異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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ブレイクスルー

自分達の2回戦がやってきた。

 

相手は界龍のタッグである。序列は中程、体術に優れる。厄介だな。

本来であれば3回戦で天霧君達と当たり、あっさり下されるが、自分達に同じ事が出来るか?

だがここを突破しないと、美咲の望みが消える。

それは面白くない。

 

その相手の状況は?

一人は片刃剣、もう一人は短槍使いか。事前調査通り。あえて戦い方を変える様な事はしていないようだ。

隙無くこちらを見ている。流石に油断は無いな。

さてどう攻略するか。

 

「美咲、槍使いの方は頼む」

 

「わかった。援護射撃は?」

 

「前と同じだ。最初だけでいい。例の手でね」

 

ステージに降り立つ。相手は待ち構えている。すでに武装を展開し、臨戦態勢だ。

こちらもルークスを起動。戦闘準備。

 

『それではCブロック2回戦、第2試合、バトルスタート!』

 

前と同じ。美咲がルークスで天を指し、空間に閃緑のダガーを展開。ただし同じなのはここまで。

腕は振り下ろされない。

ダガーはそのまま真上に飛んで行った。

彼らも唖然として天を仰ぐ。

 

「GO!」

 

今度は美咲と同時に飛び出す。

 

連中、今度は少し慌ててこちらに意識を向け、武器を構える。

(さっきのダガーはフェイントと思っただろうが・・・)

 

彼らの数m前で、美咲と合わせて足を止める。向こうは一瞬だけ戸惑うが、すぐにこちらに集中する。流石ではあるが、一手足りなかったな。

 

次の瞬間、大量のダガーが彼らの頭上に降り注いだ。

 

空に向かって物を投げれば、いずれは落ちてくる。

万応素(マナ)で形成された矢や刃はそうでもないが、イメージで作り出している以上、そこにもう一つ、重力のイメージを加えてみれば、落下させる事はできる。

それが目の前で証明された。

重力による落下のイメージである為、威力は落ちているが、数が数だ。避けきれていない。ある程度のダメージにはなっている。そして何より。

(隙あり、だ!)

 

ダガーが途切れる瞬間を見て再度突進。

美咲はナイフにワイヤーを形成して投げつける。

 

(いけるか!)

 

剣士の間合いに飛び込む。

わずかに遅く突き出された剣をナックルで弾き、拳のストレートを直撃させる。だがこちらの踏み込みも甘い。手ごたえは良くない。剣が降ってくる。頭上で両腕を交差しガード。重い衝撃がきた。

お互い動きが止まる。

(こいつなかなかパワーあるな)

そう思った矢先、剣士の腕が妙に動いた、と思ったら顔面に衝撃!

たまらず後退してしまった。

何をされたかはすぐにわかった。こいつ、剣をそのままに柄を思い切り前に突き出してきたんだ。

直撃を受けた頬がかなり痛む。どうやら口内も切れたらしい。血の味がする。

 

(この男、やるなあ。どう攻める?考えろ、集中しろ!)

 

自分に言い聞かせる。そうでないとダメージによる動揺が体に出そうだ。

ちらっと隣を見る。美咲の方は優勢。何より火力で圧倒している。一瞬の安堵。その隙を突かれる。

剣が走る。

ガードに集中して凌ぐ。だが主導権は失った。

 

(何をやってるんだ、俺は!)

 

激しい打ち込みが続く。一歩ずつだが、後退させられる。攻めに転じる事ができない。僅かに体勢を崩す。隙ができた。不味い。強力な一撃が来る。こうなったら仕方ない。両腕でガード。その打撃力を利用して後ろに飛んで距離を開ける。

しまった。距離を開け過ぎた。

奴は仲間の援護に移る。槍使いの前に割って入り、剣でナイフとダガーを弾き出す。

その隙に槍使いが前進する。

美咲も大きく後ろに跳んで距離を開ける。自分と合流する形になった。

 

「すまん。しくじったな」

 

「いいよ。それより仕切り直しかな」

 

試合開始直前のように、お互いのタッグが向き合っている。今度は隙が無い。簡単には仕掛けられない。

違うのは身体状況で、連中は槍使いがそれなりのダメージ。剣士は自分と同程度か。軽傷と言っていい。無傷なのは美咲だけ。だがそろそろ星辰力(プラーナ)が気になる。

 

