異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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決闘

決闘。

アスタリスク名物だが、自分にはこれまで縁が無かった。

そして本気の1対1の戦いは初めてじゃないか。うーむ、どうする?

と言って断る理由もあまりないし。

 

まずは制服上衣の腕をまくってルークスを起動。お馴染みとなったガントレットに両腕が包まれる。

相手のルークスは・・・ほう、ハルバードか。長さは2mを軽く超えている。比較的扱いが難しい武器だが、これをまともに振り回せれば、相当の使い手という事になる。

 

校章が発光し、ホストコンピューターとリンク。戦闘情報処理が始まる。カウントダウン、そしてスタート オブ ザ デュエルのコール。

決闘開始だ。

 

さて、長柄武器を相手取るのは久しぶり、というかフェニクス2回戦の1回しかない。それも短時間だ。どうやる?

警戒しつつゆっくり近づく。さて、どんなものか。

 

奴が動いた、と思った瞬間、目の前を風が切る。

ハルバードが水平に振り抜かれた。速い!この距離が奴の間合いか。

続いて斜めに2撃、3撃と来る。単純に躱すには少々辛い。だがリーチとしては天霧のセル=ベレスタよりいくらか長い程度、といった感じ。スピードはそれより劣る。うん、何とかなるな。

では、こちらも。

 

一歩を踏み出す。

すかさず降って来るハルバードの刃を左腕のアームガードで受ける。

 

「うおっ!?」

 

受けきれない。慌ててバックステップで逃げる。なるほど重い打撃だ。剣と同じに考えるとまずいな。片腕では抑えられない。だが逸らす事は---うん、できるな。鋭い突きを弾きながら前進。こちらも鋭いストレートでお返し。だがギリギリで届かない。奴は強引にハルバードを振り、距離をとる。

 

さて、次はどうする?

 

ちらっと周りを見る。

結構ギャラリーが集まってきたな。美咲の姿もある。慌てて出てきたのか、ラフな格好をしているな。不安そうではある。

 

ん?相手からのプレッシャーのような物を感じる。

ハルバードの刃にプラーナを集中させているな。何かやる気か?

今度は向こうから踏み込んできた。同時に真上から刃が来る。これは敢えて避けない。頭上で両腕を交差して受け止める。

瞬間、プラーナが弾けた?目の前が閃光で真っ白になる。視界を奪われた!

奴が正面にいない!どこだ?多分後ろのはず。

そこまで考えて反応しかけたところで、背中に衝撃。地面に倒されるが、そのまま転がって距離を取る。

 

すぐに起き上がるが、これはキツイ。かなり痛む。亀裂骨折かもしれん。プラーナの防御を突破してこのダメージ。やはりこいつ、並の相手じゃない。

見事にやられたな。

だが、同じ手は食わないよ。

間合い近くまで一気に踏み込む。突きを躱してダッシュ。フェイントをかけて側面に回る。しかし奴のハルバードの柄が迫る。ガードしながら離れる。厄介だな。

すかさず刃が飛んでくる。これは・・・来るな。

アームガードで受けた瞬間に閃光。奴の姿が消える。

 

甘いよ。

 

今度は感じる。目は閉じたままでいい。

8時方向か。身体を回転させて繰り出される刃を躱し、左のガードで弾く。右腕に回転の勢いも乗せて叩き込むと手ごたえ有。まあ視界ゼロだったので狙いは逸れたが、有効打と言っていい。

 

目を開く。奴は戸惑っている。

そうだね。今の反撃が故意か偶然か、この一度じゃわからんだろう。

 

もちろん、勘でも偶然でもない。

 

認識力の向上。その研究に付き合っていると、視界外の警戒もできるようになる。実戦で使ったのは始めてだが、このレベルの戦いなら充分に対応できる。

 

それはいい。だが現状攻撃力が問題か?

リーチの差はどうしようもないが・・・リーチ?

そうか。少しならリーチは伸ばす事ができる。アームパンチ機能を使えばいい。当然相手も警戒しているだろうが、ならば素直にやらなければいい。

よし、行けそうだ。

 

再びプラーナのフラッシュを使ってきた。

視界は無くなるがプレッシャーの方向は感じ取る事ができる。今度は左斜め上方か。振り下ろされるハルバードを躱して着地点に飛び込む。左右のストレートを入れるがリーチの限界から浅い打撃になる。

うん。これで奴はこちらの対応を理解しただろう。

 

次は小細工無しでくるな。

 

ハルバードを水平に構える。

ん?メテオアーツか?

