異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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3回戦、その時

鳳凰星武祭(フェニクス)のCブロック、3回戦が行われる日の朝。

 

星導館学園、クラブ棟。煌式武装研究部にて。

 

「では、ブリーフィングといこうか」

 

自分の前にはパートナーの美咲、お馴染みクラウス、最近世話になっている部長。

 

「まずは体調だが、俺の負傷は完治、問題無し。美咲?」

 

「あたしも体調はオーケー。でもプラーナは普段の6割位」

 

「わかった。ルークスの状態は?」

 

「メンテナンスと調整は完了しているよ。特に異常は無いね」

 

「ありがとう。では、後は戦うだけだな」

 

「・・・勝算は?」

 

「あると思うか?」

 

「そこまで悪くないだろう」

 

「そうか?相手は序列1位と5位。ついでにオーガルクスの使い手と現役世代トップクラスのストレガだぜ」

いくら何でも相手が悪い、そう思ったのだが。

 

「お前達だって接近戦型ファイターとストレガの組み合わせだ。武器だってオーガルクスに対抗できる。俺がチューニングしだんだからな」

ひょっとしてクラウスさん、俺達が試合で勝つと思って支援してくれたのか?

何とも面映ゆいが、そこまで評価されるとやる気にはなるな。

 

「昨日、何もできなかったのが不安なんだけど」

 

「美咲、それは俺も同じだよ。わかっている。ところでお相手の様子はどうかな。部長?」

話題転換。だが必要な情報ではある。

 

「問題があるようには見えないわね。特にノーダメージで勝ってきてるし」

 

「しかも実質、一人1試合しかしていないし」

 

「あんまり参考にならないね」

 

「そりゃそうだが。逆に考えよう。連中が俺達を見た場合、どう思うかな?」

 

「・・・コンビネーションには注意しようと思ってる、とか?」

 

「少なくとも今までのように一人で相手しようとは思わないだろうな」

 

「ちょっと待て。深見、お前二つの試合、どちらも相手の武器を破壊したよな」

 

「あれはそう意識してやった訳じゃないが、確かにそうだな」

 

「となると奴は、そこを警戒して・・・やはりセル=ベレスタを使ってくるな」

 

「それよりも美咲の先制射撃、これはどうなの?」

 

「ああ、それも気にしているだろうな。特にお姫様が。逆に先制を狙ってくるか?」

 

戦術を分析し、作戦を練る。

当たり前の作業を、淡々と続ける。

多分最後になるだろう試合の前に、穏やかな時間が流れていた。

 

 

※  ※  ※

 

 

試合開始30分前。

シリウスドーム。控室。

ここまで来ると、後はストレスをかけずに集中力を上げる位しかやることが無い。

実際美咲は、ソファーに深く腰掛けて両手を組んで目を閉じている。

そんな姿を見ていると、こちらも緊張してくる。

あまりナーバスにはなりたくないので、サイレントモードでモニターを起動し、試合関連のプログラムを見てみる。

画面にはこの後開始の自分達の試合について、コメンテーターとやらが好き勝手な予想をしていた。

どうも予選としては注目の一戦ではあるらしい。

言われてみると、同じ学園で、男女のペア、片方はストレガと、共通点が多い。何より一方は優勝候補だ。

あまり目立ちたくはなかったがなあ。

 

「時間だよ」

いつの間にか美咲が立ち上がってこちらを見据える。

「行くか」

 

お互い、会場までは無言だった。

ゲートを通過する。

目の前にステージが広がっている。

 

「とうとうここまで、か」

 

「礼は言わないよ。それは終わってから」

 

「ああ、それでいい」

 

視線の先には、自分達の目標である二人。

良く見ると、中々厳しい表情なのがわかる。つまりは甘く見ていないと言う事か。嬉しいねえ。

 

実況があれこれ言って会場も盛り上がっているが、耳には入らない。今聴きたい言葉は・・・

 

「それではCブロック3回戦、バトル!スタート!」

 

さて、前世も含め、自分の人生で最も長い約5分間が始まったな。

 

※  ※  ※

 

 

「内なる剣を以って星牢を破獄し、我が虎威を開放す!」

 

奴さん、相変わらず派手だねえ。

お馴染みパフォーマンス(実は違うけど)と共に、セル=ベレスタの刀身が輝く。

やはり使ってくるか。

 

ではこちらも、少しは派手に。と思って制服上衣を放り投げ、同時にルークスの起動。両腕に馴染んだガントレットが発現する。さて、行くか。

天霧綾斗を一瞥して、歩き始める。

 

「咲き誇れ!プリムローズ」

お姫様がが叫ぶ。同時に美咲が腕を上げる。こちらは無言。こういう所が対称的だな。

 

「行けっ!」

オレンジ色の蛍火が飛んでくるが、無視して前進。防御もしない。こちらに向かってくる火の玉は、美咲が放つダガーに貫かれて消滅する。

そして二人に対し、10m位の距離。そろそろか。立ち止まる。

姿勢を低く、地に這うように身体を沈める。

瞬間、頭上をダガーの連射が通り抜けて行く。

 

「ユリス!」

奴がセル=ベレスタを振ってダガーを弾く。隙あり!

