異世界転生体験記 ~アスタリスクの場合~   作:jig

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計画実行

一月も中旬となった。

そろそろ正月気分も終わり、といった頃に、教師からの呼び出しを受ける。

まあ何の件かはわかっていたが。

 

「深見さん。企業側からの連絡です」

 

採用に関する連絡は全て学園を通す事になっている。

 

「星信エンジニアリングと六花技研、どちらからも内定が出ました」

 

「なんとまあ。両方ですか」

ちょっと予想外。どちらか一方と思っていたんだが。

 

「おめでとう。ですが返事は1週間以内、早いに越した事はないですが・・・」

 

「わかりました。週明け目処で決めます」

 

「では、その頃に来て下さい。貴方の将来についての大事な判断になります。良く考えてみて下さい」

 

さて、どうしたもんかな。

オプションとしては幾つかある。

まずはどちらか選ぶ。まあ順当だな。

次にどちらも選ばない。かといって他の企業にエントリーする気はもう無くなっている。

もう一つ、どちらも選ばす、進学する、という手も残されてはいる。

 

この中で一番波風立たないのは六花技研行きだなあ。何しろ学園と教師の推薦ありだ。

 

そんな事を考えながら、学生寮に戻る。

天霧を見かけるが、声はかけないでおく。

 

そう言えば、アレは今週末だな。

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

「で、そっちの手筈は?」

 

「あたしがお姫様に料理を教える事になってる。実際、調理室を借りて、本当に夕食を作るよ。それを部屋に持って行って、食事するんだけど、あたしが天霧と入れ替わるようになるね」

 

「いいね。天霧の方はどうなった?」

 

「これまでの協力に感謝して食事に招待、という事で、今日にも綾斗に話すつもりだ」

 

「ああ、それは直前の方がいいだろう。あいつの様子は見ているが、週末予定があるとは思えん」

 

「そ、そうか。そうしよう」

 

「うん。良いサプライズになるな」

 

「そっちはどうなの?」

 

「沙々宮の方は煌式武装研で捕まえておく。あまり遅くは無理だが、少なくとも事を始める時間にはルークスのテスト結果を解析中だろう。俺はそこに顔を出した後、会長室に行く」

 

「・・・」

 

「そんな顔するな。今後の事で話があると言ってある。実際はそれだけじゃなく、結構込み入った話になるので、かなりの時間は稼げると思う。残る問題は・・・」

 

「まだあるのか?」

 

「ああ。天霧が無事お姫様の部屋にエントリーできるか、だな。この時期だし、辺りは暗くて寒いからあまり目立たないだろうが・・・。美咲、サポートよろしく」

 

「うん」

 

「ありがとう・・・。お二人には感謝しかない」

 

「礼はまだ早いな。上手くいってから聞こうか」

 

いや、本当にどうなるんだろうね。この結末。

 

 

 

 

※  ※  ※

 

 

 

その日。

特に変わった事の無い、週末の夕方でしかない。

だが今夜の結果次第では、今後の展開がえらい事になるかもしれん。

 

煌式武装研にて。

計画通り沙々宮を確保してルークスのテスト、調整中。

 

「しっかしこうしてデータ比較してみると、とんでもない出力だよな。これ」

 

「ああ、しかもまだパワーアップの余地があるとか。信じられん」

 

34式波動重砲アークヴァンデルス改。いや、修理と再調整をしているから改2、といったところか。

それに沙々宮の煌式武装はこれだけではない。ホント、とんでもないな。

 

「全くかなわないな。せめてマナダイトの接続制御の方法のヒントでもあればな~。やはり沙々宮博士にも会ってみたいな」

 

「だろうな。なあ沙々宮。EUROX社の件はもういいから、せめてクラウスには直接話をさせてやってくれないかな」

 

「わかった。お父さんに頼んでおく。それよりも本体強度のデータも見たい」

 

「ああ、じゃあそっちの解析も始めるか。ただ俺はここまでだな。もう行かないと」

 

「ああ、会長だったか?」

 

「また面倒な話になりそうでね。ああ、俺のルークスはどうなった?」

 

「改修は終わってるよ。調整はまだだが」

 

「それはこっちでやるさ。じゃあ後はよろしく。沙々宮もすまんね」

 

「問題ない」

 

いや、君にとっては大問題が起ころうとしている。謝ったのもその件についてなんだよ。とても話せないがな。

 

