異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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彼女の戦い

 

これまで何となく避けてきたんだが、そろそろ良いだろう。

お姫様との対戦を考えると、このあたりで一度見ておいた方がいい。

 

学園のライブラリからファイルを呼び出す。

 

第25回フェニクス、Cブロック3回戦。

 

天霧達との試合映像である。

 

モニターを拡大して再生開始。

 

 

 

 

『さあ!両選手揃いました。こうして見ると実に興味深い組み合わせですね。チャムさん』

 

『はい。フェスタで同学園の生徒が対戦する事は珍しくありませんが、今回はどちらも接近戦型ファイターとストレガのタッグという、珍しいカードになっているっす』

 

『一方の天霧/リースフェルトペアは紛れもない優勝候補ですが、深見/瀬名ペアも1,2回戦を余裕をもって勝ち上がって来ています。勝敗の行方はどう見ますか?』

 

『そうっすね~。無名だった深見選手の本当の実力がどの程度か。また瀬名選手がどれ程力をつけてきたか、そのあたりによるんじゃないでしょうか』

 

『なるほど。それでは開始時間のようです。フェニクス予選Cブロック、第3試合、バトル!スタート!』

 

 

※  ※  ※

 

 

 

「咲き誇れ!プリムローズ!」

 

天霧の能力解放と同時に、お姫様の先制射撃。

だが自分達は気にせず前進を開始する。

自分の斜め後ろに美咲は位置し、断続的にダガーを放ちながら進む。

距離を詰めた所で、体を倒してダッシュの体勢を取る。その頭上を通して、美咲の集中射撃。狙いは言うまでもない。

しかしその全ては、天霧のセル=ベレスタによって防がれた。

もっともそれも予想通り。その瞬間を狙って自分が飛び込み、天霧を弾き出す。

 

「綾斗!」

 

流石にこの状況には驚くだろう。お姫様が気を取られる。

そこに美咲のナイフが飛ぶ。

1本目は弾くが、2本目はワイヤーを展開しながらコントロールされた動きで腕に絡みついた。

 

「ハッ!!」

 

間髪入れずに美咲がワイヤーを引く。気合い入れて全力をかけたのが画面上でもわかった。

お姫様の体一瞬、浮き上がり、急激に引き寄せられる。なるほどね。こうやって接近戦に持ち込んだか。

これなら自分が動かないので、設置型能力の罠は無視できる。

 

そして美咲は普通の接近戦をやるつもりは無い。

 

自分の頭上にダガーを展開し、降り落としながら斬りかかった。

 

わかってはいたが、思い切った手だ。自分がダメージを負うリスクは許容している。

 

一方お姫様も苦しいはず、と思いきや、細剣を振るって美咲のナイフとダガーを何とか凌いでいる。流石だな。さらにその状況で―――

 

「咲き誇れ!レッドクラウン!」

 

爆炎に頭上のダガーがあっさり吹き飛ばされる。やるな。

だが美咲も負けていない。ひるまず踏み込むと、ワイヤーを使ってお姫様の動きを制限しながら再度斬りかかる。完全なショートレンジでの戦い。そこにはある種の美しさがあった。

お互いが腕を振るう毎に、対照的な黒と赤の長髪が流れる。ナイフと剣が交わる毎に、プラーナの輝きが弾ける。

しかし上手いな、美咲。今度はダガーを展開せず、両手のナイフの扱いに集中する事に切り替えたか。

 

その時、実況と観客が騒ぎ出すのがわかった。ああ、自分がセル=ベレスタを止めた件か。

美咲達は気にもしない。自分の戦いに完全に集中している。戦況は美咲有利。お姫様は後退しつつ防戦、といった状態か。

だが、やはり華焔の魔女の名は半端では無かった。

 

「アマリリス!」

 

ほとんど一瞬だった。僅かな攻撃の隙。そこを突いて、何と目の前で爆発を起こした。

 

「くっ!」

 

爆風で両者吹き飛ぶ。ワイヤーも切断された。

 

「咲き誇れ!ロンギフローラム!」

 

間髪入れずに炎の槍が展開、射出された。

今度は美咲が不利。何とか回避しつつ、ダガーを展開射出。だが牽制にしかならない。

再び爆発。美咲が体勢を崩す。しかし転んでもただでは起きない。倒れこみながら低くナイフを投げる。当然ワイヤー有りだ。爆発による一時的な視界不良の中、ワイヤーはお姫様の足首に巻きつく。倒れたままの美咲がワイヤーを引くと今度はお姫様が倒れる。起き上がった美咲が駆け出す。

