異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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評価とアドバイス

「よう。退院決まったって?」

 

「ああ、明後日だね。治療院ともようやくおさらばだ。こんなにかかるとは思わなかったよ」

 

「そうだな。プラーナ切れに重症が重なったせいか?」

 

「そんな所らしい。あ、美咲ちょっと待て。そこはやめろ」

 

ここに来て2週間程たったある日の午後。

退院決定と聞いてやって来たクラウスの前でどうかと思ったが、美咲に体を拭かせているのは続行してもらった。

ただ、奴の前でパンツの中まで拭こうとするのは止めて欲しいんだが。

 

「すっきりするでしょ。文句言わない」

 

「・・・これって看護師の仕事じゃないのか?」

 

「いいの。あたしの仕事!」

 

「そうかい。それで良いならかまわんが。しかし傷痕が目立つな」

 

「やっぱり?まあ気にしていないが」

激戦の証、みたいで少し自慢したい気もするが、言わないでおこう。

 

「傷だらけ、という程ではないが、こんなになるとはねえ。セル=ベレスタは怖いな」

 

「承知の上だったがな。天霧とまともに接近戦でやりあえばこうなる事はわかっていた」

 

「それでこの結果か・・・ あれ?そういえばセル=ベレスタを持つ天霧とまともに接近戦やったのってお前と刀藤綺凛位じゃないか?」

 

「ん?イレーネ・ウルサイスは・・・ほとんど能力で戦ってたか。界龍のクズ双子も違うな。あれ?そう考えると俺って凄くね?」

アルルカントの漫才ロボはパペットだしな。

 

「そうだよ。ページワン扱いも納得しておけ」

 

まあ、確かにそうだな。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

入院生活もそろそろ終わり、それなりに暇だったが、やる事が無かった訳でもない。

読書もその一つ。

ここしばらくは星武祭(フェニクス)とその準備に専念していて、この世界についての知識を学ぶ事は等閑にしていた所があったので、このインターバルは良い機会だった。

その中でも重視したのが、アスタリスクの交通についてだった。

そう、いよいよ自動車の運転免許を取る計画をスタートさせてみた。

 

アスタリスクにも自動車は存在し、道路があり、信号がある。

車も箱型の4輪車がメインで、人が運転する物だ。

ならば自分にもできる。

そう思って交通法規の勉強と、免許の取り方について調べてみると、どうやら何とかなりそうだった。

車の所有についても、免許証が得られれば不可能ではない。

購入資金はフェニクスの報奨金を充てればいい。

 

そんな訳で道路交通教本を読んでいて、美咲の相手をしていなかったのだが、そんな自分に文句を言う事もなく、彼女も端末を見たり外を眺めたりと好きに過ごしている。どうも沈黙を苦にしないようだ。

 

と言ってもあまり何も喋らない時間が続くのもどうかな。

 

「なあ。お前って帰省とかしないの?」

そういえばこいつ、東北の出身じゃなかったか。

 

「うーん。別にいいかな。帰ってこいとも言われてないし」

あれ?親と何かあるのかな。

 

「そうか、ならばいいが」

 

「あんたはどうなの?」

 

「俺か?別にどこかに行く用事はないな」

アスタリスクの外も興味はあるが、まずはもっとこの都市を知りたい。

 

「じゃあ、残りの休みどうする?」

 

「そりゃリハビリだろう。左腕が治らん限り、大した事もできないし」

退院といっても骨折はまだ完治しない。8月の終わり頃までかかるらしい。

 

「そっか。どこか行きたいと思ったけど」

それは同感だが。

 

「まあ怪我の治り具合を見ながら考えるか」

 

「そうだね」

 

では8月末頃、何ができるか考えようとしたとき、病室のドアがノックされた。

 

 

※  ※  ※

 

 

 

「一人か。珍しいな」

 

「そんな事はない。以前は良く一人で行動していた」

 

そういえばぼっちでしたね。しかし突然何の用だろう。やって来たのはユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトさんである。名前長いね。

 

「ああ、ひょっとして美咲に用だったか?」

 

ライバルとして、お互い認め合おう、とかそういう話か?