自分のルークスを持って部室を出る。依頼していたハード面での変更は終わったようだ。後は調整次第だな。

 

それは良いとして、もう状況は始まっている時間だ。端末を見るが何の連絡もない。つまりは予定通り進んでいるという事だ。

足早に生徒会に向かう。大丈夫とは思うが、あの会長は確実に抑えないと。

一応美咲に聞いておくか。

端末のコールにはすぐに応答がある。

 

「どうだ?」

 

「あいつは部屋に入ったよ」

 

「よし、ならば後はあいつら次第か。こっちは今生徒会フロアに入ったところ」

 

「わかった。あんまり長居するんじゃないよ」

 

「そのつもりだ。じゃあな」

 

よし、問題無し。

で、自分はこれからフェーズ2だ。

今度は会長に爆弾投下といこうか。

 

 

※  ※  ※

 

 

 

会長室にて、自称腹黒美少女と向き合う。

 

「夜分遅くすみませんね」

 

「いえ。構いませんよ。何なら私の部屋でも良かったんですが」

 

「そいつは遠慮するべきでしょうね」

 

いや、本当はこのタイミングで会長に寮にいて欲しくなかったのでこちらを希望したんだ。

 

「それで、最近はどうですか?序列も決まったみたいですが」

 

「ああ、決闘もしたしな。まあ、あんなものでしょう」

 

「そうですか?もっと上にも行けると思いますが」

 

「そうかもね。だがもう意味はない」

 

「やはり、そうですか・・・」

 

「そういう事。卒業したら就職に決めた。美咲もそうだ」

 

会長が立ち上がって外を見る。そこにはアスタリスクの夜景が広がる。ふむ、ここから見る景色は良いと思っていたが、夜景だと尚更だな。

 

「残念ですが、それが深見さんの決意なんですね」

あれ、ちょっとダメージ入っているのかな。寂しい笑顔で声に力が無い。

 

「すまんね。だがグリプスに俺の力は要らんでしょう。会長のチームは優勝するし」

 

「何故、そう言い切れるのですか?まるで知っているみたいですね」

 

「うん。知っているからね」

 

さて、どうなる?この一言。

 

「・・・以前にもお聞きしましたが、深見さん、貴方は一体誰ですか?」

そうきたか。何と答えようかな。

 

「この前は、イレギュラー、と言われましたね。どういう意味でしょうか?」

まあ、いいか。

 

「そうだな。ここにはいないはずの存在、いや、『この世界』にはいないはずの存在、だな」

 

「・・・・・」

ありゃま。こっちを見たまま黙ってしまいましたよ。その表情、ちょっと残念な人を見る目に・・・なってない?

 

「異世界からの存在、という事でしょうか」

あれ?いきなり言い当ててくるのかよ。

 

「ああ、何しろジェネステラというある意味超人がいて、ダンテやストレガといった連中が魔法を使うんだ。異世界人がいる程度、可愛いもんだろう」

 

「そうかもしれませんね。まあ今まで聞いたことはありませんでしたけど」

 

そう言って微笑む会長さん。あーあ、この子、信じちゃったよ。

 

「まあそういう訳で、この学園の生徒にしてはおかしな奴だろうけど、そこはご容赦を。何しろ世界が違うんだ。戸惑ったよ」

 

「そうでしょうね。元のどんな世界で、何をされていたのですか?」

この子本気か?それとも・・・

 

「一言で言うと落星雨が無かった21世紀初期のこの国、だね。そこで普通の技術系会社員やってた」

 

「あら?それでは私達よりかなり年上なんですね。失礼しました」

 

「まあ確かに30代後半ではあるが、ここでは同じ高校生だ。あまり気にしないで欲しい」

うーん。信じているのか?ただ単に与太話に付き合ってくれているのか?わからん。

 

「今まで貴方を見てきて、同世代とは思えない所が沢山あった理由がわかりましたよ。深海のおじさま」

 

「おじ・・・いや、その通りだから何も言えないんだが、何だかなあ」

 

取り敢えずインパクトを与える事には成功したかな?

後は会話次第でどうなることやら。

少なくとも今この瞬間は天霧の事は忘れているだろう。いや、この先しばらくかな。

 

まあ、自分の話を信じたとして、それでどう対応してくるか。まったく予想がつかないんだが。

 

サプライズを目論んでやってみたんだが、ちょっと早まったかな?

 

 

 

 

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