ。ゆっくりで構うまい。
そんな訳で午後もかなり遅くなってからシリウスドームに戻る。
しかしカレンダーは8月。真夏である。
人が多いのもあって特に暑く感じる。まあ前世の夏よりはマシだが。ちなみにこの制服、複合機能性繊維というやつでできていて、ある程度体温をコントロールしてくれる。中々便利な物だ。まあそうでなければこの時期、しっかりとした制服姿で過ごす事などできはしないだろう。
ドームに入り、控室に続く関係者用エリアに入ったところで一息つく。空調が良く効いて快適なのと、人が少なくなったのでほっとした。それでかなり気を抜いていたようだ。
よってその出会いは自分にとっての不意打ちのような物だった。故にその後の対応は、我ながらかなりおかしな物になってしまった。
「あ!」
最初はお互い、それ以外に声が出なかった。
いきなりだったが、通路を曲がった所で鉢合わせした。
天霧とリースフェルトのペア。
一時的だろうが、周りには自分達4人しかいない。
自分と美咲、その他2名。
その2名こそ、自分達が目標としているペアだ。
さて、ここは何と言おうか。この二人の事は良く知っているつもりだが、こうして面と向かうのは初めてだったな。と思っていたところで、隣から何やら剣呑な雰囲気。
美咲から殺気?いや闘志か。そう言われる何かを感じる。ちょっと待った。美咲さん、星辰力(プラーナ)も出てますよ。抑えて抑えて!
「あの・・・深見先輩、でしたっけ?天霧綾斗です。それで、この度は・・・」
取り敢えず・・・といった感じで、にこやかな主人公君の発言。
「ああ、はじめまして、かな。皆まで言うな。同じブロックで戦う事になる」
ちゃんと見るのは初めてだが、天霧綾斗か。やはりのんびりな感じだが、それだけではないような気もする。
まあ見た目はともかく、とんでもない力を持つ奴ではある。
「・・・そして今度は勝つ。あたしが!」
美咲は声を絞り出すように言った。いや、気持ちはわかるがちょっと抑えて!
「大きく出たな。瀬名先輩。だが生憎私はフェニクス優勝を目指していて、その力もある。予選で躓く事はできないな」
うわー。このお姫様もキツイなあ~。
「ちょっとユリス・・・」
気の強い女をパートナーに持つとお互い大変だね。天霧君。何となく連帯感のような物を感じてしまったよ。
「その言い方!お前はあの時も・・・!」
「美咲落ち着け!今度は大丈夫だ。俺達はやれる」
こりゃちょっと不味いかな。
「ほう、タッグ戦だから我々に勝てるとでも言うのか?」
あれ? お姫さまの矛先がこっちを向いたぞ。いや、これで何とかできるか。
「そりゃまあ。君らのタッグより明らかに優れている面があるし」
「え?どこですか?」
天霧君、純粋な興味だろうけど、その言い方だと優れている所なんて無いと言ってるみたいだよ。
「急造タッグの君らより、俺達はお互いの事を良く知っているのさ」
「我々も充分訓練を積んできた。パートナーとしてお互いを―――」
よし、お姫様が食いついたな。
「訓練程度ではなぁ。その程度でお互いを知っているとは言えんよ。処女と童貞君♪」
「なっ、なっ、なにを!!!」
お姫様が真っ赤になって動揺する。顔も崩れているぞ。天霧君は唖然としている。
「俺達はお互いの体を知り尽くしている。その点では君らより優れているのさ」
すまん美咲。
「ちょっと令。あんた何て事を!」
「はっはっは!まあ、それじゃそういう事で。行こうか、美咲」
もうお姫様は声も出せないようだ。天霧君はやっと意味が実感できたのか、今頃になって顔を赤くしている。
さて、上手く場を崩せたな。今のうちに離れるとしよう。
※ ※ ※
夕方。
美咲と共に学園に戻る。
夏休みに入っている為、帰省等でかなりの生徒が不在になっていて、普段よりは静かになっている。
「美咲、さっきは、その・・・」
「いいよ。あの場を収める為でしょう。あたしも少し変になってた」
「別にいいさ。ただ本番であれは不味いぞ。闘志とあれは違うからな」
「うん」
「心は熱くてもいい。でも頭は氷のように冷たくしておけ」
「やってみる」
「まあ、明日だ。いよいよ、始まる」
美咲が自分を見る。もしかして不安か?それならば。
軽く、美咲を抱きしめる。うん、少し鼓動が早いかな。でも。
「・・・ありがと」
「じゃ、また明日」
落ち着いてくれたみたいだね。
※ ※ ※
寮の自室で空間ウィンドウを開く。
今日の試合が色んなスポーツチャンネルで放送されている。ビール片手に気になった情報を集めてみる。
やはり話題はアルルカントのパペットで、その次に天霧君の瞬殺試合だ。これは参考にならんなあ。
その他の試合もざっと見てみるが、今の自分達の戦い方に影響を受けるような試合は無かった。
まあまだ初日だしね。
と、そこで端末に着信。
「よう。調子はどうだい?」
空間ウィンドウにクラウスが映る。
「特に不調はないよ。どうした?」
「いや、メテオアーツはどうするかと思ってね」
「それか。攻撃の方は問題無し。チャンスがあれば明日試してみる。防御はあと一歩という所だな。まあ3回戦には間に合わせるさ」
「そうか。まあ明日の試合はデータを取れるだけ取ってやる。うまくやれよ」
「おう。まだまだ世話になるが、よろしく頼む」
「ああ、頼まれた。じゃあな」
うん、少なくても、気にかけてくれる奴がいるというのは、良い物だな。
明日が楽しみになってきたよ。