異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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計画立案

正月も3日を過ぎると世間は動き出す。

これはこの世界でも変わらなかった。

で、当然会社も仕事を始める訳で、一介の高校生に対しても仕事を始める。

 

「それでは失礼します。ありがとうございました」

 

応接室を後にする。

就職面接など久しぶりだ。しかも新卒での面接を再度やるとは普通、思わない。そんな訳で最初の面接は何となくしっくりこない物となった。

 

星信エンジニアリング。

 

名前の通り、統合企業財体銀河の末端に位置する無線通信インフラを手掛ける会社。

銀河の末端と言っても規模は大企業一歩手前。仕事内容も待遇も興味があったのだが、今日の内容では結果は微妙だな。

まあ切り替えて行こう。明日もある。

 

 

※  ※  ※

 

 

 

学園に戻る。

そろそろ休みも終わりが近い。かなり生徒も戻ってきている。

その中には主役御一同も含まれる。

遅い昼食でも、と思って学食を覗くと、例の5人組がそろっている。

のんびり過ごしているように見えるが、実は約1名、表情が微妙だな。

その1名が、自分を見るなり話しかけてきた。

 

「深見先輩・・・。瀬名先輩は一緒ではないのですか?」

やけに丁寧だな。お姫様。

 

「俺は外から戻ったところ。美咲なら寮にいるよ」

 

「そうですか。お二人に相談が・・・」

 

「あいよ。美咲には言っておく。都合がついたらメールどうぞ」

 

ふむ、何の件かな?ある程度は予想できるが・・・

 

複数の視線に晒されながら、券売機のモニターに向かう。この時間もあるメニューは何だっけ?

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

夕刻。

 

学園正門近くでお姫様と落ち合う。今度は美咲も一緒。

どうせ人には聞かれたくない類の話だろうから、こういう時、都合の良い密室となる自分の車で話そう。

そう思ってすぐに車を出す。

以前もこんな事があったが、同じように街の外縁道路に出てすぐの小さな公園で停車する。

エンジンは切る。だがバッテリーが優れているので長時間ヒーターを作動させていても問題無い。

 

「さて、何の相談かな?お姫様」

 

「聞くまでも無いでしょ。天霧に告白する気になったの?」

おいおい随分と斬り込むな。

 

「ま、そんなところだろうが、いよいよか。リーゼルタニアの件で思うところありってか?」

 

「な・・・。何故お二人は私の考えがわかるんだ!?」

 

「何故って・・・今まで色々相談しておいて今更じゃないか」

いや、それだけが理由じゃないけど。まあいいか。

 

「とにかく!決心したんだよね」

 

「あ、ああ。それで、どうすればいいのか・・・いや、私は本気だが、伝え方とか、状況とか、その、いろいろ・・・! それでお二人にはアドバイスとか・・・!」

 

「わかったから落ち着け。大丈夫だ。天霧なら正面から向き合えば悪い結果にはならんだろう」

 

「まあ、あいつならそうだね」

 

「ただなあ・・・その時、その場所で邪魔が入らなければ、だが」

 

「邪魔?そんなの二人きりになればいいでしょ」

そうなんだが、ラノベの主役はこういう時に限って邪魔が入るのが相場なのだよ。

 

「わからんぞ。ただでさえあいつの周りは女が多いし」

 

「そうかもだけど・・・」

 

「二人きり・・・綾斗と二人・・・」

 

「まずは場所だな。人目がなくて、絶対邪魔が入らない所」

 

「夏の時みたいなホテルとか?」

 

「密室にはなるが、行くまでが問題だ。誰かに見られる。有名人二人だし」

 

「遠出する? 休みも終わるし無理かしら?」

 

あれ? 意外と難しい?お姫様、浮かれてないで君も少しは考えてね。

 

「・・・こうなったら逆転の発想だ。女子寮、お姫様の部屋!」

 

「何だと!?私の所で!?」

 

「個室なんだし丁度いいだろ。まあ夜になってから、という条件はつくが」

 

「それって天霧がベランダから入ってくるって事でしょう?何だか雰囲気無いね」

 

「お前がそれを言う?」

 

人の事は言えないだろう。俺達の初めてもそうだったじゃないか。

それを思い出したんだろう、美咲が真っ赤になってうつむく。

 

「し、しかしどうやって綾斗を呼ぶんだ?夜遅く、私の部屋に・・・」

 

「お姫さま・・・。それは既に一度やってるじゃないか。あの時とは理由は違うが。まあ、リーゼルタニアのお礼とか、二人だけでパーティーしたいとか、呼ぶ理由はいくらでもあるだろ」

 

「二人だけのパーティー・・・」

 

後はいつ実行するかだが、もう休みも終わるし、次の週末夜、といったところか。後は場所が場所だけに、邪魔しそうな要素は前もって対処しておく必要があるな。

 

あれ、自分は一体どうしてこんな事を真面目に計画立てているんだろう??

