鳳凰星武祭(フェニクス)2日目
予選Cブロック1回戦 第3試合。それが自分達の初めての戦いになる。
戦う相手はアルルカントの大学部と高等部のペアだ。序列入りしているが順位はそこそこ。共に銃タイプの煌式武装(ルークス)を使う事がわかっている。ちなみに両方男。これなら気兼ねなくぶん殴れるな。
何しろ自分の攻撃は拳での直接打撃なので、相手が女だとちょっとね。
いや、今更だな。偽善だろう。
「さて、行くか」
「うん」
会場は所謂中規模ステージ。
だが周りの観客、歓声はどこも似たようなものか。
実況の調子の良いアナウンスを聞きながら、美咲を隣にステージへと飛び降りた。
相手を見据える。その表情から、何となくだがこちらを軽く見ているような気がする。
そういえばルークスも起動していない。
それならば・・・
「いよいよだな。それじゃ基本パターン+αで始めよう」
「オーケー!任せな」
『それでは第1試合、バトル・スタート!』
実況の開始宣言と共に、美咲の周りに星辰力(プラーナ)があふれ出し、多数の閃緑のダガーが飛び出す。
相手はルークスを起動しかけたところでダガーの掃射を受けて体勢を崩した。アサルトライフル型のルークスを構える事もできない。
それだけの隙があれば充分だ。
開始の合図と同時に飛び出した自分は、ルークスを発動しながらほぼ一瞬で相手の目前まで迫る。
どちらが相手だ?
向かって左の小さい方(高等部生徒)の反応がやや遅い。よしこいつだ!
加速し過ぎていて拳のタイミングが掴み難いか?ならばこのまま。身体をひねって右腕を曲げ、そのまま飛び込む。
最初の一撃は体重を乗せた肘撃ちだ。体格差から、もろに顔面に入る。相手は倒れそうになる。
よし、ファーストショットは成功!
そう緊張していた訳ではないが、それでも気が楽になる。
ちらっと右を見る。
もう一人の相手は美咲のダガーを立て続けにに受けて反撃に移れない。ならばよし。
自分の相手を見ると、何とか体勢を立て直している。
銃口が向く直前、踏み込んで銃身を跳ね飛ばす。発射された光弾が掠める。
反撃。右ストレートがヒットした、と思ったが、相手は銃で受け止めて拳を弾く。今度は銃を振ってきた。何かヤバイ。そう感じてアームガードで防ぐ。目の前に青い光?
発射の閃光?違う!銃口の下から青い剣が伸びている。
(銃剣か!やるねえ!)
さらに振るわれる銃剣を、両腕を交差させて受け止める。なるほど遠近両方やれるのか。
(良いルークスだ。だが使い方が間違っているな)
本来銃剣は突く武器だ。それも腕だけで無く、全身でぶつかるように突きを入れるのが最も効果が高い。
振ってくれれば今みたいに、ガードするのは難しくない。
銃剣を受けながら、右足で蹴りをいれる。相手の膝裏を打つ。流石に倒れる相手に拳を打ち下ろす。再び銃身で受け止められるが・・・
(2度同じやり方は悪手だぞ!)
銃身上の拳を強く握りしめ、ルークスの中央にプラーナを集中。爆圧プレートが反応し、アームパンチが作動。
ガツンとした手ごたえと共に、銃身が派手に折れ曲がった。
反動で跳ね上がった腕を強引に振り下ろす。狙い通り校章に命中。破壊。よし!次だ!
