戦い終わって陽が暮れて。
一晩過ぎて、朝になる。
今日は何をしようか。
元々当初予定でも、今日は丸一日休養にあてる事にしていたから、特にやる事がない。
美咲の星辰力(プラーナ)の件も、部長が対策案まとめるのに今日いっぱい欲しいと言っていたので、あいつも暇しているはずだ。付き合ってもらうか。
そう思っていたんだが。
「あのね。こっちは男と違って色々あるのよ。一緒にしないで」
怒られてしまった。
とは言え午後からならという事で、付き合わせる事はできそうだ。
でも何をしよう?外は暑いし人多いし。
いっそどこかにベッドを確保して一戦交えるか(一戦では終わらないけど)
もっとも星武祭(フェスタ)期間中、当たり前だが普通のホテルはどこも満室で、その煽りを受けて普通じゃないホテルもひどく混んでいる。
結局何も決められないまま二度寝してしまった。
※ ※ ※
「それにしては、うまいこと考えたね」
「ま、たまにはこういうアイデアも浮かぶものさ」
今、自分と美咲はデッキチェアに身を横たえている。
サイドテーブルにはアイスティーのグラスや缶ジュースの類。
場所はプールサイド。
八月の午後らしい過ごし方ではある。
少し違うのは、お互いの姿?
自分も美咲も、学園指定の水着姿でここにいる。それだけが残念だな。
今日も良く晴れて、気温は余裕で30℃オーバー。涼しくて人の少ない所を欲するなら、むしろ学園を出ない方がいい、という結論にいたった。何しろ帰省等で普段の半分程度の生徒しかいないのだ。
では学園内で面白そうな所はあるか?
そう言えば。この学園のプール、一度も使ってないな。
今年は夏に鳳凰星武祭(フェニクス)がある関係で、7月からの授業のスケジュールがかなり変則的になっていた。訓練目的の自主休講なんかもしたし、まともに体育の授業を受けなかったせいでプール(水泳)にもいかなかった。
うん、行ってみよう。美咲と一緒に。
「で、こうなった」
「そうね。でも、ここ中等部なんだけど、なんで?」
そう。管理教師に無理言って入れてもらった。試合で1勝しているせいか、扱いが良かった。
「中等部の生徒はフェニクスにほとんど出ていない。イコール関係する生徒も少ない。だから帰省する生徒が多い。よってプールも空いている。そう思ったんだが、アタリだったな」
実際、プールではしゃいでいるのは男女合わせて10人もいない。こんな状態でここを管理するのもどうかと思う位だが、まあ学園の仕事だし、気にする事もない。
「そんな事言って、あんた中等部の子が見たかったとか・・・」
美咲さん、ジト目は似合わないよ。
「中学生は子供だろ。子供に興味は無い」
「あたしたちも3年前はその中学生だったんだけど」
いや、自分にとっては遠い昔の事なんだが。いつか話せるといいね。
さて、のんびりするはずだったんだが、状況からしてどうしても鳳凰星武祭(フェニクス)についての話題になってしまう。
「こんな事してるけど、いいの?あんたのメテオアーツの方は?防御力強化と言ってたけど」
「ああ、あれか。もう完成している」
「え、そうだったっけ!?」
「・・・うん」
「それじゃあ!セル=ベレスタも」
「無理だった」
「え?」
「シミュレーション上だが、やはりどうしてもセル=ベレスタのエネルギーを抑えきる事ができない。あらゆる物を切り裂く防御不能の剣とは本当だな」
あれ?これって斬鉄剣じゃね?