 

「い、いや。何というか・・・お二人に相談というか、教えて欲しいというか・・・」

 

ん?どういう事だ?と美咲を見るが。

 

「あー・・・何となくわかったような・・・」

その表情は複雑と言うか、面白そうと言うか。

 

「あ。ひょっとして天霧の事か?」

 

「・・・」

 

黙ってうなずくお姫様。そういう事か。

 

「わかった。何が聞きたい」

 

「・・・お二人は、その、恋人同士、なのだろう?」

 

「そう言えばそうだな。先週から」

 

「先週から!?」

 

「ああ、それまではもっと打算的な付き合いだったな。フェニクス出場の為の」

 

「打算?」

 

「まあそれは置いておこう。要は天霧と付き合いたいのか?」

 

「つ、付き合うとか、そういう事ではなくてな。いや、そういう事かもしれないが!」

 

いやー、焦ってますねえ。こっち方面ではやはり純情だな。

 

「うーん。美咲、どうアドバイスする?」

 

「うーん。言いたい事はあるけど、あんたはどう?先に言う?」

 

「いいの?ではお姫さま。最初に聞いておきたいんだが」

 

「な、何だ?」

 

「君さあ、女としてあの男が欲しいのか?」

 

「ほっ!欲しいだと!ななな何を言い出すのだ!私は別に・・・!」

 

「あー、もういい。良くわかった」

バレバレだな。これは。まあ察しはついていたが。

 

「言っとくけど、ライバル多いのは分かっているよな」

 

その一言で、お姫様の表情に影が落ちる。

 

「ああ、それはそうだ」

 

「まずは天霧に対する好意を隠そうともしない、ウチの会長さんだな。誰もが認める美人な上に、親は銀河の役員だったか?あれ、これってお姫様よりステータスが上じゃね?」

 

「・・・」

 

「お次は刀藤綺凛か。同じ剣士として話は合うみたいだな。妹的な後輩キャラだが、あの容姿だとむしろ数年後が楽しみだ。年下って、強力なアドバンテージになるよな」

 

「アドバンテージと言えば、圧倒的なのは沙々宮紗夜か。幼馴染というのはそれだけで強い」

 

「身近な所でもこんなに女がいるし、これだけじゃないぞ」

 

さて、少しプレッシャーをかけるか。

 

「何だと?まだいるのか!?」

 

「そりゃそうだ。何せ天霧なんだぞ。聞きたいか?」

 

「・・・頼む」

 

「では次。イレーネ・ウルサイス」

 

「バカな!あり得ない!」

 

「そうかな?義理堅い性格だし、試合とはいえ助けたのは事実だろう。借りを返す、とか言って近づいてきたら、案外進展したりして。おとなしくしてりゃいい女だしな」

 

「さて、次は特ダネだぞ」

 

「・・・まだいるのか」

 

さて、また爆弾投下といこうか。

 

「では。信頼すべき情報元によれば、クインベールの会長が天霧に『強い興味』を示しているそうです」

 

「シルヴィア・リューネハイムが!まさか!」

 

「事実だ。すでに二人は会っている」

 

「そんな・・・」

 

ちょっとやりすぎたか?顔色が悪くなってきたな。

 

「さてさて。これだけの強力なライバルがいる中で、君は何をもって天霧の心を掴もうとするのかな。タッグパートナー、といってもそろそろ過去の話だろう。一国の王族、という立場も、むしろデメリットかもしれんね」

 

「・・・私は・・・どうすれば・・・」

 

「まあ、現状は認識したと思う。とりあえず今はここまで。少し頭を整理してまた来ることだね。次はもう少し具体的なアドバイスをしよう」

 

「・・・頼む。また来る」

 

それだけ言うとお姫様は出ていった。その足取りに力がない。結構ダメージ受けたかな。

 

「それにしても、こうやって聞くと、天霧ってそっち方面でもとんでもない男だね」

 

そりゃそうだ。なんたって主役なんだから。とは言えないけどね。

 

「そうだね。本人が自覚していないのが、幸か不幸か」

 

「それで、あんたはあの二人をくっつけようとしてるの?」

 

「まあな。さっきはあれこれ言ったが、お似合いの二人ではある」

 

「じゃあ、あたしもあのお姫様を、もう少し煽ってみようか」

 

「そりゃいいな。やってくれ」

 

さて、何と言って焚き付けるつもりかな。まあ後で聞かせてもらえるだろう。

男を知った女のアドバイスに、あのお姫様は何を思うのかな?

 

 

この時は、どんな結果になるか、無責任に面白がっていた。

 

しかしその結果が、ある意味笑えない事になろうとは、あまり予想していなかった。

 

 

 

 

 

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