しばらく睨み合いが続く。が、連中はゆっくりお互いの距離を離していく。これでは美咲が二人同時にダガーを浴びせる事が難しい。さらに面倒になったな。

 

「美咲、もう一度突っ込む。俺が動いたら、槍に向かってナイフを投げてくれ。後は剣士を頼む」

 

「わかった」

 

「では行こうか。3、2、1、GO!」

 

槍使いに向かって全力でダッシュ。隣をナイフが追い抜く。

奴は槍を突き出しながらナイフを躱す。一瞬だけそちらに意識が向かった。よし。

その隙に、槍先を掴む事に成功。そのまま全力で押し込む。奴はしっかりと槍を保持して抵抗する。

(そう、それでいい)

右腕を振るってナックルを槍の刃先に当てる。プラーナの干渉で火花が散る。

(今だ!)

アームパンチ。最高出力で作動!槍先が砕ける感覚と共に、奴が後ろに吹き飛ぶ。

肩の痛みを無視して飛び出す。倒れかかった奴にそのまま飛び掛り、床に叩きつける。

同時に拳を全力で打ち込む。

校章は外したが、手応え充分。

奴が動かなくなる。

 

意識消失のアナウンスを聞きながら、残った剣士に向かって走る。

美咲の射線に入らない角度で踏み込む。

奴はダガーを無視してこちらに剣を振るう。良い覚悟だが、それだけだ。

アームガードで剣を抑え込むと、タイミングを合わせて美咲のナイフが飛び、校章を切り裂いた。

試合終了。

 

(何とかやれたな)

 

苦戦したが、遂にやった。

これであいつの望みが叶う。

 

「よう、調子はどうだい?」

 

「まあ、何とか」

そう言って美咲が微笑む。

 

うむ、今日は笑顔がみれたな。

 

 

※  ※  ※

 

 

今回は疲れた。

負傷を理由に勝利者インタビューはパス。心証を悪くするらしいが、どうせ自分達は次が最後だ。構いやしない。

そのままメディカルチェック。

肩と頬の治療を受ける。

肩は消炎鎮痛剤を塗った後、冷却パッドを貼り付け。固定はしなくて済んだ。

頬の傷も似たような物。ただし、口内は高粘度ジェル薬を貼り付けられた。

 

「どうだった?」

 

チェックだけで済んだ美咲が心配そうに聞いてくる。

 

「多分1日あれば完全に治りそうだ。次の試合には間に合うが、明日はトレーニング無理かな」

 

「うん、休もう」

 

「それで、プラーナの方は?」

 

「・・・大体2割位な感じ」

 

「少し不味いな。そっちも回復させないと。帰るか」

 

「ええ。疲れたでしょ?」

 

「ああ、今日はきつかったな~」

 

確かに大変だった。でも振り返ってみると実に良い経験になった。

戦いで充実感を得られるとはね。

今夜は良く眠れそうだ。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

翌日。

朝には肩の痛みは引いていたが、無理はできない。

焦っても仕方ないので、何とか予約できたホテルの一室でゴロゴロしている。

当然隣には美咲。こっちも落ち着いている。

 

「そう言えばお前、少し痩せたか?」

 

綺麗な裸身を見ていたら、少し線が細くなった気がした。

 

「え!そうなの?わかんなかった。帰ったら計ろう」

 

「トレーニングと試合の連続だ。そう気にする事もあるまい。体調は良いんだろ」

 

「うん、身体はね。わかるでしょ」

 

そりゃ身体を交わせばお互いの体調位わかるようになったさ。

問題はプラーナだな。こればかりは待つしかない。

 

「回復力がねぇ・・・」

 

そう、美咲のプラーナは少ないのではない。回復が遅いのが問題だった。

今までは連続して大量のプラーナを消費するような事が無かったので、本人もあまり問題として認識していなかった。

対策に部長も動いてくれたが、今のところ良い手は無いらしい。これは知識の問題というより、魔女(ストレガ)の事がまだ良く解っていない事による。

 

「まあ、焦るな。明日の試合に必要な分だけ戻ればいいんだ」

 

そう言って美咲を抱き寄せる。

今は身体も心も、リフレッシュに専念するべきだろう。

 

お互いに・・・

 

 

 

 

 

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