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

 

新春、アスタリスク。

まあこの街なので、日本的な正月気分を感じる所は多くない。だが正月ではある。

とは言えあまり浮かれている場合ではないな。

14時まで後5分か、そろそろ時間だ。

 

場所は分っている。というか、先に場所を把握しておいて、開始時刻まで周辺で時間をつぶしていた。

で、今、目的地は目の前。

 

六花技研。

 

アスタリスク市内の『水』をコントロ-ルする設備を扱う会社。

それは上下水道だけでなく、更に特殊な水制御にも関わる。何しろここは水上都市。実は重要な役割を持つ企業だ。

そして意外な事に統合企業財体と深い関わりが無い。

まあ会社規模としては中小企業と言っていいので、そういう事もあるか。

仕事の場所をアスタリスク内に限定しようとすると、どうしても小規模な会社になるな。

 

まあ、大企業に勤めたからといって楽になる訳じゃないのは思い知っている。

面白い知識と経験が得られればそれでいい。

もちろん同業他社はいくつかあるが、学園からの推薦状プラス担当教師の繋がりがあるので選んでみた。

 

行くか。

 

あまり特徴の無いビルに入ると、すぐ受付だが人はいない。この規模の会社じゃそうなるな。

設置されているモニターを使って来意を告げると、採用担当が出てくるので笑顔で挨拶。お互い印象は悪くない、と思う。

すぐに応接室に通された。一礼して紹介される面接官は総務と技術の担当に専務か。まあ妥当なところだな。

では、得意じゃないが、自分自身のプレゼンを始めるとしようか。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

「それで、どうだったの?」

 

「感じは悪くない。受け答えもまあ、できたしね。まあまあじゃないかな」

 

面接終了後、車で治療院に美咲を迎えに行く。何故かというと・・・

 

「だいぶ薄くなってきたな」

 

「そうだね。魔法治療は良いよ」

 

一緒に鏡の前に立って、美咲の顔を見る。

フェニクス激戦の証でもあったその傷痕は、少し離れるとわからない程度まで治ってきている。

流石に卒業後の仕事の事を考えると、スカーフェイスとはいかない。

 

車を出して治療院を出る。

陽の傾き始めた街中をゆっくり走らせる。

 

「天霧の姉が、あそこのどこかにいるんだね」

 

「ああ、そうだな」

 

「何年も眠ったままなんて・・・」

 

「気になるか?だかこの件については俺達にできる事は何もない。それにどういう結末になるかはわからんが、いずれ目を覚ますさ。それは断言できる」

 

「あんたがそう言うなら、そうなんだね」

 

「ああ。きっと驚くだろうな。久しぶりに会った弟がほとんど同い年になってて、ヨーロッパのお姫様とデキてるんだから」

 

「あ!、それ!お姫様の件、どうやるの?」

 

「ああ、実行の日は向こうに決めてもらうとして、邪魔が入らないようにフォローだな。他の女には悪いが」

いつの間にやら自分達はお姫様押しになってしまったが、頼むと言ってきたのは彼女だ。助けてやるのはありだろう。

 

「他って・・・会長、紗々宮、刀藤?」

 

「そういう事。ああ、夜吹にも天霧が部屋を出ても気にしないよう言っておくか」

 

「で、何をするの?」

 

「紗々宮は煌式武装研で対応できないか考えている。モニターとか試験結果の打ち合わせとかで、遅い時間まで部室にいて貰おうかな」

そう言えば今回のリーゼルタニア行きの前、実家に寄って破損したルークスを全て直してきたはずだ。当然テストも必要だろうな・・・

 

「刀藤は?」

 

「あの子は中等部だし、真面目だから寮内とはいえ夜はそう出歩いたりしないだろう。何かあったらお前がフォローな」

 

「あたし?まあ何とかしろと言うならするけど。会長は?」

 

「うん。一番厄介な相手だな。これは俺が直接対処する」

 

美咲の顔が強張る。いや、これは必要だからするのであって、浮気じゃないから。だからそんなに睨むのヤメテ!

 

 

 

 

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