「おおおおおっ!!」
振り向くと同時にもう一人に向かって飛び出す。
ペアの敗北と自分の叫びに驚いたのだろう。奴がこちらを向く。
それは隙でしかない。
美咲のナイフ型ルークスが飛んでくる。本来、当たるような方向ではない。
だが、自分と奴の中間でその方向を変え、急加速した。
「!」
奴は驚きながらも反応する。流石だが回避までは無理で、ルークスで受ける。ナイフは銃身に突き刺さった。
銃口がこちらを向く。
(その状態でも撃てるのか?だが・・・)
次の瞬間、銃が空を舞う。
美咲がナイフに繋がったワイヤーを思い切り引いたんだ。
(ナイス!美咲)
驚く、と言うより呆然とした奴に飛び掛り、校章を撃ち砕くのは簡単だった。
『試合終了!! 勝者、深見 令 & 瀬名 美咲!!!』
うん、何とかやれたな。
※ ※ ※
「ABCフェスタ報道部の香川です。今回の勝因についてどうお考えですか?」
(いや、色々あるんだけど)
「ニッケン・スポーツの深澤です。これまでどのような訓練をされてきましたか?」
(この世界にもスポーツ新聞てあるのね)
「わくわく動画の西山です。お二人の関係についてぜひコメントを」
(あの動画サイトあるのかよ!ってその質問は何だよ)
とまあ、勝利者インタビューである。
まだ1回戦で、そんなに凄い試合をした訳ではないんだが、しっかりマスコミ連中に取り囲まれて質問攻めである。はっきり言ってうざい。隣の美咲もだんだんと不機嫌になっていくのがわかる。
何しろ答え難い事が多いし(そうそう手の内は晒せないだろう)質問が試合とは関係ない方向に変わっていく。
(これだからマスゴミは・・・)
最初は適当に流して多少は笑いも取ろうか、等と思っていたのだが、終わる頃には早く帰りたい、それだけになってしまった。
※ ※ ※
「よう、お疲れ」
「おー、クラウス。来てくれたのか」
「俺だけじゃないぞ」
控室のドアを開けると、煌式武装研の連中がぞろぞろ入ってくる。中には普段あまり見ない顔もあるが。
「どうしたんですか?部長」
「そりゃあなた達は、ウチが調整したルークスを使っての初勝利よ。部としてお祝いを言いたいよね」
「そう言う事ですか。ありがとうございます。美咲、ルークス出せよ」
「うん?ああ」
部の面々を前に、お互いのルークスを掲げてみる。歓声が上がった。
うん、初めての試合、良い形で終わったな。
試合は終わっても戦いは終わらない。
部の連中が他の試合を見に出て行った後、部長とクラウスには残って貰って、先の試合録画を見る。
「美咲の先制攻撃は上手くいったね。これは狙ったの?」
「ええ、これは連中がのんびりしていましたから、いけると思っていました。試合前からルークスを起動していれば、こう上手くはいかなかったでしょう」
「なるほどね。美咲は集中すればダガーの展開と射出はほとんど一瞬でできるから、か」
「対して連中は射撃するのに起動、照準と言うステップがタイムラグになる、と言う訳だな」
それは僅かな時間だった。だが美咲の射撃はそれを上回った。
「おかげでその後は楽だったな。美咲の方はどうだった?」
「あたしは、とにかく動きながらの攻撃に専念して、後はダガーが途切れないようにしたから」
「うん、それでいい。こっちも助かった。それどころか、あのワイヤーアクションにはちょっと驚いたぞ。部長?」
「あれね。調整でちょっと細工している。ナイフも刺さった後、抜けるかどうかもコントロールできるようにしたし」
「結局の所、深見。今回勝ったのは瀬名の力による、と言う事じゃないのか」
「まあ、言われなくてもそうだよ」
クラウスと自分のやり取りで穏やかな雰囲気。だが、このまま終わり、と言う訳にもいかない。
「で、今回の問題点だが」
「・・・」
「相手のルークス、銃剣を予測してなかった事、とか?」
「それもそうだが、他にないか?」
「ちょっと気になったんだけど」
「部長?」
「美咲、あなた・・・プラーナが随分減ってない?」
「え?!」
「部長、わかるんですか?」
「得意と言う訳じゃないけど、何となくはね」
いかん、全然気が付かなかった。
「元々あたし、プラーナの量は多くないから。それに派手に技を使ったし」
「でもそう長い試合という訳でもない。ちょっと対策考えた方がいいかも」
気になる問題点が判明してしまった。しかしこれは自分達では対応できない。
どうしたものか?
「友達に一応ストレガがいるから、何かアイデアがないか、聞いてみるけど」
「流石部長!お願いします」
ここは頼るしかないな。
ともあれ、最初の戦いは終わった。
次を考える前に、一休みしようか。