「そんな・・・それじゃどうやって・・・」
「心配するな。まだ手はある。クラウスとも相談したが、使えそうな手がな」
そう言って美咲に耳打ちする。誰が聞いている訳でもないが、念の為。
「あんた達・・・性格悪いね」
美咲、言いたい事はわかるが、戦術とは騙しもありだよ。兵は詭道なりと言うじゃないか。
そろそろ陽が傾いてきたな。
まあ、なかなか良い午後だった。美咲がビキニ姿だったらなお良かったんだが。
スクール水着に興味は無いのだ。次は頼むぜ。
「は?持ってないけど」
「じゃあ買いに行こう。いや、買わせて下さいお願いします」
「やだ。あんたの趣味で選ぶんでしょ」
「オフコース!最高にセクシーでヤバイ奴を―――」
「くたばりな!」
バカ話をしながらプールを後にする。この後は食堂で適当に夕食にしよう。
※ ※ ※
食堂も閑散、と言う程では無いが、やはり生徒の姿は少なかった。
その少ない生徒の興味はやはりフェニクスの結果で、複数の大型モニターは皆試合の録画を映し出している。
一番の注目はやはりアルルカントの自立機動型漫才ロボの件だ。うん、あの掛け合いは面白かったぞ。
「実際当たる事は無いと思うけど」
食後のアイスコーヒーのトレイを持ってきた美咲が問う。
「どう戦う?アレと」
うーむ。美咲も気になるか。
「あのバリアの事か?」
「それもあるけど」
「なんで皆、そこまで気にするのかな?」
「え?」
「強力なバリアがある?だったらその内側に入ってしまえばいい」
昔のロボットアニメ見てりゃ気づくだろ。
「そりゃそうだけど。それも大変じゃないの?」
「まあね。でも悲しいけど、これ戦争なのよね」
「は?」
「こっちの話だ。気にするな。それよりあのパペット、要はバリアを持った中世の甲冑騎士だと思えばいい。だとしたら倒し方もある」
「例えば?」
「組み付いて鎧のすき間を短剣で突き刺す」
「なんか単純ね」
「でも効果的だ。あのパペットも、例えば関節部分とか、ダメージが通りそうな気がする」
「もしかして勝てそう?」
「まあその間、お前がもう片方を抑えてくれればね。多分難しいぞ」
「はあ・・・そう簡単にはいかないか」
「アレはアレで優勝候補だぜ。簡単なもんか。優勝候補といえば、俺達のターゲットもそうなんだが」
「うん。そうだね」
その前に第2回戦、こいつを何とかしないと。その相手は界龍の連中だ。
ん?確か本編では、天霧君達の3回戦の相手が界龍だったはずだ。自分達がこいつらに勝つとしたら・・・
それはいよいよ、本格的な原作介入になる。
まあ、今更だな。
※ ※ ※
2回戦を2日後に控え、トレーニングルームで調整。
そろそろセル=ベレスタ対策を仕上げなければならない。不慣れは承知で美咲に剣型ルークスを使ってもらい、何度も撃ち込ませる。
「やー。やってるねー」
「部長。どうもです。よし、一休みするか」
フェスタ期間中とは言え、夏休み中までお疲れ様ですな。
「そろそろいけそうかな?」
「ええ、こっちはなんとか」
不慣れと思っていたが、意外と美咲の剣捌きも上手い物で、イメージを掴むには充分だった。
これはこれで良い訓練になる。まず無いだろうがお姫様の方が細剣で斬りかかってきても対応できそうだ。
クールダウンの間、今の懸案について話し合う。
「美咲の方はちょっと難しいかも。もう少しプラーナの消費を抑えないと」
「無理。そんな戦い方したら勝てないじゃない」
「となると回復力を上げるしかないか・・・」
まだ良い方法は無いみたいだ。とは言え今の状態なら、2回戦は何とかなりそうだ。
問題はその後だが。なるべく消耗を抑えて、あるいは回復させて3回戦に進みたい。
まあ、次の試合は手を抜いていては勝てないだろう。
そしてフェニクス5日目。
ひと足先に天霧君達の2回戦。
お姫様がクインベールのペアを簡単にあしらって勝利。
その姿を、これまでに無い厳しい表情で見る美咲がいた。