そのままの姿勢でダッシュ、ヘッドスライディングするように飛び込む。

もっとも向こうの反応も早い。予測済だが。

低く跳びながら、右腕を浅い角度で床に叩きつける。同時にアームパンチ作動。強烈な反動が身体を加速。

一瞬だが、スピードで奴の予測を上回った。

(よし、このまま行け!)

奴の胴に直撃するショルダータックル。お互い倒れ込み、かなりの距離、床を転がる。

すぐに立ち上がる。

(これで天霧を引き離す事ができた。後は思い通りにやれ、美咲!)

予定通り、ではあるが無傷とはいかなかった。

左の頬から耳にかけてがやけに熱い。触ってみると指先が赤く染まる。

どうやらセル=ベレスタの刀身に触れてしまったらしい。触れただけでプラーナの防御を切り裂くとは、聞きしに勝るな。黒炉の魔剣。

 

一瞬だけ隣を見る。

美咲は両手のナイフでお姫様に斬りかかっている。接近戦への移行は上手くいったようだ。ダガーを同時展開しながら鋭い突きと斬撃。大丈夫だな。

 

改めて天霧に向き合う。向こうも正面に剣を構える。

 

さて、創めるか。

両手に意識を集中。プラーナを流し込む。両腕のアームガードが緑に輝く。

「ハッ!!」

気合と共に両腕を交差、ルークスを叩きつけるように接触させる。プラーナが干渉、弾ける。

 

腕をボクシングスタイルで構え、前にでる。

 

「さあ、こい!」

 

天霧が踏み込む。よし、ここだ。

左前腕を水平に、右前腕を垂直に。眼前で交差させる。

 

紫の刃が降ってくる。

交差した腕の中央で受ける。

 

クロスアームブロック。セル=ベレスタの刃が、止まった。

 

「よし!」

 

天霧が戸惑いながら、剣を振るう。二撃、三撃。全てブロックで跳ね返した。

 

「まさか・・・」

 

「全てを断ち切る防御不能の魔剣、か。だが相手がオーガルクスならどうだ?」

さて、解説といこうか。

 

「えっ?でも」

 

「ああ、わかっているよ。俺のこいつは普通のルークスだ。だがな、メテオアーツを組み合わせればどうだ?やり方次第ではオーガルクス並の出力は出せるんだぜ」

うん、嘘は言ってない。ここまでは。

 

「つまり防御に限って言えば、こいつはセル=ベレスタに充分対抗可能だ」

 

「そんな・・・」

 

まあ、驚くよね。まあ驚いてもらわなければ、この先勝負にならん。

 

「さて、どうするね?天霧君」

 

「まだ勝負が決まって訳ではないですよね」

 

流石だなあ。すぐに気持ちを切り替えてきたか。まあいい。要は自分だけに集中してくれればいいのだ。

 

「じゃあ続けようか!」

 

再度正面に突入。ガードしながら全力の回し蹴り。天霧の背中にヒット。運良く綺麗に入り、奴の表情が歪む。チャンス!そのまま右拳を入れると同時にパワーで押し倒す。よし、ここで肘を落とせば校章が!

 

そこまで甘くないか。

校章を狙ったエルボードロップは外され、体勢を立て直され、同時に刃が迫る。

こちらも回避しながら立ち上がるが、欲をかいた報いがやってきた。

 

「痛っ!!」

今の一撃は左脚大腿上部を掠めていた。

こんな戦い方をしていれば当然有り得る。この程度の傷は受け入れるさ。

 

痛みは耐えられる。だが出血しているのがはっきりわかった。

セル=ベレスタに斬られたら傷口は焼けて血は出ないと思ったんだが、状況次第らしいね。

 

今度はゆっくりと踏み込む。

目には入らないが、床に自分の血で足跡が付いていくのがわかる。

 

さて、どうする・・・?

 

 

 

 

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