その時、また爆発。

カウンターとなって、美咲が倒される。

ちなみに画面の端の方では、爆風の影響を受けた自分もよろめいている。

 

あれ、設置型魔法か?いや、発声無しで発動させたんだ。

 

「リビングストンデイジー!」

 

炎の輪が立ち上がりかけた美咲を襲う。駄目だ。これは対応しきれない。

目立ったダメージは頬の傷と髪が幾らか斬り落とされた位だが、それだけで無かったのは良く知っている。

 

「咲き誇れ!アマリリス!」

 

また炎が上がる。徹底して接近戦を避ける気か。まあ間違っちゃいない。

こうなると美咲は回避と防御に専念するしか無い。形勢逆転するにはこの距離から強力な攻撃をするしかないんだが、それは最後のカードでもある。このタイミングでそのカードを切るという事は・・・ それは美咲の意志だが、そこまで追い込まれた、とも言える。

しかしお姫様の方も、技の連発はそろそろ苦しくなってきたんだろう。若干間隔が広がる。

 

そのタイムラグを突いて、美咲が両腕を上げ、叫ぶ。プラーナが集中する。

 

ん?お姫様の周りのこのプラーナのパターンは・・・危険を感じて防御に切り替えたのか?

 

「スパイラル・ブロー!」

 

大量のダガーが細い螺旋を描きながら飛ぶ。

 

「咲き誇れ!アンスリウム!」

 

焔のシールド。決勝では例のパペットの攻撃もある程度防いだ強力な技だが、連続、集中して着弾するダガーには耐えられず崩壊する。だが・・・ほう、お姫様、貫通してきたダガーの一部を細剣で受けたか。上手いな。しかしそのエネルギーまでは抑えきれずに倒された。そういう事か。

 

そして美咲が飛び込んで来る。体勢を崩していたお姫様は対応できない。あっさり剣を跳ね上げられ、校章をナイフが突く。

 

その直前、ルークスの刃の輝きが消えた。

プラーナを全て使い果たした美咲が膝を折って崩れる。

 

 

 

※   ※   ※

 

 

 

『試合終了!! 勝者、天霧綾斗&ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト!!』

 

画面の中で、自分と美咲はステージに倒れ伏している。

逆に天霧達は自分の足で立っている。

何ともわかり易い結末だな。

 

『いや~チャムさん、まさに激闘でしたね~』

 

『はい。ですが終わってみれば天霧選手とリースフェルト選手はまだ余裕がありそうっすね。一方の・・・あー、これは深見選手もプラーナ切れに近い状態ですね~。かなりの重症のようですし、早く手当を―――』

 

モニターを消す。

血まみれになっている人を見るのは気分が悪い。それが自分で、自分の血であっても。今更だが、試合の時は良く平気だったな、自分。

 

「で、感想は?」

あれ、いたのか、美咲。

 

「感想と言ってもね。良く戦ったとしか」

 

「・・・そう」

 

しばし沈黙。まあ、静かな時間は嫌いじゃない。

でも。

 

「前から聞きたいと思っていたんだが」

 

「何?」

 

「美咲、試合前からお姫様には随分拘りがあったよな。試合に勝てなかったからといってあそこまで嫌うか?それはちょっと違うと思う。どうしてだ?」

 

「その事ね・・・何と言ったらいいかな」

 

「気に入らない、とでも?」

 

「そんなところ。あのね、あたし達はストレガじゃない?」

 

「ああ、そうだな」

 

「ただでさえ少ないジェネステラでしょ。その中でストレガはもっと少ない」

確かにな。2%もいないんじゃなかったかな。

 

「うん。それで?」

 

「そんな立場のあたし達じゃない?だったらお互い助け合う、そう思っていたんだけど」

 

「序列や試合なんかは別にして、だな」

 

「そう。だけどあの子は・・・」

 

「そうだったな。でもそれは理由があっての事だろう」

 

「今は知ってる。自分が守るべき物だけで精一杯だった、って聞いてる」

 

「そうか」

 

「うん」

 

「じゃあ、今はもういいんだな。ならばよし!」

 

今度また、あいつらも付き合わせて何か『イベント』やるか。美咲も何がしたいか、考えておいてね。

 

 

 

 

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