いや、違うな。プラーナを集中させているが、何かの技に転換しようとはしていない。

自前のプラーナとルークスだけで全力攻撃って訳か。大した物だよ。

 

来る!

 

「オオッ!!」

 

速くは無い。だが重い斬撃。

水平振りは躱す。すかさず来る追撃は真上から。

今度は両腕で受ける。

凄まじい衝撃に全身が震え、凍り付くような感覚になる。

 

だが、動ける。

 

ハルバードを戻す一瞬。その瞬間に合わせてダッシュ。一気に間合いを詰めて両拳の連打。

強烈な手応え。

三発目が校章を捉え、砕く。

 

エンド オブ デュエル。

 

「何とか勝てたか」

 

「一体・・・何故?」

奴は胸を抑えながら呟く。ああ、ちょっと痛いと思うよ。

 

「俺のリーチを見切ったと思ったんだろうな」

 

腕を上げる。

軽い作動音と共に、前進していたアームガードが戻る。

 

「それは・・・」

 

そう、最後の打撃の直前、アームガードを最前進させてロックしていた。つまり自分の拳が150mm延長されていたと同じだ。本来、作動試験中に使う機能だが、こういう使い方もある。

 

「なるほど。やられましたよ」

 

静かに、それだけ言って相手は去って行く。ふむ、ハドリーとか言ったな。面白い奴もいたもんだな。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

「ちょっと令、あんたの背中、酷い事になってるよ!」

 

決闘の翌日、夕方。

いつものようにロートリヒトのホテルに入って、一戦交える前に一緒にバスルームに入ったのだが、美咲を驚かせてしまったようだ。

 

「昨日は大した事無かったと思ったんだがなあ」

 

「メディカルチェックも受けなかったの?」

 

「あ~。まあ・・・」

 

「駄目でしょ。ホントに痛くないの?」

 

「実は・・・ちょっと」

 

「はあ・・・全くしょうがないねえ。今から治療院に行く!分かった?」

 

「・・・」

 

「そんな顔してもダメ!」

 

 

 

抵抗むなしく美咲に引きずられるようにホテルを出た。残念。

諦めて車を走らせる。うーん。怪我が治ったら滅茶苦茶にしてやる、と言ったら痣が一つ増えた。

 

「それで、序列はどうなったの?」

 

「ああ、それか。26位だ。ネームド・カルツには入ったが、微妙な位置だな」

 

「誰もあんたを26位だとは思わないだろうけど」

 

「そりゃお互い様だろう。お前の29位こそ誰も信じないさ」

 

とは言え美咲はともかく自分はページワン レベルの力があるかというと微妙だな。

以前会長が言ったページワンに『準ずる』というのが正解だろう。

 

治療院に入る。

連絡はしておいたが、ほとんど待ち時間無しで診察に案内された。そんなVIP待遇される覚えは無いんだが、と言ったら怒られた。定期健診の案内を無視していたんだ。すっかり忘れていたよ。

ちなみに背中の負傷もかなりの物で(やはり肋骨に亀裂有り・・・)年明けまでの通院となってしまった。

わかってはいたがこの身体、ジェネステラとしては回復力が低いのがつらい。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

12月も中旬に入る。

自分の記憶ではこの時期、世間とメディアはクリスマス!で騒ぎだすんだが、アスタリスクはそうでもない。

まあ、どうでもいいか。学園はそれよりも冬季休暇が近い事の方を気にする奴が多いな。

 

で、クリスマスではないが、パーティーである。

 

例のルークス製造企業、EUROX社の日本拠点、アスタリスク・オフィスにて。

自分は当然美咲を連れて行く。クラウスはどうするのかと思ったんだが。

 

「やはり部長ですか。しばらくです」

 

「うん。今日はよろしく」

 

まあ関係者で行くのが無難だな。

 

「じゃあ乗って下さい」

 

「頼むよ」

 

では車を回すか。しかしパーティーと言っても、仕事絡みだよな。振舞いには気をつけるか。

いや、高校生の発想じゃないんだけどね。

 

 

 

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